「グォォォォォォォ!!!」
黒きドラゴンが勇者に向かって吠えたてる。この地に住まう邪悪な龍は、神の龍の血を引く姫を攫い自らの番にしようと目論んでいた。
しかし、それは1人の勇者によって阻まれることになる。
「てやぁぁぁぁぁ!!!」
勇者が剣を真っ直ぐ振り下ろす。
「グギャアァァァァァ”ァ”ァ”ァ”ァ”!!!」
邪龍の断末魔が辺りに響く。勇者によって剣を突き立てられた邪龍は額を剣で貫かれ息絶え、二度と動かなくなった。
「はぁ…はぁ…姫!ご無事ですか!!」
邪龍の住処に囚われていた姫を探す勇者。その時、奥の方から声がする。
「ここよ…」
「ご無事でしたか、姫……なっ!?そ、そのお姿は…」
「あら、どうしたの?そんなに私の姿を見つめて…」
声の主は、姫だった。しかしその姿は人間の形をしていなかった。
姫は既に死ぬ前の邪龍によって血を飲まされ、既に邪龍に堕ちていたのだった。体から強靭な鱗を生やし、竜と人の混じったような姿になっていた。
「もしかして…私の姿が気になるかしら?なら直ぐに気に入らなくさせてあげる…うふふふふふ…」
姫は勇者の前に手をかざし、怪しげな呪文を唱える。
「あぐっ!?か、体が…ウォォ…!!」
勇者はひざまづき頭を抑えながら突然の体の痛みに苦しむ。
「う…ぐ…グォォォォォォ…」
勇者の姿はだんだん刺々しくなり、体から鱗と角が生え、姫と同様に凶悪な竜の姿へと変化してゆく。
背中はバリバリと裂けて、バサッと音を立てて立派な翼を生やした。
「ガォォォォォォォォォ!!!!」
みるみるうちに勇者は姫と同じく邪龍の姿へと変わり、完全に邪龍に堕ちてしまった。
「うふふ、勇者さま。これで私たちは永遠に一緒ね❤」
姫は邪龍となった勇者を見てひと撫でする。
「グルルルル…」
「では参りましょう。邪龍様の凱旋を知らせなくては。そして私たちの結婚式の準備を始めましょう…❤」
姫も指をパチンと鳴らすとすぐに体を大きくさせ、背中からは翼を生やし、勇者と同様の邪龍の姿に変わる。
そして2匹は何も知らぬまま平和に暮らす人々の待つ王国へ向けて飛び去った…
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勇者と姫が帰還したことにより、王国は明るい話題で持ち切りになった。
1晩のうちに人々は宴をもよおし、飲んで食べて踊って、夜更けまで踊り明かすのだった…
そしてその夜、王国内で異変が起きた。
「うぐっ…ぐぉぉ…ウォォォォン!!!」
1人の男性がオークに変化したことを皮切りに、次々と国の人々が魔物へと変貌していった。
「あがっ…あぁ…キシャァァァァァァ!!!」
ある女性はイビルに。
「ぐげ…ぐげげ…グゲゲゲゲ…」
ある子供はゴブリンに。
「あ…うぅ…ウォォォォン!!!」
あるシスターはワーウルフに。
「ぐ…ぐが…グギャアァァァァ!!!」
ある衛兵はリザードマンに。
様々な人々が一夜のうちにすべて魔物に変化してしまったのだった…
「グルル…勇者さま、見て…生まれ変わってゆく国民が、私たちのことを祝福してくれてるみたい…❤」
「グルルルル…」
2匹の邪龍はその光景を幸せそうに見守る。絶望の門出を祝うかのように響く魔物の鳴き声は、一体を暗雲が包むまで病むことはなく、生きとし生けるものに新たな邪龍の誕生と国の崩壊という絶望を振りまくのだった…