―――気づいた時には、体がくるりと反転させられていた。
『っわ、ちょっ――』
次の瞬間には。
頬が、胸元が冷たいコンクリ壁にグッと押し付けられて。
驚いて振り返ろうとしたけど――すぐさま。
俺の背後で気配が沈む。
重い肉体が、俺の真後ろでしゃがみ込んだんだ。
コツ、という音ひとつすら立てず。
2メートル半の巨体が静かに膝を折って――……
その重たい存在感をなるべく小さく丸め込む。
『っ、な、なに……っ―――』
恐る恐る視線を動かすと。
中年雄熊の影が俺の背後でずっしりと根を張るように構えていた。
しかもあの大きすぎる両手が今、
俺のズボンのベルトに指をかけ―――ぐっと、引っかかる布の音。
言葉も、視線も、反応もないまま。
ヤツの手は俺のズボンを、パンツごと、
ズるんっと一気に降ろしてしまう。
『っ、ひぁ……―――』
肌に夜気が当たって、その一瞬で"曝け出された"のがわかった。
そして、なにより。
羞恥よりも早く、自分の太腿の内側に熱っぽい空気が当たって。
ああ、嫌でも分かってしまう。
見られてる。
嗅がれてる。
中を"確認される"体勢にされてる。
壁に凭れ、尻を突き出して。
まだ触れられてないのに、
吐息ひとつ聞こえてないのに、
背後でしゃがみ込んだだけのその獣に、
雄膣の奥が、もうずっと、ひくついてる。
反射的に締まって、でも同時に、濡れ始めてて。
それが、夜風と一緒に――
自分にも香ってくるくらいだった。
ああ、やばい。
これ本当に"確認"だけで済むのかなって――頭では疑ってるのに、
身体は、もう期待してる。
「……なんだ。もう濡れてるんだな」
ぼそっと漏れるような呆れ混じりの低い声。
そのトーンがあまりに冷静で、
逆に胸が、どくりと脈打った。
『っ……ちが、いや、そういう……んじゃ……っ』
慌てて口が動いた。
いや、別に否定する必要なんてないんだけど。
むしろ、いつもみたいに。
適当にヤってサヨナラ、でもいいのに。
なぜかコイツの前では緊張してる。
まあ、そんな俺の声すらまるで聞き流してるみたいで。
ヤツは短くて重たい、あのマズル。
それをぐっと俺の尻の谷間に近づけてきて。
そのゆっくりとした動きに期待して―――……
『っ、ま、待―――』
すん、すん……
『っ、ひゃぃ♡』
言いかけた言葉も、空気に消える。
鼻先が、触れるか触れないかの距離。
でもそこから。
明らかに"吸っている"音が聞こえてくる♡
ひとつ、吸って。
大きく吸い込んだかと思えば、ゆっくりと吐かれて。
そのたびに。
俺の腰のひゅんと捩じれ。
ナカが、奥が。
びくんっと大きな反応をみせてしまう。
そこに息を吹きかけられてるわけじゃない。
舐められても、まだ触られてもいない。
ただ"ニオイを嗅がれて"いるだけ。それだけなのに。
『っ……くぅ、ぅ……っ』
力が入らなくなって、
太腿がじわじわ震え始める。
見られてる。
嗅がれてる。
雄に"発情具合を確認"されてるだけのメスのように。
俺のニオイを提供している♡
しかも、それが。
雄熊の形をした巨体で。
どこまでも無表情で。
まるで"この作業に慣れてる"かのように淡々とされるのがやばい♡
羞恥? 恐怖? 興奮?
