[chapter:プロローグ]
ケモノ小学校埼玉校の4年2組に在籍する、テンの[[rb:柴田 貂助 > しばた てんすけ]]くん。
彼はかなりの問題児で、学業よりも周囲を困らせるいたずらに情熱を注いでいる。
何度叱られても全く懲りない、筋金入りのいたずらっ子だ。
これから始まる話は、彼が起こした3つのいたずらについて。
[newpage]
[chapter:第1のいたずら~調理室パニック]
ある日柴田くんに出されたおやつは、3個のキャンディーだった。
「ねえお母さん、これだけなの?ケーキとかシュークリームとかないの?」
「今日はこれだけよ。あまり欲張らないの。」
彼は仕方なくキャンディーをなめながら考えた。
(もっとおいしいおやつが食べたいのに…なんとかして手に入れる方法はないかな?
そうだ、明日は確か…)
翌日。柴田くんは珍しくサッカー部をさぼり、調理室へ向かった。中では調理部がケーキを作っている。
6年生の[[rb:乾 奈々 > いぬい なな]]ちゃん(セントバーナード)と[[rb:近藤 四楠 > こんどう ふぉくす]]くん(相当な肥満体のキタキツネ)、5年生の[[rb:古川 明子 > ふるかわ あきこ]]ちゃん(柴犬)、4年生の[[rb:雪山 亜美 > ゆきやま あみ]]ちゃん(オコジョ)と[[rb:新井 美代子 > あらい みよこ]]ちゃん(太ったアライグマ)、他数名…
調理が進み、オーブンに入れる段階まで到達した。
美井子ちゃんがオーブンをセットした時、顧問の[[rb:森口 美樹 > もりぐち みき]]先生(ハツカネズミ)が言った。
「ちょっと用事があるから、しばらく離れるわね。」
森口先生がドアを開けると同時に、柴田くんはゴキブリに化けた。誰が見ても間違いなくゴキブリだ。
「狐七化け、狸八化け、[[rb:貂 > テン]]九化け」と言われる通り、テンは狐や狸よりも上手に化けられる。
ゴキブリに化けた柴田くんは、先生と入れ替わりで調理室に入った。
明子ちゃんは生クリームを作り、その他の部員はオーブンを覗いている。
「ケーキ楽しみだな…」
「私も楽しみ!」
食いしん坊の近藤くんと美代子ちゃんは、完成が待ちきれない。
その時、亜美ちゃんが叫んだ。
「あっ、ゴキブリよ!」
瞬時に家庭科室は騒然となった。
「ゴキブリがいちゃたまらないわ!」
「早く追い払って!」
近藤くんは肥満体に苦労しつつ、棚からスプレー缶を持ってきた。
「さあ、これでも喰らえ!」
「近藤くん、それは毛固めスプレーよ!」
毛固めスプレーとは、ケモノ界で調理時に使用される道具。これを頭部に噴射すると毛が固まって抜けにくくなるため、料理に毛が混入する事態を防止できる。
「ほら、殺虫剤はこっち!」
「よし、今度こそ…」
狙いを定め、太い指でボタンを押すが、殺虫剤が出ない。
「なんでだろう…あれっ、空っぽだ!」
「新しいの持ってきて!」
近藤くんが準備室に行った隙を見て、柴田くんは部屋から逃げ出した。
亜美ちゃんと美代子ちゃんは部屋中を探し回ったが、ゴキブリはどこにも見えない。
「良かった…」
その時、オーブンが鳴った。ケーキが見事に焼けている。
部員たちは安心してトッピングや紅茶の準備を始めた。戻ってきた近藤くんが満面の笑みを浮かべる。
「ただいま。うーん、おいしそうだ!
