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褌少年が寒中水泳後に恥ずかしい写真を撮られる話

  ◇◇◇

  元旦の空気も次第に薄れ、もうすぐ冬休みも終わるという頃。長作内神社。

  小学生高学年くらいの男の子達が、寒空の下ですべすべの肌に鳥肌を立てながら神社の境内で、甲高い声をきゃいきゃいと上げていた。

  鳥肌が立っているのは、彼らが褌一丁でいるから、という理由だけではない。体毛もほとんど無いようなツルツルの柔肌を惜しげもなく晒して、股の前袋以外殆どが全裸と変わらない男児達。彼らの髪はしっとりと濡れていて、水を弾くすべすべな肌にも水滴が残っている。

  「陸玖〜、寒い〜っ!」

  「ひやッ……! ちべてえ!!」

  その中の一人、つんつん頭の男児――陸玖に仲の良さそうな男児が後ろから抱きついた。後ろからのしかかるように思いっきりハグされた陸玖は、その少しつり上がった目を驚きに見開きながら背中に密着する重みに前かがみになる。

  「湊大、冷たいって!」

  「えー? 裸のふれあい温かいじゃんよー」

  自然と突き出る陸玖のお尻の締め込みに、抱きついてきた友達の褌の前がフィットしている。そのまま陸玖が友達――湊大の体を振り払おうとするものだから、陸玖の丸いぷりぷりのお尻と湊大のすべすべの腰部分がぺちんぺちんとぶつかり合う。

  その音も、少し濡れた音を立てているのは、彼らが新年行事である寒中水泳を終えた後だからだ。

  近くの海に川が流れ込む河口部の浅い所を横切るように泳いで渡る、という神事を終えた男の子達は、冷えた体に負けじと体温を上げるようにはしゃいでいた。

  「ぬぁーっ」

  「離れてやるもんかあー!」

  湊大の褌の小ぶりな膨らみが陸玖のお尻の締め込み部分へと、凹凸が噛み合うように何度も密着しては離れてを繰り返す。しっとりと濡れた褌からその度に水滴が跳ねる、その瞬間を捉えるレンズが神社側の茂みの向こうにキラリと光った。

  温度すら伝わってきそうな光景の被写体であった陸玖が、その反射光に気がついたのは、本当に単なる偶然だった。

  「それじゃあ、皆シャワー浴びて温まって解散にしようか。お疲れ様ー」

  と氏子のおじさんが、集まった男児達に解散宣言をして湊大が離れた、その時、ちらりと視線を向けた茂みの中でそのきらめきが見えたのだ。

  「……ん、なんだろ? カメラっぽいの見えた気がするんだけど……」

  「あ、陸玖どこ行くんだよ。シャワー行かねえの?」

  「いや、なんか光った気がして」

  そう湊大に言って少し茂みの方へと陸玖は背伸びで横移動するように神社の茂みの向こうを覗き込む。そうすると、少し離れた所に見知らぬ男性が茂みに隠れるようにしゃがみこんでいるのが見えた。

