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自由の名を持つ父親、その名は──ヤマト

  自由すぎる男その名は──ヤマト

  『シュオワン!大丈夫じゃ妾がお前を守る!その結界はお主を転送させる結界じゃ!何処に行くかは分からぬ!じゃが、何があっても妾がお前を守る!絶対にじゃ!だから…安心せい!』

  その言葉がどれほど僕を安心させてくれたのだろう。

  僕の家柄上、一般[[rb:人 > 獣人]]とは慣れ合うなと言われ友達も少なかった僕に[[rb:あの人 > イヅナ]]は守ると約束してくれた。

  もし、僕に力があったのなら────今度は、僕が[[rb:あの人 > イヅナ]]を守る。

  この身に変えてでも────

  [[rb:あの姿 > 大人の僕]]になってでも守りたい──────

  ――――――――――――

  「……んっ」

  「お!起きたか?ヤマト!目が覚めたようじゃぞ!」

  この声、どこかで聞いたことがある────

  「はいよぉ、ちょっと待ってろ」

  男の[[rb:獣人 > ヒト]]の声…?誰だろう…?

  シュオワンはゆっくりと目を開け、起き上がるとそこは布団の上で隣にはイヅナにそっくりの狐巫女ともう一人は人間らしき茶髪に目が紫色の青年がいた。

  この人達誰だろう────

  一人は…イヅナ?もう1人の人は…見たことないや

  

  「大丈夫かの?」

  イヅナらしき狐巫女が声をかける。

  「……イヅ…ナ?」

  「イヅナ?妾はルナじゃ」

  狐巫女は自分の名前をルナと名乗り、隣の青年に目をやる。

  「俺は、ヤマトよろしくな。お前は?」

  「僕はシュオワン」

  「ほう、[[rb:蛇王 > シュオワン]]かカッコイイ名前だな」

  そういってヤマトはシュオワンの頭を撫でる。

  「ん…この撫で方、イヅナに似てる」

  その名前にヤマトは驚く。

  「何でその名前を知ってる?その名前は俺とルナしか知らないはずだ」

  「もしやお主会ったのか?イヅナはどこに?」

  

  イヅナの事について聞くとシュオワンは気が動転したかのようにヤマトの服を掴みながら話す。

  「お願い!イヅナを助けて!殺されちゃう!」

  「落ち着け、一旦落ち着いてゆっくり話すんだ。大丈夫、アイツは俺の娘だ。俺の血を引いてるからアイツは早々死にはしない」

  シュオワンを宥めるように落ち着かせようとし、ルナも優しくシュオワンの背中をさすっていく。すると少しずつ落ち着いてきたのかシュオワンは深呼吸する。

  「それで?一体何が起こったんだ?」

  「それが────」

  シュオワンは説明する、自分が膝を抱えてしゃがんでいたら突然イヅナに声をかけられ一緒に手をつなぎながら歩いて、おむすびを食べさせてもらった。

  そして出口を見つけて脱出しようとしたその時、未来の自分がそこにいた。イヅナは自分だけでもと札で作った結界で転送されここにいる────

  そう説明するとヤマトは手を顎に持って少し考えたあとシュオワンに告げる。

  「なるほど、そいつは間違いなくイヅナだ。そのおむすびは俺が教えて作らせたやつだからな、だとしたらアイツは今どこに……?」

  そう考えていると──

  “ぐぎゅるるるるるるるるるる”

  「ん?誰の腹の音?」

  「・・・ごめん」

  顔を赤くしながら顔を俯くシュオワンが静かに呟く。

  ヤマトはあらまぁと口を半開きにしながら目をパチパチさせる。

  「……ルナ、飯作ってやれ」

  「いや、お主が作るべきじゃろ」

  そう言われると面倒くさそうな顔をするヤマト。

  「ア゙ァ゙?」

  「はいはい、やりますよ」

  (何だこの人達……仲がいいのか分からない)

  シュオワンは困惑し、ルナの低く唸る声と般若のような表情にヤマトは渋々立ち上がっては料理を取りに向かう。

  

