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病魔 感染編

  [chapter:未経験者]

  とある日。シリウス小隊が待機所にてビッグワンの点検終了まで待機をしていた時の事。

  「へ…、へ…、へっしゅん!!!」

  「「「っ?!」」」

  突然のくしゃみ音に驚いた一同が一斉に振り向いた。

  「うわ~ビックリした」

  「だ、大丈夫かい、ルイ?」

  「くすん………驚かせてごめんなさい…」

  「ひょっとして風邪かい?」

  「どうかしら、花粉症も捨てきれないけど…」

  有紀とルイのやり取りを聞いて、トランプをしていたデイビットがあることを思い出す。

  「そういえば……最近ディスティニーで新型の風邪が流行しているって聞いたぜ」

  「新型の風邪?」

  「くすん……なにそれ」

  「なんでも、あんまり薬が効かないって話だぜ」

  「え?!そうなのかい?!」

  「嘘でしょ…」

  「大マジだ。実際、SDF内でも流行ってきているってよ。確か…リゲルの連中が集団感染しちまって小隊休暇になっているはずだぜ」

  「マジですか…」

  「くすん……知らなかったわ」

  3人の会話を珈琲を啜りながら聞いていたバルジは、少し気がかりになり指示を出した。

  「ルイ。念の為、今からユキに薬を処方して貰ってこい」

  「え?!でも…まだ今はくしゃみだけですよ?」

  「こういうのは初期対応が大切だ。SDF隊員たるもの体調管理を徹底しろ」

  「……分かりました。今から行ってきま……へっしゅん!!!」

  指示を受けたルイは脱力したまま待機室を後にした。

  「隊長、ルイは大丈夫でしょうか」

  「今のところくしゃみだけだからな。何とも言えん」

  「心配なら付き添ってくるか?学」

  「え?な、なんで俺が付き添いをしないといけないんだよ!」

  「だって~おめぇらほぼ付き合っているみたいなもんだろう?」

  「なっ?!そ、そんなことはないよ!こんな時に変な冗談はやめてくれよ!」

  「へいへい。にしてもよ、もしアイツが風邪なら俺たちも気をつけねぇとやべぇな」

  「そうだよな。風邪って一度拗らせると結構辛いしな」

  「んだな。熱は出るし、めまいはするし、頭は痛ぇし…」

  「場合によったら、腹痛や関節痛とかもあるよな」

  「それな。おまけに強烈なだるさが付属されちまって、数メートル動くこともままならないよな」

  「確かに……」

  二人の会話を黙って聞いていたバルジは首を傾げて不思議そうにぼやいた。

  「ほぅ……風邪とはそんなに難儀なものなのか」

  「なに言ってんっすか、隊長」

  「そうですよ。隊長だって風邪を経験したことありますよね?」

  当たり前という風に二人が問いかけるとバルジはそっと目を逸らしていた。

  そのあまりの不審な態度に二人は徐々に表情を一変させる。

  「バルジ隊長。まさかですけど……風邪を引いたことが無いとかないですよね」

  「………」

  「そう言えばデイビット。以前、隊長は入隊してから一度しか自己休暇申請したことないって言ってなかったかい?」

  「そうだぜ。私用目的で一度だけな。それがどうした?」

  「確か…SDFの自己休暇申請って病欠も含まれるよな」

  「今更何言ってんだ。そんなん………ん?ちょっと待てよ」

  「…………」

  「ってことはつまり……入隊してから13年。一度も病欠をしてことがねぇってことか!」

  「………やっぱり、そうなるよな」

  驚愕な真実が二人を動揺させている中、まるで化け物を見るような視線に少し引きながらバルジが返答した。

  「べ、別にそんなに珍しいことではないだろ。体調管理を徹底していれば、自ずとそうなるぞ」

  「それはそうかもしれませんけど……」

  「んなら!入隊前はどうですか?流石に子供時代から体調管理を徹底していたなんてことないっすよね」

  「子供時代か……言われてみれば病気にもなった覚えがないな。もしかしたら体質的に罹りにくいのかもしれん」

