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薬 - 平穏 -

  身を寄せたアザミの胸元に一筋の汗が垂れた。

  「今日はあっちぃの...」

  熱風が室に吹き込む。照りつける日差しが山を抜ける風を温めていた。

  「そうですね...」

  指先で妻の胸元の汗を拭う。ぴくりと動いた妻の身体に、ウマラは己の熱がこもるのを感じた。

  熱は日差しのせいだけでは無いだろう。

  「貴女も大概嘘つきだね」

  [[rb:上衣 > うわぎぬ]]を脱いで言う。

  「あ?」

  アザミは眉根を寄せた。

  「私が求めるからと、仕方ない風を装う。貴女だって欲しいでしょう?」

  汗の滲んだ首筋を指先でなぞる。

  「……」

  うなじから垂れる後れ毛が濡れて、どこか艶めかしい。

  ウマラはうなじから耳、あごへ唇を這わせる。小さな吐息を漏らした妻の唇に己の唇を重ねた。

  身をよじった妻の乳房が反り、天を向く。まるで触れろと言わんばかりだった。

  誘われるように乳房をまさぐり、舌を絡ませる。

  「ん……」

  隙間からわずかに漏れる嬌声。

  妻の手が己の腰を抱いた。その手はゆっくりと、腰から太腿をなぞった。

  「私が気づいてないと思ってるのか、貴女自身が無自覚なのか……どちらだろうね?」

  「ぁ?」

  妻の手に己の手を重ねた。

  「貴女が求めてる時は、私の身体に触れる貴女の手がね、いつもと違う。誘うようだよ……」

  「気のせいじゃろ」

  眉をしかめた。

  「そうかな……」

  [[rb:薄衣 > うすぎぬ]]の上からもわかるほどそそりたった乳首に、唇で触れる。

  「……っ」

  妻が小さく体を震わせ、腿を引き寄せた。

  「それも、気づいてない? 貴女が腿を締める時は[[rb:陰 > ほと]]が濡れてる時。確かめてみようか? って……ちょっ、」

  アザミの手がウマラの頬をつねった。

  「男は余計な事喋らん方がええぞ?」

  不機嫌そうに顔を顰めたアザミを、ウマラが笑う。

  「何が可笑しいんじゃ」

  「あぁ、いや。可笑しいのではなくて、嬉しくて」

  アザミの大きな手を、両手で包む。

  「こどもじゃなくて、男に見えるようになった?」

  「手ぇ切られて泣いとったくせに」

  「泣いてません。それで誤魔化したつもり?」

  「はっ」

  背けた顔が、真っ赤に染まっていた。

  「照れてる顔も可愛らしいよ」

  「うっせぇっちゅうんじゃ、アホ!!」

  照れ隠しにウマラを掻き抱く。胸に押しつぶされたウマラは、必死に背中を叩いた。

  「苦しいっ、苦しいって……」

  「余計な一言が多いんじゃ!!」

  怒鳴るようにアザミは声を上げる。

  「褒めてるのに……」

  解放されたウマラはコホコホと咳払いをし、アザミの胸に寄りかかった。

  「少し…こうしててもいいかな。貴女の胸、心地がいいんだ」

  目をつぶる夫が幼子のように見えた。

  「こどもじゃの…」

  呟くと、ウマラは薄目を開く。そしてじっと見つめた。

  「こどもの私と、男の私。どちらがいい?」

  「あぁ?」

  答えに詰まり、思わず噤む。

  「素直が……いいんでしょう?」

  ウマラは意地悪く、笑みを浮かべた。

  

  [[rb:妻儲 > めまう]]けしてふた月。穏やかに過ぎる日々に、ウマラは幸せを感じていた。

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