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目覚める力、神狐の覚醒。そして明かされる過去

  神狐はいつものように神社で縁側で横になっていた。

  参拝客はこっちに来てからは閑古鳥が鳴くほどに来ていなかった。

  「………」

  あの[[rb:シュオワン > 幼少期]]は無事だろうか…どこかで怪我をしていないだろうか…

  そんな不安が何度もよぎる。それに────妾がシュオワンに対して魔性の王について聞いたのは、代々狐巫女一族が受け継いできた伝説の書物“万物の巻物”これはその者の人生や生い立ちなど生没年まで調べることが出来る生きる巻物と呼ばれているものだ。それを使って、妾はシュオワンについて調べた。

  それを見た途端────妾は途中で読むのをやめてしまった。

  何故あの者があんなことになってしまったのか、今ふと思えば[[rb:あの子 > 幼少期シュオワン]]を守って正解だったと思う。

  だが…それだけでは何かが足りない、何故だろうか────悲しさが込み上げてくるのだ。

  あの[[rb:シュオワン > 大人]]に対する思いが募っていた。

  彼の大学がどこにあるのかも万物の書物で調べたことで分かった為、実際はただ彼に付き纏っているようなものだ。

  

  「シュオワン──」

  ボソッと名前を呟き、空を仰ぐ。

  こんなにも虚しく悲しい気持ちになったのは初めてだ、過去の自分を殺めようとしてたからそれを止めたのに、何故か[[rb:今の自分 > 大人シュオワン]]を守りたいという気持ちもあるのだ。

  だから聞いてしまった、魔性の王とはなにか────何故そこまで堕ちてしまったのか。神狐はただただ胸が苦しいだけだった。

  

  「妾は……妾は──」

  「神狐様〜」

  子狐が神狐に声をかけると、ドキッとした神狐は慌てて振り返る。

  「おや、どうかしたのか?」

  何事も無かったかのように笑みを浮かべる神狐。

  「なんか大きい蛇みたいな龍の人がいるのです〜神狐様を呼べと言われて〜」

  間違いない、シュオワンだ。

  「分かった、直ぐに行くのじゃ」

  そういって神狐はゆっくりと立ち上がる。

  正直に言うとシュオワンに会いたくない、会ってしまったら自分はきっとその場で泣き崩れるか、何も言えずただ見つめることだけしか出来ないのだろう。

  神狐は参道まで歩いていくが、途中途中で歩みを止めてしまう。やはりあの書物を見てしまったが故に神狐にとっては胸が痛いほど苦しいのだ。

  でも、行かなければ前に進めない──神狐はそう思いながら再び歩みを進めると、そこには鳥居に寄りかかりながら腕組みをして待っているシュオワンがいた。

  「シュオワン……」

  悲しげな表情を露わにしながらシュオワンを見つめる神狐。

  「やぁ、また会ったね」

  シュオワンは顔色1つ変えず神狐に挨拶をする。

  「なんの用じゃ?」

  「君に用があるんだ、昨日の事についてね────」

  シュオワンは鳥居から離れると神狐の前まで近づく。

  「どこまで知っているのかな?僕のことについて────」

  

  黒い霧を放ちながら、瞳孔の開いた目でシュオワンは神狐を見つめる。神狐はいつもの様に平静に振る舞うことが出来ず、たじたじになる。

  「わ、妾はそんなこと──」

  「答えろ、どこまで知っている」

  シュオワンの奥に潜む闇は凄まじく、神狐は飲み込まれそうになってしまうと視線を慌てて逸らす。

  「へぇ……今日は抵抗しないんだ?珍しいね、それとも──こういうことをして欲しいのかな」

  それを逃さんとばかりに手を顎に持っていき、無理矢理自分を見つめさせるシュオワン。

  「ッ……‼️」

  もう、ダメだ────飲まれると思った瞬間。

  “チャリン”

  賽銭が入る音が聞こえた。

  その音に気づき、神狐とシュオワンはそっちに視線が行くとシュオワンが神狐から手を離す。神狐は振り返るとそこには全身がフード付きの黒コートで覆われた男が祈願をしていた。

