Ad
[chapter:サンプル]
「ふぅ、このゲームも飽きたな……」
パソコンの電源があかあかと点いている真っ暗な部屋で、フリーターの倉田真希人(くらた まきと)は今日も趣味のゲームをしていた。
大学を卒業して以降入ったアルバイトに惰性で働いている彼はPCゲームが毎日の楽しみだったが、しかしそのゲームも軒並みクリアしてしまいマンネリズムに陥っていた。
「なんかいいゲームねぇかな」
ブツブツ呟きながらマウスとキーボードを操作して面白そうなゲームを探す。商業からフリーのものまでネットの海をひたすら泳ぎながら掘り出し物を求め続ける。そんな真希人が見つけたのは新作のゲームらしき広告だった。
カラフルな背景に大きなテントが目立つ画面。どちらかと言えば子供向けのように見えるポップな絵のゲームのようだ。
「んー……これどうなんだ? バナーだけじゃよく分からん……」
そう言いながらも一応と真希人はゲームの広告をクリックしてみる。すると画面から激しい光が輝き真希人はその眩しさに目を瞑った。
「うわっ……! なんだよさっきの演出……」
真希人は眩んだ目を擦りながら画面を再び覗き込む。そこには極彩色の背景の明るい風景が描かれていた。しましまのテントや遊園地のマスコットのようなデフォルメされた動物の姿から、真希人はこのゲームがサーカスに関連した内容だと推測する。
「えーと、『Rainbow Circus』……やっぱりな」
ゲームのタイトルを確認して真希人はそれがサーカスを舞台にしたゲームと確信しながらゲームのストーリーやゲーム内容が書かれたテキストに目を通す。
「『Rainbow Circusは新しく結成されたサーカス団を発展させていくリアルアドベンチャーゲームです。プレイヤーは獣人サーカスの一員となり小さなサーカスを大きく有名にしてくのが目的です』……」
その下には『ゲームスタート』と書かれた虹色のボタンが。真希人はとりあえずやってみようとそのボタンを押そうとするが、その上に赤い字で警告文が書かれている事に気が付いた。
「『なお当ゲームをプレイして起こった事に関しては製作者は一切の責任を持ちません。プレイは自己責任でお願いいたします』……何だこりゃ」
わざわざこのような文章を添えておく意味が分からない。ウィルスにでも感染するのか? それならば態々そんなゲームを発表するわけがないし、感染させるのが目的ならば警告文など掲載する必要はない。だからこそ真希人はその文章自体が異様に思えた。
「んー……あんまり面白くなさそうだし、別に、やらなくて、も……」
考えた結果真希人はゲーム画面を閉めようとマウスに手を添える。しかしその瞬間、真希人の目は画面に注視される。絵の中の綺麗な青空が、突如虹色に輝き出す。いつしかそれは虹色の渦となり真希人の視界を支配する。
ぐるぐる、ぐるぐると色々な色に変化し混ざり回る。真希人の思考は回転する色彩と共にぐるぐるに混ざり合い解けていった。
「あっ、ああ……」
真希人は光に導かれるまま『ゲームスタート』のボタンを押す。
すると、パソコンのスクリーンから虹色の光が溢れ出して真希人を包み込んだ!
