「よぉーし、ベンケイ。今日の稽古はココらへんにしといてやる」
「はぁ、はぁ……ありがとうございます、先輩!」
町外れの柔道場。俺はここで先輩……熊江武蔵さんに稽古を付けてもらっていた。
俺は轟 弁慶(トドロキ ベンケイ)。
ティア・ガーディアンズのサイドキック部隊に所属するゴリラ獣人だ。
サイドキック部隊……いわば、ヒーロー達をサポートするために結成されたチームだ。
タイラントの襲撃を受けている地点にヒーローより先に現着し、市民の避難誘導をしたり、ヒーローが怪人や戦闘員と戦っている時に巻き込まれてしまった市民を守ったりするのが主な役目だ。
俺達自身が「ガイア」の力を持っている訳じゃないが、メカニック部が作ってくれたプロテクターを装備すれば戦闘員程度であれば戦える。
武蔵先輩から紹介を受けて俺は3ヶ月前にティアガーディアンズに入隊し、ゴリラ獣人特有の「力強さ」を認められてサイドキック部隊に配属されたって訳だ。
「ベンケイもなかなか強くなったじゃねえか!サイドキック部隊でも小隊長を任されたんだってな。俺も同じ高校の先輩として鼻が高いぞ」
むっちりとした体を柔道着で覆った熊獣人の武蔵先輩が、道場の床に倒れ伏している俺に手を差し伸べてくれた。俺は汗塗れのその手を握り返して、ゆっくりと体を起こした。
[uploadedimage:17405179]
(イラスト by [[jumpuri:ひさしよ > https://www.pixiv.net/users/11635504]]さん)
「ありがとうございます、先輩。これも先輩のご指導の賜物です。これでタイラントの戦闘員どもを投げて投げて投げちぎれます!」
「ハハハ、頼もしいじゃねぇか後輩!」
豪快に笑う武蔵先輩の屈託のない表情は、まるで学生の頃の思い出から飛び出して来たように、あの頃のままであった。
―――――――――――――――――――
俺と先輩は高校の頃からの付き合いだ。
出会ったのは、もう……6年前になるのか。あの頃の俺は家庭事情もあって荒れていた。入学したばかりで他校との暴力沙汰を起こし、それから不良グループとつるむようになって周りからも遠ざけられていた俺に声をかけてくれたのが柔道部で主将を務めていた武蔵先輩だった。
『頼む、次の日曜の試合だけでいいんだ!助っ人で試合に出てくれねえか』
『あぁん?なんで俺がそんなもんに出なきゃ行けねえんだ。それに柔道なんてやったこともねえよ』
『おまえ、ゴリラ獣人で、そのガタイだろ?絶対強いに決まってる!大丈夫だ、おいらが日曜日までに指導つけてやるから』
『な、なに勝手に決めてんだ。絶対に断る!』
しかし、先輩はなかなか俺を解放してくれなかった。必死で説得してくるツキノワグマ獣人を見下ろした俺は無理難題を出して追い払おうと思った。
『しつけぇな。それならよ、あんたが俺を投げられたら言う通りにしてやってもいいぞ。まぁ、俺より小柄なあんたができるとは思わっ……!』
次の瞬間、背中に激しい衝撃が走った。
俺は気づけば自分よりも背丈が小さい熊獣人に一本背負いで投げられ、地面から空を仰いでいたのだ。
『これで試合に出てくれるんだな?おっと、わりぃわりぃ!頭は打たないよう投げたけど……大丈夫か?』
上から心配そう覗き込んできた先輩のまっすぐな黄色い瞳は今でも覚えている。
それから無理やり柔道部に入部させられた俺は武蔵先輩から性根を叩き直されることになった。
――――――――――――――――――
「ヒーローの活動で忙しい時に指導を付けてもらえて嬉しいですよ。先輩が所属している虎淵隊、大活躍じゃないですか。この前も[[rb:あの野郎共 > タイラント]]の幹部を撃退したって聞きましたよ」
「あ、ああ……あれは鮫島のおやっさんが助けてくれたからだけどな……」
先ほどまで上機嫌だった先輩の表情が、ヒーロー活動の話になると途端に曇りだした。
「らしくもなく照れ隠しですかい?サイドキック部隊のやつらにも自慢してるんです。『俺はランドイエローの高校の後輩なんだぞ』って!」
構わず話し続ける俺だったが、先輩はどこか居心地そうに俺の話を聞いていた。
「先輩、この後飲みに行きましょうよ!ヒーローの話、もっと聞かせてください」
「……ベンケイ、すまねえ。俺このままトレーニングしていくわ」
普段なら二つ返事で飲みに行くという先輩から断られてしまったことに、俺は意表を突かれた。
「ノリがわりぃな〜」とヘラヘラ軽口を叩こうとした俺は先輩の表情を見て、口を閉ざしてしまった。
先輩の顔には焦燥感と不安感が綯い交ぜになった感情が浮かんでおり、よくよく見ると目の下には濃い隈ができていた。
「そ、そうすか……わかりました。残念すけど、またの機会に!今日はありがとうございました」
俺は立礼をして柔道場を後にした。
先輩のあんな顔6年の付き合いで始めてみた。
何か悩みがあるんだろうか。精神的に参っているような顔を浮かべていたなぁ。
そんな中で俺の特訓に付き合ってもらったことにありがたさを感じつつも、俺に悩みを打ち明けてくれないことをどこか寂しく感じてしまった。
[newpage]
おいらは焦っていた。
いまだ「大地のガイア」を力を使いこなせず、リーダのハヤテに従ってチームのサポートに徹するしかない。こんなことがやりたくて、おいらはヒーローになったのだろうか?新人ヒーローのショーマは、もう「炎のガイア」を使いこなして最前線に立っているというのに……
こんな気持ちになったのは いつからだっただろうか。
考えるまでもなく1週間前のことだった。
――――――――――――――――――――
