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赤と黒のクリスマス 後編

  [chapter:職務と休暇]

  翌日。

  早朝、バルジは着替えを済ませて、天空公園へ訪れていた。

  「はぁ……結局殆ど眠れなかった。おまけに食欲もない。これは…いよいよまずいな…」

  脱力した体は片手にトマトジュースだけ握りしめて空を見上げていた。

  (こんな調子で一日乗り切れるだろうか…。本音を言えば休みたいところだが、今日はクリスマスイブ。毎年事件が起こることを考えると休暇をしている場合ではないな)

  「はぁ……せめて足を引っ張らないように努力しなければな」

  無垢な瞳でぼやいていると、唐突に声が聞こえた。

  「こんなところで何をしている?」

  聞き慣れた声でゆっくり振り向くと、そこには私服姿のローレンスが立っていた。

  「……ローレンス?どうした、そんな私服で」

  「今日は休暇だ。私服でいても不思議ではないだろ」

  「休暇?お前、今日が何の日か理解しているのか」

  「クリスマスイブだろ」

  「ならば、毎年この日に事件が発生しやすい事も分かっているよな」

  「あぁ。だが、だからと言って休暇を入れてはいけないという規程はない」

  「……確かにそうだな」

  正論を突きつけられて言い返せなくあると、ローレンスが話を変えた。

  「ふん。ところで今朝食堂に居なかったが、朝食は食べたのか?」

  「……いいや。食欲がないからな。抜いた」

  「は?お、お前な!朝食を抜くとは何事だ。体調管理を徹底するのもSDFとしての心得だろ!」

  (また説教か。鬱陶しい……)

  口を開くと説教が降り注ぐ状況に嫌気が指したバルジはトマトジュースを飲み干して立ち上がった。

  「……分かったよ。ならばレーションでも無理やり腹に入れておくよ」

  「は?お前何を言っている?」

  「そのままの意味だ。別に栄養さえ取れれば問題ないだろ。悪いが俺は仕事なのでな。休暇のお前ほど暇ではないのだ。失礼する…」

  「お、おい!ちょっと待て!」

  早々に立ち去ろうとするバルジの手を取ろうとすると、思いっきり払い除けた。

  バチン!

  「なっ?!」

  意外な反応にローレンスが驚くと、振り向いて軽蔑した瞳で告げた。

  「悪いが、今は機嫌が悪い。無闇に触れないでくれ」

  「あ……そうか。悪かった」

  「では、失礼する。よいイブを」

  何処か恨みの籠もった声で捨て台詞を吐くとバルジはその場から去った。

  残されたローレンスは叩かれた手を見つめて首を傾げた。

  「あいつがあそこまで不機嫌なのは珍しいな。任務に影響が出なければいいが。さて、今日は忙しくなるな」

  疑問に感じたものの、気にせずに気持ちを切り替えてローレンスもその場を去った。

  勤務時間となり、シリウス一同が待機所で待機していると何とも言えない殺気が漂っていた。

  「なぁ…デイビット。なんか…すごい殺気を感じるのは気のせいかな?」

  「奇遇だな学。俺も感じる。それもかなりドス黒い殺気がな」

  「やっぱり…気のせいじゃなかったんだ」

  「これに気づかないようならある意味でSDFを辞めた方がいいぜ」

  「……そうだよな」

  二人がそっと視線を移すと、隊長デスクには怒りの感情がむき出しになっているバルジがいた。

  不審に感じていると、珈琲を持ったルイが声を掛けた。

  「隊長、朝からどうしたんですか?」

  「……ん?いや…別に」

  「別にではないですよ。何かあったんですよね」

  「お前には関係ない。気にするな」

  「気になりますよ。だって見てください。怒りのあまり殺気が漂ってそこの二人が震えていますよ」

  「……なに?」

  ルイの忠告にふと前を向くと、顔面蒼白で見ているデイビットと学と目が合った。

  意外な雰囲気に正気を取り戻したバルジはゆっくりと息を吐いた。

  「はぁ……すまん。無意識だった」

  「ようやく気が付いて良かったです。ついでに理由を聞かせて頂けますか?」

  「いや…少し頭にきただけだ」

  「と、いいますと?」

  「実は今朝ローレンスに会ってな。このくそ忙しい日に休暇だそうだ」

  「へぇ~あのローレンス隊長が珍しいですね」

  「そうだな。あいつの無責任にも困ったものだ」

  「本当にそうかしら…」

  「ん?どういう意味だ」

  「よく分かりませんけど、なんか変な感じがして…」

  「なんだ、その根も葉もない根拠は…」

  首を傾げているルイに対して無垢な瞳で尋ねていると、傍観していた学とデイビットも参入した。

  「ルイ、それって何か根拠があるのかい?」

  「よく分からないけど…何となくそんな気がしたのよ」

  「なんだよそれ」

  「そりゃ女の勘ってやつだな」

  「何を馬鹿馬鹿しい事を。下らない話はこれで終いだ。言っておくが、今日のケフェウスは当てにならん上にあの寝狐集団も小隊で休暇だ。間違えなくあの司令は我々に面倒事を押しつけてくる。気を引き締めておけよ」

  「「「了解…」」」

  バルジからの説明にシリウス一同がげっそり肩を落としている最中、ご期待に応えるように館内ブザーが鳴動した。

  ブーーー、ブーーー、ブーーー

  「恒星エグザ周辺を走行するサンタエクスプレスが謎の集団に襲撃を受けています。シリウス小隊に緊急出場要請!」

  (((あ……噂をすれば何とやら…)))

  (司令…タイムリー過ぎです)

  能面のような顔で確認した一同にバルジは気持ちを切り替えて命令を下した。

  「これよりビックワンへ向かうぞ」

  「「「了解!!!」」」

  シリウス一同は急ぎ足で向かい、早々にシステムチェックを済ませ、バルジが発進号令を掛けた。

  「ビックワン、発進!!」

  ポォーーーーーーー!