  「まったく、子供の前で恥をかかせよって」

  「……ルナさんはヤマトさんとどんな関係なの?」

  そう聞くシュオワンにルナはドヤ顔で語り始める。

  「もちろん夫婦じゃ!妾に告白してきたからのぉヤマトは」

  「なーに言ってんだお前は」

  ふんすっと鼻息を荒くしながら笑っていると後ろからお盆に料理を乗せたヤマトにチョップされる。

  「ぐぇっ、痛いぞ!」

  「オメーから告白したんだろうがバーカ」

  やれやれと呆れながらヤマトはお盆をシュオワンの隣に置く、用意したのはご飯と味噌汁、そして豚バラとピーマンを炒めた物だった。

  「これは…?」

  初めてみる料理に首を傾げるシュオワン。

  「ん?俺の手作り料理、豚バラとピーマンを適当に炒めた」

  豚バラから香るゴマの程よい香りがシュオワンの鼻腔に入り込んだことで余計に腹の音が鳴り響き、その音にシュオワンは思わず顔を赤くしながら俯く。

  「余程腹が減っておったんじゃなお主」

  「ほら、冷めない内に食っちゃいな」

  「でも…その──」

  シュオワンは静かに頷く、だが和食に手をつけるのは初めてなのか箸を初めて持つが持ち方が分からない様子。

  「ん、箸はこうやって持つんだ」

  持ち方を説明すると、シュオワンは教え方のやり方についヤマトを見つめてしまう。

  「?どうかしたか?」

  「あ、うぅんなんでもない」

  ハッと気づいたシュオワンは慌てて首を横に振るが、ヤマトは優しくシュオワンの頭を撫でる。

  「お前、見た感じ貴族生まれだろ?相当親御さんにマナーとか叩き込まれたんじゃないか?」

  「うん、母上は基本は優しいんだけど[[rb:こういうの > 食事の作法]]とかマナーには凄く厳しかったから……」

  少し俯きながらそういうシュオワン。

  「まぁここは俺の家だからそういう作法とかは気にせずに食いな、誰かと一緒に食べる飯ってのは楽しく食うもんだ」

  「楽しく食べるもの…」

  あの時もそうだ──初めてイヅナと出会った時に食べたあの“おむすび”もイヅナは食べ方については何も言わなかったし笑ってくれてた。

  ヤマトにそう言われては笑みを浮かべ、うんと頷き食べ始めるシュオワン。言われた通りに華麗に箸を使いこなしながら豚バラを掴んでは口に含み、咀嚼していく。

  「どうだ?美味いだろ」

  「初めて食べたけど、凄い美味しいよ!」

  初めて食べた味に思わず驚きながら目を輝かせるシュオワン。それを見たヤマトは満面の笑みを浮かべる。

  「それならよかったぜ」

  「可愛いのぉ…」

  その光景を見つつクスクスと笑うルナ。

  「なんだよルナ」

  茶化すルナにムッとしながら見る。

  「いや、こうして誰かが食事を食べているのを見るのは久しぶりと思ってのぉ」

  「あー、そういえばそうだったなぁ」

  と懐かしむようにそんなことをいうヤマトとルナ。

  なんの事かまったく分からないシュオワンは首を傾げる。

  「久しぶりって?」

  「まぁ、ここは山奥にある家でな?人知れずにひっそりと俺らは隠居生活してるって訳よ」

  ヤマトは冷蔵庫から取ってきたウイスキーを片手に飲み始める。

  「あ、また酒を飲みよって」

  呆れたようにいうルナ。

  「まぁまぁ、いいじゃないの」

  ケタケタと笑いながら酒を飲むヤマト、一通り食事を終えたシュオワンを見てはルナがお盆を持って食器を片付けに行く。

  「ありがとう、凄く美味しかったよ」

  シュオワンはヤマトにそういって挨拶するとヤマトは気にすんなと言わんばかりにウィンクした。

  

  「さて、イヅナが何処にいるか見つけねぇとな」

  「そういえば────」

  ふと何かを思い出したシュオワン。

  「ん?どしたん」

  「イヅナが確か宝玉みたいなのを持ってたような……」

  宝玉という言葉に気づいたヤマトは眼光を鋭くさせる。

  「そいつは恐らく次元の宝玉だな」

  「次元の…宝玉?」

  その言葉に首を傾げるシュオワン。

  「次元の宝玉は様々な世界へと転移する能力を持っててな、俺らも[[rb:持ってた > ・・・・]]からな」

  「持ってた?」

  「無くしちゃった」

  てへぺろっと満面の笑みで答えるヤマト。

  「えぇ………」

  (変な人だなぁ……)

