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(IF話)エビス丸onブラック?トゥルー?アナザー?

  この物語は「がんばれゴエモン」シリーズの設定・世界観をモチーフにした変身小説です。

  (ただしシチュエーションメインでありストーリーはあくまでもベースです)

  劇中の設定や演出には独自設定・独自解釈が含まれております。

  また、変身ギミックのコンセプトは一部某ドクターゲーマーヒーロー等を意識しております。

  [newpage]

  ここはお江戸テイストみなぎるとある町。

  草木も眠る丑三つ時―にはちと早いけどほとんどみんなお休みの時間。

  そこから少し離れた町外れに静けさを遮るように怪しげな奴らがうじゃうじゃ現れる。

  「ウジャウジャ~」

  「ウジャウジャ~」

  「ウジャウジャ~」

  からくり仕掛けか妖怪変化か。

  いかにもからくり雑兵・あるいはアヤカシな戦闘員みたいなその格好・見た目は愉快だけどここまで出てくるとかなりおっかない。

  そんな連中が大挙して町に乗り込もうとする―が、しかし!

  「やぁーっ!」

  「ラレターッ!」

  「ラレチャッターッ!」

  「ラレターッ!」

  可愛らしくも凜とした声が怪しげな連中を文字通り切り裂く様に響くやザコ達が一体、また一体と崩れ落ちドロンと煙を上げて消えていく。

  その声の主はまた一体ザコを切り捨てるとその手応えを感じる間もなく再び別のザコに切りかかる。

  ザコ達もやられてばかりはいないとばかりに声の主めがけてそれぞれの得物を手に襲い掛かるが声の主はひらりひらりと身をかわす。

  なんとか距離を取った所ですかさず投げた手裏剣が一網打尽とばかりにザコ達に命中していく。

  倒れたザコ達が煙を上げて消えていくがその中からまたたくさんのザコ達が襲い掛かってくる。

  「ウジャウジャ~!」

  「ウジャジャーッ!」

  「ウジャウジャジャ~ッ!」

  その攻撃に声の主も果敢に応戦するがやはり防戦一方に追い込まれていく。

  手にした刀で受け流したり身を翻したり大きくトンボを切ったりもするがその衣装には少しずつかすり傷が増えていく。

  「くっ、やっ、はっ……。」

  声にこそまだ闘志は残っているがやはり少しずつ息が上がっているらしくその吐息も荒くなっている。

  「ウジャウジャーッ!」

  そこにザコ達が徒党を組んで襲い掛かってくる。

  刀で応戦するには数が多く、手裏剣を投げるにも相手がこちらに斬りかかる方が早い。

  そしてザコ達が声の主に得物を叩き付ける瞬間―大きな爆音と煙が上がりザコ達の視界と動きが封じられる。

  爆音と煙が消えた時、声の主の姿はまさに煙のように消えていた……。

  [newpage]

