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生熟(なまな)れ (一) ー創世歴 302年 新越国 秋分 ー

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  お、サルナシか……

  アザミは隅に置かれた小籠に手を伸ばし、サルナシを口に放り込む。途端に顔を顰めた。

  「若ぇのが混ざっちょる…」

  吐き出す訳にも行かず、半ばで丸呑みする。サルナシの酸味が、ふと、ありしの日の事を思い起こさせた。

  そういや昔コレ取りに行ったけかの……。

  アザミはもう一粒口へ放り込み、脳裏に朧気な記憶を浮かべた。あの頃はこのサルナシのように、まだ未熟な乙女だったかもしれない。

  湿り気を帯びた風が森を抜ける。青々と茂っていた木々は黄金色に染まり、秋の訪れを告げていた。

  「ヌシに、そろそろ婿でも考えねばの...」

  ニコシ族の長シナキは、狩り支度に勤しむ娘アザミにそう呟いた。

  「婿…?」

  アザミは亜麻色の髪を高く括りながら、訝しげに父を見上げる。隆々と盛り上がった肩に、髪がさらりと零れ落ちた。

  「あぁ……ツキが育つまで待ってられんけぇの」

  ニコシノクニの長は男が多い。女も居らぬではないが、大抵は早世した夫の代わりであったり、幼い子の代わりであった。

  アザミの兄弟は妹ばかりが六人いて、弟のツキは生まれて間もない。弟が育つのを待っていたら、アザミの盛りはすぎてしまう。

  父はそう言っているのであろう。

  「婿ねぇ…」

  逞しく盛り上がる腕に篭手を巻き付け、さほど興味もなさげに鼻を鳴らす。

  「ま、後にしてくれ。ワシぁこれから狩りに出る」

  ひらひらと手を振ると、父は眉をしかめた。

  「ヌシぁもう十三じゃ。内仕事も程々に出来ねばならんぞ?」

  たちどころに慣れるモンじゃねぇしな。

  小さく父が付け加える。 アザミは視線を手元に落としたまま、肩をすくめた。

  「性にあわんのじゃ。織りも針も、退屈で、ケツも痛てぇ。頭も体も腐るんじゃ」

  毛皮を羽織り、空穂を担ぐ。父のシワはますます深くなっていた。

  「腐りゃせんわい!!」

  「ほうか。なら父さが先ずやってみぃ」

  弓を引っ担ぎ、片笑みをうかべる。

  「何が内仕事じゃ。ワシが布織りなんぞしたら、クズの山じゃぞ。もったいねぇ、もったいねぇ」

  笑い声を立て、小走りに郷を抜ける。遠くに父の罵声がこだました。

  さて、朝晩冷え込むものの、日中の日差しは熱い。アザミは木漏れ日が差す中、小さく息を吐きながら稜線を目指した。

  この頃になると、牡鹿は牝鹿を囲い群れを成す。アザミが目指す辺りには、三本枝角の牡鹿が何頭もの牝鹿を囲い縄張りをはっていた。警戒心が強く、なかなか人前に姿を表さないこの鹿は「イカクレ」と呼ばれ、男達の話に度々上がる。誰が射るかと関心の的である牡鹿は、アザミにとっても同じだった。

  「ワシが獲っちゃる...」

  野心にも似た想いが、言葉となって口の端から漏れた。

  アザミは稜線に立ち、木に背中を預ける。そして鹿笛に思い切り息を吹き込んだ。

  甲高い音が、澄んだ空を切り裂く。

  アザミはそっと目を閉じ、聞き耳を立てた。

  しかし男っちゅうのはそんなえぇもんじゃろか...。

  父の言った「婿」という言葉がぼんやりと頭に浮かぶ。身近な娘たちはしばしば、どの男が好きかなどと騒いでいる。時たまアザミはその橋渡しもしてやったが、己の琴線にはどうにも触れない。