  祈願を終えるなり、振り返りこちらに向かって歩く。

  見た目は黒革のような素材のフード付きロングコート。留め具はダブルファスナーで胸の辺にチェーンの装飾があった。

  「参拝者…なのか?」

  黒コートの男は神狐を見ながら即座に視線を外し、シュオワンに関しては通り過ぎる際に一言だけ放つ。

  「強欲の蛇──魔性の王か、くだらんな」

  そう言い放つとシュオワンの目付きと顔色が一瞬にして変わった。

  「お前……!その名を何処で────」

  黒コートの首を掴もうとした瞬間、それを避けられると同時にシュオワンの顔に銃口が突きつけられる。

  「遅いな、君の力では私には到底勝てんよ」

  黒コートのフードの中から感じる膨大な魔力とそれ以外の何か。神狐はそれを感じたのか、静かにつぶやく。

  「これは…妖力?霊力もある…?お主、何者じゃ!?」

  神狐が黒コートの男にそう聞くと、黒コートの男は何も言わない。

  「死に急ぎたいのならここで撃っても構わんが…君の身体から放たれる魔力は無限に使える上にその身体────過去に無理矢理壊されたな?」

  その言葉にシュオワンは思わず冷酷な目付きになる。

  「…なんの事かな」

  平然を装いつつゆっくりと離れ、距離を保つ。

  「私はこう見えて魔力、妖力、霊力の3つを持っていてね。オマケに他者に触れることで他者の記憶や他者の心の中を覗けるのだよ」

  銃をしまい込んでは説明する素振りを見せながら笑う。

  だがフードを被っており、中の表情は全く見えない。

  表情を悟られたくないというわけではなく、仮面のように素顔を隠すかのように────

  「僕の中を覗いたのか…なら聞かせろ、貴様は何者だ」

  握り拳を作りシュオワンの身体から放たれる黒い霧は更に濃さを増しており、異様な空気を放っていた。

  「私の名は天帝…またの名を傲慢と呼ばれた最強の戦士」

  男はそう名乗り、自らを傲慢といってはシュオワンを見つめ手をかざす。

  「天帝、ふざけた名前だな。傲慢?最強?寝言もその辺に────」

  すると何かを感じたのかシュオワンは身を捩らせると同時に目の前を一発のビームが掠め、地面に命中するとシュオワンは冷や汗をかく。

  

  「ほう、避けるか」

  「こいつッ…!」

  シュオワンの背後には一本のファンネルのようなものが宙に浮いており、それが黒コートの元に戻ると同時に消えた。

  「あれは──ドラグーン・システム…!?」

  「なんだいそれは…?」

  「簡単に言えば全距離対応型の射撃武装じゃ…!なんでこんなものを────」

  神狐がそう呟き、説明する────

  ドラグーン・システム、それは空間認識能力が長けている者にしか扱えないオールレンジ攻撃。相手がどれだけ離れようが相手の位置を特定し飛ばすだけで攻撃を放つことが出来る。

  それを聞いたシュオワンは舌打ちをする。

  「小癪な真似を…!」

  (コイツの戦い方はなんなんだ──見たことの無い武器を使う…まったく読めない……どうする…)

  「どこを見ている」

  するといつの間にかシュオワンの背後に立つ天帝、それに気づくシュオワンは咄嗟に振り返り構える。

  「なっ…!?いつの間に…!」

  「やはり、君では私に勝てんよ」

  そういうと同時にシュオワンの腹に鈍痛が走る。

  天帝の拳が目にも止まらない速さでシュオワンの腹に直撃し、凄まじい痛みと共にシュオワンは膝をつく。

  「シュオワン!!」

  神狐が叫び、近づこうとすると──

  「来るな!!」

  シュオワンが怒号を上げるように叫ぶ。

  「こっちに…来るな……!!」

  (この男から流れるこの魔力の濃度といい、力といい──コイツは人間なのか!?人間だとしてもここまでの力がでるものなのか────)

  「どうした?そんなものか?[[rb:|魔性の王 > 先祖返り]]よ」

  「貴様…!!」

  圧倒的な力を持っているシュオワンがそう言われるとシュオワンは額に青筋を立てながら天帝にむけて勢いよく拳が振り上げる同時に天帝は片手で軽々と受け止める。

  