  と心の中でシュオワンは思いながら引いていた。

  

  「いやぁ、どこで落としたんかなぁ?アレがなきゃイヅナを助けに行けねぇしなぁ…」

  うーんと悩んでいるヤマト、するとルナの叫び声が聞こえてくる。

  「な、なんじゃお主らは!?」

  その声にヤマトは即座に反応し立ち上がる。

  「シュオワンはここにいろ部屋から絶対に出るんじゃねぇぞ」

  ヤマトは部屋にシュオワンを置いてルナの元へ向かうと縁側にいたルナはヤマトが来たのを見ては指を外にさす。

  

  「間違いない、ここだ」

  一人の獣人が仲間に話しかけている。見慣れない種族に見慣れない格好、どうみても別世界からやってきたであろうと一発で分かったヤマト。

  4〜5人の数で来ている獣人達を見てはヤマトが一言だけ放つ。

  「お前ら何モンだ」

  「私たちは退魔師でしてね、ここに悪魔がいると聞きまして」

  「悪魔…ねぇ」

  呆れたように思っていると後ろの襖を開ける音が聞こえ、ヤマトは振り返ると襖の影からこっそりとこちらを覗くシュオワン。

  「だ、誰……?」

  「だから部屋出るなっつったのに…」

  軽くため息つくヤマト、まぁいいかと前を向くと退魔師達がシュオワンを見てなにやら小声で話している。

  「あれが例の奴か?どうみても子供だぞ」

  「だがあれが魔性の王だとはな……」

  その言葉にヤマトは反応する。

  「おい、魔性の王ってのはなんだ?お前ら何を知ってる」

  ヤマトは腰に手をかけ仁王立ちしながら退魔師を見つめる。

  「貴方には関係の無いこと、申し訳ないですがそちらにいる子供をこちらに渡してもらいたい」

  「断る──といったら?」

  すると退魔師達がそれぞれ武器を構え始める。

  「力ずくで」

  「まぁ、そうなるよな」

  やれやれと呆れながら笑うヤマト。だがその笑みはどこかまるでこの時を待っていたかのような含みのある笑い方だった。

  「ルナ、シュオワンを頼む」

  「別に構わんがヤマト、一言だけ言わせてくれ」

  「あ?」

  「……久々だからといってハメを外しすぎるでないぞ」

  その言葉にヤマトは手に刀を召喚すると同時に白い歯をこぼす。その瞬間、シュオワンはビクッと身体を震わせる。

  (なんだこの人────この人の身体から凄い魔力を感じる…!)

  「悪ぃけど、そりゃあ無理な話かもな」

  ヤマトは鞘から刀を抜き取り刀身が太陽の光で反射する。

  すると戦おうとするヤマトに慌ててシュオワンが戦うのを止めようする。

  「ダメだよ、戦うだなんて────」

  ヤマトは身体から異常な程にまで覇気を放ちながら、刀を肩に担ぐとその覇気にたじろぐ退魔師達。

  「な、なんだこの異常な魔力の量は!?それにこれは────魔力じゃないものも混ざっている!?」

  

  驚く退魔師達にヤマトは背を向けたまま顔だけ少し振り向きシュオワンにこう告げる──

  「シュオワン、よく覚えとけ。平和を謳うことは誰にでも出来る。言葉や論争だけで解決できるんだよ。でもな────時には戦わなきゃ守れないものもあるんだ」

  「戦わなきゃ守れないもある────」

  その言葉が強くシュオワンの心に刺さる。

  蘇る記憶────それはシュオワンが大人シュオワンに襲われそうになった時に神狐が身を挺して戦ったこと──

  その時の自分は何も出来ずただ[[rb:彼女 > 神狐]]にしがみつくことだけだった。

  俯くシュオワン。

  「大切なのは、何の為に戦うかだ。俺だって本当は戦いたくはねぇ……だけど戦わなきゃ大切な者も守れねぇ」

  刀を天に向けて高く掲げ、そのまま退魔師達に向ける。

  「来いよ、久々の俺の[[rb:能力 > チカラ]]────見せてやる」

  そういっては空を仰ぎ、大きく叫ぶ。

  