  腕を組んで天を仰ぎながらボソッと告げた事に二人はより驚愕した。

  「おいおい…マジかよ」

  「凄い……体質までSDFに適しているなんてことあるんだな」

  「いや…普通はねぇよ。こりゃ仕事の鬼って言われるもの無理ねぇぜ」

  「確かに……いっその事、SDFの鬼神って言った方がいいかも」

  「『鬼神』って…鬼の神かよ。それまた恐ろしい二つ名だぜ」

  二人からのあまりの言われようにムッとするが、少しため息を吐いて返答した。

  「はぁ……何とでも言え。しかし過去がどうであれ、我々はSDFだ。お前達も体調管理には充分に気をつけろよ」

  「了解」「了解~」

  一通り話が纏まる中、待機所内に業務放送が流れた。

  『G8001 点検終了。シリウス小隊、所定位置に移動願います』

  「お!どうやら点検が終わったみてぇですね」

  「そのようだな。よし、これよりビッグワンへ向かう。有紀」

  「はい?」

  「少し遠回りになるが、医局へ行って二人を呼んできてくれ」

  「了解!」

  その後シリウス小隊はビッグワンに乗り込み、そのまま定期パトロールへ出場した。

  夕方になり、ビッグワンがディスティニーに帰還すると、車両所で点呼を行った。

  「では、以上で本日の勤務終了だ。各自解散」

  「「「了解」」」「了解…」

  点呼が終了してもルイが気力のない表情をしていることに心配になった有紀が声を掛けた。

  「ルイ、なんだか顔色が悪いけど、大丈夫かい?」

  「なんか……ちょっと……寒気がしてきて……」

  「え?!ちょっと…それってヤバいじゃないか!」

  「げほっ…げほっ……やっぱり…これって……花粉症じゃないのかしら…」

  「どう見たって花粉症とは違ぇだろ。マジで風邪を拗らせたんじゃねぇか」

  男二人が不安に感じる中、ルイの体調の異変に対してバルジが指示を出した。

  「ユキ。すまんが、ルイのメディカルチェックを頼む」

  「分かりました。ルイさん、そこの段差に腰掛けてください。軽く診察をします」

  「了解……」

  ルイが近くの段差に腰掛けるとユキは軽い診察を始める。

  一同が見守る中、おでこに手を当てたユキは驚きの表情を見せた。

  「はっ!た、大変です。熱が40℃もあります」

  「よ、40℃?!」

  「マジかよ!ガチで拗らせているじゃねぇか!」

  男二人が動揺しているのに対して、指揮官であるバルジは冷静にユキへ尋ねた。

  「高熱か。それは今流行っている新型の風邪の初期症状なのか?」

  「今は断定はできませんが恐らく。あとで採血をして確認してみます」

  「頼む。それにしても……風邪か。感染経路は?」

  「接触感染もありますが、大半は飛沫感染によるものだと思います」

  「飛沫……か。それはまずいな。デイビット、有紀!」

  「「はい?」」

  「お前達は速やかにうがいと消毒をしてこい。ユキはルイを車椅子で医療室まで運んで処置を頼む」

  「分かりました」

  「了解!」

  「そんで、隊長はどうするんですか?」

  「俺もうがいと消毒をするが、先に医局へビッグワンの指令室と待機室の消毒依頼をせねばならん」

  「消毒依頼っすか?偉い大げさですね」

  「飛沫感染で恐ろしいのは集団感染だ。密閉された空間ほど危険度は増すからな」

  「なるほど……確かにそうっすね」

  「変な関心をしておらんで、早く行け。それと、有紀!」

  「は、はい?」

  「潜伏期間中はルイとの接触を禁ずる。勿論、見舞いも同様だ」

  「え?!な、何でですか??」

  「今回は飛沫感染の危険があるからだ。ユキはセクサロイドだから問題ないが、お前は生身の人間だからな」

  「そ、それはそうですけど……ちょっと警戒しすぎじゃ…」

  「こればかりは小隊全体に関わるからな。同期で心配なのは分かるが、理解してくれ」

  「……分かりました。バルジ隊長」

  「宜しい。お前も風邪への予防を徹底しろ。いいな」

  「了解」