  「はぁっ、はぁっ、はぁ……っ!」

  ザコ達から少し離れた岩陰木陰。

  辛くもザコから逃れた声の主はなんとか息を整え懐に潜ませていた三色団子をかじり小さな水筒を口にする。

  「ふぅ……はぁ……やっぱりわたし一人じゃ抑えきれない……。」

  少し体力が戻るのを感じながらもその声は焦りを交えていた。

  その姿を雲間から現れた月明かりがかすかに照らす。

  全身を青い忍び装束にくまなく覆いながらも先端を軽く縛ったやや濃いめの桃色の髪をなびかせた目の大きく鼻の通った美少女。

  その手には一振りの忍び刀が握られている。

  エビス丸―それが彼女の名前だった。正確には「通り名」という所だが。

  かのからくり道中の冒険ののち故郷に戻っていた彼女は市井で穏やかな日常を過ごす傍らその影で世を乱す不埒者達を懲らしめる忍者として活躍していた。

  そんな彼女がふとした切っ掛けで先ほどの一党が町を襲おうとしていた事を知り迎え撃とうとしていたのだが実際はこの始末。

  かの冒険を切り抜けた実力の持ち主とは言えあの数はその細腕には応えているようだ。

  なんとしてでも食い止めないといけない。しかし今のままではそれもできない。

  「ゴエモンさん……。」

  ふとその脳裏に道中を共にしたあの傾きまくっていた義賊の姿が浮かぶ。

  彼がいてくれたら、彼だったら……。

  ふと浮かんでしまったそんな気持ちを振り払うように頭を振る。

  いくら彼が風来坊的な気性とは言えそんな都合良く現れる事はあり得ないし何より彼だったらそれこそどんなに不理でも大きく傾きながら立ち向かって行くであろう。

  そう思うとエビス丸の心の中になおの事自らの力で戦わねばと言う思いが湧いてしまう。

  そんな時ふと忍び装束の腰―装束をきりりとしめる帯に付けられた帯留めに手を置いてしまう。

  彼女にとっては半分忌まわしい形をかたどった帯留め。

  経緯や理由は省くが奇妙ななりゆきで手に入れてしまったそれをエビス丸は身に着けていた。

  ふとその帯留めに置いた手に力が入った時、何かのからくりが動き出すような音が帯留めから響きだした。

  「え?何?」

  突然響きだしたからくり音にさしものエビス丸も驚きを隠せない。

  そもそも彼女にとってからくりと言うものには嫌な思い出があるのだ。

  急いで帯留めを外そうとすれば良いはずなのだがなぜかエビス丸の体は動かない。

  からくりの音、何か陽気な祭り囃子の様にも聞こえるその音が彼女の耳に、脳内に、心に響き渡ってくるせいか。

  「ああ……これって……だめ……でも……。」

  彼女の中で失われつつある理性が必至に歯止めをかける。この音に身を委ねたらとんでもない事になる、と。

  しかし、その音が導く感覚、そしてその感覚が導くであろうものに対する欲求をエビス丸は止める事はできなかった。

  ―この音に身を任せれば戦える、守る事ができる―

  そんな思いに押されるようにエビス丸はもう一度、今度は確かな意志を持って帯留めのからくりを動かす仕掛けに手を触れ……言葉を紡ぐ。

  「変―身っ!」

  [newpage]