  「EVOシステムオンライン!EVOスーツ起動!型式番号、STTS-[[rb:909 > ナインオーナイン]][[rb:雷神自由 > ライジングフリーダム]]!」

  『型式番号確認、STTS-909 システムオールグリーン、PSシステムオンライン、SEEDシステムオンライン、ハイマットフルバーストシステムオンライン、ライジングフリーダム起動────』

  機械音声のような声が聞こえると同時に青白い光がヤマトの身体から出てきては、眩い光とともに包まれる。

  背中にはウイングのような物が取り付けられており両方にはビーム砲のようなもの、腰から足にかけた折り畳み式の超電磁砲が付いており、またヤマトの身体からは青白い霧のようなものが出ていた。

  (なんだろう、この感じ──[[rb:あの時 > ・・・]]とは違うような────この人の身体から出てくる魔力には思想を感じる──────)

  青白い輝きを放つヤマト、身体から放たれる青白い霧は大人シュオワンの持つ黒い霧とはまた違った感覚がシュオワンには伝わっていた。

  それは全てを守ろうとする強い想いが──

  

  「さぁ、かかってきな。見せてやるよ────[[rb:自由 > フリーダム]]と呼ばれた男の力を見せてやる」

  刀を勢いよく振り下ろして構えるヤマト。

  すると退魔師の5人の内、中華服を着た獣人が槍を構えて戦闘態勢に入る。

  「人間風情が調子に────」

  「遅い」

  いつの間にか槍を持った槍使いの退魔師の背後に立っているヤマト。後ろでそれを見ていた4人の退魔師達は驚愕していた。

  「なっ────」

  ヤマトの方に振り向くと同時に鈍い痛みが腹に走り、その痛みは凄まじく槍使いの退魔師獣人は槍を落として腹を抱えながら両膝を付いてその場で苦悶の表情を浮かべながら悶える。

  「安心しな、峰打ちだ。」

  

  「す、凄い…!」

  (なんて速さ……!み、見えなかった…何なんだこの人は────)

  開いた口が塞がらないシュオワン、さっきまで目の前に居たはずなのに──いつのまにか退魔師の背後を取っていたのだ。

  ヤマトがルナの方にふと視線をやると、ルナには見えていたのかやれやれと肩を竦めていた。

  「さぁ、次は誰が相手だ?」

  退魔師を蔑んだ目で見るその姿はまるで傲慢に満ちたかのような目で、大人シュオワンとはまた違った目で見ていた。

  「こ、このぉぉぉぉぉ!!! 」

  同じく中華服を着た棍棒を手にした退魔師が今度はヤマトに向かって振りかざしそのまま振り下ろすが、ヤマトは余裕でそれを躱す。

  次々と攻撃を躱してはなぎ払いの攻撃に対して宙返りで躱し、棍棒の上に乗る。

  「なっ……!?」

  「やめてよね、本気出したらお前らが俺に敵うはずないだろ」

  そして、そのまま棍棒の上で半回転してからの見事な横蹴りを顔に一発命中させては棍棒使いの退魔師を勢いよく吹き飛ばし、地面に着地する。

  「さて、残りは3人…どいつから来るかな? 」

  「クソッ、計画変更だ!こうなったら────」

  すると魔法使いのような見た目をした一人の退魔師が、魔法でシュオワンに向けて大きな火球を放つ。

  「なっ!?」

  ルナは慌ててシュオワンを守ろうする。

  「えっ────」

  「しまった──────」

  隙を突かれたヤマトは急いで二人の前に立つとそのまま庇おうと両腕を広げる。

  「あっ………!?」

  火球がヤマトの身体に命中した途端、大きな爆発とともに火柱がヤマトを包む。

  「ヤ、ヤマトさぁぁぁぁん!!」

  叫ぶシュオワン、慌てて助けにいこうとルナの腕から離れようとする。

  「落ち着け、大丈夫じゃ」

  「だって!だって!!あのままだと死んじゃうよ!!」

  

  『死なねぇよ』

  