  その後、シリウス一同は消毒作業を行い、ルイは医局で検診を受けることになった。

  一連の手配を終えたバルジが待機室で事務作業を行っていると、隊長デスクの固定電話が鳴り響く。

  ピロロロ、ガチャ

  「はい、こちらシリウス小隊」

  『ユキです。ルイさんの検査結果が出ましたので、ご連絡しました』

  「そうか、それで結果は?」

  『はい、やはり新型の風邪でした。現在は落ち着いていますが、薬の効果が期待できませんので、対処療法になります』

  「そうか…復帰までどのくらい掛かりそうだ?」

  『早くて3日、長くて1週間ほどになると思います』

  「そんなに掛かるのか…ルイは医務局で入院か?」

  『いいえ、他の隊員同様で、自室にての療養です』

  「分かった。なるべく我々は接触を控えるから、手が空いている時ルイの看病を頼む」

  『分かりました。隊長も気をつけてください』

  「了解した。では失礼する」

  ガチャ

  「はぁ……長くて1週間か。風邪とはなんとも厄介だな」

  顎杖をついて思い悩むが、考えてもどうにもならないことに思わず苦笑をする。

  「まぁ……人間である以上、仕方がないことだな。さて、俺もさっさと済ませて早めの休息を取るか」

  その後、早々に報告書の作成を済ませて、その日の業務を終了した。

  [newpage][chapter:病魔の感染]

  時が流れて、3日後。

  「皆さん、この度はご迷惑をおかけしました!」

  一同の前で深々と頭を下げたのは病欠だったルイ。

  体調が早々に回復し最短で復帰を果たした。

  「たく、心配させやがって」

  「でも、元気になってよかったよ」

  「ユキが何度も看病に来てくれたの。おかげでこんなに早く全快したわ。ありがとうね、ユキ」

  「いいえ、ルイさんが頑張ったからですよ」

  一同との会話を終えると、ルイは隊長デスクで腰掛けているバルジの元へ向かった。

  「バルジ隊長、長いことお休みをしてしまってすみませんでした」

  「別に謝る必要はない。それで本当に体は大丈夫なのか?」

  「はい!もう元気いっぱいなので大丈夫です」

  「そうか。だが病み上がりに変わりない。無理をしないようにな」

  「はい!」

  状態確認を終えて安堵していると、突然、待機室内に放送が流れた。

  ブーーー、ブーーー、ブーーー

  『乙女座宙域にて、隕石群発生。シリウス小隊に緊急出場要請。直ちにビッグワン出場願います』

  「復帰早々、いきなりかよ」

  「これは私の出番ね」

  「頼りにしているよ」

  「無理はしないでくださいね」

  シリウス一同が会話している中、バルジは号令を掛ける。

  「よし、シリウス小隊スクランブル。直ちにビッグワンへ向かえ!」

  「「「「了解!!!」」」」

  急ぎでビッグワンに乗り込むと、バルジが発進コールを始める。

  バルジ「システムチェック」

  デイビット「システムチェックスタンバイ」

  有紀「全武装システム、異常なし」

  ルイ「通信・レーダー、異常なし」

  ユキ「ミッションデータダウンロード完了」

  デイビット「メインボイラー接続点火」

  オペレーター『ビッグワン第四総装備にて出場』

  オペレーター2『第四装備スタンバイ』

  ルイ「上昇フロート固定確認」

  有紀「スペースイーグルクルー配備完了」

  バルジ「微速進行、出場位置へ」

  デイビット「微速進行」

  有紀「磁力シールド発生機関、正常値へ」

  デイビット「エネルギー正常、ボイラー内圧力上昇、シリンダーへの閉鎖弁オープン、臨界まであと02」

  オペレーター『38番線発進スタンバイ』

  オペレーター2『ビッグワン発進を許可します』

  ルイ「発進許可確認」

  デイビット「ボイラー内出力120%」

  バルジ「メイン回路へ接続」

  デイビット「接続」

  有紀「システムオールグリーン」

  すべてのチェックを確認したバルジが発進号令を放つ。

  「ビッグワン、発進!」

  ポォーーーーーーー!