それで、あのゴキブリは?」
「安心して。もういなくなったわ。」
[newpage]
森口先生も戻ってきた。後からゴキブリに化けた柴田くんも入ってきたが、誰も気がつかない。
「ただいま。上手にできたわね!」
テーブルの上には1ホールのケーキが乗っていた。クリームに覆われ、様々なフルーツがトッピングされている。
「んー、よだれが出ちゃうよ!」
「近藤くんは本当に食いしん坊ね!」
「学校で一番の食欲かもね。」
「もう少し待ってね。写真を撮るから。」
森口先生はカメラを構え、シャッターを切った。
「なかなかおいしそうに撮れたわ!」
その時、やかんが鳴った。
「あら、お湯が沸いたわ。」
奈々ちゃんは棚からカップを取り出し始めた。森口先生と他の部員はケーキを眺めている。
「チャンスだ!」
ゴキブリの柴田くんはテーブルの上に這い登り、カップに化けた。これならテーブルの上にいても怪しまれないだろう。
ガタン!
音を聞いた奈々ちゃんが振り向くと、テーブルの上にカップが1つ置かれていた。
(先生が出したのかしら?)
柴田くんはほくそ笑んだ。
(よし、気づかれてないな!)
しかし、彼は大切な事を忘れていた。
奈々ちゃんは全員分のカップを用意すると、ティーバッグを入れ始めた。
(しまった!)
大変な事に気がついたが、時すでに遅し。奈々ちゃんは柴田くんの化けたカップに、沸かしたてのお湯を注いだ。
「アチチチチーッ!」
熱さに驚いた柴田くんは元の姿に戻り、パニックを起こして暴れた。カップを床に叩き落とし、椅子を食器棚に投げつけ、包丁まで投げた。
調理室は壊滅状態になり、棚の食器はすべて割れ、ケーキも床に落ちて潰れてしまった。
包丁は近藤くんのお腹に直撃したが、分厚い脂肪で跳ね返ったため彼は無傷だった。
森口先生と部員たちは唖然としていたが、しばらくして近藤くんが口を開いた。
「なんて事を…今朝から楽しみにしてたのに、なんて事をしてくれたんだ!」
頭から湯気が出そうなほどに怒っている。やはり食べ物の恨みは恐ろしい。
「あ、いや…むしろケーキが食べられないからダイエットになるよ…アハハ…」
「とんでもない!ぼくは世界一の肥満狐になりたいんだ!もう許さないぞ!
さあ、ケーキの代わりにお前を食ってやる!」
「ギャーッ!それだけはやめてー!」
結局、柴田くんはケーキを食べられなかった。
それどころか大やけどを負い、調理部の全員と両親にひどく叱られ、母親にはお尻を100回も叩かれた。
「ごめんなさい!もういたずらなんて絶対しないから許してください!」
「あんたはそう言ってもすぐにいたずら始めるわね!」
調理室はしばらく使用不能となり、調理部は活動休止を余儀なくされた。
被害額も高くつき、しばらくお小遣いがもらえなくなった。
「まったく、ひどい話だ!食べ物を粗末にするなんて絶対に許せないよ!」
「そうだ、ぼくだって許せない!」
4年1組で、シマリスの[[rb:栗田 永雄 > くりた ながお]]くんとキタキツネの[[rb:稲荷山 紺助 > いなりやま こんすけ]]くんが話している。この出来事は全校に知れ渡っていた。
噂話を休み時間に聞きながら、柴田くんは新しいいたずらを考えていた。
[newpage]
[chapter:第2のいたずら~モンブランを狙え!]
それから2週間ほど経った、ある木曜日。
柴田くんは休み時間に、[[rb:雪見 > ゆきみ]]カトリーヌ[[rb:理沙 > りさ]]ちゃん(ホッキョクギツネ。日本とフランスのハーフ)と亜美ちゃんの会話を聞いた。
「ねえ理沙ちゃん、今日のおやつは何?私はビスケットかな。」
「今日はフランス産の高級マロンを使ったモンブランですの。1ヶ月前から予約していましたのよ。」
「わあ、いいなあ…私も食べたい!」
それを聞いて柴田くんは考えた。
(そのモンブラン、いただいてやる!)