  今にでも泣き出しそうなシュオワンに答えるかのように火柱の中からヤマトの声が聞こえてくる。

  その声に魔法使いの退魔師は驚愕する。

  「なに!?これでも最大火力だぞ!?」

  「最大火力だぁ?けっ、そんなもん[[rb:コイツ > ・・・]]の前じゃなんの意味もねぇよ」

  火柱の中から見えたソレは、まるで怒りに満ちた悪魔が目を光らせながらやってきて火柱の中を抜けると同時に火柱が風で火を消し、中から無傷のままのヤマトが出てきた。

  

  「お前ら…覚悟出来てるよな?ガキ狙うってことは俺の怒りを買うってことでよ」

  逆鱗に触れたのかヤマトの目は間違いなく殺意を孕んだ目つきへと変わっていた。

  

  「こ、こんなところで負けてたまるか!!」

  再び魔法を出そうと右手を払うとその右手を撃ち抜くかのようにビームの弾丸が手に直撃される。

  「うっ!?ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!」

  その痛みは凄まじかったのか、魔法を使っていた退魔師は転げ落ちるほどに悶え苦しんでいた。

  ヤマトの手にはビームライフルが握られており、その他にも両肩には大口径のビーム砲と腰から足にかけた折り畳み式の超電磁砲の銃口が退魔師達に向けられていた。

  

  「残り2人……誰が相手になる?」

  残りの2人は一人は明らかに普通の格好でやってきた素人らしき雄獣人ともう一人は回復役だろうか、医療に従事したような服装をした雌獣人だった。

  圧倒的な力を見せつけたヤマト、完全に戦意喪失した残りの2人は思わず尻餅をつく。

  

  「き、聞いてないわよ!こんな奴がいるなんて!」

  「なんなんだよコイツは…!コイツから出る魔力の量が…!!尋常じゃない!」

  立ち尽くすその姿は正しく悪魔、もしくはこの世の全てを破壊するために生まれてきた破壊神とも呼べるそんな見た目だった。ヤマトはゆっくりと近づく。

  

  「おい、お前ら持ってるんだろ?次元の宝玉に似た力の玉」

  「な、なんでそれを」

  「寄越せよ、そうすりゃあ命だけは助けてやる。」

  銃口を突き向けたまま片手を差し出す。

  「わ、分かった。こ、これがそれだ」

  一人の雄の退魔師が腰の袋から取り出したのは次元の宝玉よりも一回り小さな宝玉だった。

  「ちいせぇな、まぁいいか」

  そういってライフルをしまい、宝玉を手にしようとした瞬間────

  「バカが!」

  瞬間を狙っていたのか刃物を取り出してはヤマトの胴体に突き刺さる。

  「あぁっ!?」

  それを見たシュオワンが声を荒らげる。

  「へ、へへっ…騙されやがって……これだから人間ってのはつくづく甘い────」

  “バキィンッ ”

  

  ヤマトに突き刺した刃物は刃が折れてしまい地面に落ちる。

  「………へ?」

  あまりの出来事に呆然とする雄の退魔師、ヤマトは雄の退魔師獣人の首を掴み自分よりも大きく、重いであろう相手を軽々と持ち上げる。

  「だから言ってんだろ、テメェらの武器じゃ俺は殺せねぇってよ」

  そのまま勢いよく振っては雄の退魔師を木に叩きつけては気絶させると、ヤマトの足元に宝玉が転がる。

  

  「ったく、手間かけさせやがる」

  足元に転がった宝玉を拾っては隣にいた雌の退魔師に視線を移す。

  「ま、待ってよ!私は何もしてないでしょ!?だからお願い!殺さないで!!」

  必死に命乞いをするヤマト、深くため息をついては呆れながら雌の退魔師の頭を撫でる。

  「バーカ、だったら最初からここに来るな。2度目はねぇぞ、じゃあな」

  そういってヤマトは踵を返してはシュオワン達の所に戻る時に雌の退魔師が質問を投げる。

  

  「あ、貴方は一体何者なの…?」

  ピタッと足を止めては背を向けたまま顔だけを少し振り向かせ。

  「俺?俺は、人の業で生み出された[[rb:強化人間 > コーディネイター]]だよ」

  そう答えたあと、再び歩みを始めるとシュオワン達の元に戻る。

  