  「なにっ…!?」

  すると天帝の喋る言語が変わりシュオワンにむけて話し始める。

  「這是人類的夢想、人類的希望、人類的工作,我被造得比別人強,領先於別人,凌駕於別人之上(これが人の夢、人の望み、人の業、他者より強く、他者より上へ、他者より先へ、私はその結果なのだよ)」

  そういうと、シュオワンの角度からは天帝の顔が見えたのかフードの中の顔を見た瞬間呆然とした。

  「お前は────」

  天帝は掴んでいたシュオワンの手をそのまま勢いよく投げ飛ばすと、受身を取るシュオワン。

  すると天帝は宙に浮かび始めると魔力を使い自身の周りに大量のドラグーンが現れる。

  「さぁ、終わりにしようか」

  「それはこっちのセリフだよ」

  そういうと同時にシュオワンは薄ら笑いを浮かべる。すると足元にいたことに気づいていなかった天帝、足元には黒い蛇が這っており天帝の身体を締め上げるように巻き付く。

  「なにッ…!?」

  「やっと引っかかってくれたね、助かるよ[[rb:麻木不仁的人 > 鈍感者]]」

  黒い蛇はキツく締め上げるように天帝にとぐろを巻いていく

  「ぐぅぅぅぅぅ…!!」

  呻き声を上げる天帝。

  「さて、どうしてくれようか…今までやってくれた分お返ししてあげるよ」

  そう告げると同時にシュオワンが手の平を前に出して握り締めると同時に骨が折れる音が響き渡り、天帝は力抜けるように息絶える。

  「なんだ…もう終わり?つまらないな、まぁ僕を侮ったのが運の尽きだよ」

  シュオワンは鼻を鳴らしたあと眼鏡をクイッと整え直し、黒い蛇を手元に戻す。

  

  「確かに、それは言えてるな。お前を侮っていたようだ」

  背後から聞こえる天帝の声──シュオワンは焦った表情で素早く振り返るとそこには確実に倒したはずの天帝がいた──

  「馬鹿な…!?」

  驚愕するシュオワン、天帝は一言だけ喋る。

  「滅びるがいい」

  その瞬間一斉にドラグーンから放たれる攻撃がシュオワンに集中砲火されてしまい一瞬にして傷だらけにされてしまいボロボロの姿となって立つのもやっとなのか片膝を付く。

  

  「貴様…いつの間に……!?」

  「お前が倒した相手は、私が魔力で作った偽物だ《 ・・ 》」

  宙に浮かびながらそういう天帝、シュオワンは倒れている天帝を見ると、確かにそれは偽物だった。偽物の天帝が粒子化して消えていく。天帝は再びドラグーンを今度は無尽蔵に展開し手を広げる。

  今度こそ確実に殺すつもりだと察した神狐。

  

  「これで終わりだな、さよならだ“司稜枱 蛇王”」

  「ッ!?何故その名を────」

  「シュオワン!!逃げるのじゃ!!」

  神狐は叫ぶが、シュオワンは動けない程にまで攻撃を受けているせいか、立つこともままならず歯ぎしりを立てる。

  

  妾は守れないのか?また[[rb:あんな > ・・・]]事が起きるのか?大切な者が守れないというのか?妾は────目の前で[[rb:また > ・・]]失うというのか──────

  神狐の記憶がフラッシュバックする。

  それはかつて過去に自分には双子の妹がいた────泣き虫で甘えん坊でワガママで──その上、一度決めたことに関しては最後まで貫き通す頑固な妹が──

  その妹を目の前で失った神狐は自分の非力さを恨み、同じ事が起きないように強くなろうと決め巫女にまでなった自分が──再び目の前で大切な者を失おうとしているのだ──────

  

  「シュオワン……!」

  ふと蘇る──まだ会って間もない頃の幼少期シュオワンとの会話を思い出す神狐。

  それは神狐が幼少期のシュオワンにお手製の鈴を渡したあとの会話だった。

  

  ――――――――――――――――――

  (第一話:接触にて幼少期シュオワンが、イヅナにお手製の鈴を手渡しされたあとの回想)

  