  えぇ男っちゃどんなもんなんじゃろか...。

  脳裏に浮かんだのは先代の長だった。アザミの伯父でもあるサイカチ。サイカチは情の厚い男だった。小さな揉め事も顔を出し、弱い者には声を掛け、時に他部族との争いでは多くの族人を守った。

  高い上背、厚い胸板。力強くうねる、亜麻色の髪。鷲のような鋭い眼光。膂力で右に出る者はない。それでいて、性格は穏やかで、屈託なく笑みをこぼす。

  サイカチは四年前の戦で死んでしまったが、その姿はアザミの中でありありと思い出せた。

  やっぱ伯父さがえぇの。男の中の男、益荒男じゃ。

  アザミは懐かしい姿を思い出し、ふふっと笑みをこぼした。

  「しっかし鳴かんの〜……」

  空を見上げ、アザミは呟く。

  晴れ晴れとした空には、木々のざわめきと鳥の声だけが響いている。

  縄張りに入られた牡鹿は高い声で応えるものだが、未だに鳴き返しは無い。

  これでダメじゃったら、場所移すか…。

  アザミは再び鹿笛を鳴らした。高く三回。鳴きが強ければ強いほど、牡鹿は対抗心を燃やす。アザミは牡鹿となった。

  来い、イカクレ。ヌシの縄張り侵しに来たぞ...。[[rb:牝鹿 > オンナ]]が惜しけりゃ、早よ取り返しに来い...。

  ヒィーヨー......

  ヒィーヨー...

  ヒィーヨー

  牡鹿の声が応えた。

  胸がドクリと拍動する。

  来た...来たの!!

  右手が空穂に伸びた。カタリと矢が零れる。

  逸りすぎじゃろがよ......。

  アザミは歯を剥き、細く息を吹く。一度掌を開き、くっと拳を握る。そして矢を引き抜き、弦に番えた。

  口に鹿笛を当て、三度吹く。

  弓を半ばまで引き、聞き耳を立てる。今度は目を瞑らなかった。林の奥を注視する。

  カサ…...カサ...

  枯葉を踏む小さな音が遠くから響き、そして数間先で止まった。

  気づかれたか...?

  急かすように胸が拍動する。生唾を飲み、弓を引き代いっぱいに引いた。音のした方へゆっくりと弓を向ける。瞬間、幹から鹿が現れた。

  ヒン...

  矢が風を切る。同時に鹿が跳ねた。

  「クッソ、浅ぇっ!!」

  アザミは木陰から飛び出し、即座に二本目の矢を放った。既に後ろを向いた鹿の尻に、矢は吸い込まれていった。

  ピィーィィー...

  森に悲しげな鹿の声がこだまする。

  「入った...。入ったはずじゃ...」

  確かな手応えがあった。期待に胸を弾ませ、アザミは鹿の痕跡を追う。木々の葉にべっとりと滴った[[rb:血痕 > それ]]が、アザミの期待を確信に変えた。

  ガサガサッ...ザッ...ガサッ

  葉が不規則に擦れる音が響く。木々の合間から牡鹿が覗いた。負傷した後ろ脚を引き摺り、前脚だけで立ち上がろうと地を踏みしめていた。

  「脚、利かんのじゃろ...。諦めぇよ」

  通じる訳もない鹿に、アザミは声を掛けた。鹿は脚を止め、じっとアザミの目を追った。

  アザミは鹿の前に立ち、手槍を胸へ向ける。

  「ありがとうの、イカクレ...」

  アザミは呟き、胸を突いた。

  ピィーィィー...