  その瞬間、帯留めが光を放つとそのまま帯状の空間となりエビス丸の体を覆い尽くす。

  「うっ……ああ……」

  空間の中でエビス丸は軽く声を上げながら身を広げるとその体を光の輪が縦横に通り抜けていく。

  光の輪が通り抜けた所からエビス丸の色気があるとは言えないまでも魅力的な体形が光に包まれながらも露わになる。

  もっともその姿は目元以外は顔までぴったりと覆い尽くした装束が発光している様な奇妙なものなのだが。

  さらに光の輪が通り抜けるとその女性的な姿態はこともあろうになごみ体型と言えば聞こえは良いが実際には恰幅の良すぎるな三頭身・もしくは二頭身半体形へと変貌する。

  三度目に光の輪がくぐり抜けると体を覆っていた光が消え、エビス丸がその変わり果て―もとい、生まれ変わった姿を露わにする。

  衣装こそ先ほどと変わりはない青い忍び装束だが体形は間違いなく恰幅良過ぎ、ほっかむり頭巾に覆われた顔はぽっちゃりを通り越した鼻の大きな糸目のえびす顔。

  その顔は例の帯留めに刻まれた紋様そのものだった。

  そして光の帯が消えるとそのひょうきんそのものな姿が夜の空間に躍り出る。

  「……な……な……なんでっかこれは~っ!わて、またこの格好になってしまったがな~っ!」

  関西弁混じりの陽気なおっさん声で思い切りその変化した姿の感覚におののいてしまうエビス丸。

  そう、この姿はかつてとあるワガママな城主の申し出を断った代償として変えられた姿そっくりでありしかもその声や口ぶりもそっくりそのままなのだ。

  「うう……まさかとは思うとったけどホンマにまたこうなってまうとはなぁ……ゴエモンはんにも会わせる顔ありまへんわぁ……。」

  完全にとほほと肩を落とすエビス丸。

  しかし、感傷に浸る間はなかった。

  運悪く―エビス丸が身を隠していた岩陰木陰はザコ達の進行方向にありいつの間にかザコ達に包囲されていたのだった。

  「あ~わて、ホンマに運が悪くなってもうたなぁ……。」

  ジワジワと得物を手ににじり寄るザコ達。

  その光景を見てトホホとなるエビス丸だったが一瞬その顔が上がる。

  「あ~こうなりゃヤケや!思い切り暴れたる!一人残らずドツキ回したるでぇ!」

  その手には忍び刀の代わりにいつの間にか握られていた笛を掲げてエビス丸はザコ達を迎え撃つ。

  「やあっ!たぁっ!ほいなぁ!」

  「レターッ!」

  「ラレタァーッ!」

  「レチャッターッ!」

  その恰幅の良すぎる体形からは信じられない位の動きを見せエビス丸はザコ達をぶっ飛ばす。

  南蛮渡りの剣術よろしく笛を突き立てると思えばどこに仕掛けがあるのかその先端から色鮮やかな細く長い帯を出してムチの様にひっぱたく。

  「ほらほらぁ!お局様と呼ぶんやぁ!」

  「ラレタァーッ!」

  妙にノリの良いエビス丸の一撃がザコ達の群れを一掃しザコ達は煙となって消えていく。

  しかしその波をかわすようにザコ達が飛びかかる。

  「ほいな、はいな、ほいなぁっ!」

  それに合わせるように手裏剣をテンポ良く投げまくりザコ達はエビス丸に触れる事なく消えていく。

  それでもまだ止まらない勢いでザコ達が襲い掛かるが……。

  「♪たらり~ひらり~♪」

  西洋舞踏の足取りで両手を掲げ回る様に軽やかに足を動かしながらその攻撃をかわす。

  ふと片足立ちのまま体を横に反らす姿勢を取るとその間をザコ達の攻撃がむなしく通り抜ける。

  さらに海老反りの姿勢で攻撃をかわすとそのまま身を起こしその恰幅の良い体形をそのままザコにぶちかます。

  本来の姿でやっていればさぞや美しいであろうそれらの動きの全てが滑稽で笑いを誘ってしまう。

  だがまちがいなくエビス丸がその滑稽な動きを見せる度にザコ達はその数を減らしていく。

  「おお~なんだか調子乗ってきたでぇ~」

  そのえびす顔からは感じられないもののエビス丸はかなり調子を上げているようだ。

  実際先ほどに比べるとザコ達の数は恐ろしいほどに減っておりあともう一息で全滅できるほどになっている。

  そしてエビス丸自身もかつてこの姿になった時には感じられなかった奇妙な活力の充実を感じている。

  気分が乗ったのかエビス丸は思わず笛を咥えて思わず吹き鳴らす。

  「♪~!!!!」

  その調子外れな音にザコ達が悶絶し崩れ落ちていくがそれでも一部のザコ達が一斉にエビス丸めがけて襲い掛かる。

  「わわっ!?」

  迎え撃とうとしたとたん不意に足を滑らせたエビス丸。そのままそのどっしりした体で地面に大きく尻餅をつく。

  その瞬間辺り一面に派手な爆発音と地響きが響き渡る。

  再び静けさが戻った時そこには思い切り地面に尻餅をついたエビス丸以外は跡形もなく煙となって消えていた。

  「ふへぇ~、えらいな事になったけどこれでなんとかやっつけられましたなぁ~。」

  なんとか立ち上がりお尻をはたきながらもやれやれと安堵するエビス丸。

  あとはどうやって元の姿に戻るかの思案をしようとした矢先……。

  町外れの別方角から別の連中が町に向かっているのが見えた。

  しかもその中にはザコだけではなく大物そうな奴も混じっている。

  「アカン、さっすがにこりゃあ危険やでぇ……」

  さすがに細目を見開きながら慌ててしまうエビス丸。

  しかし、そこに腰に付けていた帯留めからまた新たなからくりが動く音が聞こえてくる。

  「むむっ?まさかこいつで何かできるんちゃいまっか?ちょうど気分も乗ってるとこやしこうなりゃとことんつきあいまっせー!」

  危険は迫っているが気力は十分すぎるほど充ち満ちている。

  それにこのからくりの力を借りないとこの危機は越えられないようだ。

  だったら答えは一つ。

  「おっしゃぁ!行きまっせーっ!二段…変っ身っ!」

  そう言って帯留めを握りしめるエビス丸。

  再び光の空間の中で光の輪に通されたその姿が恰幅の良い顔まで発光全身タイツ姿になり、そしてその体形が光の輪を通る中で解き放たれ新たな姿となって再生される。

  その中でエビス丸は今まで以上の力が自分に満ちているのを感じていた。

  「う……うう……うぉぉぉぉぉぉーっ!」

  光の空間の中で女性のものとも男性のものとも付かない咆吼が響き渡り、その空間が消えるのと入れ替わりに光に包まれた人影が飛び出していった。

  [newpage]