  「大丈夫か?怪我は?」

  「大丈夫じゃ、それよりまた随分と……」

  ヤマトの暴れっぷりにルナはやれやれと呆れていた。

  シュオワンは心配そうにヤマトを見つめる。

  「あなたは…どうしてそんな力を持っているのにあの人達を討たなかったの?」

  自分を捕らえに来た退魔師達を見ながらシュオワンはヤマトを見つめる。

  

  「確かに、これほどの力があればアイツらを消すことは出来る。でもな、力はただの力だ。それに飲み込まれたら最後、人は化け物になっちまう」

  シュオワンの頭を撫でては、ヤマトは武装解除し青白い霧も消えてヤマトは縁側に腰をかける。

  「アイツらから次元を超える玉は貰った、これでイヅナの所にいけるぞ」

  玉を手の上で弾ませていると、その言葉にシュオワンは嬉しそうにする。

  「じゃあ、今すぐにでも」

  「まぁ待てよ、行くとしても準備してからな」

  ルナを見るとルナはそれを見越していたかのように、荷物を整えていた。

  「そういうと思って、全部用意してあるのじゃ」

  「さっすが〜、ルナパイセン惚れますわぁ〜」

  デレデレとするヤマト、その光景にシュオワンは苦笑いする。

  「は、ははは……」

  (やっぱ変だこの人………)

  すると何かを思い出したのかシュオワンはヤマトに言葉を投げる。

  

  「そういえば──ヤマトさん、さっきはあれだけ攻撃を受けていたのにどうして無傷なの?」

  「あぁ、あれか?あれは俺の持ってるEVOスーツの能力で[[rb:PS装甲 > フェイズシフト]]機能が付いててな、あらゆる物理を無効化する能力だ」

  ざっくりと説明したあと、ヤマトはタバコを胸ポケットから取り出しフィルターを口に含んで先端に火をつけてすいはじめる。

  「……僕にも力があったら、イヅナを助けられたのかな」

  そう呟きながら膝の上で握りこぶしを作って俯くシュオワンにヤマトは視線を向ける。

  

  「欲しいか?イヅナを守る力──」

  その言葉に過敏に反応してはシュオワンは真剣な眼差しを向け頷く。金色に光り輝くシュオワンの眼を見るヤマト、タバコを2、3回吸った後タバコの火を消しては立ち上がる。

  「ならこっちにおいで、お前に力を与えてやる」

  そういってはシュオワンを手招きし、家から少し離れた納屋へと向かっていた。

  「ここは……?」

  「ここは俺の武器の保管庫だ 」

  そういうとドアに手をかけ生体認証でドアを開けると中は大量の銃や剣、刀などあらゆる武器や装備、道具で満たされていた。

  

  「うわぁ、すごい数」

  その量にシュオワンは感激しつつヤマトと一緒に中に入ると、突き当たりの壁にはガラスのショーケースに入った宝玉があった。

  「あれは…?」

  ヤマトに聞くシュオワン。

  「あれは“運命の宝玉”あれがお前の力になる」

  「運命の…宝玉」

  その宝玉は緑色に光沢感を放ちながら2人はその前に立つとヤマトはガラスのショーケースの鍵を開けては蓋を取り外し、宝玉を取り出す。

  「ほら、手出してごらん」

  軽く膝立ちになってはシュオワンの手を差し出すように言う。

  「う、うん」

  静かに頷いてはシュオワンは手を出すとヤマトは宝玉をシュオワンの手の上に乗せる。

  

  「綺麗……」

  それを見ては笑みを浮かべるシュオワン、すると宝玉が宙に浮き始める。

  「え?浮いた…?」

  「これは────」

  ヤマトも予想していなかったのか宝玉を見ていると、宝玉はゆっくりと動いてシュオワンの身体の中へと入っていく。それを見たヤマトは一瞬で納得した。

  「そうか……シュオワン、ひとつ聞いてもいいか?」

  ヤマトが優しい眼差しでシュオワンを見つめる。

  「?」

  「お前はなんの為に戦うんだ?何を得たい?」

  その言葉にシュオワンは、少し考え始める。

  「僕は────」

  僕が戦う理由────それは──

  [[rb:あの人 > イヅナ]]を守りたい、あの人を守って僕はあの人と一緒に居たい。あの人は僕を命に変えてでも守ろうとしてくれた。だから僕は────

  「僕は、イヅナを守りたい。あの人のおかげで僕はここにいられた。あなた達に会えた、だから今度は僕があの人を守る。僕には守りたい[[rb:世界 > 人達]]があるから」