「やいやい、タイラントの怪人め!この熊江武蔵様が来たからには思い通りにさせねぇぞ」
あの日、おいら達は街中にタイラントの怪人が現れた報告を受けて現地に出動した。
「ランドイエロー、しゃしゃり出るな」
「そう言うなよ、ブルーウインド。おい、サポート担当のこいつが目立てるのはこん時くらいなんだからよ」
「うるせーわい、ショーマ!」
ウインドブルー、ファイアレッド、そしておいらランドイエローの3人チーム・虎淵隊はいつものように軽口を叩きながら怪人に対峙した。
「ヒーローどもヨ。よく来てくれたゾナ。オレは悪夢怪人ナイトメアバク。獣人どもニ悪夢ヲ見せて苦しませてやるゾナ」
黒く長い頭、手足は黒いが腹回りのみ白いバク獣人の特徴を残しながら、目は凶悪に赤く光り、その爪は鈎爪のように凶悪に鋭い。そして、左胸には管理番号と思しき「BM-No.15」という文字、右肩には禍々しいタイラント帝国紋章の焼印が刻まれた……獣怪人。
元々は獣人であり、タイラントに改造されてしまった被害者であることはわかっているため、こいつらと戦うことに抵抗を感じていた。
この前に地下闘技場で作ったカバ怪人は怪人化して間もないこともあって、額に生えた角を折ることで元の獣人に戻すことができた。
しかし、完全な怪人と化した個体は角が消え、獣人には戻れなくなってしまうという。
怪人ナイトメアバクの額に角は見当たらなかった。
「怪人化が進み切っているな。気は進まんが仕方ない、ランドイエロー、ファイアレッド。フォーメーション・ガンマで行くぞ」
「「了解!!」」
こうなってしまえば、おいら達に残されている選択肢は「救出」ではなく「撃破」になる。
おいら達ヒーローにとっても苦渋の決断だが、放っておけば被害者が増えてしまう。
ブルーウインドの指示に従って、おいら達は怪人撃破に向けた行動を開始した。
勝敗はすぐに決した。
おいらの力で地面を操り足場を崩すことで身動きが取れなくなったナイトメアバクは、すかさず繰り出されたファイアレッド、ブルーウインドの炎と風の連撃を受けて倒れ伏してしまった。
どうやら、この怪人自体の戦闘力は高くないようだ。おいらはトドメの一撃を繰り出そうと倒れ伏したナイトメアバクに近寄った。
そのとき、気を失っていたかに見えたナイトメアバクがムクリと起き上がり、おいらの顔前に両手をかざした。
「この時ヲ待っテいたゾナ。『[[rb:夢喰い > ドリームイーター]]』ゾナ」
「うおっ……!」
突然、視界がぼやける。おいらの脳裏に何かが入り込んでくるような気持ちの悪い感触が広がった。しかし、それだけだった。
視界はすぐに戻り、ナイトメアバクはニタニタと気色の悪い笑みを浮かべながら、おいらの目の前で立っているだけだった。
「おっ、おおぉぉぉ!」
おいらは気を取り直し、ナイトメアバクの胸ぐらを掴むと背負投げの要領で地面に投げつけた。
「ゾナーーーーーーー!」
断末魔の叫びを上げてナイトメアバクは爆散した。
「やったじゃねえか、武蔵!初金星だぞ」
「あ、ああ……」
変身を解いたファイアレッド……ショーマが同じく変身を解いたおいらの背中に抱きつき、胸を揉んでくる。
タイラントの怪人を初めておいら自身が撃破したというのに、どこか喜びきれない自分がいた。
「倒す前に何かされていたようだが……大丈夫か?武蔵」
変身を解いたブルーウインド……ハヤテがおいらの様子を気にかけてくる。
「へ、へへっ……おまえが心配とは珍しいじゃねえか。大丈夫だよ。ありがとな、ハヤテ。よーし、ショーマ!今日はおまえの奢りでおいらの金星祝に飲みに行こうぜ!」
地面に投げつける直前、あいつは下卑た声で耳元で囁いたのだ。
『いい夢見るゾナよ』
どこか不安を抱えながらも、おいらは空元気で基地への帰路を急いだ。
――――――――――――――――――――
ここはどこだ?おいらはたしか飲みに行って酔い潰れてショーマに抱えられながら部屋のベッドに寝かされたはずなのに……
まわりは真っ暗闇。
同じ部屋で寝ているはずのショーマとハヤテの姿も見当たらない。
それどころか見慣れた天井すら見えず、もはやベッドで寝ているのかもわからなかった。
おい、ショーマ!ハヤテ!どこにいるんだ?
腹から出した大声は闇の中に吸い込まれていき、いくら待っても2人からの返事はない。
ふと四肢を何かに縛られて自由を奪われていることに気づいた。いよいよ不安になって唯一自由がある首を動かすが視界に広がるのは一面の闇のみだ。
ショーマ!ハヤテ!変ないたずらはやめろや!おーーい!おい!
この状況に不安を通り越して、怒りすら覚え始めたおいらは声の限り叫び続けた。
すると、先程まで何もなかった空間からショーマとハヤテが現れ、寝たまま縛られている おいらの傍らに立って見下ろしてきた。
「ランドイエロー、おまえは弱い。俺のチームにふさわしくない」
「武蔵、おめえは相変わらず弱えな。そんなんじゃチームの足手まとい。一生サポート役止まりだな」
なっ……なんだと!?
2人の言葉に思わず目を丸くした。
軽口で実力差を揶揄されることはあっても、こんなにもストレートな物言いをされたことはなかったからだ。
言い返そうにも言葉が出て来ないでいると、おいらの傍らに立つ影がまた1人増えた。
新たな影はおいらを慕ってくれる後輩ベンケイだったが、普段と違い軽蔑の眼差しでおいらの顔を見下ろしていた。
「先輩、俺は情けねぇよ。ヒーロー・ランドイエローがこんな情けない格好してセンズリ扱いてるなんてよ……サイドキック部隊の奴らにも示しがつかねえよ」
ベンケイ、てめぇ!な、何を言ってやがっ……なんだ?どうなってんだこりゃ!?