放課後。柴田くんは校門を出ると鳩に化け、理沙ちゃんを尾行した。
雪見家は3階建ての大豪邸で、入り口の門には厳重に鍵がかかっている。
彼女は鍵で門を開け、中に入るとしっかり鍵をかけた。しかし今の柴田くんは空を飛べるため、関係ない。
(空いている窓はないかな…)
窓も鍵がかかっているが、3階の窓が1つ開いていた。
その部屋では白猫のメイドが掃除中。換気のために開けたようだ。
掃除が終わる直前、柴田くんは窓から室内へ。その直後に窓が閉められた。
メイドが部屋を出ると、彼は三毛猫のメイドに化けた。
(三毛猫ってほとんどがメスなんだよね。メイドに化けておやつはいただきだ!)
廊下を歩いていると、反対側から白うさぎのメイドが歩いてきた。
「お、お疲れ様です。」
化けても声までは変えられない。柴田くんは女性のような作り声で挨拶した。
すると、相手は答えた。
「ちょっと、あなたは誰?」
「嫌ですね、何年も一緒に働いたじゃないですか。」
「こんなメイド知らないわ…大変です!怪しいメイドがいます!」
相手は急いで1階へ。
(まずい!どうしよう…)
メイドは執事のグリムズ・スカンダー(イギリス出身のスカンク)を呼んできた。
「3階にいます。調べてきてくれませんか?」
「わかりました。」
スカンダーが階段を上がってくる。柴田くんは次の行動を思いつき、すぐ横のドアに隠れた。
(しめた!ここは物置だ!)
1階ではメイドたちが話し合っている。
「あんな事態は初めてよね…」
「正体突き止められるかしら?」
すると3階からスカンダーの悲鳴、ドアの閉まる音、何かを引きずる音が聞こえた。
「何かしら?」
急いで3階に上がると、スカンダーが立っていた。
「怪しいメイドはいましたか?」
「いませんでした。異常はありません。」
「そうでしたか。良かったです。」
(フフフ、気づかれなかったぞ!)
このスカンダーは、柴田くんの化けた姿だ。本物は物置に閉じ込め、ドアの前には椅子を置いている。
(さて、モンブランはまだかな?)
辺りを見回すと、シェフのラトン・ラブーシュ(フランス出身の太ったアライグマ)がモンブランと紅茶の乗ったトレーを持って現れた。
「そのモンブランはどうするんですか?」
「お嬢様の部屋に運びます。」
「たまには私が運びましょう。」
「珍しいですね。まあいいでしょう。」
柴田くんはトレーを受け取り、階段を上がった。
(よしよし、ばれてない!)
[newpage]
しかし、この家はかなり広い。柴田くんはいちいちドアを開けて確認する羽目になった。
(ここも違うのか…)
10分後、ようやく理沙ちゃんの部屋が見つかった。
「おやつを持ってきました。」
「まあ、スカンダーが運んでくるなんて珍しいですわね。それに私の部屋にはノックをしてから入るはずなのに…」
「た、たまには忘れることだってありますよ。それにたまには気分転換が必要です。」
(よし、なんとかばれずにすんだ!)
「でもありがとうございます。とても楽しみにしていましたの。」
理沙ちゃんがフォークを持つと、柴田くんは言った。
「そのモンブラン、私が味見をしましょう。」
「そんなの聞いてませんわ!」
「良いではありませんか。」
柴田くんは理沙ちゃんからフォークを奪うと、モンブランをほとんど食べてしまった。
「ああ、おいしかった!ではお召し上がりください。」
皿に残った物は、細かいかけらのみ。
「スカンダーがこんな事をするなんて…信じられませんわ!
それにこの紅茶、すっかり冷めてますわね。ここに着くまで迷ったようですわ。
でもスカンダーはこの家の内部をすべて知っているから、迷うはずがない。つまり、あなたは偽者ですわね!」
(まずい、ばれた!)