  シャワーを浴びに行く他の少年のお尻にカメラを向けていて、陸玖には気づいていない。

  怪しい。と陸玖は、きっと眉を吊り上げた。悪いやつなら懲らしめてやらないといけない。その為には、まず大人の人を呼んできて――と。

  「おい、オッサン!」

  陸玖は考えるよりも先に行動していた。

  少し声に棘をもたせて声を掛けると、男はビクッ! と肩を跳ねさせながら勢いよくカメラから目を離すと、そこにいた陸玖に目を丸くする。

  だが、そこにいるのが陸玖だけだと見て、少し安堵するようにニヘラと笑いかける。

  「な、何かな……? 別に僕は怪しい者じゃ……。てかオッサンってほどの年でもないけど」

  「オッサンじゃん」

  「……う。まあキミから見たらそうかもだけど、でも、ほら、不審者とかじゃないよ」

  手を腰に当てて仁王立ちになる陸玖。植え込みを挟んでいるといっても大人相手にも怖気づかないのは、勝気でやんちゃな陸玖の怖いもの知らずさが伺える。

  その男がなよっとした地味な風体だったのも強気に出れた一因かも知れない。

  ともかく、自分が怪しくないと言う男に陸玖は「ゼッタイにおかしい」と決めつけていた。

  男は濡れた褌一丁の陸玖を見つめながら、周囲にチラチラと注意を向けている。その挙動不審さが決めつけに確信を与えていた。

  ビシッと男に指を突きつけて、陸玖は追い打ちをかけていく。

  「嘘だろ! 勝手に俺らの写真撮るのはヘンタイって言うんだって、母さん言ってたぞ!」

  「ちょ、あんまり大きい声……」

  「なんでだよ! 悪いことしてるから見られたくないんだろ、ヘンタイ、社会のゴミ!」

  「……くそ、めんどくせえな……ァっ」

  しーっ、と口に指を立てる男を陸玖が更に問い詰めれば、焦った様子で身を翻して立ち去ろうとしてしまう。

  追い払ってやった、と思うと同時に、逃がしなんてしない、という感情が陸玖の中に芽生えていた。

  「あっ! 待て、この……!」

  「おーい、陸玖ー。シャワー浴びて着替えようぜー」

  逃げていく男を追いかけよう植え込みを飛び越えようとしたは、後ろから声がかけられてブレーキをかけた。

  振り返れば湊大が陸玖に手を振っている。

  「ああ、えっと……」

  不審な男が逃げていった方を見る。殆ど背中も見えなくなっている。湊大と一緒に帰りたい気持ちもあったが、今はあの男を懲らしめないといけない。

  そんな子供じみた正義感で陸玖は男を追いかける事に決めた。

  「ごめん、俺ちょっと用事!」

  「え? あ、ちょ……なんだよ、もう」

  拗ねたような返事を返す湊大を置き去りに、陸玖は神社脇の茂みを飛び越えた。小さな工場や民家が並んでいる下町の中にある神社だ。少し茂みを飛び出せばすぐに街の風景に移り変わる。

  濡れた褌でそのまだ未熟な膨らみの輪郭がありありと浮かび上がる姿も惜しげなく晒し走る陸玖は、すぐ近くの雑居ビルに飛び込んでいく男の姿が見えた。伊達にクラスの中でも一番の足の速さをしていない。雑居ビルのエレベーターに入った盗撮男がボックスの中で振り返って、猛然と走ってくる陸玖の姿に目を丸くするのが見えた。

  「間に合え……!」

  ぐん、と陸玖はスピードを上げた。

  エレベーターの扉は閉まらない。盗撮男がエレベーターのボタンを連打しているけれど、もしかしたら間違えて『開』のボタンを押しているのかも知れない。

  そんな事を思いながら一気に駆け抜けた陸玖。扉を抜けて、盗撮男に肉薄する。そして、彼はエレベーターの中にいる男の腹に、ダッシュの勢いを乗せたパンチをお見舞いしてやった。

  「おぐ……っ!?」

  「へへ、俺から逃げようなんて百年早いぜ!」

  と、土手っ腹に小学生の容赦ない拳を叩き込まれた盗撮男は、体をくの字に曲げるようにして床に蹲る。後ろでエレベーターの扉が閉まって、上に向かっていくのを感じながら陸玖は勝ち誇った笑みを浮かべて、男の前に仁王立ちになった。

  「げほ、……っ、このクソガキ……」

  「やい、ヘンタイ! 大人しく警察にジシュしろよ!」

  「うるさいな、そういうのヒーローごっこは自分の状況が分かってからしろよ」

  「……え?」

  チン、とエレベーターが止まる。

  無防備に褌の膨らみを男の眼前に突きつけるような格好をしている陸玖は、盗撮男の言う意味が分からずコテンと頭をかしげさせる。そんな彼の後ろでエレベーターのドアが開いた。

  そして。

  「お、ほんとに来てんじゃん。かわいー」

  「東佐妻、それ何、土下座?」

  「このガキに殴られたんだよ……!」

  「てか、濡れ褌エロすぎじゃね?」

  

  エレベーターの扉の前で、見知らぬ大人の男達が陸玖を待ちわびていたのだった。

  ◇◇◇

  「やめろよ……! 離せ……っ、離せよヘンタイ!!」

  テナントの入っていない雑居ビルの一階。元々音楽スタジオだったらしい防音室に連れ込まれた陸玖は、カーペットの上に寝かされて、その手足を男達に掴まれていた。

  大の字になって仰向けにされている陸玖に殴られた盗撮男が、もはや隠す必要も無いとばかりに陸玖の体に向けてシャッターを切る。

  薄っすらとガッシリとした体つきへと変わりつつある細い体。殆ど筋肉はついていない胸板の両側についている薄桃色の乳首。先端は少し埋没してしまっているそこをじっくりと捉えたかと思えば、男のレンズはゆっくりと舐めるように陸玖の脇を、お腹を、