おいらは首を上げて自分の体を見て愕然とした。着ていた服は剥ぎ取られ、真っ裸にされたおいらの乳首やチンポに得体の知れない触手が吸い付いてきていた。
はぁ♡はぁ♡なんだこりゃ?♡
あっ……ああぅ……♡これはあのカバ怪人の腹の中の時と同じ……♡ああぁ……♡
不快であるはずの触手のヌルヌルとした感触は、おいらの乳首やチンポ、ひいては脇の下や足の裏といったくすぐったくなるような場所まで責め立て、的確に快感を刷り込んでくる。
チュパチュパ……ニュルニュル……と卑猥な音と生温かい触手の感覚は、おいらを強制的に発情期へと誘っていく。この快感に流されてはいけないというのは直感的に理解できた。
必死で快感に耐えるおいらの傍らに立つ人影がさらに増えていく。
今度は鮫島のおやっさん と土佐のおやっさん だった。
「武蔵よ、全く情けないのぅ。敵に捕らわれたとはいえ、乳首を責められて端なく感じてしまうヒーローなどおらぬぞ」
あっ♡あああっ♡鮫島のおやっさん……そんな、おいらは……♡
「うむ、そうじゃな。どうやら わしの見込み違いじゃったようじゃ」
土佐のおやっさんまで……おいらは、こんな♡こんな……快感なんかに♡
「それに未だ『大地のガイア』の力も引き出せていないではないか。武蔵、おまえはヒーロー失格じゃ」
おいらが……ヒーロー……失格……
チュルニュルニュルニュル♡ニュルニュルニュル♡チュルニュルニュルニュル♡ニュルニュルニュル♡
弱い、足手まとい、情けない、ヒーロー失格、弱い、足手まとい、情けない、ヒーロー失格、弱い、足手まとい、情けない、ヒーロー失格、弱い、足手まとい、情けない、ヒーロー失格、……
性感帯と化した おいらの乳首を触手が舐めあげ、勃起したチンポを扱き上げ続ける中、おいらを取り囲む仲間の影が放つ言葉がおいらの自尊心を、ヒーローとしての[[rb:矜持 > プライド]]を破壊していく。
はあぁ♡はぅ♡いやだぁぁ♡みんあ、そんな……そんなこと♡言わないでくれよぉ♡ああっ♡あああっ♡うがああっぁぁあぁあああ♡
ビュルるる♡ビューーーーーービュルルルルル♡ドクドクドクドクドクドク♡
ビュルルルルルルルジュルル♡ジュポジュポジュポ♡
チンポに絡みついた触手は獣精を出し切るまで扱き続けていたが、ついにその動きを止め、触手がチンポから離れていく。
獣精を出し切り、すっかり萎えて皮被りしてしまった小ぶりのチンポが仲間たちに晒されてしまうが、依然として両腕は触手に縛られていたため、隠すことすらままならなかった。
「ふん、やはり弱いおまえでは我慢できなかったな」
「そんなガキみたいなチンポで先輩面してたのかよ、情けねえな」
「精液の量だけは一丁前じゃのう」
「へへ、雑魚なのは力だけじゃなくてチンポもかよ」
「やっぱり此奴にはヒーローの資格はないようじゃな」
包茎チンポを見下しながら、侮蔑の言葉を吐き捨てる仲間たち。おいらはいつの間にか瞳から涙を溢れさせていた。
なんで、みんな……本当は……本当はおいらのことを……馬鹿に……
うわぁぁ……うあぁぁぁあああ……うああぁぁぁぁぁああああああああああ!!
――――――――――――――――――――
そこで目が覚めた。四肢は縛られていないし、目を開けば見慣れた共同部屋の天井で……両隣のベッドではハヤテ、ショーマが寝ている……いつもの光景だった。
股間まわりの毛皮とパンツが濡れている。
どうやら夢精してしまったようだった。
生臭い獣精の匂いが鼻を突く。
ひどい夢だった。仲間たちがあんな心ないことを言うはずないのに……
きっと酒に酔っ払ったせいだろう。普段ひた隠しにしている不安な気持ちが漏れてしまっただけだ。
おいらは汚れた股間を流すため、音を立てないように部屋を出てシャワールームへと向かった。
だけど、それから1週間に亘って毎日同じ夢を見続けた。
同じような内容で仲間たちから責め立てられ、体を触手に蹂躙され、最後には無様に見下されながら射精を強制される。その夢には必ず夢精が伴った。
夢から目覚める時には、いつもあのバク怪人のニヤけた顔が思い浮かぶ。
おそらくあいつの能力でこんなことになっているのは薄々気付いていたが、夢の内容が内容だけに誰にも相談できずにいた。
そして、夢を見続ける内においらはそれがただの夢だと思えなくなってきていた。
本当は、おいらのことを「弱い」「足手まとい」「ヒーロー失格」だと、みんなが思っているのではないか。
そう考えてしまうと日常生活でも、みんなと話すのが怖くなっていた。
このままじゃダメだ……おいらはもっと強くならないと……
ベンケイを見送ったおいらは道場の外に出ると、地面に手をついた。ガイアの力を解放して周囲に地震を起こそうとする。
力を込めれば地鳴りが聞こえ始め、砂や石が土の上を舞い始める。しかし―――
「はぁはぁ……ちくしょう!」
今日も不発に終わった。
おいらはいまだに大地の力を使いこなせていなかった。
こんな弱い力じゃ、またアイツらに馬鹿にされちまう。いやだ、いやだ、いやだ!