  「イヅナ」

  神狐と手を繋いでいる幼少期シュオワンが神狐に尋ねる

  「ん〜?」

  「もし、僕に何かあったら守ってくれる?」

  そんな言葉に神狐は笑みを浮かべてこう答えた。

  「あぁ、もちろんじゃ。絶対守るし何かあったら何があろうと絶対助けに行くから、待っててくれるか?」

  そういうとシュオワンは満面の笑みで言う。

  「うん、僕はイヅナのこと信じてるから────イヅナのこと、“好き”だから──ずっと待ってるから」

  ――――――――――――――――――

  『イヅナ──待ってる』

  幼少期シュオワンの声が頭の中で聞こえてくる。

  「妾は妾は──────」

  守りたい────シュオワンを。

  子供だろうと大人だろうと関係ない、シュオワンはシュオワンだ。どんなに姿が変わっていてもどんな辛い過去があって変わり果てていたとしても、周りがどんなにどれだけ否定しようが──シュオワンが自分を裏切って自分を殺めようがシュオワンの物になろうと──────守る価値が、自分にはある────

  「シュオワンは────やらせない」

  目を瞑ると神狐の心の中にある結晶が静かに割れる。

  “パキィン…バシュゥゥゥン!!”

  凄まじく神々しい光が神狐の身体から解き放たれる。

  「!?」

  その光を見た天帝は思わず神狐の方を見る。

  「やめろおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

  目を開けた神狐の目は虚ろ目になっており、叫びながらとてつもない速度で天帝に向かっていく。

  「チィッ!邪魔をするな!」

  ドラグーンが神狐に向けられ、発射されていく。多くの攻撃が神狐に向けて飛んでいく中、神狐は見切ったかのように全てを躱し自身の札を取り出しては札を弓矢へと変化させ、反撃するように矢を放っていく。

  その矢はドラグーンに命中し破壊しては次々にドラグーンの攻撃を躱しながら撃墜していく。

  

  「バカな──これはッ…!?」

  「神狐……?」

  (なんだこの神狐から出てくる魔力は…?いや違う、これは────神狐の言っていた妖力?)

  全てのドラグーンを撃ち落とした神狐、シュオワンの前に立って守ろうとするその姿はまるで子を守る母親のような立ち姿だった。

  「その風貌──そうか…狐巫女一族か、厄介なものだな……」

  天帝は神狐の目の変わりようにも気づいたのか舌打ちをした。

  「その目…覚醒したというのか────」

  「…………」

  何も聞こえないのか何も答えない神狐、その状態は[[rb:狂戦士 > バーサーカー]]のような立ち振る舞いだった。

  「シュオワンは、やらせない……」

  静かにそう呟くと、片手で指を鳴らした瞬間天帝の足元に巨大な六芒星が現れる。

  「なにっ!?これは────」

  「大妖術神狐六式、“轟雷”」

  晴れていた天気が一気に黒い雲に覆われ、凄まじい雷の音と共に巨大な落雷が天帝に直撃した。

  「ぐおおぉぉぉぉぉぉっっっ!?」

  落雷をモロに受けた天帝はそのまま片膝を付く。

  「まさかこれ程のものとは…これが狐巫女一族の末裔───[[rb:飯縄権現御霊 > 初代狐巫女]]の生まれ変わりだと言うのか!?」

  再び神狐が術式を唱えようとした瞬間、その場から即座に脱出した天帝はそのまま逃げるように飛び去って行った。

  「………逃げたか」

  