  へそを、鼠径部を。

  そして褌の膨らみと締め込みを接写していく。

  水を弾く若々しい肌、発達途上の筋肉が生み出す、柔らかな凹凸。陸玖自身が全く自覚せず、日頃さらけ出している少年の色気が次々に写真データに収められていくのだ。

  「おいおい、暴れるなって。大人に力で勝てるわけないだろ?」

  「っ……うるさい、お前もお前も、犯罪、……だぞ……!」

  その間も陸玖は体をぐねらせるようにして、男達の手から逃げ出せないかともがき続けていた。

  だが、それでも男達の手どころか指一本引き剥がせないでいる。

  好き勝手されながら、抵抗も出来ない。そんな自分が情けなくて、そして、一体自分が何をされるのか分からない怖さに、じわじわと涙が浮かび上がってきていた。

  「ぅ、この……」

  「お、どうした? 泣きそうか?」

  「……ちが……ぅッ」

  その証拠を写真に収められながらも、陸玖は涙を払うようにふるふると首を振って抵抗する。

  周囲の男達は、そんな陸玖の強がりに小馬鹿にするように笑う。

  「そっか、泣かないのエライなあ。それじゃあ、これが無くても泣いたりしないよな?」

  「っ、や、……どこ触って……?」

  「褌、ついでにちんちん?」

  「やめ、ッ……うわ……っ!?」

  陸玖の体を抑えていた一人が、腰を包んでいる褌の膨らみを指先でさわさわと撫で付けていた。おふざけ以外で他人に触られる事もない場所を、されたこともない手付きで撫でられて、陸玖の体が警戒に強張る。

  抵抗がなくなるその瞬間に、陸玖の両足が持ち上げられてしまう。

  中途半端に逆立ちをするように背中とお尻が浮く。足を広げられたまま上半身の方へと持っていかれて、陸玖は自分の股間部分が開けっ広げにレンズの前にさらけ出される事に、羞恥で燃え上がりそうになっていた。

  別に日頃裸を見られて恥ずかしいことなんてない。そう思っていたけれど、それでもそこが見られると恥ずかしい場所だという認識もあるのだ。

  「や、だ……待――」

  「御開帳~」

  男の手が陸玖の濡れた褌の締め込まれた端を解き始める。緩くなっていく感覚に陸玖が制止を掛けるが、ニタニタとその声を聞く男達がそんなもの聞いてくれるはずもなかった。

  待って欲しい。そんな事を言おうとした矢先、十分に緩んだ褌が一気に引き抜かれ、陸玖の秘部が男達の目の前に暴かれてしまった。

  「おお、良いアングル。全部写ってるよ」

  「ぁ……ぅう……」

  パシャリパシャリとシャッター音が連続する。

  いわゆる『ちんぐり返し』になった陸玖を斜め上から撮っているのは、何一つ遮るもののない陸玖のあられもない姿、その全てだ。

  これから数年後には生え始めるのだろう下生えの気配すらないツルツルの鼠径部、その下で先端まで皮が被り切っている陸玖の可愛らしい包茎ちんちんがちょこんと裏筋を晒していた。

  日焼けもしていない彼本来の白い肌に薄っすらと血色の良さを表すような桃色が浮かんでいる。なめらかな肌がフラッシュに焚かれてツルツルと照り返しを生んでいた。

  寒中水泳の後、暖房も入っていない防音室に連れてこられた陸玖の玉袋はきゅんと肌に密着するように縮こまっていて、まるで皮を向いて数日間放置したみかんのようなシワシワさだ。

  それでも、そこは確かに男としての機能を備え始めているのか。赤ん坊のような物とは違い、確かに重量を感じさせる。

  「やだ……っ、撮る、な……っ」

  「恥ずかしいの? ちんちん見られるのが?」

  「う……ぅ……」

  男の手が陸玖の小さなお尻を割り開き、その奥の窄まりすらもレンズの前にさらけ出させる。小ぶりなお尻は掌にすっぽり収まるほどの大きさしかなく、キュッと締められたそこは子供らしい薄桃色だ。