もっと、もっと強くならなねぇと……もっと力を……
毎日続く悪夢が、おいらの心の中にドス黒い感情を芽生えさせていることに、この時はまだ気づいていなかった。
[newpage]
武蔵先輩に柔道の稽古をつけてもらった翌日、タイラント帝国軍の怪人が市民を襲っているという報告を受けて、俺達サイドキック部隊が先行して出動した。
轟小隊と称された俺を含めた4人のメンバーは手足と肩にプロテクターを装着した最低限の装備で現場に急行した。
怪人出現ポイントは小学校であり、すでにトカゲ頭の戦闘員が5体と1体の怪人が校庭を占拠しているようだ。
俺たちが現着した時には、何かに魅了されて身動きが取れなくなっている子供獣人たちをトカゲ戦闘員が拘束している最中であった。
「あの逃げ足が速い奴が来てるみたいだな……今度こそ捕まえてやる!」
「キャハハハ!やっと来たんダネ、ティア・ガーディアンズ。オヨヨ、ヒーローくん達じゃナイノか……じゃあ、ボクの『[[rb:魅了の > チャーム]]ウインク』で君達も捕マエちゃおうカナ?」
奴の名前は魅了怪人チャームベアー。武蔵先輩と同じツキノワグマ獣人が元のようで、体長は小さく、薄桃色の体はどこかマスコットを彷彿とさせる可愛らしさだが、それこそが奴の武器だった。
ウインクと共に額に浮かぶハート型の紋様から発せられる光線を受けると並の獣人であれば身動きが取れなくなってしまう。
特に身体能力も警戒心も低い子供獣人をターゲットとして拉致しており、その被害者を増やしているが、逃げ足が早いこともあって未だ撃破できていない厄介な怪人であった。
「キャハ!まあ、いいや。ボクの邪魔シナイで欲しいからトカゲ戦闘員さん達、相手シテあげて」
「「「「「イ"イ"イ"ィ"ィ"ィ"ィ"ィ"」」」」」
チャームベアーの命令を受けて、トカゲ頭の黒タイツ戦闘員が奇声と共にこちらに駆け寄ってくる。
俺たちサイドキック部隊が戦闘態勢に構える。
「轟小隊長、戦闘員どもが来ます!どうしますか?」
「おまえらは戦闘員の相手をしてくれ。俺はあの怪人から子供たちを取り戻す」
「「「了解!」」」
隊員に指示を出した俺は、迫り来るトカゲ戦闘員を足払いや支え釣込足の要領で地面に転がしながら掻き分けていき子供たちを連れ去ろうとするチャームベアーに飛びかかった。
チャームベアーは軽々と俺の奇襲をかわしたが、おかげで俺はチャームベアーと子供たちの間に入り、子供たちを背にチャームベアーと対峙することになった。
「オヨヨ〜、キミ強いみたいダネ?」
「おまえらの好き勝手にはさせねえぞ。さあ、子供たちを返しやがれ」
サイドキック部隊は怪人と戦えるほどの戦闘力は持ち合わせていない。
しかし、チャームベアーは怪人の中でも大した戦闘能力を持たない個体であることはわかっていた。
「[[rb:魅了の > チャーム]]ウインク」にさえ気をつければ、なんとか子供たちを解放できるかもしれないと考えた俺は単身突撃しながらも奴の目を見ないように注意を払っていた。
「デモ、残念……ボクはこんなコトもデキるんだよ♡」
「な、何を?なっ……どうして?」
チャームベアーの額が怪しく光ると同時に俺は背後から羽交い締めにされていた。
かろうじて首を後ろに向けると、先ほどまでボーッと佇んでいた子供獣人が俺の体にしがみつき身動きを取れなくしていた。
「アハハ!ボクが怪人に改造サレテ手に入レタ能力はネ、ちょっとの間なら体ヲ自由に操ルことがデキるんだ。さあ、可愛いボクの操り人形たち……そのオジサンの顔をボクに向けサセテ」
怪人の命令を受けた数人の子供たちは俺の体を羽交い締めにしたまま、俺の頭に手をかけて無理やりチャームベアーの方を向けさせようとしてきた。自分の2倍以上大きい身体の俺を抑え込む力は、まるで子供のそれとは思えなかった。
「チャームベアー様、かわいい。言うこと聞く」
「チャームベアー様、ゴリラ獣人を拘束しました」
「うっ、うぅぅ……やめてくれ!」
魅了された子供たちが感情のない声を上げる。危害を加えてしまう可能性を考慮すると全力で振り払うこともできない俺は、せめてもの抵抗で目をつぶってチャームベアーを見ないようにしたが、両脇の子供獣人の手が俺の瞼を摘んで無理やり目をこじ開ければ、否応なしにチャームベアーの姿が目に入ってしまう。
可愛らしい見た目ながら、右肩に刻まれたトカゲ頭を模したタイラント帝国紋章の焼印と胸元に刻まれた「BM–No.3」という文字が、見るものにどこか歪な印象を与えていた。
「キャハハハハ!キミみたいな強イ個体を連れて帰っタラ、きっとイビルフロッグ様も喜ンデくれるよ♪ゴリラ怪人はマダいないカラね……さあ、ミンナ仲良く異次元の門を通ってタイラントの基地に帰ろうね♡」
俺の目を覗き込んだチャームベアーは魅了のウインクと共に額から光線を発しようとした、その時―――
「サンドアタック!」
「ギャアアアアアアアア!痛い!痛イィぃぃぃ!」
地面から砂埃が巻き起こり、チャームベアーの目に砂粒が入り込んでいく
怪人といえど痛覚があるのか、その痛みに転げ回るチャームベアー。
そのおかげで子供たちを捕らえていた魅了の効果が消え、自由を取り戻した子供たちは悲鳴を上げながらその場から逃げ出していった。
「わりぃな、ベンケイ。待たせちまって……あとはおいらに任せとけ」
子供たちの拘束から解放されて地面に倒れた俺は、黄色いヒーロースーツを身に纏った武蔵先輩……ランドイエローの背中を羨望の眼差しで見上げていた。
[newpage]
「先輩、待ってましたよ!」
地面に尻をついたゴリラ獣人のベンケイが翡翠のような緑色の瞳で おいらのことを見上げている。
「よう、弁慶。よく耐えたな」
「サイドキック部隊は生徒達の避難誘導に当たってくれ」
遅れて現着したショーマがベンケイを立たせて、ハヤテが指示を出す。