  ビックワンは白い煙を吹き出し、動輪を加速させて宇宙へと飛びたった。

  [newpage][chapter:サンタエクスプレス]

  現地に急行するビックワン司令室では学が隣のデイビットへ質問した。

  「なぁ、ずっと気になっていたんだけど、サンタエクスプレスってなんだい?」

  「いい質問だなっと言いたいところだが、実のところ俺も知らねぇよ」

  「え?!そうなのかい?」

  「なんだよ。知っていると思ったのか?」

  「だって、俺よりもSDFの経験年数が長いじゃないか」

  「おめぇな、銀河鉄道管理局が何本列車走らせていると思ってんだよ」

  「それはそうだけどさ…」

  「俺よりも隊長の方が知っていると思うぜ。ですよね、バルジ隊長」

  デイビットの問いかけで一同が注目すると、バルジはぶっきらぼうに応えた。

  「知らん」

  「「「え?」」」

  「サンタエクスプレスという列車が秘密裏に運行しているとは聞いたことがある。だがダイヤや行き先はトップシークレットの上、ステルスで運行しているから車体すら見たことはない」

  「え?!そんな極秘列車なんですか?」

  「あぁ。だから未だにミッションデータが送られてきていないのだろ。恐らく、どう対応するか上層部が頭を抱えているのだろ」

  「え……それはまた難儀ですね。こんな時はこれだな」

  デイビットは徐にお馴染みのコインと取り出し、コイントスを行った。

  チャリーーーン、パシン!