  そういって静かに目を瞑り、元の明るさを取り戻した目に戻ると神狐はシュオワンの方へと振り返る。

  「シュオワン!」

  「み、こ────」

  天帝が逃げたのを確認すると同時に膝から崩れるように倒れそうになるのを神狐が慌てて抱き抱える。

  「シュオワン…こんなにボロボロになりよって……」

  全身傷だらけのシュオワンを見つつ、神狐は優しくシュオワンを抱きしめる。

  「馬鹿者……」

  神狐はシュオワンを背負っては、苦しそうにしながら運び始める。

  「お、重い………」

  そのまま神狐は何とかシュオワンを運び出し、傷を妖術で癒したあとは布団に横にさせ神狐は子狐を呼び出す。

  「子狐よ」

  するとどこからともなく出てくる子狐。

  「はいな、なんでしょう?」

  「もしこやつが目覚めたら妾は縁側に居ると言ってくれ。」

  「分かりました!」

  ビシッと敬礼する子狐に神狐は頼んだぞと言ったあと、万物の書物を片手に縁側に向かう。

  そして時間が流れ、夜になると意識を取り戻したシュオワンはふと目を覚ます。

  「……ここは」

  ゆっくりと身体を起こすシュオワン、周りを見回すと子狐が気づいたのかシュオワンに近づく。

  「神狐様が外で待ってますよ、それじゃ僕はこれで」

  とシュオワンにそう伝えたあと、トコトコとその場から去っていく子狐。

  シュオワンは自分の身体や服を見ると、全てが修復され傷も治されていた。

  (神狐が治したのか…?そういえば神狐は何処に……?)

  シュオワンはゆっくりと立ち上がり布団から出ると、外に出る襖の隙間から月の明かりが差し込んでおり、その向こうには神狐らしきシルエットが写っていた。

  

  「神狐、いるのかい?」

  そういってシュオワンはゆっくりと襖を開けると、そこには神狐が縁側に座っていた。

  「目覚めたようじゃな」

  「あの男は?」

  「逃げられた、追おうと思ったがお主を見捨てはおけんかった」

  と背中を向けたまま神狐は空を眺め月を見上げながらそういった。

  シュオワンは神狐の隣に座る。

  「何故助けた?僕のことは放っておけばよかっただろうに」

  自分を助けた神狐にシュオワンは疑問を抱いていた。明らかに自分よりも弱いはずの神狐が天帝に立ち向かったこと、そして天帝が神狐に圧倒されて逃げたことを知ったシュオワンは神狐を見る。

  

  「……なに、あのまま参道で倒れていられても困るだけじゃ」

  と答える神狐、神狐はシュオワンを見てそっとシュオワンの手の上に自分の手を置く。

  「…なんの真似だい?」

  また妙なことを企んでいるのかと警戒し少しだけしかめっ面をするシュオワン、神狐はシュオワンを見つめた後俯きながらとうとう言ってしまう──

  

  「妾はお主の全てを見てしまった、お主の生い立ちから背景まで全てを────」

  神狐の隣には万物の書物が置かれており、それをシュオワンは見る。

  「……どういうことかな?」

  万物の書物を手に取る神狐、それを見せながら神狐は説明する。

  「これは万物の書物──代々狐巫女一族が受け継いできたものじゃ、これは自分が思い浮かべた人物の生没年、生まれから死ぬ時までの人生を見ることができる巻物じゃ」

  そういうとシュオワンは自分の人生を覗いたということに気づいた神狐に対して歯軋りを立てながら怒りを露わにする。

  「見たのか?僕の中を────」

  

  歯をむき出しにしながら、神狐を掴み、神狐は静かに頷くとシュオワンは今までにない怒りを露わにしながら神狐に牙を向ける。

  「僕の正体を知ったからには生かしてはおけないな……いっその事ここで楽に──────ッ!?」

  神狐の目を見ると神狐の目には涙が溢れ出していた。

  思わず驚いたシュオワンは手を離してしまう。

  

  「何故泣いている…?僕に同情でもしているのかい?そんなもの不要────」

  神狐はシュオワンを抱きしめ、胸の中でそっと頭を撫でる。

  「違う…違うのじゃ、妾は…お主を守れなかった。それがとても辛い」

  守れなかった?何を言っているんだ────

  「最初にお主に会った時、妾はただの貴族生まれの子供で、何かしらの原因があって歪んでしまったと思っておった。じゃが違った…何故あんなことになってしまった?」

  シュオワンを抱きしめながら涙を流す神狐、シュオワンはそっと神狐から離れる。先程の怒りは収まり、逆にシュオワンは顔を背ける。

  「……そこまで知りたいのかい、僕の[[rb:過去 > トラウマ]]を」

  その表情は何処か後ろめたさを含んだ複雑そうな顔だった。

  神狐は頷く、シュオワンの過去について────

  知りたがる神狐にシュオワンはため息を付いたあと、渋々話し始める。

  「……なら、話そう。あれはまだ僕が幼い頃────」

  そしてシュオワンは静かに語り出す──────自分の過去を──

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