  白い煙を吹き出し、宇宙へとビッグワンは飛びたった。

  その後、大量の隕石群の処理を完了し無事にディスティニーに帰還した。

  報告書作成の為、待機室で黙々作業をしている中、バルジの手が止まっていた。

  (何だ……この気だるさは。任務中はどうもなかったのだが……)

  帰還してから急激に全身に気だるさを感じ、自身の不調に思い悩んでいた。

  「…隊長。バルジ隊長!」

  「…………ん、なんだ…有紀?」

  「あの…報告書の作成ができましたので、確認をお願いします」

  「あ?あぁ……もう出来たのか。今確認するから、少し待ってくれ」

  「はい…」

  いつもの覇気がないまま報告書を受け取る様子をみたデイビットとルイも不安に感じ始めていた。

  「なんっか、いつもと違ぇな…隊長」

  「ひょっとして…体調でも悪いんですか?」

  「おいおい、隊長が体調不良ってか?笑えないギャグだぜ」

  「もう!真面目な話よ、デイビット」

  「ぎゃはは、悪ぃ悪ぃ」

  二人が雑談をしている中、手渡された報告書を眺めながらバルジはボソッと返答した。

  「別に心配はいらん……少し気が抜けただけだ」

  「そうっすか?俺にはそんな風に見えませんけど」

  「本当だ。そんなこと気にするよりも、有紀を見習って速やかに報告書の作成をしてくれ」

  「了解~」「分かりました…」

  指摘を受けた二人が再び作成作業に戻る中、目の前にいる有紀が心配そうに尋ねた。

  「でも……本当に無理をしていませんか?」

  「………ん?別に無理はしておらん」

  「そうでしょうか……」

  未だに心配そうに言葉を漏らす様子を見かねたバルジは確認作業を中断して顔をみて尋ねた。

  「……なぁ有紀。何故そんなに俺の体調を気にしているのだ?」

  「え?な、なんで…そんなことを聞くんですか?」

  「……いや、何か心当たりでもありそうな顔をしていたからな」

  思っている以上に真剣な瞳で尋ねられた事に、有紀は観念して説明を始める。

  「……はぁ、バルジ隊長は鋭すぎますよ」

  「お世辞はいい。で、何をそんなに気にしているのだ?」

  「以前、風邪を引いたことがないって仰っていたじゃないですか」

  「……なるほどな。未経験者だから心配になったと言いたいのか」

  「………否定は……しませんけど」

  少し目を逸らしながら告げた台詞にバルジはそっとため息を吐いた。

  「はぁ……全く。確かに未経験者だが、俺は小隊長だぞ。知識も多少なりあるから心配はいらん」

  「そう…ですか。でも……」

  「あまり気にするな。あと…報告書の内容は問題なしだ。このまま提出で受け取るぞ」

  「へ?あ、ありがとうございます…」

  不安が拭いきれない有紀だったが、それ以上言うことがなく、そのまま自席に戻った。

  有紀との会話を終えると、忘れていた気だるさが再来した。

  (くそ……またこのだるさか。しかし有紀に心配されるようでは小隊長失格だ。これは…業務終了まで気を抜かん方が良さそうだ)

  その後、気だるさを誤魔化しつつ、止まっていた手を無理矢理動かして報告書の作成を完了させた。

  勤務終了時間を迎えると、バルジは一同に解散宣言を行う。

  「では……これで、今日の勤務は終了だ。各自解散…」

  「「「了解」」」

  解散した直後から、バルジの中では不調が最高潮を迎えていた。

  (……いかん……だるい。これは早く帰って……早々に休息をした方がいいな)