「い、いえ、私は本物です!」
すると背後から声がした。
「ではこれでもあなたは本物ですか?」
振り向いた柴田くんは、驚きの声を上げた。
「ど、どうしてそこに!?」
そこには白猫のメイドと共に、本物のスカンダーが立っていた。メイドが説明する。
「物置の前に椅子が置かれていて、中からうめき声が聞こえたのです。開けてみたらスカンダー様が延長コードで縛られ、ハンカチで猿ぐつわを噛まされていました。」
理沙ちゃんは質問した。
「スカンダー、あなたの生まれた国は?」
「や、やだなあ、忘れたんですか?
私はイギリスの首都のロンドン、いやローマだったかな…とにかくそこで生まれ、家の前にはエッフェル塔と工事がなかなか終わらない教会があって…エッフェル塔って傾いてるやつだっけ?」
「言ってる事がおかしいですわ!やっぱりあなたは偽者ですわね!」
メイドたちも話し始めた。
「声が少し違うと思ってたけど、偽者だったのね…」
「誰か正体を突き止めてくれませんか?」
「わかりましたわ。スカンダー、お願い!」
スカンダーは逃げようとした柴田くんを取り押さえた。理沙ちゃんがしっぽを勢いよく引くと、彼は元の姿に戻った。
「し、柴田くん!?」
「まずい、ばれた!
…み、皆さん、ご迷惑をお掛けしました。それではさようなら…」
柴田くんは部屋を出ようとしたが、スカンダーに捕まった。
「逃がしませんよ!あなたにはお仕置きが必要ですね。」
「い、いったい何を…」
「スカンクの武器を使います。これだけは二度と使うまいと思っていたのですが、こうなってはもう仕方ないですね…」
スカンダーはベルトを外し、ズボンを脱ごうとした。
「スカンダー、それだけは絶対にやめて!」
「そうですよ!そんな事をされたらこの部屋が使えなくなります!」
理沙ちゃんとメイドの説得で、彼は思いとどまった。
「わかりました。ではお宅に電話連絡しますね。」
その後、柴田くんはまたしても母親にお尻を100回叩かれた。
「ごめんなさーい!でも今度は食べ物を粗末にしなかったから許して!」
「何回謝っても懲りないでいたずらするわね!だからみんなに嫌われるのよ!それにそういう問題じゃないでしょう!」
「お願いだから許してください!ぼくはいい子になります!」
「だめよ!理沙ちゃんに迷惑かけるなんて悪い子ね!」
[newpage]
[chapter:第3のいたずら~おならで友情破壊]
それから、また2週間と数日が経った。
月曜日の休み時間、柴田くんは1年生の[[rb:菅山 勘九郎 > すがやま かんくろう]]くん(スカンク)、3年生の[[rb:立売堀 洋次郎 > いたちぼり ようじろう]]くん(イタチ)と共にいたずらを考えていた。
「いいか?今回は栗田くんと稲荷山くんの仲を裂いてやるつもりだ。」
「それすごく面白そう!」
「いいねいいね!」
「じゃあ、まずは…」
[newpage]
火曜日の昼休み。
栗田くんが廊下を歩いていると、美代子ちゃんから声をかけられた。
「ねえ栗田くん、しりとりしない?」
「わかった。じゃあ美代子ちゃんからどうぞ!」
しりとりがしばらく進んだ時、栗田くんの鼻に背後から何かが当てられた。その瞬間、凄まじい悪臭が彼を襲った。
「ぐえっ!ううっ…」
彼は苦しみ、気絶した。
「よし、第1段階は成功だ!」
「まさかこれほどすぐに気絶するなんて!」
これもすべていたずら計画の一環。柴田くんが美代子ちゃんに化けて栗田くんの気を引き、その隙に菅山くんが自分のおならを染み込ませたハンカチを嗅がせて気絶させた。
