その思い出は夢か幻か

  夕方5時になるとスピーカーから夕焼け小焼けが流れる。

  その音色が聞こえてきたらもう帰る時間だ。家に帰れば夕食の時間だ。それは私の嫌いな時間だ。

  家に帰っても誰もいない。ご飯はコンビニで買ったもの。さっきまで友達と一緒にいたから、余計に寂しさを感じる。

  帰りたくないと公園のベンチに座って日が沈むのを眺める。そうしていると、その人はやってくる。

  「一緒に帰ろう」

  声をかけてくれた。ぐずる私をおんぶして「出発進行!」と歩き出した。

  家に帰りつくまでの僅かな時間。この時間がずっと続いて欲しかった。

  これが私の初恋。おぼろげな思い出だ。

  今はもう、あの人の顔を思い出せない。友達に聞いても、そんな人は知らないと言われる。

  イマジナリーフレンド。あの人は幼い私が生み出した幻だったのだろうか?

  足下、私の影が首を横に振る。あの人と一緒に聞いたメロディを口遊む。

  また会いたいな…そんな願いを込め、私は今日もあの人を探す。