  うんちをする所。それ以上の使い道を知らない――考えようもないような清純な少年の窄みは、染みも色素沈着も全く無く、清楚そのものの淫猥さを引き出していた。

  皺の一つ一つが健康的な色をはらみながら、少し緩んではキュウと絞られていく。

  「や、だ……っ、撮るなよお……っ」

  「ふはは、可愛いねえ。まあまあ、減るもんじゃないんだから」

  そうやって恥ずかしい陰部を晒された後もシャッターの音は鳴り止まない。

  パシャリパシャリとフラッシュが焚かれて、その眩しい光に陸玖の股間が更にきゅうっと縮こまってしまう。ひくひくと震えるお尻の窄まりを比較出来るほどに、何枚も何枚も恥ずかしい部分を連続撮影されながら、陸玖はもう暴れる事もしなくなっていた。

  「おお、接写~」

  「すっげ、アナルの皺一本一本までくっきり」

  カメラの液晶を覗き込みながら、男達が品評する。変わらず抑え付けられながら、もっとよく見えるようにとお尻を押し広げられて、そこにレンズが肉薄していく。

  フラッシュに照らされた薄桃色の窄み。

  「ヒクヒクしてる、エロすぎ」

  「ぅう……っ」

  「いいねえ、もっとよく撮らねえと」

  無遠慮な指が窄まりを撫で回し、尻肉を押し開いて更に露わにしていく。むちっとしたお尻の間でキュッと皺を絞る窄みとぷるぷるとその度震える、つるつるの皮に包まれる幼茎。

  そんな部分の数々を余すところなく撮影されて、もうこれ以上撮られて辱められる事に耐えられそうもないと泣きべそを掻く陸玖はそれでもしゃくり上げる事は嫌だと精一杯にこらえているのが目に見えてわかった。

  「でも、こんなキレイなんだな。少しは汚れてるかと思ってたけど」

  「そっか、寒中水泳の事知らないんだっけ。褌締められる前に洗われんだよ、結構恥ずいぜ、あれ」

  「へえ……え、ケツの中まで?」

  そんな彼を、ニタニタと笑い見つめながら男達は談笑していた。

  神社の人や氏子さんが、寒中水泳をする男の子達を丸洗いするのが決まりになっている。

  大人の手で全身をくまなく洗われるのだ。それこそ、耳の裏やへその中、ちんちんの裏やらおしりまで満遍なく。

  「俺ん時、絶対ショタコンでさ。勃起してシコられたんだぜ、キツかったわぁ」

  「そうそう、石鹸つけた指、グリグリ穴ん中挿れられんの。目覚めるやつもいんじゃね?」

  「ふうん、そんあウラヤマイベントなんだ。俺も氏子になれば参加出来るかな」

  と陸玖のお尻を広げていた男が、ふと陸玖の窄みをくりくりと指先で撫でて、その先端を少しだけその窄みに咥えこませる。異物にキュウと窄みが締まったのをカメラがすかさず撮影する。

  「それで、キミはどうだった? おっさんにお尻洗われて気持ちよくなったりした?」

  「……、して、ない……っ。するわけ……」

  「そっかあ、残念」

  「ん、ぁう」

  と男は渋々といった様子で指先を陸玖のお尻から抜き出していた。無意識に詰めていた息を吐き出した陸玖は、強張っていた体から力を抜きながらも、今何をされたのかと男の方に顔を向けていた。

  「じゃあ、こっちは? 精通もそろそろしてる頃じゃない?」

  「ん……ッ!?」

  再び指先がむき出しのお尻に触れる。そして、そこからゆっくりと上の方へと上がっていって陸玖のぷりぷりと採りたて果物みたいなちんちんに指先が到達する。

  皮を被ったままの先端部分を指先でそっと摘ままれて、くりくりといじくられる。そんな部分から、陸玖の知らないゾワゾワが背筋を駆け上がっていくのだ。

  「っ、なんだよ、気持ち悪い……や……」

  「やば、この皮オナホ感」

  敏感な部分をいじられて、不快感に顔をゆがめる陸玖。そんな彼の表情とちんちんにシャッターを切る盗撮男だったが、暫くそのまま弄り続けて、そして、男がふとその手を離してつまらなさそうにため息を吐く。