スカンクやイタチはおならのイメージがある種族だが、実際のそれは悪臭を放つ分泌液。しかしケモノ界では本当におならをする。
分泌液と同レベルの悪臭だが、強力な消臭スプレーが開発されているため、一瞬でにおいを消せる。
2匹は栗田くんを掃除用ロッカーに閉じ込めると、廊下や彼の体にスプレーを噴射した。
「これで証拠隠滅だ!」
数分後、図書室にて。
稲荷山くんが読書を楽しんでいると、栗田くんが現れた。
「あ、栗田くん…え、ちょっと、何するの!」
栗田くんは稲荷山くんを捕まえ、服を脱がせ始めた。
「やめろ!何をするんだ!」
しかし彼の手は止まらない。稲荷山くんは大勢の見ている前でボクサーパンツ1枚にされてしまった。
「おい、服を返せ!」
「やなこった!」
栗田くんは服を持って逃げ、男子トイレの便器に投げ込んだ。
「さあ、返してやる!…しかしお腹が重くて歩きにくいな。」
「親友だと思っていたのに、なんてことをするんだ!」
栗田くんは立ち去った。稲荷山くんはびしょ濡れの服を着ると、怒りを覚えながら教室に戻った。
その直後、栗田くんはトイレに戻り個室に入った。
(よし、ばれずにすんだ…)
次の瞬間、その姿が柴田くんに変わった。これも彼の化けた姿だ。
5時間目、栗田くんは教室に現れなかった。
「どうしたのかしら…」
「大丈夫かな?」
授業の後も4年1組の児童は彼の行方を気にしたが、稲荷山くんは吐き捨てた。
「あ、あんな奴、いなくなってせいせいしたよ!」
白猫の[[rb:金子 真里 > かねこ まり]]ちゃんが尋ねる。
「どうしたの?大の仲良しなのに…」
「信じがたいと思うけど、今日の昼休みに…」
「まさか、そんな!栗田くんがそんな事をするなんておかしいわ!」
「やっぱりそうだよね?それに今考えると、『お腹が重くて歩きにくい』とも言っていたんだ。栗田くんは太った体に慣れているはずなのに。」
「おかしいわね。それにしても、使用後のトイレじゃなくてまだ良かったわね…」
17時、栗田くんが意識を取り戻した。
(あれ、ぼくはどうしてここにいるんだ?)
急いで帰宅すると、母親の[[rb:幸江 > ゆきえ]が心配していた。
「永雄、今日は遅かったわね。どうしたの?」
「昼休みに美代子ちゃんとしりとりをしていたら、突然ものすごい悪臭がした。それで気絶して、気がついたら掃除用ロッカーにいたんだ。
そのせいで今日は5時間目や相撲部に参加できなかったよ…」
「不思議な話ね…とにかく無事で良かったわ。」
[newpage]
水曜日。栗田くんが教室に入ると、稲荷山くんが質問した。
「ねえ、昨日の昼休みにぼくの服をトイレに捨てたりしなかった?」
「そんな事するもんか!ぼくは昨日の昼休みから夕方まで、ずっと気絶してたよ!」
「疑ってごめん。やっぱりおかしいと思ったよ。それにしても謎だね。」
「きっと誰かがぼくに化けていたずらしたんだよ。」
「ぼくもそう思うよ。」
その日の昼休みには稲荷山くんが同じように気絶させられ、昨日とは別の掃除用ロッカーに閉じ込められた。
今度は立売堀くんが稲荷山くんに化け、トイレに現れた。そこでは用を済ませた栗田くんが手を洗っていた。
「あ、稲荷山くん…」
「喰らえ、最後っ屁だ!」
立売堀くんはおならをした。至近距離ではなかったため栗田くんは気絶こそしなかったものの、やはり苦しんだ。
「ううっ…ひどい…」
「しっかり残り香を楽しむんだね!それじゃ!」