  手の甲に納めたデイビットがゆっくり手を上げると…

  「おっ!今日は表だ」

  横でコインの結果を見守っていた学は安堵の息を漏らした。

  「ふぅ…良かった」

  「なんだ?心配していたのかよ」

  「だって、デイビットのコイン占いはよく当たるじゃないか」

  「そりゃそうだけどよ。所詮占いだぜ」

  「だったら、毎度毎度やるのはやめてくれよ」

  「そりゃ無理だな」

  「なんでだよ」

  「大人の事情だからな」

  「はぁ…意味が分からないよ」

  デイビットの説明にげっそり肩を落としていると、管理局から緊急入電が入った。

  「隊長、藤堂指令より緊急入電です」

  「メインモニターへ繋げ」

  「了解」

  バルジの指示でルイがパネル操作を行うと、正面に藤堂が映し出された。

  『バルジ、突然ですまんな』

  「いえ。それで御用件は?」

  『先程、管理局上層部から正式に通達がきた。今回に対処にて火気の使用を禁ずるとのことだ。ビックワンの武器は勿論、コスモガンの使用も不可だ』

  「……は?」

  唐突な発言に思わず乾いた声が漏れた。

  数秒硬直をしたのち、バルジは即刻抗議の声を上げた。

  「ちょ、ちょっと待ってください!既に列車は襲撃を受けているのですよね?!」

  『あぁ。確かに襲撃を受けている上に、車内にまで侵入されていると連絡がきている』

  「ならば事態は一刻を争います。それで武器の使用を禁ずるとはどういう事ですか!」

  『それはこの列車がサンタエクスプレスだからだ』

  「と、いいますと?」

  『この列車には大量のプレゼントが積み込まれている』

  「だから何ですか」

  『銀河サンタ連盟からの通達だ。プレゼントは何があっても死守しろとな』

  「何を馬鹿な……物よりも人命が最優先ではありませんか!」

  必死に訴えるバルジに対して、藤堂は気が抜けたように応えた。

  『恐らくその心配は要らん』

  「なんですと?どういう事ですか」

  『犯行グループの目的が殺人ではないということだ』

  「心当たりでもあるのですか?」

  『まぁな。だが私が告げるより現場を見た方が早いだろ。とにかく火気は厳禁で頼む。今、ビックワンに新たなミッションデータを送った。速やかに彼らを鎮圧してくれ』

  「は?!ちょ、それはどういう事で」

  ブツン…

  質問を最後まで聞かずに藤堂は強制的に通信を切った。

  話を聞いていたシリウス一同からもあまりの無責任な指示に怒りの声が漏れた。

  デイビット「火気厳禁って……マジで言ってるのかよ」

  学「流石にあんまりじゃないか」

  ルイ「それにプレゼントを死守って意味が分からないわ」

  ユキ「隊長、藤堂指令が仰っていた彼らとはなんのことでしょうか?」

  バルジ「知らん。相変わらず言葉が足りないお方だからな。こうなれば直接現場に行って状況を確認するしかないだろ」

  デイビット「隊長、マジで行くんですか?」

  バルジ「ここで諦めてどうする?」

  デイビット「そりゃそうっすけど…」

  バルジ「これも任務だ。割り切ってするしかない」

  「「「はぁ…了解」」」

  依然として不安が払拭できないままビックワンはワープを繰り返し、現場に到着した。

  現場を確認すると、赤と白のサンタエクスプレスの後方に黒色の列車が連結して停車をしている。

  「どうやら、あの漆黒の列車が犯行グループのようだな」

  「みたいだな。でもなんで連結して停車しているんだろ…」

  「さぁな。で、隊長!これからどうしますか?」

  同じく状況を見たバルジはぶっきらぼうにデイビットへ指示を出した。

  「デイビット、ビックワンをサンタエクスプレス横に並走して停車。そのまま連結をしてくれ」

  「え?!いきなり連結して乗り込むんですか?!」

  「隊長、流石にそれは軽率なのでは…」

  「そうですよ。それで乗客が殺されたりしたらやばいですよ」

  「何をいう。ミッションデータに従っているだけだぞ」

  「「「は?!」」」

  一同が慌ててミッションデータを再確認すると、確かに『現場到着後、並走で停車。連結して車内確認』とある。

  「ま、マジかよ…」

  「何よ。この有紀くんが考えそうな命令」

  「ルイ、それはどういう意味だよ」

  「お前ら、無駄口を叩くな。これより連結作業を行う。完了次第、乗り込んで車内の確認を行うぞ」

  「「「了解」」」

  依然として状況が読み込めないまま、連結を済ませてユキ以外のシリウス一同がサンタエクスプレスに乗り込んだ。

  バルジを先頭に車内を進む中、デイビットが質問をした。

  「隊長、今更ですけど、本当に大丈夫なんですか?」

  「何がだ」

  「今回の作戦ですよ。本当にコスモガンをおいてきてしまいましたけど…」

  「何を言ってる?代わりに麻酔ガンを携帯しているではないか」

  「そりゃそうですけど、もし麻酔が効かない化け物が襲ってきたらどうするんすか!」

  「その時は運に任せるしかないな」

  「ちょ、マジでかよ!」

  「大マジだ」

  あまりに無責任な台詞にデイビットが文句を言っている最中、後方から同行しているルイと学がコソコソ話を始める。

  『ねぇ有紀くん、今回の任務どう思う?』

  『どうって…情報が殆ど無いから判断できないよ』

  『ですよね。藤堂指令も無責任だけど、今のバルジ隊長のメンタルで乗り切れるかしら…』

  『それ、俺も心配だよ。はぁ…大した事がないといいけど』

  『そうね。クリスマスイブに殉職はしたくないわね』

  『激しく同感だよ」

  若手二人が変な不安を抱える中、車内を捜索すると隣の車両から声が聞こえる。

  「……ん?どうやらここのようだな」

  「そうみたいですね」

  「どんな状況なのかしら」

  「無事ならいいけど…」

  貫通扉前に立つと、バルジは一同に指示を送る。

  「よし、俺とデイビットが先行する。有紀とルイは万が一の場合に備えて後方支援を頼む。状況に応じては麻酔ガンの使用を許可する」

  「「了解」」

  相互確認を済ませると、バルジはデイビットにアイコンタクトを送り、貫通扉を開けた。

  『じゃから!ワシらこそが元祖のサンタじゃ!!!』

  『五月蠅い!我々が本家サンタだ!!!』

  扉を開いて聞こえたのは赤色の帽子を被った小人と黒色の帽子を被った小人からの罵声。

  もの凄い剣幕で言い争っている現場を直視したバルジとデイビットは思わず硬直してしまった。

  数秒間、硬直していると、言い争っていた総勢30人の小人達が一斉に一同の方へ向いた。

  『なんだお前ら??』

  『急になんの御用じゃ??』

  依然として怒りの視線で睨んでくる小人にバルジが応えた。

  「あ……我々はSDFシリウス小隊です。銀河鉄道管理局より謎の集団から襲撃を受けたと通報を受けましたので、駆け付けました」

  『通報?そんなのしたのか?』

  『そういえば…新入りが運転台でそんな連絡をしていたのぉ』

  『たく…人騒がせな新入りだな』

  『それはお主らがなんの予告もなく乗り込んできたからじゃろ!』

  『うるせいよ。毎年毎年ニコニコしながらプレゼントを配りやがって!』

  『当然じゃ!それがワシらの生きがいなのじゃからな』

  『そうやって餓鬼共を甘やかすから碌な大人にならないんだろうが!』

  『なんじゃと!!』

  再び話がヒートアップするリーダー格の小人達にバルジが制止させる。

  「ちょ、ちょっと落ち着いてください。とりあえず事情をご説明して頂けませんか?」

  バルジからの要求にリーダー格の二人が渋々事情を説明した。

  しばらく話を聞いたバルジは呆れ顔で話を整理した。

  「要するに……あなた方はどちらも銀河サンタ連盟の所属するサンタクルーで赤の帽子を被っているサンタクロースが良い子にプレゼントを配布する担当で、黒の帽子を被ったブラックサンタクロースが悪い子を懲らしめる担当をそれぞれが担っていると」

  「うむ」「そうじゃ」

  「そして長年続けている内にサンタクロースだけが子供から愛されるのが気に入らない…と」

  「うむ」「そうじゃ」

  「それで…我慢が爆発したブラックサンタクロース一同が報復も兼ねて抗議の名目でこの列車を襲撃した…と」

  「その通りじゃ!」「流石に理解が早いの!」

  「はぁ……なるほど。状況は理解した」

  (いかん。急激に頭痛がしてきた……)