  一声鳴くと、どっと倒れた。身体が地の上をもがく度、胸から鮮血が吹き出し、辺りを赤く染めた。

  やがてそれも無くなり、アザミは静かに息を吐いた。

  傍にしゃがみこみ、イカクレと呼ばれたその鹿の角を、指でなぞる。

  「立派な角じゃの。ヌシがどれ程ここを守ってきたか、ようわかる。ヌシの皮も肉も、ワシらの力になる。ありがとうの」

  鹿の頬に額をつけ、深く息を吸ってゆっくりと吐く。

  「よし、行くかの」

  身を離したアザミは牡鹿を肩に担ぎ上げ、沢へと下っていった。

  「お...先客か」

  沢の傍に人影が見えた。

  アザミよりやや小柄だが、締まった体つき。燃えるような赤い髪、そして刺青を施した顔。

  「あ、アザミ[[rb:姉 > ねえ]]やん」

  幼さの残る顔で、少年は笑みを零した。 ニコシノクニに古くから住む狩猟民、ヒマ族の子だった。

  「ハリ。ヌシも鹿か」

  脇の木に、小ぶりな牝鹿がぶら下がっている。目を覆われた牝鹿はまだ生きているようで、時たま身体を揺らした。

  「あぁ。姉のは...お、こいつイカクレやな」

  「ほうじゃ!!」

  誇らしげに鹿の背を叩く。しかしハリは何ともなしに「手伝ったろ」と言い、縄を取り出した。アザミはハリに顔を寄せる。

  「もちっと驚かんかぃ。イカクレじゃぞ」

  何年もニコシの男が追っていた牡鹿だ。これは誉れである。だが、ハリは鼻歌など歌いながら、牡鹿に縄を掛けている。

  「別に...難しねやろ?」

  ハリは事も無げに言った。

  「ちぃとばか隠れんのが上手いだけの奴や。ニコシ[[rb:者 > もん]]は[[rb:待ち > ・・]]が足らんねん。すぐ動きよる」

  「あぁ? ほんじゃ、ヌシなら捕れる言うか。負け惜しみ言いよんよな」

  小馬鹿にされたようで鼻につく。ハリに食ってかかった。しかし、ハリは気にした様子もなく木の股に縄を掛ける。アザミはきっと歯を食いしばりながら、鹿の背を支えた。

  「ま、獲れると思うで」

  軽く笑いながら縄を引き、ハリが牡鹿を釣り上げる。アザミは首に刃を入れ、放血を始めた。

  「なんぞ獲らんのじゃ。ニコシ者にとってイカクレが誉れなのは知っとるじゃろ」

  イカクレに比べれば、いくらも見劣りするような牝鹿を横目で見る。アザミにはハリの言葉が虚勢に思えてならなかった。

  「せやから」

  ハリは己の手槍を手の内でくるりと返した。

  「せやから、獲らんねん。面目ねやんろ?[[rb:ヒマ者 > ワシら]]に先越されたら」

  ヒマ族とニコシ族は古来から縄張りを巡って争ってきた。拡大するニコシ族と、生業の場を奪われていくヒマ族の間に盟約が結ばれたのは、アザミが生まれる少し前だったらしい。

