「果たすべき使命」
カンカンカン!
金属どうし激しくを打ち付けるけたたましい音が鳴り響いた。
「何?」
それまでベッドの上で眠っていたセラが目を覚まし尋ねる。
「リュバンの警戒を知らせる鐘だ」
マリはそう言うと素早く立ち上がり医務室の扉を開けた。
「敵襲か?」
ルーの問いに彼女は首を横に振った。
「まだ断言はできない。
とにかく、様子を見てくる」
そう言ってマリが部屋を出ようとするとルーとセラも立ち上がった。
「俺も行く」
「私も」
マリは、特に止めることもせず二人がついて来るのにまかせた。
「ほら、あそこ」
鐘が設置された即席の見張り台につくと、鐘を鳴らしてらしいオークの青年が空を指さしながらマリに言った。
彼の指さす先にいたのは、四頭の鳥の魔物だった。
高度が高すぎて種族は分からない。
魔物たちは等間隔で空中に留まりながら足の爪を使い丸く大きな透明の物体を運んでいた。
「ガラスの板か?」
マリは魔物たちが運ぶモノを見上げながら言った。
「いや、違うな…」
隣に立つルーが額に手をかざしながら否定する。
「器…と言うか水盆か」
「水盆?」
「ああ。中央の景色が歪んでいるから、おそらく水を張っているんだろう」
「でも、そんなに大きな水盆を一体何に…」
とセラが問いかけようとした時だった。
水盆の中の水が突然さざ波立ち、ロキたちのいる王城の景色が浮かんできた。
水盆の景色を見つめていると、程なくしてガルニエとフェンリルが現れリュバンの戦士たちが見た演説と処刑の光景が流れはじめた。
映像は、枢機卿が事切れ骨と布の塊になったところで消え、それと同時に水盆を運んできた魔物たちも王城のある東の方角へ去っていった。
「ヤツら、ガルニエの使者だったのか」
マリは魔物たちを目で追いながらつぶやいた。
「あれじゃあ、まるで脅迫じゃないか?」
ルーは唸り声交じりに言った。
「どちらにしても、もうゆっくりしてる時間はないみたいね」
セラが顔をしかめながら言った。
翌日の早朝、ウールヴヘジン修道院では慌ただしく動き回るヒトであふれ返っていた。
自身の装備を入念に手入れする者、必要な物資を運ぶ者、戦場へ向かう者に食事を用意し配る者。
言葉によるやり取りは、ほとんどなく、辺りにはただならぬ緊迫した空気が漂っていた。
日の出頃、全ての準備を終えた修道士たちとリュバンの戦士たちは王城へ向かい出発した。
王城までは馬で行っても一日はかかるので、進軍はリュバンがつれて来た五人のワイバーンが先行隊を運び後に後続隊が追いかけるという形になった。
リュバンからはマリ、ブラム、スヴェート、アゾット、ウールヴヘジンからはルー、セラ、シア、リリス、オルフェがそれぞれ先行隊として選ばれ、二人一組でワイバーンの背に乗ることになった。
「皆様、準備はよろしいですか?」
一行がそれぞれのワイバーンに乗り込むと隊長らしきワイバーンが尋ねた。
「いつでも良い」
マリは答えた。
「こっちも問題ない」
隣のワイバーンに乗っていたルーも答える。
他の面々もうなずく。
「それでは、しっかりつかまっていてくださいね。
ワイバーン隊、出撃!」
隊長の号令とともにワイバーンたちは大空に舞いあがった。