  頭を抱えて苦悩しているバルジを横にシリウス一同も呆れ果てていた。

  「つまり…ただの仲間内での言い争いってことかよ!」

  「まさかサンタさん同士で喧嘩をするなんて…」

  「藤堂指令もこれを理解していたってことかしら。だったらせめて説明をして欲しかったわ」

  「だな…」「確かに…」

  シリウス一同が若干怒りを覚えると、腕を組んでいたバルジがぼそっと呟いた。

  「しかし本当にサンタがいるとはな……ファンタジー世界だけの生物だと思っていた」

  「何いってるんですか。隊長だって子供の頃、サンタさんからプレゼント貰ったことあるでしょ?」

  「…………」

  デイビットからの問いかけに何処か遠くを見据えて黙っている姿に学が恐る恐る確認した。

  「あの……隊長。もしかして…サンタさんからプレゼント…貰ったことないんですか?」

  「………悪かったな。貰ったことがなくて」

  『『「「「えぇーーーー?!?!?!」」」』』

  意外な発言にシリウス一同を初めとしてサンタ一同の驚きの声を漏らした。

  予想以上に驚きの声だった為、思わず弁解をした。

  「な、何もそこまで驚くことではないだろ!これだけ広い銀河ならばサンタがいない星など多くあるはずだ」

  「いやいや、何のために銀河サンタ連盟があると思っているんですか!人が住めない星なら分かりますけど、大体の子供にはどっちかのサンタは来ますって!」

  「知らん。赤も黒も来た覚えはない。それに別に来なくてもこうして大人になれているのだから問題ではないだろ」

  「そりゃ…そうですけど」

  ド正論を突きつけられデイビットが言葉を詰まらせていると、目の前のサンタ一同が急激に涙を浮かべていた。

  『ぐすっ…ぐすっ…』

  『ぐすっ…ぐすっ…』

  「なっ…今度はどうした?!」

  『ぐすっ…いや…サンタを知らぬまま大人になったお方がいたことが…悲しくての…』

  『それに…こんな立派な大人に成長されているのに…一度もプレゼントを貰えてないとは…気の毒じゃ』

  「いや……他人にそこまで泣かなくても…」

  「隊長、これって完全に同情されていますよ」

  「無理もねぇ。俺だって初めて見たからな」

  「私も初めてだわ。隊長、よく大人になれましたね」

  「大きなお世話だ!それに俺の過去の思い出よりも、今はこの状況の解決が先決だろ!」

  「「「あ……確かに」」」

  話が逸れたことに気が付いたシリウス一同は本題に話を戻した。

  「さて…改めて本題だが。要するにブラックサンタ一同は子供たちに人気がないのが不満なのだな」

  『そうだ!我々ばかりまるで悪者のように扱われて不公平だ!』

  『じゃから!それがお前達の役割じゃろ!良い子にはプレゼントを与え、悪い子には戒めを与えるのがサンタとしての務めじゃ』

  『うるさい!子供達から感謝ばかりされているお前達には理解できんだろ!』

  『当然じゃ!それが役割分担というものだからの』

  再び始まった言い争いに我慢が出来なくなった学、ルイ、デイビットが慌てて仲裁に入った。

  「ちょ、ちょっと!これ以上喧嘩はやめてください!」

  「そうですよ。サンタさん同士が喧嘩するなんて子供達が悲しむわ」

  「だな。いい年しているんだから、それくらい大目に見ろよ」

  『うるさい!これはサンタの問題じゃ!』

  『お前らに我々の気持ちは理解出来ん!』

  シリウス一同からの説得も虚しく再びヒートアップする様子に傍観していたバルジが声を漏らした。

  「ほぉ…サンタとはこの程度の存在だったのか。期待外れでがっかりだな」

  『なに?』『なんじゃと?』

  唐突に放たれた言葉に一同が注目すると、地雷を踏んだと思ったデイビットがそっと囁いた。

  『隊長、流石に今の台詞はまずいですって』

  「別に間違ったことは言っておらん。俺は初めて見るサンタの感想を述べただけだ」

  『そうかもしれませんけど、そんな言い方したらサンタの逆鱗に触れますって!』

  「そうか?俺はこれだけ世の中から愛されているサンタクロースなのだから、てっきり心得を持っていると思ったがな」

  「「「心得???」」」

  「あぁ。有紀、サンタとして一番大切なことは何だと思う?」

  「へぇ?なんで…俺なんっすか?!」

  「なんだかんだで一番サンタが来てそうだからな。で、お前はどう思う?」

  「えと……子供達の…笑顔を守ることでしょうか?」

  学なりに考察して返答をすると、バルジは失望の瞳を浮かべていた。

  「……残念だが50点だな」

  「え?!ど、どうしてですか?」

  「本質が見えておらん」

  「じゃ…隊長が思うその本質ってなんですか?」

  「大切なのは子供達の成長だ。良い子にプレゼントをご褒美で渡すことも、悪い子に戒めを与えるのも全ては子供達が立派な大人になる為のサポートだ。過程はどうであれ、健やかに心身共に成長をすることがなによりも得たいことではないか?」

  「た、確かに…そうですね」

  「だろ。確かに悪い子に戒めを与えれば恨まれるのは当然だ。二度と見たくないと思われてしまうだろ。だがたとえ憎まれても、それで更正してくれるのならば俺ならブラックサンタになってもいいと思うがな」

  「それはまた…おっかねぇサンタになりそうですね」

  「それが成長を見守るという事だ。飴ばかり与えては成長できんからな」

  「確かにそうっすね」「そうですね」

  バルジの話を聞いていたデイビットとルイはそっと学の方を見つめて納得をした。

  「な、なんだよ…その目は!」

  「別に…」「なんでもねぇよ」

  変な空気が流れる最中、バルジは最後に話を纏めた。

  「これは俺個人の経験だが、罰を与えてすぐに感謝してくるのはごく希だ。相手が子供なら尚のことだ。だが、長い人生で考えれば、いつか報われる日が必ずくるはずだ。成長を待つこともある意味ではブラックサンタの任務での醍醐味ではないのか?」

  『た、確かに…そうだけど…』

  「それにだ。これはかなり高等なテクニックが必要だ。素人では到底できない特別なスキルだから他のサンタよりも誇れるとも思えるが?」

  意地の悪い顔でブラックサンタを諭すと、不満だった顔が徐々にやる気に満ちていた。

  『そうだ!我々は特別なサンタだ!』

  『あぁ!なんだかやる気が出てきたぞ!』

  先程まで緊迫していた空気が一気に和やかになり、赤のサンタと黒のサンタはお互いに和解することができた。

  「どうやら…治まったみてぇだな」

  「みたいだな。全く人騒がせなサンタさん達だよ」

  「本当にね。でも、これで任務は完了ね」

  シリウス一同が安堵の息を漏らしていると、耳に装着しているインカムに緊急入電が入った。

  [newpage][chapter:アンチサンタVSシリウス]

  ピロロロロロ!

  「こちらバルジ」

  『ユキです。先程12時の方向、40宇宙キロにて未確認空母を確認しました。まっすぐこちらに向かってきています』

  「なに?!それは確かか?」

  『はい。念の為に管理局にもご報告をしたところ、藤堂指令より緊急連絡が来ています』

  「分かった。そのまま繋いでくれ」

  『了解』

  ピコン!