  互いの狩場を荒らさず、命の取り合いもしない。

  盟約の証として首長の家からヒマ族へ女が嫁ぎ、生まれたのがハリである。しかし盟約は長く続かなかった。

  南の大国であるチハラノクニが突如として、攻め入ったのである。瞬く間に各地を制圧していくチハラを前に、ニコシは降伏を決断する。

  一方でヒマの長は徹底抗戦を決め、当時十以下だった子らを残し滅びた。当時ニコシの長であった伯父は、義弟でもあるヒマの長と共に戦へ赴き、チハラの前に斃れた。

  盟約を交わした双方の長が失われた事によって、二つの一族の関係は元に戻ってしまったのだ。

  遺されたヒマの子らは、後を託されたシナキ(アザミの父)に匿われたが、ニコシ族の者がヒマ族に向ける目は冷えている。

  「ニコシで獲れるもんはニコシのもん。ワシらには誉れどころか、肉も皮も残らん。せやからワシは牝鹿でえぇ。食えるなら、なんでもええねん」

  ヒマ族は優れた狩猟民だ。五つから山へ入るという彼らの技は、同じ狩猟民のニコシ族を遥かに上回る。その彼らの捕らえた獲物を、度々搾取する者がニコシの中にいた。

  優れているとはいえ、子どもだ。力でも数でも抗えるものではない。アザミも見かければ庇ってやったが、見えぬところで同じ目に合っているのだろう。

  ハリの言葉は、ヒマ族の境遇を物語っていた。

  「姉の事、責めとる訳やないで。姉はようしてくれる。せやから姉だけに話せんねや。ないしょやで」

  小首を傾げ、ハリは笑って見せる。アザミは言葉を見つけられず、口を噤んだ。

  「さて、こっちもせんとなー」

  ハリは己の牝鹿に、手槍の柄の部分を振り下ろす。ゴッと鈍い音をたて、牝鹿は動かなくなった。

  ヒマ族はトドメを刺さないらしい。まだ生きているその首に刃を差し入れると、勢いよく血が吹き出した。

  ハリは取り出した盃を当て、鮮血を盃に受ける。なみなみと湛えられた血を一気に飲み干した。

  「[[rb:山神 > ヤマツミ]]さん、ありがとう」

  呟き、再び盃に血を満たす。

  ヒマ族特有の葬送の作法で、ニコシ族には無い。アザミはその作法を知ってはいたが、やはり目の前にすると恐ろしくもあり、僅かな嫌悪を感じなくもなかった。

  アザミはイカクレを下ろし、沢で丹念に洗う。ハリも牝鹿を下ろす気配がした。ヒマの葬送はまだ終わっていない。

  アザミは手の下にあるイカクレに目を落とした。ハリの葬送が目に入らぬように。

  ハリは牝鹿の臓物を丁寧に取り除くと、大岩の上へ綺麗に並べる。そして前に胡座をかき、手の平を天へ向けた。

  「ニコシの山神さん、ワシらに命を遣わしてくれてありがとう。ワシら血肉、骨、皮に至るまで無駄にはせえへん。今ここに落ちたる御霊が、迷いなく天に還り、新たな神さんになるまで導いたってや」

  一気に言い切り、ハリは深々と三度頭を地に着ける。続いて、盃に溜めた血を臓物に注いだ。遠くでカラスが三度鳴いた。

  ハリがその場から静かに離れると、見計らったようにカラスが数羽舞い降りる。カラスは小さく声をたてながら、臓物をついばんだ。

  「迷いなく、逝ってや...」

  ハリの声が耳元で聞こえた気がして、アザミはふと顔を上げる。カラスがはらわたを引きちぎりながら、我先にとついばんでいる。その様子を、ハリは慈しむような顔で眺めていた。