「うわあああああぁぁぁぁ……」
全身を虹色に染め上げた真希人の肉体は、そのままパソコンの中に吸い込まれてしまった。部屋に誰も居なくなった真希人の部屋のパソコンの画面には、『ゲームスタート! サーカスでの新たな人生をお楽しみください!』とポップな文字で書かれていた。
◆
「んっ……」
柔らかな風の感触で真希人は目を覚ます。どうやら地面に寝転がっていたようで、それに気が付いた真希人は慌ててその身を起こし周りを確認する。
「ここは……」
その風景は、あの画面と酷似していた。綺麗な青空、ピンク色の雲、そして巨大なサーカスのテント。まるで真希人がゲームの中の世界に迷い込んでしまったかのように、そこはあのゲームそっくりだった。
「これは、夢か? それとも……」
引き返そうと後ろを向くも、後ろは何もない地平線がただ広がっているだけ。この場にまるで真希人とテントしかないかのよう。
そんな風景を目にした真希人は、この世界がまだ生まれたばかりのもののように思えた。それならば、行く場所はあそこしかない。これ見よがしに聳えるテントだ。
「やっぱり、誰もいない……何もない」
真希人は手がかりを探してテントの中に入るも、やはりそこにはほとんど何もなかった。ただ布に囲まれた広い空間が広がっているだけ。客席やお立ち台などはあったもののそれらしい道具すら見当たらないのだ。
いや、お立ち台の上に何かが一つだけあった。ぽつんと捨てられたおもちゃのように置いてあった。それを目にした真希人はその何か向かって走っていく。
「何だこりゃ、ぬいぐるみか?」
そこにあったのは小さなサイズのネズミの人形。空色の毛にずんぐりとした体型。やや愛嬌のある顔に少し飛び出した出っ歯……まさに遊園地のマスコットという表現がピッタリの、そんな人形が落ちていた。
真希人はそれを拾い上げて調べてみるも、手触りも普通の人形であり特に変わった様子はない。しかしこの人形の手にはプラスチック製の杖が握られていた。真希人はそれを触ってみる。
「これは……宝石か? いや、おもちゃか……」
杖の先端にはキラキラとした紫色の石が嵌め込まれてある。光にかざしてみるとキラキラと反射し、宝石のような輝きを放つ。その放たれる光が気になったのか真希人はネズミの手に握られた杖を調べようと手に取った。
その瞬間、杖に嵌められていた石から同じ色の紫の光が激しく輝いた。あの時、真希人が浴びた光と同じような光だ。その光は近くに落ちていたネズミ人形と一緒に真希人を包み込むと、一層輝きを放つ。その光の中で、真希人は肉体を作り変えられようとしていた……
「あああぁぁ……」
紫の光に包まれた真希人は、視界を全て遮られその思考も目を突くような激しさをもった光の雨によりシャットアウトされる。その中でただ身体を縮ませて呻く事しかできないでいた。
その中では明るげな音楽が鳴り響き、真希人の聴覚を支配する。真希人の脳は現在進行形で遅いくる様々な要因により虹色に染め上げられ新たな核を形成し始める。混乱する思考の中で真希人は一つのワードが頭に浮かぶ。そのワードを憚りもせず大声で叫んだ。
「ワンダー・チェンジ!!」
変身ヒーローの口上の如く叫んだ真希人。その瞬間、その掛け声が合図とばかりに彼の着ていた服が全て弾け飛んだ。下着すら失われ丸裸に剥かれてしまった真希人だったが、それでも厭わず叫び続ける。
「うあああ! あっ、ふあっ、あああぁんっ……!」
いつしかその叫びは喘ぎへと変わり息遣いも妖艶なものへと化していく。善がりだす真希人の股座のペニスはゆっくりと勃起を始めており、先からピュルリと先走りが漏れ出した。
「『ラット・ザ・クラウン』メタモルフォーゼ!」
真希人が新たな叫びをあげる。すると光の中を漂っていたネズミの人形に変化が起きた。人形がひとりでに分解され、顔や手足、尻尾などの体の部位がそれぞれパーツとなって真希人の体に覆い被さった。
「ああぁ! あっ、あうぅ! んおおぉ!」
体に合わせてネズミのパーツが真希人にくっつき、その度に真希人は声を荒げ切ない声を発する。勃起したペニスはネズミが真希人と一体化する度に小便をするが如くピュルピュルと透明な汁を噴き出させた。
「はうぅッ、おっ、俺の……カラダっ、があっ……!」
ネズミのパーツが完全に一体化した時、真希人はその肉体をネズミに合わせて変化させていく。
人形に巻き込まれるような形で真希人の手足が沈んでいく。小さな人形の体に吸収されるかのように大きな体積を持っていた全身が縮み上がり、小さく小さくなっていく。
尻尾にチョロリとネズミの尻尾が付けられると、真希人の首から下は完全にマスコット体型のネズミとなってしまった。
先程まで先走りを垂れ流していたペニスも……ネズミのような赤くて細い獣のペニスとなっていた。それでも矢張り先端からは未だに先走り汁を元気に垂れ流している。