  『藤堂だ。バルジ、イレギュラーが発生した。相手は恐らくアンチサンタ海賊団だ。狙いはサンタクルー並びにプレゼントの強奪だ』

  「それまた厄介ですね。ですが先程のミッションデータでは応戦はできませんよ」

  『分かっている。現時刻をもって先程のミッションデータは破棄。武器の使用を許可する。サンタエクスプレスを死守。敵海賊団への応戦対応を行え!』

  (相変わらず、注文の多いお方だ)

  「了解しました。直ちに応戦を行います」

  『頼むぞ』

  ピロン!

  通信が終わると、バルジは気持ちを切り替えて覇気を纏って命令を下した。

  「敵襲だ。総員、ビックワンへ戻れ。サンタエクスプレスを死守するぞ」

  「「「了解!!」」」

  命令を受けたシリウス一同が駆け足でビックワンへ向かう最中、バルジは赤・黒のサンタリーダーに告げた。

  「これより戦闘になります。何があっても皆さんは我々SDFが守りますので、車内で待機していてください」

  『分かりました』『どうかお気を付けて』

  相互確認を澄ませるとバルジもビックワンへ急行した。

  シリウス一同がビックワンへ戻りそれぞれが着席すると、バルジは状況確認を行った。

  「ルイ、海賊どもの状況は?」

  「はい。現在12時の方向、20宇宙キロの地点に停泊中。強襲空母一隻。小型艇を30展開中。

  「思った以上に多いな。犯行声明は?」

  「今のところは……はっ!」

  「どうした?」

  「強襲空母より通信がきました」

  「なに?メインモニターへ繋げ」

  「了解」

  ルイの操作によりメインモニターには黒髭の大柄の男が映し出された。

  『我々はアンチサンタ海賊団。船長のタンサだ』

  「空間鉄道警備隊シリウス小隊、隊長のバルジだ。小型戦闘機を展開するとは穏やかではないな。参上理由を聞こうか」

  『ふん。知れたことだ。我々の目標はサンタエクスプレスだ。散々探したがステルス機能で発見できなかったが、ようやく見つけた。大人しく引き渡して貰おう』

  「何故サンタエクスプレスを狙うのだ?」

  『我々は子供時代にサンタクロースからプレゼントを貰えなかった。純粋な子供心を弄んだ罰を今ここで天誅をくれてやる!』

  「プレゼントを貰えなかったって…」

  (下らなすぎる……いい年をした大人が何を言っているのだ。しかしサンタとはそんなに重要人物なのだろうか…そのようには見えなかったが…)

  とてもプレゼントが欲しそうには見えない大柄のタンサに変な疑問を感じたが、感情をコントロールして再び交渉に意識を向けた。

  「サンタエクスプレスは銀河鉄道管理局が管理をする列車だ。得体の知れない貴様らに引き渡す訳にはいかん」

  『では…実力行使をするしかなさそうだな。聖夜で殉職することになるが、我々を恨むなよ』

  「銀河鉄道の乗客を守るのが我々の使命だ。恨みはしない。だが…」

  「だが…なんだ?」

  「我々SDFを舐めた事を…星になってから後悔をするなよ」

  『ふん…銀河鉄道の駄犬が』

  通信が切れると、バルジは覇気を纏って一同に命令を下した。

  「交渉決裂だ。総員、第一級戦闘配備!デイビット!ボイラー内圧力弁解放!」

  「了解。ボイラー内出力120%へ」

  「有紀!主砲並びにコスモバルカン発射準備」

  「了解!主砲並びにコスモバルカン発射準備!火器管制システム異常なし!」

  「ユキ、磁力シールドを最大出力で展開。ビックワンをサンタエクスプレスの盾にする」

  「了解。磁力シールド発生機関異常なし。最大出力で展開します」

  「隊長、コスモイーグルを発進させますか?」

  「……いや。ルイ、小型戦闘機の現在位置は?」

  「現在、12時から1時の方向で展開中。距離10宇宙キロ」

  「有紀!三式対空榴散弾装填!」

  「了解、三式対空榴散弾発射用意……装填よし。目標レッドゾーンに侵入確認」

  「三式対空榴散弾、発射!!」

  「発射!!」

  主砲より放たれた光線は散弾し、大量の光線となって、小型戦闘機に降り注いだ。

  「ルイ、残数は?」

  「残数7。こちらに急接近しています」

  「有紀、コスモバルカン掃射開始。同時並行でコスモイーグルを出せ。サンタエクスプレスに接近する小型戦闘機から撃滅しろ!」

  「了解!コスモバルカン掃射開始。コスモイーグル発進!」

  バルジの指示でビックワンが応戦をする最中、隙を突いた小型戦闘機がサンタエクスプレスを襲撃した。

  「一機弾幕突破。サンタエクスプレス機関部に被弾。強襲空母、距離10宇宙キロまで接近。全砲門がサンタエクスプレスにロックオンされています!」

  「くっ…」

  (このまま交戦が続けば、いくらビックワンでも長くは持たん。やむを得んか…)

  ルイからの戦況報告を考慮してバルジは決断した。

  「全砲門を開け!目標、強襲空母。零式対艦炸裂弾装填!」

  「了解!零式対艦炸裂弾装填開始!」

  学がパネル操作を行うと全主砲に装填が完了した。

  「……装填よし!発射準備完了!」

  学からの報告を確認して、バルジは鬼の形相で命令を下した。

  「撃て!!!!」

  全砲門から放たれた9発の赤き閃光は集束し、強襲空母へ直撃した。

  直撃を受けた強襲空母を呆気なく大爆発を起こし撃墜された。

  「…目標の撃墜を確認。敵残数…0です」

  「作戦終了。ビッグワンは第一級警戒へ移行する」

  バルジからの作戦終了の声で戦闘担当の学から安堵の息が漏れた。

  「ふぅ……何とかなったな」

  「お見事だぜ、学」

  操縦士のデイビットが檄を送っていると、バルジはユキに被害確認をした。

  「被害状況は?」

  「ビックワン車体損傷率は25%。サンタエクスプレス車体損傷率は10%ですが、機関部に損傷を受けている為、走行不可です」

  「そうか。デイビット、ビックワンの走行システムに異常はないか?」

  「走行システムに異常はありません」

  「了解した。ルイ、サンタエクスプレスに連絡だ。目的地までビックワンが牽引をする為、目的地の座標を確認してくれ」

  「了解」

  その後、ビックワンはサンタエクスプレスを銀河サンタ連盟が所有する小惑星クリスまで牽引をした。

  [newpage][chapter:サンタからの報酬]