栗田くんはすぐ、顔にスプレーをかけた。
(稲荷山くん、ひどいよ!…いや、もしかしたら…)
5時間目、稲荷山くんは現れなかった。
「今日は稲荷山くんがいないよ。」
「これは絶対に何かある!」
心配する児童の中で、栗田くんは感づいていた。
授業終了後…
「真里ちゃん、ぼくは稲荷山くんがどこにいるかわかるよ!」
「栗田くん、何か心当たりがあるの?」
「今日の昼休みにね…」
栗田くんは事情を話した。
「まさか、そんな!狐のおならはそんなに臭くないわ!」
「それにおならを最後っ屁と言っていた。するとあの稲荷山くんは間違いなくイタチの化けた姿だ。
絶対に昨日の事件と関係してるはずだ!稲荷山くんは掃除ロッカーにいるに決まってる!」
2匹は廊下に出た。
「ぼくはこのロッカーに閉じ込められていたんだ。稲荷山くんもここにいるはずだ!」
扉を開けたが、彼の姿は見えない。
「ここじゃないのか…ぼくは相撲部に行くから、真里ちゃんは他のロッカーを探して!」
「わかったわ、栗田くん!」
数分後、稲荷山くんは発見されて保健室に連れ込まれた。しかし栗田くんと同様、意識は夕方まで戻らなかった。
[newpage]
木曜日。登校中の栗田くんと稲荷山くんは、事件の話で盛り上がっていた。
「稲荷山くん、誰の仕業だと思う?」
「きっと卯井是瑠ちゃんだよ!」
「そうかもしれない。すぐに聞いてみよう。」
2匹は教室に入ると、すぐに[[rb:鼬川 卯井是瑠 > いたちがわ ういぜる]]ちゃん(肥満体のイタチ)の席へ。
「ねえ、昨日の昼休みはどこにいた?」
「教室で昼寝してたわよ。それがどうかしたの?」
「実はおとといと昨日に…」
事情を話すと、彼女は怒った。
「あたいがそんな事をすると思う?疑う奴にはこうよ!」
2匹は最後っ屁をかまされた。
「うえっ、強烈…」
「鼻がもげそう…」
「あたいを怒らせると怖いわよ!」
「だからって最後っ屁を喰らわせなくても…」
「他の子に聞こう。」
2匹は数名のクラスメイトに尋ねた。
「昨日の昼休み、卯井是瑠ちゃんはここで寝てた?」
教室で昼休みを過ごした児童は「寝ていた」と答えたため、彼女は無実と判明した。
「すると正体は誰だろう?昼休みにまたあの廊下に行こうか?」
「でももう気絶するのは嫌だよ…」
「じゃあ助けを呼ぶか。悪臭に強いケモノがいいね。」
2時間目が終わると、2匹は5年1組へ。
「花子ちゃん、菅原くん、ちょっと相談があるんだ。」
「どうしたの?」
2匹はスカンクの[[rb:須賀 花子 > すが はなこ]]ちゃん(勝ち気な性格で、太っている)と[[rb:菅原 > すがわら]] もふ[[rb:太 > た]]くん(細身の優等生)に事情を話した。
「…こういうわけなんだ。スカンクは悪臭に強いから、調査に協力してくれないかな?」
「わかった。協力するよ。
しかしおならをそんな目的で使うなんてひどいな。身を守るための武器をいたずらに使うなんて…」
「誰のせいかわかったら、あたいのおならでこらしめるわ!」
「そう、それが正しい使い方だ。」
[newpage]
昼休み。栗田くんと稲荷山くんは2匹のスカンクを廊下に案内した。
「この角を曲がった先だ。」
「わかった。行ってみるよ。」
花子ちゃんと菅原くんは手をつなぎ、廊下を進む。
物陰に隠れていた柴田くんたち3匹は、ズボンに手をかけながら話した。
「今日はスカンクか。あいつらも気絶させろ!」
「今日はぼくもおならするぞ!大した威力はないだろうけど。」
