「失意」
「ガルニエ、あれは流石にやりすぎです。
まるで、脅迫じゃないですか?」
王城入り口広場、フェンリルは司祭に向かって声を上げた。
「ああでもしなければ、魔物たちは納得しないだろう?
長い間王族や枢機卿を始めとする人間たちは彼らを虐げられてきたのだ。
あれほどの罰を受けても当然と言うほかないだろう?」
ガルニエは意に介さないと言った様子で答えた。
「ですが、我々は今までそうやって共存を目指してきたはずです。
何故今になって暴力で事を進めようとするのです?」
「君は、まだ分からないのか?」
司祭は尋ねるように言った。
言葉の端に苛立ちが漏れている。
「我々は人間のために何人の魔物を殺した?
我々は人間と魔物との共存と言う絵空事のために何人の仲間を失った?
そう!
全ては絵空事だったのだ。
人間は絶対に変わることなどない。
ならば、一度全てを無に変え、作り直すしかないのだよ」
ガルニエの口調はしだいに激しくなっていった。
その目には失望の色が宿っていた。
「僕には分からない。
何故あなたがそんな悲しい目をするのか。
何故あなたがそこまで人間に失望するのか」
「君がそこまで分からず屋だとは思わなかったよ。
介錯の経験もなく、内示にばかり目を向け、マリの父を殺したことを忘れようとしている君には我々が体験してきた絶望など分かるわけもないか…」
ガルニエは、さらに深い失望を瞳に現しながらつぶやくと、フェンリルに近づいた。
次の瞬間、フェンリルは腹部に強い衝撃を感じた。
驚き下に目を移すと、小さなナイフが腹部に突き刺さり服に血が滲んでいた。
「君には心底失望したよ…」
ガルニエは、そう言うとナイフを引き抜き奥の間へ続く扉の方へ去っていった。
フェンリルは血の流れる腹部を抑えながら膝をついた。
―君には失望したよ
彼の頭の中にガルニエの言葉と顔が反響した。
次第に彼の意識は漆黒の闇に染まり、その目は黄色く変わっていった。