  クロス駅に停車をすると、先程のサンタクルーと共に白のトリミングのある赤い服・赤いナイトキャップ姿で白ヒゲを生やした太りぎみの老人の男がニコニコしながらシリウス一同の前に現れた。

  「ホ、ホ、ホ、初めまして。ワシが銀河サンタ連盟代表のサンタクロースじゃ。私の大切なクルーとプレゼントを守って頂いたこと心から感謝致します」

  「空間鉄道警備隊シリウス小隊隊長のバルジです。サンタクルーの皆さんを無事に守ることができて何よりです」

  「ホ、ホ、ホ、そうじゃの。じゃが、こんなクリスマスイブに私のクルーが揉め事を起こしてしまい、SDFの皆さんにもご迷惑をお掛けしました。申し訳ない」

  「いえ。誰でも不満を漏らす事は仕方がありません。大事にならなかったことを今は素直に喜びましょう」

  「そう言ってくれると救われるよ」

  「いえ。では…我々はこれで失礼します」

  バルジが敬礼をして立ち去ろうとすると、サンタクロースは手を振って制止させた。

  「待て待て、バルジ隊長。其方らに渡す物がある」

  「渡す物?」

  意外な問いかけにシリウス一同が首を傾げると、奥から小人のサンタクルーが大きな白い袋を持ってきた。

  「……それは?」

  「ワシらからのお土産じゃ。感謝の気持ちも含めて受け取ってくれ」

  「いや…我々はSDFですので、そういった物を受け取る訳には…」

  「ホ、ホ、ホ、固い事を言うでない。それにせっかくのクリスマスイブじゃ。サンタからプレゼントを貰うことになんの違和感もないじゃろ」

  「プレゼントと言われましても……我々は子供でありませんし…」

  「なんじゃ中身の心配をしておるのか?それなら不要じゃ。ちゃんと大人でも恥ずかしくないプレゼントを入れておいたぞ」

  「いや……」

  (俺が言いたいのはそこではないのだがな)

  若干違和感があったものの、これ以上ややこしいことになることを避ける為、バルジは申し出を受けることにした。

  「……分かりました。では今回だけ受け取らせていただきます」

  「素直で宜しい。Merry Christmas」

  シリウス一同はプレゼントの袋を受け取り、そのままビックワンで宇宙へ飛び立った。

  その後、立て続けにミッションデータが送られてきたシリウス小隊は結局勤務時間ギリギリまで出場をした。

  管理局へ戻ると、プレゼントの袋を抱えて一同はシリウス待機所に集まっていた。

  「ぜぇぇぇぇ……疲れたぜ」

  「はぁ…本当にね。まさかサンタさんの揉め事に巻き込まれるなんてね…」

  「それを解決したと思ったら、3件も現場梯子をさせられるなんて…司令部もあんまりだよ」

  「皆さん、お疲れ様でした」

  シリウス一同から疲労の声が漏れる最中、隊長デスクに腰掛けていたバルジも流石に疲労の色を浮かべていた。

  (流石に…疲れた。司令、いくら2小隊が使い物にならないからと言っても限度があります)

  「みんな…今日はご苦労だったな。本日の報告書は明日の提出で構わんぞ」

  「やった~!」「隊長太っ腹!」「ありがとうございます!」

  些細な事で大喜びをしている一同に苦笑いをすると、あっという間に終業時刻を迎えた。

  「よし、これで本日の業務は終了だ。各自解散」

  「「「「了解」」」」

  バルジが解散宣言をすると、ルイがあることを気にしていた。

  「隊長、あのプレゼントどうするのですか?」

  ルイが指さしたのは未だに存在感たっぷりのサンタクロースから貰ったプレゼントの袋。

  「あ……すっかり忘れていた。欲しい者がいれば持って帰って構わんが」

  「って言われてもなぁ……」

  「そうね…それにこの袋。結構、入っているわよ」

  「だよな。とてもじゃないけど俺たちだけじゃ貰いきれないよ」

  予想以上にパンパンに詰まったプレゼントの袋見て、対処に困っていると、傍観していたユキが提案した。

  「でしたら、他の方に配るのはどうでしょうか?」

  「他の方?それは誰だ?」

  「たとえば…ケフェウスやスピカの皆さんとかどうですか?」

  ユキに発言を聞いて、バルジは一気に表情を顰めた。

  「……それは却下だ」

  「え?どうしてですか?」

  「今日はあいつらのせいで散々な目にあったからな」

  「でも、それはただ休暇をしただけですよ?」

  「だとしても、忙しい日と分かっていて休む連中にプレゼントを渡す義理はない!」

  何処か怒りの籠もった声にシリウス一同が若干恐怖を感じていると、突然扉からノック音が聞こえた。

  コンコン!