「あっ、あぁ……くっ、や、やめ……!」
最後に残ったパーツであるネズミの頭部が真希人の唯一残った人間の顔に向かってまるで着ぐるみの頭を被りでもするかのように覆いかぶさってくる。しかし、真希人は本能でまずいと思ったのか両手を上にあげその短くなったネズミの指で降ってくる頭部を押さえつけた。しかしその抵抗ができたのも一瞬だった。
「あんっ!」
高く響く短かな悲鳴と共に真希人の顔はネズミに侵食された。首の継ぎ目はあっという間に癒着し外れなくなってしまう。
「おっ、はぁぁぁぁんっ」
とうとう真希人は全ての肉体をネズミのマスコットに置き換えられてしまった。真希人は混乱の中、自分の体が作り変わった快感で打ち震え、喉からは喜びの声があがった。
股間の小さな玉がプルプルと震えたと思うと、直立したネズミペニスからは真っ白な精が撃ち放たれる。
輝いていた光がようやく収まる。ネズミと化した真希人の体はテントの中の布切れの山の上に落ちた。かつて彼が服として身に着けていたものの残骸であった。
「んあっ! あ……俺……」
頭の丸い耳がピコピコと揺れる。何が起きたのか理解が及ばずただ己の両手を眺める事しかできていない真希人だったが、視界に映っているその両手が人間のものでない小さな獣の手である事で、ようやく自分が人ではなくなった事を理解した。
「なっ、なんだっ……あっ、俺、どうなっ……」
慌てて近くに落ちていた杖を拾い先端に付いた宝石に自らの姿を映してみる。その杖は、本人が縮んだのを前提にしても明らかにサイズが変わっていた。しかし混乱の渦中にある真希人はそれに気付かない。
「これが、俺……?」
宝石に映った自分の姿を見て愕然とする。そこにはデフォルメされたかわいらしいネズミの顔が映っていたからだ。それはあの時拾った人形の顔そのもの。出っ歯もしっかりと再現され口を開く度に上下に動く。
「そんなっ、俺はこんな体っ!」
変わり果てたその姿に忌避感を覚え、元に戻りたいと既に叶わぬ願いを口にする。しかしそんな真希人の考えを察知したのか、姿を映していた宝石が再び輝きを取り戻す。
「俺は……こんな、体……?」
紫の妖し気な光を浴びた瞬間、真希人の頭から違和感が消え、『自分は元々この姿である』という思考が刻み込まれる。その瞳の色は茶色からエメラルドグリーンに変わり困惑の表情は揺らぎのない無になった。
先程出したばかりだったペニスは再び鎌首をもたげはじめている。金玉の中の精巣も、元気を取り戻しせっせと精子を作り出す……
「そうだ……俺はネズミの、ピエロ……違う、俺はそんなんじゃない! 俺は倉田真希人! 人間だ! 俺を元に……」
真希人は理性を振り絞り自己を取り戻そうと躍起になる。しかし、それを感知した杖の光が真希人の脳みそをその身に適したものへと変換させていく。
「俺は、倉田真希人。俺は一人暮らしをしているアルバイトで、ゲームを、ピエロ。オイラは、ネズミのラット。ラット・ザ・クラウン。俺はこのサーカスを盛り上げるため、違う、オイラは別の世界のニンゲンだから、元の世界に帰らなくちゃ、ちがっ、ちがう。オイラはエンターテイナー……魔法の力で世界に平和をっ……
そんなの嫌だぁ! 俺は、俺はゲームを……チン、チンコ勃って……オ、オイラは人間! 俺はネズミ!? フリーターで、ピエロで、サーカスが、俺の家が、パソコンが……
キッ、キンタマぁ……チンコがギンギンになって……でっ、出そう! 俺、出そう! “俺”が出そう! 精子……オイラのっ、俺がっ、精子になるぅ……」
真希人は今、自分と、新たに作られたネズミの人格と戦っている。口からはもはや意味のない言葉たちが口をついて出てくる。ただ脳に送られた思考を言語化しているに過ぎないその羅列を呟く真希人の姿はとても奇妙で滑稽なものだった。
それでも彼のペニスは未だに元気なまま。それどころか射精を行いたいと透明な汁を垂れ流しながらヒクヒクと小刻みに揺れている。
「ダメだ! ガマンできないぃ!」
そしてとうとうその小さな手で屹立するモノを掴み勢いよく擦り上げた!
シュッシュッ……シュコッ、グチュッ、ヌチャア……
先走りを巻き込みながらいやらしい水音を立てひたすらにペニスを扱く真希人。その目は茶色と緑の渦と化し美容院のオブジェのようにグルグルと回転する。真希人の脳内データは『ラット・ザ・クラウン』としての変換が完了しつつあった。
そして『ラット』の意志が己の脳に下した命令――
『射精と同時に脳内に記録した不要な記憶を消去しろ』。
それが実行されようとしていた。
「ダメぇ……イクッ!
あれ? 俺の名前何だっけ?」
[[jumpuri:続きはFANBOXで > https://www.fanbox.cc/@jinogrehead/posts/7504834]]
Ad