3匹はズボンとパンツを脱ぎ、廊下におならを放った。これまでの2日間と異なり、直接攻撃を選んだようだ。
イタチ、スカンク、テンのおならを一度に嗅いだ2匹は少しひるんだが、落ち着いて物陰に近づいた。
「お前らの仕業か!」
「うわ、見つかった!」
「あーあ、ついにこうなったか…」
「恥ずかしいからお尻見ないでよ…」
その間に栗田くんと稲荷山くんは4年1組に戻り、いびきをかきながら眠っている卯井是瑠ちゃんを起こした。
「なあに?また最後っ屁嗅ぎたいの?」
「違うよ!昨日とおとといのいたずらが誰の仕業か分かったんだ!一緒に来てくれないかな?」
「あらそう。でも嘘だったら承知しないわよ。」
「本当だからお仕置きして欲しいんだ!」
柴田くんたち3匹は、花子ちゃんと菅原くんに叱られていた。
「あんたたち、いたずらが過ぎるわよ!」
「最後っ屁はいたずらに使う物じゃない!身を守るためだ!」
そこに卯井是瑠ちゃんが現れた。
「あいつらの仕業なの?」
「そうなんだ。菅山くん、詳しく聞かせて!」
「本物を菅山くんと立売堀くんのおならで気絶させてから、柴田くんが栗田くんに、立売堀くんが稲荷山くんに化けていたずらをしていたらしいんだ。」
「本当にひどい!卯井是瑠ちゃん、どう思う?」
「イタチとして許せないわ。こいつらに正しい最後っ屁の使い方を教えましょう!」
「そうね。ちょっと来なさい!」
「はい、わかりました…」
3匹は男子トイレに連れ込まれた。
「あたいは女だけど、この際仕方がないわね。」
「あたいもね。」
「さあ、覚悟しなさい。」
個室に入れられた3匹の前で、花子ちゃん、菅原くん、卯井是瑠ちゃんはズボン及びスカートとパンツを下ろした。
「お、お願い、やめて!」
「いくら悪臭に耐えられると言っても、そんなに強烈なのは無理だよ!」
「問答無用よ。諦めなさい。」
次の瞬間、個室に強烈な悪臭が立ち込めた。
「ギャーッ!」
「ああーっ!」
「やめてー!」
内臓をかき回されているような悲鳴が響き渡る。
「反省するまでやめないわよ。」
「わかりました!もう絶対にいたずらしません!」
「本当なの?」
「本当です!もう良い子になります!」
[newpage]
[chapter:エピローグ]
「反省したようね。それじゃ、この辺でやめましょう。」
個室から出てきた柴田くんたちは、疲労困憊している。よほど攻撃が効いたようだ。
「今度こそ本当に反省しただろうね。」
「さあ、消臭スプレーでにおいもいたずら心も落としちゃうわよ!」
花子ちゃんがスプレーを30秒近く噴射して、柴田くんたちや個室に染みついた悪臭を落とした。
栗田くんと稲荷山くんも、鼻から手を離した。
しかし、次の瞬間。
「よっしゃ、大成功!」
「みんな忘れちゃったのかな~?イタチ科やスカンク科は、悪臭に耐えられるんだよ!」
「だからさっきまでの苦しみはみんな演技さ!においは落とせてもいたずら心は落ちないよ!」
柴田くんたちは唖然とする一同を煽りながら、トイレを出ていった。
「栗田に稲荷山、あんたのせいであたいの昼寝が邪魔されたんだからね!
さあ、これでも喰らいなさい!」
激怒した卯井是瑠ちゃんは最後っ屁を放ち、2匹はまたしても悪臭に苦しんだ。
「ううっ、なんでまた…」
「ぼくたちは悪くないのに…」
そのやり取りを背後で聞きながら、ほくそ笑む柴田くん。
彼はもう次のいたずらを考えているだろう。筋金入りのいたずらっ子は、何度叱られても懲りない物だ。
[chapter:おしまい]