  「……誰だ。こんな時間に」

  「珍しいわね」

  「もしかして…キリアンかな」

  ノック音でシリウス一同が扉の方に振り向くと、バルジが少しイラッとしながら返答した。

  「……どうぞ」

  『失礼します』

  聞き慣れた声が聞こえ、扉が開くとそこにはケフェウスのコーリーが立っていた。

  「「「コーリー?!」」」

  意外な訪問客にシリウス一同が大きく目を開く最中、バルジは依然として表情を変えずに尋ねた。

  「お前が単独で訪問とは珍しいな。で、なんの用だ?」

  「緊急招集のご報告にきました」

  「緊急招集?」

  「はい。シリウス小隊は直ちに共用ミーティングルームへ招集せよとの事です」

  「……それは誰の命令だ」

  「それはお答えできません」

  「は?誰の命令かも分からんのに何故我々が従わなければならん」

  「仰ることも分かりますが、ここは私を信じて従ってください」

  「何を訳が分からんことを…悪いがお前のところの隊長がズル休みをしたお陰で今日は散々司令に振り回された。疲労もそれなりに溜っている。できれば早急に休息をしたいのだが」

  「それについてはご心配はいらないかと思いますよ」

  「……なに?」

  意味深な言葉に顔を顰めると、隣にいたデイビットがそっと助言をした。

  「隊長、ここはコーリーを信じて従ってみたらどうっすか?」

  「お前…正気か。こんな身勝手な命令に従うのか?」

  「そりゃそうっすけど。コーリーが俺たちを罠に嵌めたりはしませんよ」

  「それはそうだが。お前は気にならんのか」

  「そりゃ気になりますよ。だから誘いに乗って確認をしたいんじゃねぇですか」

  「お前…変わり者だな」

  「そりゃどうも。で、どうしますか?」

  「そうだな……有紀、ルイ、ユキ、お前らはどう思う?」

  黙って傍観をしていた3人に唐突に声を掛けられてそれぞれが返答した。

  「えっ…俺は……別に構いませんよ」

  「私もコーリーを信じてもいいかなって」

  「私もお二人と同様です」

  反対の意見がなかった為、バルジはやむを得ず提案に乗る覚悟を決めた。

  「はぁ…やむを得ん。お前に指示に従おう」

  「ありがとうございます」

  「但し!状況次第では、俺は即刻帰るからな」

  「わ、分かりました」

  あまりに疑惑の瞳に思わず引いてしまったが、結局コーリーとシリウス一同は共用ミーティングルームへ向かった。

  気乗りがしないまま扉の前に立つと、少しため息をついた。

  (結局誘いに乗ってしまった。さて…本当に下らないことならば、怒号を飛ばしてやるか)

  依然として怒りが治まらないバルジは、変な覚悟を決めて扉のスイッチを押した。

  [newpage][chapter:サプライズプレゼント]

  「「「Merry Christmas!!!」」」

  扉が開いて目の前に見えたのはサンタのミニスカートをきたスピカの3子猫達。

  意外な対応にバルジを含めたシリウス一同が硬直してしまった。

  室内を見渡すと、大きなクリスマスツリーが置かれ、テーブルには美味しそうなご馳走があった。

  「これは……一体」

  「随分と遅かったな、バルジ」

  状況が読み込めず立ち尽くしている最中、聞き慣れた声に振り向くと、そこには私服姿のローレンスがいた。

  「ローレンス…これは一体どういうことだ?」

  「どうって。見てわからんのか?」

  「……は?」

  依然として混乱していると、今度はジュリアが声を掛けた。

  「うふふ、相変わらず鈍い人ね。これは私たちが企画したクリスマスパーティーよ」

  「クリスマス…パーティー」

  「えぇ。一週間前に昔のクリスマスパーティーの思い出話をしたでしょ」

  「あ?あぁ…」

  「その時にあなたが何処か寂しそうにしていたから、ローレンスが提案してね。サプライズでスピカとケフェウスで準備をしていたってわけ」

  「では……お前らが俺を避けていたのは…」

  依然として困惑している姿に、見かねたローレンスが補足をした。

  「お前は妙に勘が鋭いからな。あえて距離を取っただけだ」

  「では…お前が俺の誘いを断ってジュリアとBARで晩酌をしていたのも…」

  「ん?そんな事まで知っていたのか。アレも計画の段取りをするためだ」

  「そう…だったのか」

  「なんだ?まさか俺がジュリアに浮気をしていたとでも思ったのではないだろうな」

  「(ギクっ!)」

  (それはそうだろ。散々突き放されて上にあんな現場を目撃したら誰だって思うだろうが!)