「翔真さん、疾風隊長も……わかりました。サイドキック部隊、これより生徒の避難誘導に当たります」
ベンケイがサイドキック部隊を指揮するためにその場を後にすれば、怪人チャームベアー1体に対して、おいら達ヒーロー3人が対峙することになった。
「ワワヮヮー♡ヒーローめぇ、よくもボクの計画を邪魔して……許せないぞ〜。だ・け・ど♡ここは分が悪そうだから……撤退だぁ!」
「もうおまえのことは逃さねぇぞ!今日こそおまえを倒してやる。サンドスパイラル!」
チャームベアーは何人もの子供たちを攫ってきた憎むべき怪人だ。元は同族のツキノワグマ獣人だったことなど、すでに関係がなかった。
コイツを倒さねぇと……そうすれば、みんなもおいらの実力を認めてくれる……
おいらは地面に手をつき、校庭にいくつもの流砂を発生させる。
逃げ足の早いチャームベアーは、群発する流砂を避けながら校門に開いた異次元ゲートに向かって退路を見出していく。
無作為に作られた流砂は、校庭の遊具を飲み込んでいくが、そんなこと気にする余地はなかった。
「待て、ランドイエロー。このままだと物的被害が大き過ぎる」
「ランドイエロー、冷静になれ!」
「うるせえ!今日こそアイツを仕留めてやる!」
ウインドブルーとファイアレッドの静止の声に聞く耳を持たず、おいらはさらにガイアの力を解放し、校門の手前に巨大な流砂を発生させた。
「キャハハハ!出口、出口〜〜!……あ、あれれ〜!?」
「ついにかかりやがったなチャームベアー!これでトドメだ、サンドアッパー」
流砂にハマり、砂に埋もれていくチャームベアー。おいらはガイアの力を全解放するとチャームベアーまわりの沈み込んだ砂が勢いよく隆起していく。
「ヒィエエエエエエエ!!」
勢いで流砂から吹き飛ばされたチャームベアーは校舎に叩きつけられ、爆散した。
「はぁ、はぁ……はぁ……やった、ついにアイツを倒した!おいらが、おいらが倒したんだ!」
「武蔵、この馬鹿野郎!」
怪人を倒した喜びに酔いしれていたおいらの横っ面を唐突にファイアレッドが殴りつけた。
「な、何しやがんだ、ショーマ!」
「ランドイエロー、周りをみろ」
ブルーウインドに言われて周囲を見回す。
あちらこちらに発生させた流砂は生徒たちが遊ぶ遊具だけでなく、戦い合っていたサイドキック部隊の獣人やトカゲ戦闘員も飲み込んでいた。
チャームベアーの爆発に巻き込まれた校舎は窓ガラスが割れ、一部瓦解してしまっていた。
学生達の学び舎は破壊の限りを尽くされていたのだ、おいらの手によって―
「おいらが、コレを……そんな……あっ、あぁぁぁ」
自身の力によって引き起こされた惨状を見て、おいらは膝から崩れ落ちた。激しい後悔の念が心に押し寄せ、力なくうなだれることしかできなかった。
だけど……力を思うがままに振るうことはなんて気持ちいいんだろう……そんな気持ちが一瞬だけ心を横切った。
――――――――――――――――――――
「この大馬鹿者が!」
作成司令本部に帰還したおいらを待っていたのは鮫島のおやっさんからの叱責だった。連帯責任として、ショーマもハヤテもおいらの隣に並ばされている。
普段は優しい鮫島のおやっさんの怒気を孕んだ表情は、歴戦の戦士であるアクアマスターは現役であることを物語っていた。
「いくら怪人を倒せても、あれだけの被害……言語道断じゃ。武蔵、なぜ隊長の……疾風の指示を無視した!」
今おいらが持てる限りの大地のガイアを存分に振るった上での勝利であったが、その被害は甚大だった。
学校の修繕には1ヶ月の時間を有し、サイドキック部隊には数名であるが負傷者も出ていた。
「学校関係者に負傷者がいないことは幸いでしたが、今回甚大な被害を出してしまった責任はリーダーの私にあります。鮫島部隊長、申し訳ありません」
ハヤテが深々と頭を下げる。だけど、おいらはどうしても謝る気になれなかった。
「武蔵、なんじゃその態度は!なんとか言ったらどうじゃ!」
「……じゃあよ」
顔を真っ赤にし口角泡を飛ばしながら怒鳴りつけてくる鮫島のおやっさんの姿が、あの悪夢を思い出させていく。
おいらの中で何かが切れてしまった。
「鮫島のおやっさんは、やっぱりおいらがヒーロー失格だと思ってんのか」
「な、何を言っているんじゃ?」
「武蔵、おまえちょっと変だぜ?」
「うるせぇショーマ。どうせおまえもおいらのことを『足手まとい』って思ってんだろ。ハヤテ、おまえだって弱くて命令も聞かないおいらのことチームに入れたくないだろ」
「つっ……武蔵、少し落ち着け」
これが あの悪夢なのか現実なのか、もうよくわからなくなっていたのかもしれない。気づけば おいらは信頼すべき仲間に暴言吐き散らしていた。
鮫島のおやっさんとショーマは唖然とした顔を浮かべ、あの冷静沈着なハヤテですら困惑している。
その雰囲気に耐えきれず、おいらは司令部を飛び出していた。
「あ、先輩……」
「ベンケイ……」
正面出口に向けて通路を走っていると、向こうからベンケイが歩いてくる。小隊の部下がおいらのせいで負傷しているのだ。文句の1つでも言いたいのかもしれない。
大事な後輩に迷惑をかけた負い目を感じていた おいらは思わず足を止めてしまう。
「なぁ先輩……医者に診てもらった方がいいんじゃないか?目の下の隈だってすげぇし、顔色も悪い……それに子ども大好きな あんたが、あんな戦いを学校でする訳がねぇ。どっか体がおかしいんじゃないか?」
「ベンケイ…おまえ、おいらのこと怒ってないのか?」
ベンケイから思いも寄らない言葉をかけられ、おいらは動揺していた。ベンケイはバツが悪そうな、けれど芯から心配している表情を浮かべていた。
「そりゃあ、部下を傷つけられたことには腹が立ったけどよぉ……こんなことになっちまったのは、なんか理由があるんだろ?」