  町外れのまた別の一角。

  「ウジャ!」

  「ウジャッ!」

  「ウジャジャッ!」

  先ほどエビス丸が撃退した以上のザコ達が大挙して町に迫ろうとしていた。

  その中には一・二回りほど大きな個体も存在しその奥には明らかにその頭領らしい存在も控えている。

  もしこいつらが町に入り込んでしまったら……。

  その戦慄の宴を盛り上げる雄叫びが戦慄の序曲として響く。

  ~♪

  「ウジャジャ?」

  「ウジャ?」

  「ウジャジャ?」

  そんな流れを鎮めるようにどこからともなく響いてくる笛の音。

  澄んだ中にも研ぎ澄まされたその音色はザコ達のがなり立てる音を切り裂く様に響き渡る。

  しかし連中からすればそちらの方が騒音らしく忌々しそうな顔をしながらその音の響く方に目をやる。

  そこに立っていたのは一人の人物だった。

  その人物は静かにたたずみ横笛を吹いていた。

  異形の群れの放つ勢いに流される事も気圧される事もなく静かに、しかし凜として立ちながら笛を奏でていた。

  青い忍び装束に小手・すね当て・肩当てや胸当てを着けた姿はりりしく、頭巾越しに見える顔は一面面頬に覆われはっきりとは見えないが凜とした瞳と口元がその中から覗かれる。

  仮面の忍者戦士―そんな言葉の似合う存在が横笛を吹きながら佇んでいた。

  ただ少し違和感を感じるのはその腰元・帯留めの形がひょうきんなえびす顔を模しているからだろうか。

  しかし、そんな事に気づく事なくザコ達は忍者戦士を威嚇する様に迫る。

  「……。」

  忍者戦士は笛を吹く事こそ止めたものの微動だにせずその威嚇を受け止めている。

  「ー!」

  不意に頭領が手を振る。それに合わせる様にザコ達が忍者戦士に襲い掛かる。

  「―来いっ!」

  その姿にふさわしい様なりりしい声でそう言うと忍者戦士は笛を逆手に構えるとザコ達を迎え撃つ。

  「でやぁーっ!」

  「レターッ!」

  「レターッ!」

  「レチャッターッ!」

  一閃・一閃・一閃!

  忍者戦士の笛がうなる度にザコ達は煙となって消えていく。

  切り裂く。なぎ払う。突き立てる。

  その隙を補う様に肘打ちが、掌底が、膝蹴りがザコ達を砕きながら駆け抜ける。

  身を翻し、宙を舞い地を滑るその動きはまさに舞のごとし。

  優雅でありながら激しい動きでザコ達をいなし蹴散らしていく。

  その舞に水を差す様に巨大なザコが攻撃を仕掛け辺り一面が爆音と共に吹き上げられる。

  他のザコ達が巻き添えを食らい吹き飛ばされながら煙となっていく中で忍者戦士は空中で身を翻すと即座に手裏剣を放つ。

  手裏剣は見事に巨大ザコの関節や急所を貫き、巨大ザコはそのまま地面に倒れ大きな煙と共に消える。

  着地した忍者戦士にザコ達が襲い掛かるがその全てが再び抜き放った笛の先から伸びる細長い帯によってなぎ払われた。文字通りの一閃である。

  さらに笛を空にかざし帯を回しながら渦巻き状にその身を覆えばザコ達の攻撃はことごとく跳ね返されていく。

  「はぁっ!」

  身をかがめ渦巻きを解くや再び横凪ぎの一閃がザコを蹴散らす。

  その勢いで宙を舞った忍者戦士は帯をらせん状に回しながら別の巨大ザコに突っ込んでそのまま貫き倒す。

  消滅と同時に現れた煙を忍者戦士の描く螺旋がかき消す様に突き抜けていった。

  そしてザコ達のど真ん中で着地と同時に笛をしまいすかさず地面に拳を打ち付ける。

  「レタレタレチャッタレタレターッ!」

  その衝撃と旋風が吹き抜けたあとには静かに立ち上がる忍者戦士の姿のみがあった。

  もしここまでの一連の動きをその忍者戦士の中にいるであろう人物に置き換えたのならどれだけ美しく麗しくも鋭利・精悍なものに見えたであろうか。

  そしてついに頭領自らが戦いに立つ事になったがそこからは一進一退の勝負が続いた。

  忍者戦士が駆け抜けながら笛で切りつければ頭領はそれを自らの得物で受け流し、その勢いで飛上がりながら得物を振り落ろせば忍者戦士は飛びすさりながら頭領の足に帯を巻き付け引き倒そうとする。