  真剣な眼差しでヤマトを見つめるシュオワン、その眼は正しくヤマトが、かつて自分が大切な人を守る為、守りたい世界のために力を振るう…そんな眼だった。

  「最高の答えだぜ、シュオワン。だから運命の宝玉はお前を選んだんだ。」

  シュオワンの胸に人差し指を当ててはそういうと続けて言う。

  「それと、その運命の宝玉には名前があってな名前はこういうんだ──────  “ドレッドノート” と」

  「ドレッド…ノート…」

  ゆっくりと立ち上がるヤマト、すると入口の方で物音が聞こえた。

  「誰だ」

  その音の正体は先程ヤマトが最初に倒した槍使いの退魔師だった。

  「逃がしはしない…!」

  2人の前に立ち塞がる槍使いの退魔師。

  「き、来た…」

  シュオワンは思わず、たじろいでしまう。だが、シュオワンは震えながらも逃げようとはせずその場で槍使いの退魔師を見つめる。

  「……ッ!僕はもう、逃げない」

  目を瞑って深呼吸する。槍使いの退魔師はシュオワンに向かって槍を大きく振るおうとしたその時────

  シュオワンの身体が大きく光り、光が消えるとそこには成長した成長期のシュオワンがいた。身長を見るからに12〜16歳ほどだろうか、体格も大きくなっており髪も少し伸びた状態で顔の輪郭も丸みを帯びた顔つきから大人に一歩近づいたシュッとした細身のある顔つきになっていた。

  槍がシュオワンの頭上に振り下ろされそうになる。

  「やらせない!」

  そういってシュオワンは槍使いの退魔師の槍を掴み、動きを止める。

  「なに!?」

  「もう、僕達を放っておいてくれ!!」

  そう叫ぶと同時に槍使いの退魔師の顔を勢いよく殴り飛ばし納屋の外まで吹き飛ばす。

  「見事だ」

  ヤマトがそういい、殴り飛ばされた槍使いの退魔師はそのまま意識を失ったのかピタリとも動かない。

  「ぼ、僕がやったの…?」

  殴り飛ばした退魔師を見てシュオワンは自分の手の平を見る。

  「あぁ、お前が[[rb:倒した > ・・・]]んだ」

  そういってはヤマトは納屋の外まで歩いていき、ヤマトの後をついて行く成長期シュオワン。

  「僕は強くなった…のかな?」

  自覚していないシュオワン、ヤマトは笑いながらシュオワンを見る。

  「あぁ、強くなってるよ。心も身体もな」

  そう言われたシュオワンも笑うとその瞬間────

  

  “ポンッ”

  

  成長期シュオワンの身体が再び幼少期のシュオワンの姿へと戻る。

  「は?」

  「え?」

  いきなりの出来事に驚いている一人の人間と一匹の蛇龍。

  「……まぁ、いいか」

  「そ、そだね」

  2人は苦笑しながら歩いては元にいた家に戻ってくるとそこではルナが2人を待っていた。

  

  「おーそーい!何をしていたのじゃ!」

  「わりーわりー、ちょっと野暮用」

  てへぺろっと誤魔化すがルナに容赦なくチョップをお見舞いされるヤマト。それを見て細目になって苦笑するシュオワン。だがシュオワンはそんな光景にどこか嬉しそうにしていた。

  (こんな家族──僕も欲しいな、優しく時には厳しく──そして何があっても守ろうとしてくれるそんな家族────)

  2人を微笑むようにして見つめるシュオワン。それに気づいたヤマトは笑みを返す。

  「これっ、何を笑っておる」

  「いいから行くぞルナ」

  シュオワンを見ては頷きシュオワンも頷くと、お互いアイコンタクトを取るように連携しつつ次元の玉を持って3人は庭に出る。

  「準備は?」

  「よいぞ」

  「行こう、イヅナの所に!」

  待っててね、イヅナ。

  僕が君を助けに行くから────

  ヤマトは空間に次元の狭間を作るとその中に入る3人。

  3人は次元の空間を歩きながらイヅナのいる世界へと向かうのであった────

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