  「んー、なんか勃たなさそうだわ」

  「ピン立ちちんちんも欲しかったんだけどなあ」

  「中学生くらいなら、触られたら即効フルボッキしそうだけど……まあ、時間もないし仕方ないか」

  そんな会話をしながら、男達は陸玖をそこに寝かせたまま立ち上がっていた。それぞれに盛ってきた荷物らしきカバンやらを手にしだして、見るからに撤収の準備を始めている。

  「……ん、う……?」

  もう、終わりなんだろうか。もう、へんな写真を撮られる事もないんだろうか。

  そう考える陸玖は、それでも動けないでいた。もしここで自分が何かを言って、男達の気が変わったりしたら……そう考えると、ひっそりと自分の存在を忘れてくれるように祈るばかりだ。

  だが、当然、この場の主役である陸玖の事を彼らが忘れてくれるはずもない。

  盗撮男が陸玖の締めていた褌を手にしながら、近づいてくる。

  「大丈夫だと思うけど、一応ちゃんと口止めしておくね。殴られた事は、いい写真撮らせてくれたからチャラにするとして――」

  と陸玖の横にしゃがみこんだ男の手にはカメラが。その液晶には、陸玖が足を広げて、皮被りの隙間とくりんと収まる玉袋、そして、男の指に拡げられているお尻の穴が全部ばっちりと映り込んでいる画像が表示されている。

  「僕たちの事誰かに話したりしないでね? キミも恥ずかしい写真、色んな人に見られちゃうの、嫌だよね?」

  「ぇ、あ……」

  そんな画像が何枚撮られたのか。枚数は『13/367』となっていて、そのうちの幾つが陸玖の写真かも分からない。でもその数が、十枚やそこらなんてことはありえないだろう。

  それを考えただけで、陸玖は体の芯が冷え切るような思いだった。

  「わか……った」

  「うん、偉いね……じゃあ最後に記念撮影」

  陸玖は、男の言葉に素直に頷くことしかできなかった。

  最後に泣きべそを書いている陸玖の姿を撮影した男達は、その後そそくさと撤収していった。ぽつんと残されたのは褌すら奪われて靴しか履いていない真っ裸の陸玖だけ。この後、家まで真っ裸で帰るしかなく更に恥ずかしい想いをしたのだが。

  陸玖は頑張ってそれを思い出さないようにするのだった。

  ◇◇◇

  冬休みが終わった後、陸玖は普段通りの生活に戻り、学校に登校していた。

  今日は、最初の国語で書き初めをすることになっている。皆が書道セットを取り出して準備している間に、隣の席に座っていた湊大が陸玖の方に身を乗り出してくる。

  「なあなあ、陸玖」

  「なんだよ」

  からかうような口調に、うんざりとしたため息を吐きながら陸玖はそう問い返す。そうすると湊大は、にやにやしながら寒中水泳の後のことを問いかけてきた。

  「お前あの後どこ行ってたんだよ。褌落としてマッパで帰ったってマジ?」

  「う、うるさい、俺はもう忘れるの! あんな恥ずかしい事思い出させんなよ!」

  「なんだよ、つれねえなあ」

  からからと無邪気に笑いながら湊大は、自分の墨汁を硯の中に注いでいった。陸玖も準備を終えた、その時、少し職員室に戻っていた先生が帰ってきた。

  その後ろに、一人男性がついてきている。

  カメラを持った

  「あー、なんか。市のお便り的なやつで書き初めの取材がとか言ってたな」

  「そういうことか、……って……」

  長作内市報で使う小学校での書き初め風景の写真を撮影に来る、ということは聞いていた。そこに驚きはしなかったが、しかし陸玖は、カメラを持ったその男に思わず大声を上げそうになってしまっていた。

  「……ん、どうかしたのか?」

  「い、いや……」

  先生と会話をしながら、にこやかに笑顔を向けてきたその男は、紛れもなくあの時の男だったのだ。忘れるはずもない、あんなに恥ずかしい想いをすることになった原因。その人に違いない。

  「……」

  陸玖がキッと睨むと、教室の皆に挨拶して頭を下げるその男と目があった。そして、困ったように笑う男にどうやって墨汁をかけてやろうかと、陸玖は筆を取りながら考えるのだった。

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