おいらは押し黙ってしまった。ベンケイの言葉に他意はなく、本当においらのことを心配してくれているようだった。
「あのな、ベンケイ……おいら……」
『先輩、俺は情けねえよ』
『そんなガキみたいなチンポで先輩面してたのかよ、情けねえな』
ベンケイに全てを打ち明けようとした その時、あの悪夢のベンケイの言葉が脳内に響く。あれは夢だ。このベンケイとは違う。そうわかっているはずなのに―――
「あ、あぁ……うるせぇ……おまえだってどうせおいらのこと情けねえ奴だって思ってるんだろ!」
「待ってくれ、先輩!俺はそんなこと一言も……」
「おまえにおいらの何がわかるってんだ!そこをどけ」
おいらの口からは心にも思っていない言葉が飛び出していた。泣きそうな表情で通路に立ち尽くすベンケイを突き飛ばすと、おいらは正面出口へ足を急がせた。
「本当にどうしちまったんだよ、先輩!」
大事な後輩の悲痛な叫びを背中で受け、後ろ髪を引かれながらも、おいらは振り返ることができなかった。
[newpage]
「はぁ……」
基地を飛び出したものの行くあてのなかった おいらは気づいたら行きつけのラーメン屋にたどり着いていた。
こんな時でも腹は減るもので、大盛りラーメンを平らげたおいらは1人ため息を吐いていた。
「なんだい、あんちゃん。雌熊にでもフられたかい?」
「ち、違うわい!おいらにだって色々と悩みはあんだよ」
顔馴染みのラーメン屋大将(豚獣人)がからかい半分で声をかけてくれば、思わず悪態をついてしまう。
腹を満たして少し気持ちが落ち着くと、先ほどの自分の言動を後悔し始めていた。
なんてことを言ってしまったのだろうか。
戦闘で迷惑をかけた上に、あんな暴言を吐いた おいらのことを鮫島のおやっさんも、ショーマも、ハヤテも失望したかもしれない。
何よりベンケイだ。あいつの部下を傷つけたことを謝罪もせず、心配してくれたあいつのことを怒鳴りつけてしまった。
もうおいらのことを先輩として慕ってくれないかもしれない。何よりもあいつの心配を無下にしてしまったのだ。
ゴリラ獣人らしい強面をクシャッと崩した笑顔のベンケイが脳裏に浮かぶ。
高校時代、無理やり柔道部に入れただけでなく、ティア・ガーディアンズにまで入ってくれたのだ。
先輩風を吹かしながら、付き合いも長いこともあって、どこか甘えてしまっていたところがあったのかもしれない。
「あいつのこと傷つけちまったよなぁ……畜生、なんだって、おいらはあんなことを言っちまったんだよ。悪夢のせい……なんて言っても言い訳だよなぁ。はぁ……」
「なんだい喧嘩かい?ちっちゃい悩みだな、おい!男同士だろ。なら、ちゃんと心を込めて大声で謝れば、大概は丸く収まるってもんよ」
「そんなもんかね……でも、それが1番だよな。ありがとよ、おっちゃん!今から帰って、みんなに謝ってくる。ごちそうさん!」
「ああ、またみんなでラーメンに食いに来いや」
カウンターから首を出し、単純明快な解答を示してくれた豚の大将に礼を言って会計を済ませると店を後にした。足早に基地に戻っていたところ、腕に装着したガイアチェンジャーがタイラントの出現を通知した。
「こんな時にタイラントの奴らかよ……ん、ここから近い?ハヤテ達も向かってるかもしれないし、先に向かっておくか」
バツの悪さを感じるが、戦いの場の方が謝りやすいかもしれない。
おいらは踵を返して、タイラントの出現場所へと駆け出した。
ーーーーーーーーーー
「待ちやがれ!」
近かったこともあり、いち早く現着するとタイラントの獣戦闘員が小さい子供獣人を取り囲んでいるところだった。
「イ"イ"イ"ィ"ィ"ィ"ィ"ィ"!貴様ら、ガキ共はイビルフロッグ様に改造されて忠実な戦闘員になるのだ」
「ヤダァーーーー!」
「誰か助けてぇぇ!」
額に「1」と書かれた黒マスクを被った獣戦闘員ーおそらく元は白熊獣人と思しき巨体ーが奇声を発すれば、怯えた子供たちは悲鳴を上げる。
その光景を見れば、おいらの心の中に怒りの炎が灯っていく。子供たちを傷つけるあいつらを絶対に許さない。
「てめぇら、この熊江武蔵様の目が黒い内は子供たちに手を出させねぇぞ!」
「ガイアチェンジッ!」
かけ声と共においらの体を光の粒子が包んでいく。粒子が付着すると固体として安定化されていき、敵の攻撃を弾く強度のスーツへと変換されていく。
黄色を基調としたスーツが体を覆い、バイザーの着いたヘルメットが装着され、胸元にVの字マークが刻まれ、変身が完了した。
「大地の守護者ランドイエロー!てめぇら、覚悟しやがれ!サンドアタァック」
[uploadedimage:17460359]
(イラスト by [[jumpuri:ひさしよ > https://www.pixiv.net/users/11635504]]さん)
名乗りを上げて地面に手を着けばスーツにより強化されたガイアの力を解放する。
すると、周囲の石や砂が浮かび上がっていき、獣戦闘員達にぶつかっていく。
「イィー!」
「ヒギィーー!」
小石や砂利といえど周りの地面から供給されるため、その量は無尽蔵に等しく、黒タイツに守られているといえど、獣戦闘員たちは痛みに情けない声を上げてのたうち回っていく。
包囲に隙が生じたのを確認すると、おいらは子供達に駆け寄った。
「今のうちだ、逃げてくれ!!」
「う、うん!ありがとう、ヒーローのおじちゃん」
戦闘員の包囲が乱れてできた抜け穴から子供達が逃げ去っていくのを確認して、ほっと一息をつく。
「へへっ、おじちゃんって呼ばれるのは早すぎる気がするけどな。あとはこいつらを倒せば…あん?なんだこの臭いは?」
ふと辺りを見回すと、いつの間にか黄色いモヤのような物が漂っていた。同時に強烈な異臭―納豆や足の裏の蒸れたような臭い―が、おいらの鼻の中を強烈に刺激していく。
