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HERO CITY【FANBOX試し読み】

  [chapter:サンプル]

  それは遥か遠い未来の話。今から100年以上先の世界はすっかり様変わりしていた。西暦22XX年の地球では、かつては人間の理想の産物であった“ヒーロー”という存在が実現し様々な場所で活躍していた。

  超常的な能力を持ち正義のために人々を悪の魔の手から守る。そんな架空の中の存在だった異能の者たちがこの世界では間違いなく存在し、その力を平和のために振るっていた。

  そんなヒーローは、人類の科学の進歩で誕生したわけではなかった。神の所業としかいえないようなそんな超常的な現象により、普通の人間だった者たちが世界を守る英雄として覚醒していったのだった。中では見た目や性格がまるっきり変わってしまった者たちもいたが、本人達は強大な力と正義の心を持ったことに感謝し、困惑することなど誰一人としていなかった。

  英雄とならなかった人々も世界を守る存在、そして子供の頃の憧れだった存在を目の当たりにし歓喜のままそれを受け入れていった。そしていつしか、普通だった世界は英雄が闊歩する世界へと変わっていったのだった。しかし、その世界に存在したのは正義の味方だけではなかった……

  「お父さん、僕今日お子様ランチがいい!」

  「じゃあ俺はハンバーグにしようかな」

  「あっ、お父さん! 僕もハンバーグ食べたい! 少しお父さんのちょうだい!」

  「お子様ランチについてるだろ」

  それは何気ない親と子のやりとりだった。英雄がいる世界だが、当然普通の人間もいる。会社員の埴岡聖洋。そして息子の龍。この親子はその中の二人でしかなかった。二人の母、そして妻にあたる女性が同窓会の旅行に行っておりたまには父子水入らずで遊びに行こうということになり、今まさにその最中なのだった。

  今まさに幸せの絶頂にいる親子二人。そんな二人に悪の魔の手が忍び寄ろうとしていた――

  ドッカーン!

  近辺でそんな大きな爆発音がする。耳をつんざくその音と爆発の衝撃による風圧に二人は思わず体を屈める。

  「お父さん!」

  「くそっ! 何でこんな時に!」

  爆発とともに街中にサイレンが鳴り響いた。政府より世界中に取り付けられた警報である。とある一定の状況が起こることによりこのサイレンは鳴り響く。その状況とは、人類を脅かす存在が現れた時であった。

  「クハハハ! ここら一帯は我らビースト帝国が支配する! 殺されたくなかったらここを退くことだなぁ!」

  街中にやかましく声が響く。上を見上げるとビルの上に漆黒の服とマントを纏った男がいた。その姿はチーターと人間を合わせたような姿をしており、その姿はまさしく獣人と呼ぶに相応しき姿であった。

  「我は帝国幹部の一人、マッハ豹道! 帝王の命によりここら一帯を貰い受けにここまできた次第である!」

  彼は“怪人”という存在であった。ヒーローが架空の存在だった頃、 ヒーローの敵として位置付けられていた異形の者。ヒーローが誕生しはじめた数年後に怪人もまたこの世界に現れはじめたのだ。

  とある者の証言によると、家族が急に苦しみを訴えはじめ異形の姿に変わってしまい、訳の分からないことを口走りながら暴れ始めたという。つまりは怪人もヒーローと同じで元はただの人間だったということなのだろう。

  神はどうしてヒーローだけではなく怪人まで生み出す気になったのだろうか。当時メディアではそれらの現象を『神のヒーローごっこ』と称していた。しかしそれらを主張していたメディアやマスコミは――ここから先は説明しない方が良いのかもしれない。

  「ふざけるな! 怪人なんかの命令なんか聞けるか! お前らなんかすぐヒーローがやっつけてくれるんだからな!」

  群衆の中にいた一人の学生が豹道に向かって叫んだ。豹道はそれを聞いてくつくつと笑う。まるでヒーローなど歯牙にもかけぬといった様子だ。

  「クハハ、威勢がいいな。しかしこれを浴びてもそう言っていられるかな?」

  豹道はそう言うと銃を取り出した。それは、SF映画に登場するような近未来的な光線銃だった。豹道は銃口を先程の青年に向けると、ためらわず引き金を引いた。

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