  少しふらつきながら待機室を出ようとすると、有紀が思わず声を掛けた。

  「あの……バルジ隊長」

  「………なんだ、有紀」

  「その……かなりふらついていますけど……大丈夫ですか?」

  「………大丈夫だ」

  「そうは見えませんけど」

  「まぁ……確かに…疲労が溜まっていることは認める。だから……帰って休息を取ってもいいか?」

  「へ?あっ、そうだとは知らず呼び止めてすみませんでした」

  「別に……気にしておらん。では…失礼するぞ」

  「は、はい…。お疲れ様でした」

  会話を終えると、バルジは軽く手を振ってそのまま待機所を後にした。

  残された一同は一連の会話に対して雑談を始める。

  「………見た?今の隊長。大分お疲れのご様子だったわね」

  「ありゃ相当疲れが溜ってるな」

  「うん。でも……本当に疲れているだけなのかな…」

  「有紀くん、それどういう事?」

  「なんか心当たりでもあるのかよ?」

  二人が不信に感じて尋ねると、有紀は思い詰めたように心中を語り出した。

  「いや……実はさっきのバルジ隊長を見ていたら、昔の父さんを思い出したんだ」

  「お父さんって有紀隊長のこと?」

  「有紀隊長がどうかしたんかよ?」

  「うん。父さんもバルジ隊長と同じで風邪を引かないタイプだったんだ」

  「え?そうだったの?!」

  「マジかよ。んなら、風邪への心配はゼロだな」

  「……そうでもなくてさ。ある日、任務終えてタビトの実家に帰ってきたときに軒先でぶっ倒れたことがあったんだ」

  「あの有紀隊長が?!」

  「なんで…ぶっ倒れたんだよ?!」

  「どうも…風邪を引いている自覚がなくて、無理をしたせいで病状が悪化しちゃったんだよ」

  「う、嘘でしょ?!」

  「おいおい……いくら何でも鈍感すぎだろ!」

  「そうなんだよ。後から母さんに聞いたら、隊長として責務があったとか何とか言って無理をしちゃってさ。呆れた母さんがお説教をしていたよ」

  「あのカンナさんが怒ると凄そうね」

  「だな。で、学は何をそんなに心配してんだ?」

  「その時の父さんの様子がさっきのバルジ隊長と凄く似ててさ。それで心配になったんだ」

  説明を一通り聞いた二人は一定の理解をした。

  「なるほどな。確かに可能性がゼロじゃねぇな」

  「そうね。なら、今からユキに診察依頼をした方がいいかしら?」

  「いんや。あの性格じゃ、ぜってぇ断るだろ」

  「……それもそうね。じゃあ…どうするの?」

  「とりあえず明日まで様子見でいいんじゃねぇか?」

  「ヤケに呑気ね」

  「そんなつもりはねぇよ。どっちにしても発熱してからある程度時間をおかねぇと検査もできねぇだろ?」

  「…それもそうね」

  「そうだな。とりあえず今日は俺たちも帰ろうか」

  「だな」

  心に不安が残ったまま一同は解散し、各々は寮へと戻っていった。

  一方その頃、当時者のバルジはふらつく体で自身の自室に到着していた。

  「はぁ……はぁ……はぁ……くっそ……やっと……着いたか」

  (いかん……途中からめまいまでして……吐き気がする。おまけに節々まで痛み出して…力が入らん)

  「これは……流石に……まずいかもしれん。………仕方がない。手間をかけるが……ユキに相談をするか」

  デスクに手をついた状態でポケットから徐に携帯を取り出した。

  震える手でボタンを操作しようとした瞬間、今までにない強烈な頭痛が走った。

  「ぐぁっ……はぁ…はぁ…なんだ……頭が……クラクラする」

  必死にその場で治まるのを待つが、回復の兆しはなく、それどころか次第に視界が歪みだした。

  「あ………だ……め……だっ…」

  ガタン……ドサッ!!!

  カラカラ……

  静かな自室には大きな物音と、軽い金属音の二つの音が木霊した。

  【次回予告】VOICE デイビット

  いつもの朝を迎えた俺たちだったが

  いつまで経っても隊長の姿が見えねぇ

  こりゃ…嫌な予感がするな

  次回、『病魔 発症編』

  俺たちは次の駅で誰かの病状を知る。

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