「くせぇ!なんだこの臭いは?ぐっ……うぅ?なんだ力が抜け……」
視界を完全に黄色いモヤで覆われ鼻がもげそうな強烈な臭いに耐えていたところで、ふいに力が抜けていくのを感じる。
「グヘヘ、オラの素晴らしい臭い、味わってるべかァ?」
「てめぇは……怪人か!」
黄色いモヤの中から現れたのは、黒と白の針金のように硬い毛皮に覆われた腹だけがでっぷりと出た体に、大きな尻尾をフリフリと揺らしながら歩くスカンク獣人……いや、スカンク怪人だった。
その胸には他の獣怪人と同様に管理番号と思しき文字「BM−No.17」そして、その上に見慣れないマークの焼印が刻まれていた。
「なんだ、こいつ……今までの奴と何かが違う気がする」
「オラはイビルフロッグ様の忠実な下僕、臭害怪人スメルスカンクだべ。どうやらヒーローはオマエ1人のようだナァ。ちょうどイイべ。オラの新たな力を試させてもらうぞぉ」
ギラギラとした赤い瞳を向けニタニタと笑いながら、おいらに話しかけるスメルスカンクは今までの怪人とは異なる邪悪さを放っていた。
「おいらが新しい力の練習台ってか?ふざけんじゃねえ、くらえ!サンドアタッ……お、おい、どうなってたんだこりゃあ……」
大地のガイアを使おうと地面に手を着いたおいらだったが、力が全く入らないことに気づいた。
それどころか、砂も石も操ることができないのだ。
「なんだこれ、ガイアの力が使えねえ……だと?」
「ククク、さすが天才イビルフロッグ様だべ!このガスにはなぁ、オラの素晴らしい臭いの他にイビルフロッグ様が作らレた貴様らのガイアの力を奪う成分が込メラレてんだよぉ」
「な、なんだと……ぐっ、くそっ……くせぇし、力も全然入らねぇ」
スメルスカンクの言葉に耳を疑った。タイラントの奴らはガイアの力に気づいていて、しかも、その力を封じる研究もしているのだ。
さっきから奴が名前を出している「イビルフロッグ」って奴が諸悪の根源なのだろう。
早くみんなに伝えないと……だけど、力が全然入らねえ……
その間にも黄色いガスは辺りを満たしていき、その臭いが脳を刺激し、さらにスーツにまで臭いが染み込んでいく。
力が入らず立っているのも、ままならなくなったおいらはその場に膝を着いてしまう。
「はぁ……はぁ……うっ、うぐぅ……」
「だいぶん効いてるようダベナ。オラァ、嬉しいべ。グヘヘ、どれ次の段階に行クべか。たしか腹を叩けば切り替えられるんダベなァ」
そう言って大きく息を吸ったスメルスカンクが腹に空気を入れて力を込めた。
そして、出張った腹をポンと叩くと何かの機械音が聞こえ、そして―――
ブーーーーーーーーーーッ♡
間の抜けた音と共にスメルスカンクの尻穴からピンク色のガスが噴出され、すでにあたりを充満していた黄色いガスと混ざり合っていく。
「てめぇ、なんのつもりだ!あっ……おっ、おおっ……♡」
「おお、本当にガスを切り替えられたべ。さすが、イビルフロッグ様が埋めコンデくれた装置ダベナ。それに……どうやらコノ臭いも気に入ってクレタみたいダベナァ、ランドイエロー」
どうやら先程の動作で土手っ腹に埋め込まれた機械が噴出するガスを切り替えたようだ。
先ほどまで黄色いガスと違う甘ったるいようで、どこか饐えた匂いがするピンク色のガスの匂いを嗅いでいる内に頭がボーッとしてきて、全身にゾクリと快感が走っていることに気づいてしまった。
「くあっ……♡あ、あぅぅ♡て、てめぇ、おいらの体に何しやがった!?」
「さっきオラが出したのは催淫ガスってヤツだべナ。オモシロイなぁ、ヒーローといえど性欲には勝つことができないようダベ。ほれェ、自分の股間を見てみぃ」
「お、おぉ…♡あぁ♡そんな……なんでぇ?」
促されるままに自分の股間を見て絶句した。
黄色いヒーロースーツの下で自らの小ぶりなチンポが勃起していた。
最近は夜な夜な悪夢と夢精の日々であったため、性欲も衰えていたと思ったのにヒーロースーツの下ではちきれんばかりにチンポが勃起してしまっていたのだ。
「ははっ、まるで子供みたいなサイズだべ。さっきの子供達のチンポより小さいんじゃないベかァ?」
「うるせっ、うっ……♡うぉぉ♡はぁはぁ、てめぇら何が狙いだ……あっあっ♡」
「そんなコトどうでもイイベェ。オラが気持ち良くナル手伝いしてやるべヤ。ほれ、せっかく出したんだから、このガスもタップリ吸って気持ちヨクなんべ」
なんとか理性を保とうとするおいらの努力を嘲笑うようにスメルスカンクが近づいてくる。そして、膝を着いたおいらの土手っ腹を蹴飛ばし、その場に寝転がすと鋭い爪が生えた足で、おいらの股間を踏みしだき始めた。
ガスで敏感になった脳と体とチンポは、痛すら快感だと誤認させていく。
「あっ…!♡あぁ、ああ!♡や、やめろ…♡やめて…くれっ!♡」
「おほォ!♡これは気持ちいいベェ♡オラみたいな底辺がヒーロー様を足蹴にして、チンポを踏めるようになるなんて……これも全部イビルフロッグ様のおかげだベェ♡」
「やめ、やめぇぇ!♡あっ!ああぁぁぁ♡いひぃぃぃ!あっ…ああああぁぁぁ♡」
スメルスカンクを楽しげにおいらの股間を踏み、さらにふさふさとした尻尾を器用に使ってスーツ越しに浮かび上がる乳首まで刺激してくる。先端が針金のように硬い毛皮は乳首にチクチクとした刺激を与え、おいらの全身に快感の波が起こっていく。
ピンク色のガスは脳まで侵食してくるようで、おいらの理性がドンドン削られていくのを感じる。
股間を踏むスメルスカンクの足の親指と人差し指がチンポを挟むと、グニュグニュと音を立てながらチンポを扱き始めた。
「やめっ!!♡あっ……やめて……♡チンポ、チンポ気持ちぃぃぃ♡だめだ、ダメだよぉぉ♡」
「エロいコトは好きダベ?オラは大好きダァ。怪人になってからはエロ三昧ダベぇ。オマエも怪人になったら、いっぱい気持ちイイコトできるべナァ」