どれでもあるし、どれでもない。
でも確かに――
下腹が、きゅううって疼いて。
さっきより、もっと。
奥がぬるぬると熱を持ってきてるのが、自分でもわかる。
まるで"早く舐めて♡突っ込んで♡"って、
そう俺の体がコイツに懇願してるみたいでムカツク。
やばい。ほんとに、やばい。
なのにまだ"深呼吸"しかされてない。
この先、どこまでされるんだろう。
どこまで"確認"されてしまうんだろう。
どこまでそれを受け入れてしまうんだろう―――
『ぁ、なぁ、おっ、ぉい……―――♡』
やばい。ほんとにやばい。
死にそう――
恥ずかしくて、気持ちよすぎて、もう壊れそう。
自分の足が震えてるのが分かる。
膝が、言うことを聞かなくなってきてる。
それでも、まだ彼は何もしてない。
ただ後ろでしゃがんだまま。
俺の尻を見つめ、鼻を動かすだけ。
真顔で、無表情で、
じとっとした目で俺の尻穴を見つめてる。
ただそれだけのこと。
もう耐えられない――そう思った、その時。
ぬっ、と。
ヤツの太くて逞しい右腕が動く。
肘のあたりまで捲られた袖から見せる、無骨で、毛に覆われた腕。
その手の指のうちの2本、人差し指と中指。
その節ばった武骨な指が俺の尻穴のすぐそばに触れてきて――……♡
ぐにゅっ
『っひっ……!』
びくっと肩が跳ねる。
なのにヤツは表情をまったく変えず。
そのままぐいっと。
―――まるでVサインでもするように。
俺の尻穴を中心に、その。
2本の指をぐっと左右に開いてみせる。
そうすれば皮膚が押し退けられ。
それに合わせて、自然と、穴が―――……
『ぁあっ……っ♡』
くぱぁって、開いてしまう♡
「………ほぅ」
夜の空気が、直接、内側に触れる。
――冷たいはずなのに。
そこが熱を持ってるせいで背筋がゾワリと震える♡
中が、見られてる。
完全に、開いて、晒されて、
もう隠せない。
さっきまで"確認"って言葉にしがみついてたけど。
これってもう、完全に"交尾の準備"じゃん♡
それなのにコイツはまだ無表情のままでさ。
俺の、無様にヒクつく穴の奥を見ながら、ただぼそっと。
「……ふむ。狭すぎることはないな。奥も柔らかそうだ。悪くない」
―――はぁ?うそ♡
評価されてる。俺のココ♡
意味わかんね。
なのにそれが妙に気持ち良すぎて、涙が滲んでくる。
ほんの少し、ちょっと指で開かれただけなのに。
――それだけなのに。
俺の中、きゅぅっと疼いて。
"もっと見て"って勝手に奥が疼いて。
とうとう――…
愛液がぬるっと零れ出ていくのが分かってしまう♡
……最低だ。
見られただけ、開かれただけ。
それで反応してるなんて。
今までにこんなの、あり得ないはずなのに。
「ふん。これが男のオメガの……雄膣か。随分と濡れやすいんだな」
ぼそりと低く落ちてきた声に、肩が震えた。
その言葉――
"オメガだから"なのか?
"雄膣だから"なのか?
それとも"俺だから"なのか。
いろんな意味が含まれてるようで、
でも、何ひとつ答えをくれないその声に、
どう返していいかわからなくなる。
『っ、ち、ちが……俺は、そういうんじゃ……―――♡』
そう言おうとした唇が震える。
だって。
言い訳してるそばから内腿を愛液が這ってるのがわかるんだ。
俺の中が、もうこの"確認作業"だけで、
発情寸前みたいに出来上がってるの――…
自分が一番、よく知ってる。
けれどそんな俺の戸惑いなんて。
まるでどうでもいいみたいに、
ヤツは、ふっと鼻息をひとつ漏らして―――……
「ここまで反応がいいと……孕ませやすいか」
それが本気か冗談か、あるいはただの独り言なのか。
でもその言い方は、
俺のことを"肉体として"見てるのがはっきり伝わる声だった。
自分の意思じゃなく。
俺の性格でも、癖でもなく。
ただ、単なる"雄膣というもの"の反応。
孕むための器としての性質。
単純に"そういったモノ"として解釈したかのような。
そんなさらっと品物でも見るように評価した口ぶり。
『っ……や、め……言わないで、そんな風に……♡』
声が震える。
でも、コイツはその声にも答えない。
もはや、いや最初から。
―――言い訳すらこの人には"必要ない情報"なんだ。
―――――
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