優霊物件

  家賃1万円。いわくつきの部屋で私は漫画を描く。

  幽霊が怖くて、漫画が描けるか!デビューを夢見て、ただひたすらに描き続ける。

  今日も視線を感じる。振り向いても誰もいないだろう。もう慣れた。ここに幽霊がいると事前に説明を受けている。

  ライブドローイングみたいなものだ。存分に見るといい。この程度で描けなくなるなら漫画家にはなれない。

  パチパチとラップ音が聞こえてくる。さっき描いたページの出来が良かったのだろう。幽霊が拍手を送ってくれた。

  キリの良いところまで描き終え、仮眠をとる。目を覚ますと金縛りにあっていた。

  幽霊がもっと休めと言っている。体はまだ泥のように重い。お言葉に甘えさせてもらおう。

  この部屋に出る幽霊は私の漫画のファンだ。

  実際はどうか分からないけど、そう思い込む事で自信へと繋げている。

  「行ってきます」

  完成した漫画を今から出版社へと持ち込む。

  玄関を出る際、幽霊が私の背中を押してくれた。