「お、おいらが怪人に……♡な、何を言って……はあぁぁぁん♡」
「おっと、コレはまだ内緒だったベナ。どーれ、ココらで気付けにモウ一発いっとくべ」
スメルスカンクは慌てて何かを隠した物言いをすると、もう一度大きく息を吸い込んでいき。
「や、やめっ……て……くれぇぇ♡」
ブッブゥゥゥーーーーー♡もわっ♡もわぁ♡
「んんんんーーーーーーー♡♡♡」
ビュルルルルル♡ビューーーーーーー♡ビュルルルルル♡ビュルるるるるるるるハート
ビクッ!ビクッ!ビュルルルルルル♡ビュルルルルう♡どっぷ♡どっぷ♡
おいらの顔に向けられたスメルスカンクの尻穴から強烈な臭気のピンク色のガスが再び噴出される。
直接顔に吹きかかった催淫ガスはマスクを通り抜け、嗅覚を、脳を刺激していく。
そこで、おいらの理性は飛んでしまった。7日間夢精が続いているとは思えない勢いでチンポから精液が吐き出されていく。
雌獣人との性行為の経験もなく一人慰め、たまに乳首オナニーに耽ていたおいらにとって、スメルスカンクのガスは最上級の快感を教え込んでいた。
白目を剥いて全身を震わせながらの射精に体力、そしてヒーローの力を奪われていった。
「あっ……♡ああっ♡ヒグッ!はぁ…♡はぁ♡はぅ…あぅぅ♡きもち、気持ちいぃ♡」
ビュルルルと尿道を獣精が通る音が聞こえる勢いで放出された精液は、股間を覆っていたヒーロースーツに情けない染みを作り地面に流れ落ちていた。
射精によりガイアの力まで使い果たしてしまったのか自然とヒーロースーツが解除される。
茶色い毛皮は汗で湿りを帯び、ガスの匂いが染み付いているようで、この匂いを嗅ぐだけでも再びチンポが反応してしまうのか、射精したばかりだというのに小ぶりなチンポはまだビンビンに勃っていた。
「あぅ♡はぅぅ♡気持ちいぃ、気持ちいいぃぃよぉぉ♡」
「気持ちよかったベェ?♡涙と涎で顔もグチャグチャだべなァ。オラの足の裏にもビクビク感じたド♡どーれ、あとはコイツをイビルフロッグ様の研究室に運ぶだけダベェ。安心シレ。イビルフロッグ様がオマエをモット強く、エロくしてくれっからヨォ」
自分では見えないが、顔は蕩け切ってヒーローとは思えない表情を浮かべているのだろう。
瞳からは涙が溢れ、口元からはだらしなく涎を垂らしている……悪夢で言われた通り、ヒーロー失格の顔をしてしまっているのだろうか……どうでもいい♡そんなことを考える余裕もないほど快楽の中に溺れてしまっているのだから♡
「「「イイィィィ♡イィィ♡イィ?……イ"ィ"ィ"ィ"!!」」」
催淫ガスの力で盛り合っていた獣戦闘員達だったが、スメルスカンクに命じられると、いそいそと行為をやめ、おいらの脱力しきった体を担ぎ上げ、異次元の門へと運ぼうとした、その時―――
突風がスメルスカンクのガスを吹き飛ばした。
「アア!オラのガスがァ……ダレのせいダベ?」
スメルスカンクが風の先に目を向ける。そこには3人の獣人が立っていた。
「ハヤテ、ショーマ、それにベンケイ……♡」
途切れゆく意識の中で、おいらが最後に見たのはウインドブルーとファイアレッド、そして、ベンケイの姿だった。
[newpage]
タイラント出現場所に着いた俺たちはピンク色のガスで立ち込め、辺りが何も見えない状況に唖然とした。このピンク色のガスを吸うことは危険であることは獣の直感で理解していた。
ウインドブルーに変身した虎淵隊長が風を起こしてガスを吹き飛ばすと、そこには見たことがないスカンク怪人と裸にされて数体の獣戦闘員に担がれた武蔵先輩がいた。
「先輩、どうしてあんなことに……」
基地を飛び出した武蔵先輩を心配した俺たちは、いつものラーメン屋に向かったが豚の大将からさっき出て行ったところだと告げられ、そのタイミングで怪人出現の報を受けた。
先に武蔵先輩が現着している知らせを聞いていたが、こんなことになっているなんて思いもしなかった。
「そいつを返してもらおうか、怪人」
「てめぇ、武蔵をどうするつもりだ!」
ウインドブルー隊長とファイアレッドさんが先輩を拉致しようとする怪人にガイアの力を込めた攻撃を放つ。
「おっとと、コレは分が悪いベナ。しょーがないべ。イビルフロッグ様にいただいたコレを使ってみるべ」
2人のヒーローの攻撃を避けたスメルスカンクは尻尾から毒々しい赤い液体が込められた注射器を取り出して、武蔵先輩の首筋へと宛てがっていく。
「なっ……!てめぇ、武蔵先輩に何しやがる」
「コレは簡易怪人化薬ダベ。安定性はないみたいだべが、こんだけ蕩けてるんだから十分だべナァ」
「やめろぉぉぉ!」
俺は後先考えずに突っ込んだ。ウインドブルー隊長もファイアレッドさんも同じ気持ちであったのだろう。速やかに攻撃を加えて怪人化薬の注入を止めようとする。だけど、遅かった……無常にも先輩の首に刺さった針から毒々しい赤い液体が注がれていく。
「うがっ!!!」
意識を失っていた武蔵先輩が苦しそうに呻く。その体が激しく熱を持ち始めたのか、湯気を出し始め、辺りが見えなくなる程の大量のモヤが立ち込めていく。
「うがぁぁぁああああ!!!ガッ…ガアァッァァァアァァアアア!」
「先輩!せんぱぁぁい!」
「武蔵、耐えろ!耐えてくれぇ!」
「武蔵ー!ちくしょう、どこだどこにいやがる」
白いモヤで何も見えない中、先輩の苦しそうな声だけが聞こえる。
俺は闇雲に走り、精一杯声をかけることしかできなかった。2人のヒーローも同じだったのだろう。
次第にモヤが晴れていく。そこには、変わらない武蔵先輩が立ってくれている……そう願っていたのに―
「グルルルゥゥゥウウゥゥゥ……ウガァァァァァァァァァアアアアアア!」
そこにいたは……熊獣人ではなかった。
大熊としか形容できない四つ足を着いて咆哮を上げる……「獣怪人」の姿がそこにあった。
次回、第6話「大地の悪熊、覚醒す 〜地震怪人ランドグリズリー 〜」