施設で暮らす私に両親はいない。だから親子遠足は私にとって苦痛でしかない。
友達を見つめる。私にもお父さんやお母さんがいたら…
「そういう気持ちは、口に出したほうがいいよ。口に出したら、もしかしたら奇跡が起こるかもしれないよ」
先生の言葉に、ありえない…と思いながらも、私は気持ちを口にした。
『傍にいてほしかった』
…ほらね。何も起きない。
「じゃあ次は、『傍にいて』って気持ちを込めて言ってみて」
それで何が変わるのだろう?とりあえず言ってみるか。
『傍にいて』
両手に温かさを感じた。顔を上げるとお父さんとお母さんがそこにいた。
「ほらね。口にすると、奇跡は起こるんだから」
一人ではしゃぐ私の姿に周りの大人達は憐みの目を向ける。
だけど友達は私に笑いかける。
「お父さんとお母さん。来てくれたんだね」
それはイマジナリーフレンド。子どもだけに見える、とっておきの魔法が生み出した奇跡。
バスの扉が開く。楽しい遠足の始まりだ。