  頭領が巻き付かれた足を振り上げ忍者戦士を引き倒そうとすれば忍者戦士は帯を緩めその反動で宙に舞うと雨の様に手裏剣を投げつける。

  その手裏剣の雨を頭領が振り上げた足をそのまま地面に踏み込んだ衝撃ですべて打ち消すとその衝撃を切り裂く様に忍者戦士が切り込んでくる。

  頭領が得物を突き出し忍者戦士を貫いた瞬間その姿はぼやけて消滅し頭領の背後から忍者戦士が回し蹴りを浴びせようとするのを頭領が辛くもかわして距離を取る。

  忍者戦士も頭領も互いに宙を飛び、地を駆け、拳を振るい、足を蹴り上げ、得物を叩き付けあう。

  頭領は忍者戦士の攻撃を何度も受けながらもしぶとい位に攻撃を仕掛け、忍者戦士もまともに食らえば致命傷になりかねない頭領の攻撃を紙一重でかわし返しの一撃を放つ。

  そんな攻防が幾度も繰り返されたか果てに、天高く飛上がった頭領がその勢いのまま大地に、その先にいる忍者戦士めがけてその両脚を叩き付ける!

  今回何度目かの地響きと爆煙が吹き上がる中頭領は勝利を確信し再び飛上がる―いや、飛び上げさせられたのだ。

  その腹に打ち込まれた忍者戦士の拳によって!

  「オ・サ・レ・ターッ!」

  断末魔の叫びを上げながら頭領は虚空へと打ち上げられ……巨大な煙となって消えた。

  その光景を見上げ忍者戦士はようやく戦いが終わった事を悟った。

  そこに戦い抜いた事へのねぎらいの様に朝日が静かに昇っていく。

  その輝きに照らされながら忍者戦士は思わず大きく見得を切ってしまう。

  「おおっと、こいつは朝から縁起が良いぜいっ!」

  雄々しく啖呵を切る忍者戦士の脳裏にあの傾いた義賊の姿が浮かんでいた。

  その瞬間忍者戦士の姿が光に包まれ、幾重もの光の輪の交錯の果てに青い忍び装束の少女の姿になる。

  見得を切った姿勢のまま彼女の顔がなぜか赤くなっていた事は他ならぬ彼女自身知らぬ事だった……。

  [newpage]

  その日、町は何事もなかったかの様に平和な日々を送っていた。

  何せ町外れで派手な爆音と爆煙が何度も上がったにもかかわらず殆どの人達が寝静まっていたと言うのだから。

  もちろん人々は自分達が謎の集団によって危機にさらされていた事も、それを人知れず救った存在があった事も知らない。

  もっともその後、これまで町の平和を脅かす不埒者達を懲らしめていた謎の忍者の中に恰幅の良い忍者や鍛え抜かれた戦士が増えたらしいと言う噂や瓦版が町中で飛び交っていた。

  そんな瓦版をエビス丸は苦笑しながら目を通していた。

  そんな中不意に本名―もしくは表の名で呼んだ知人に話題を振られ思わず戸惑ってしまうがなんとか呼吸を整えると、

  「そんな人が本当にいたら色々お礼を言わないといけませんね。」

  と笑いながら三色団子を口に運んでいた。

  その姿は先端を軽く縛った髪を除けばまさしくごく普通の町娘のものだった。

  ―こうしてとりあえず今日もまた平和な一時が町の中に流れている。

  エビス丸もそんな流れの中で息づきながら影でそれを守りつづけるのだろう。

  奇妙な縁で手にした新たな力と共に。

  そんな中、緑の髪を先端だけ縛った若い女性が件の瓦版を一枚手に取り意味深な顔で見つめていた事をその時のエビス丸は知るよしもなかった……。

  了

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