  「...」

  アザミは再び手元に目を落とした。

  「ワシは先行くぞ」

  「かまへんよ。まだ掛かるさかい。姉はニコシ者喜ばしたったり」

  沢で葬送を行うハリを残し、アザミは先に郷へ戻った。皆は驚きと歓声でアザミを迎える。消えかけていた誇らしさが蘇り、アザミも笑顔をもって応えた。

  「アザミさま、角!! この角ええの!!」

  「ワシもろてええか!!」

  「ずりぃの、ワシも欲しい!!」

  特に[[rb:男子 > おのこ]]らはイカクレの角に群がった。

  「ええよ、ワシぁ角はいらんけ。皆で切り分けりゃええじゃろ」

  男子らは喜んでイカクレの頭を抱えた。

  喜びに湧く郷の者らへ、アザミは鹿肉を切り分けていく。作業も半ばを過ぎた頃、アザミは父に呼ばれた。他の者に鹿を託し、アザミは広場の奥にある父の居住にはいった。

  広場の喧騒とうってかわって、穴屋の中には静寂が漂っている。火にくべた薪がパチリと音を立てて爆ぜた。

  「イカクレ、獲ったらしいの」

  父は一番に言った。その顔は、郷の者らのように浮ついた感じでは無い。

  「お...あぁ...まぁ」

  アザミは何と言ってみようもなく、曖昧にうなづいた。

  「さすがじゃの、アザミ。女だてらに皆が認める跡つぎじゃ」

  空気を破るように、声があがる。アザミは初めてそこに別の男がいることに気づいた。

  「タカハヤ...」

  タカハヤと呼ばれた男は軽く手を打ち、アザミに腰を下ろすよう促す。アザミは父の前に腰を下ろした。

  タカハヤは父の姉の子であり、ヤマケという里の長の子でもあった。アザミの従兄にあたり、歳は幾つか上のはずである。

  「叔父さもそんな固い顔せんでええじゃろ。ようやったと素直に褒めてやれ」

  タカハヤは高く笑い声を立て、シナキとアザミを交互に見合わせる。二人はつられて、口もとを緩めた。

  大きな体と、屈託ない笑顔。血筋だろうか。どことなく伯父のサイカチに似ていた。

  「さ、叔父さ。ともあれ、例の話じゃ」

  ぱんと手を叩いて、シナキの方を向く。

  例の話...?

  アザミは興味をそそられ、父の方を向いた。

  「ヌシに名代を頼みたい」

  短く言う。

  「みょう......何かの代わりか?」

  説明の無い言葉にアザミは重ねて尋ねた。

  「コモタチを知っとるか」

  「おぉ、北のな...」

  コモタチは、今住むカヤマノサトから北西に位置する小さな部落だ。サルナシの実が良く採れ、果実酒を仕込んでいる。大した量は作れぬが、資源の少ないニコシノクニでは数少ない朝貢品の一つだった。

  四年前の敗戦以降、チハラノクニから国の長として派遣されたミヤマの家は、ニコシ全土の郷に労役を課した。労役は通年ではなく周期的に輪番でやってくるが、この秋の収穫期にコモタチの労役が重なってしまったらしい。郷では人手が足りず難儀しているとか。

  「タカハヤと共にコモタチを助け、ミヤマさまに朝貢品を納めてくれ」

  滔々と話す父に、アザミはあからさまに不満気な顔を見せた。

  「コモタチを助けんのはええが、ミヤマに頭下げんのは気ぃが進まん」

  「アザミ、言うてもな。今ニコシノクニの長はミヤマさまじゃ。ましてやその上のチハラには、ワシらが今から束んなっても敵うもんじゃねぇんぞ。ヌシの顔、ミヤマさまにも覚えてもらわんと...」

  そういうのが気に食わんのじゃ。へぇへぇ頭下げよって...。

  チハラも、その手下のミヤマというハヤセビトも、ニコシには全くのよそ者である。そのよそ者に頭を下げ、へつらうのがアザミにはどうにもしっくり来ないのである。

  父を睨むと、間にタカハヤが顔を覗かせた。

  「ま、そう言うな。ミヤマさまはこちらの意も汲んでくれるお方じゃ。一度会うてみたら、気ぃも変わるぞ」

  「どうだかの...」

  何か切り替えそうと父を見る。父は急に空々しく咳払いをした。

  「もうひとつの。コモタチの末の子がヌシと同じくらいじゃ」

  「あ?」

  アザミは身を引いて、マジマジと父を見つめる。

  「今朝言うたじゃろ…。婿。まだわからんがの」

  「ム...ムコ。オ、オトコか!?」

  急に顔が熱くなる。チハラもミヤマも頭から飛んだ。

  「そりゃまぁ、ほうじゃろよ」

  「アザミは案外[[rb:生娘 > オトメ]]じゃの」

  思いもよらぬアザミの姿に、タカハヤは肩を揺らす。

  「か、からかわんでくれ...」

  耳まで赤く染めたアザミは、顔を抑えて俯いた。

  「そういう訳じゃけ。コモタチの事、頼んだぞ」

  タカハヤと父がどこか楽しげに立った。

  「んぁ...あ...あぁ」

  アザミは呟くように答える。

  不思議と胸が高鳴っている。それはイカクレを追っている時とは違う感覚がした。

  

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