  若干怒りの感情が込み上げるが、ぐっと堪えて返答した。

  「そ、そんなわけがないだろ」

  「ほぅ……まぁいい。せっかくのご要望で料理を用意したのだ。遠慮なく堪能してくれよ」

  珍しく微笑みながら告げる姿を見て、バルジの体からすっと力が抜けた。

  「ローレンス……全く。お前には勝てんよ」

  「ふん。当然だろ」

  バルジが観念していると、後方では涎を垂らしたシリウス一同が声を漏らした。

  「た、隊長!もう…我慢出来ませんって!」

  「そうです!隊長が要らないなら私たちだけで参加します!」

  「お腹も減りましたし、早く食べましょうよ!」

  「全く…そうだな。せっかくのサプライズパーティーだ。喜んで参加させてもらおう」

  バルジの宣言で喜びを爆発させたシリウス一同はパーティーに参加をして料理を堪能した。

  取り皿に料理を取ると、バルジも腰掛けて食事を始めた。

  その横に同じように取り皿を持ってローレンスが腰掛けた。

  「味はどうだ?」

  「ん?あぁ。昔と同じ味で旨いぞ」

  「昔と同じか。そこは以前より旨いと言ってほしいものだがな」

  「それは無理だな」

  「なぜだ?」

  「初回で既に出来上がっているからな。それを超えるのは容易ではないだろ」

  「だが、それを超えるのが料理人の勤めだろ?」

  「俺はこのままでも充分だと思うがな」

  「ふん。呑気なものだ。それにしても朝は何故あんなに不機嫌だったのだ?」

  唐突の質問にバルジは食事を中断して振り向いた。

  「お前……本当に分からんのか?」

  「あれだけの会話では分からんだろ」

  真顔で告げる姿にバルジは少し呆れて応えた。

  「ふん…お前も大概朴念仁だな」

  「は?それはどういう意味だ」

  「さぁな」

  ぶっきらぼうに食事をしているとバルジはあることを想い出して、食事をしているデイビットに声を掛けた。

  「あ…そうだ。デイビット」

  「……ん?なんっすか?」

  「後でシリウス待機所に置いてあるあの袋を取ってきてくれんか?」

  「え?!あれっすか?それまたなんで?」

  「あのままにしても邪魔なだけだからな。せっかくこれだけのメンバーがいるのだ。分配してもいいだろ」

  バルジからの提案に今さらという顔で睨んだが、状況から素直に従うことにした。

  「はぁ……分かりました。学、おめぇも付き合え」

  「え?!なんでだよ」

  「あのな!あんなデカい袋を俺だけで持って行けるわけねぇだろうが」

  「え…でもビックワンから持ってきた時は一人で運べていたじゃないか」

  「うるせい!黙ってついてこいよ!」

  「いてて…分かったよ!」

  半ば強引に連れて行かれる姿を傍観していたローレンスは疑問の声を漏らした。

  「おい、あの袋とは何の事だ?」

  「実は今日任務でサンタに会ってな。救援活動をしたら土産を貰った」

  「は?おい、何の冗談だ」

  「事実だ。この時期に秘密裏に運行しているサンタエクスプレスがあるだろ。その列車に乗車していたよ」

  「確かにサンタエクスプレスの噂は聞いたことがあるが……嘘ではないのか?」

  「ここで嘘を言ってどうする」

  「お前はたまにしょうも無い嘘をつくからな」

  「酷い言われようだな。ところでお前はサンタに会ったことはあるのか?」

  唐突な質問に呆気に取られながらも正直に返答した。

  「は?あるわけないだろ」

  「ほぅ…ならばお前も俺と同じだな」

  「どういう意味だ?」

  「俺もサンタからプレゼントを貰ったことがなくてな。それを話したらサンタが泣いたよ」

  酒を飲みながら話した内容にローレンスは呆れ顔でいた。

  「………いや。プレゼントは貰ったことがあるぞ」

  「そうか………は?今、なんと言った?」

  「だからプレゼントは貰ったことがあると言ったのだ」

  意外な返答に疑問が過ぎったバルジは頭を傾げた。

  「ん?意味が分からん。逢ったことがないのにプレゼントは貰えんだろ」

  真顔で尋ねてくる様子を離れて傍観をしていたジュリアも思わず話に介入した。

  「もしかして…あなたサンタがどうやってプレゼントを渡すか知らないの?」

  「ん?それは当然手渡しだろ」

  きょとんとして告げる姿にジュリアとローレンスは大きくため息をついた。

  「「はぁぁぁぁぁぁ」」

  「なっ?!」

  予想以上のため息に驚いていると、呆れ顔でジュリアが話した。

  「あのね。サンタクロースは子供達が寝静まっている間にそっと置いていくのよ」

  「は?子供達に逢っていかんのか?」

  「あのな。一体どれだけ子供がいると思っている。いちいち挨拶をしていては配り切れんではないか」

  「た、確かにそうだが。だがそれを言うのならば、そもそも全員に配ること自体に無理があるだろ」

  必死に反論してくる様子に二人は呆れ顔を通り越して同情の瞳をしていた。

  「知らないとは…幸せだな」

  「そうね。このド天然には無知の方がいいわ」

  「おい…お前ら、かなり侮辱的な事を言っていないか!」

  「知らん」「別に」

  隊長3人が会話をしていると、注文をしていたデイビットと学が戻ってきた。

  「「お待たせしました~」」

  「おっ!ご苦労だな。そこに置いてくれ」

  「「了解」」

  かなり大きめの白い袋を床に置くと、一同は釘付けになった。

  マギ「うわぁ~大きな袋」

  シェリー「本当にね。これ全部プレゼントかしら」

  愛「こんな大きな袋初めて見たわ」

  キム「思ったよりデカいな」

  ピエール「だな。というかこんなに大量のプレゼントを寄越すなんてサンタも太っ腹だな」

  コーリー「なにが入っているのかしら」

  一同が群がる最中、離れて傍観をしていたローレンスとジュリアが苦言をした。

  「お前…あんな大きな袋でプレゼントを貰ったのか」

  「仕方がないだろ。半ば強引にサンタクロースから押しつけられたのだからな」

  「あなたって…昔っから押しに弱いわね」

  「放っておけ。一応サンタクロースのセレクトだがあまり期待はするなよ」

  「お前な…」「あなたね…」

  無責任な発言に二人が呆れる中、デイビットが声を上げた。

  「隊長、これどうやって配りますか?」

  「そうだな……ん?あれはなんだ?」

  周囲を見渡して指を指したのはビンゴカード。

  「あ~キムが用意したものだ。余興でビンゴ大会でもしようとな」

  「ほぅ…ではその景品をサンタクロースのプレゼントにするというのはどうだ?」

  「いいわね。じゃあビンゴした人から先着で選ぶってことにしましょうか」

  「異論はない」「それでいこう」

  3隊長の決断に一同はかつてない程の盛り上がりの声を上げていた。

  その様子を眺めていたバルジは何処か嬉しさを感じていた。

  (クリスマス…か。またこうしてクリスマスを楽しめる日が来るとはな)

  「………白のサンタに感謝だな」

  「何だ?白のサンタとは」

  不思議そうに尋ねる恋人にふと微笑むと立ち上がって声を掛けた。

  「よし!これよりクリスマスビンゴ大会を始めるぞ」

  「「「「了解~~」」」」

  こうして不滅のシリウスは聖夜をかつての思い出と共に新たな仲間と陽気に過ごした。

  【Merry Christmas】

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