マグナとムサシ 〜悪臭に咲く友情〜

  体……人……グナ、オ…エ ノ新タナ……ヲ与エ…。……ナ…体……テ来ル……。ユケ、同胞ヨ──

  脳裏に流れるノイズ混じりの機械じみた無機質な声。その声の主がわからないまま俺は目を覚ました。

  「ううっ、俺は……ここはどこだ?」

  一瞬、自分が何者かわからなかった。後頭部が痛い。何かの拍子に頭を打ったのだろうか?

  ふらふら立ち上がった俺は近くの湖へと歩み寄り水面に映った自身の顔と見つめ合う。垂れ下がった耳、大きな目、丸い輪郭の中央に位置する豚鼻……そうだ、俺はマグナ。地球防衛軍に所属する豚獣人だ。

  周囲を見渡す……燦々と輝く太陽に、もくもくと積み上がる入道雲、草原なのだろう一面に広がるのは青々と生い茂る草花……なんらおかしなところはないはず、なのにどこか違和感を覚える。

  「……そうだ、空が広すぎるんだ」

  もう一度、空を見上げる。俺が住んでいた街にはコンクリート建ての高層ビルが立ち並んでいた。

  だから、空を見上げても視界いっぱいに青空が見えるなんてことはなかった。それに周囲の草花や木々をよく見ると見たことのない色の花や実を付けている物ばかりだ。

  「ここは俺がいた地球じゃねーのか?」

  状況が掴み切れない。それに何か大事なことを忘れている気がする。

  俺には何か使命が……いや、指令が下されていた?

  「ちくしょぉぉおお! このままじゃ……誰か……ッ!」

  記憶を巡らせていた俺の考えを遮るような悲鳴が聞こえる。これは助けを求める声だ。

  その声を聞いた俺は無意識に重い体を起こして足を走らせていた。

  自分の使命を思い出した。そうだ、俺は……俺は……

  「変身! 守護ヒーロー・マグナ!」

  俺の叫びと共に分子レベルで俺の身の回りに纏っていたスーツが蒸着される。

  ピッタリとしたライトグリーンのヒーロースーツ、突き出た臍を中心に黄色い十字ラインが浮かび、目元を隠すような黒いマスクも蒸着される。

  耐熱性、防毒性に優れ、身体強化の機能まで持った叡智の結晶であるスーツの上から同じく光の分子が集まって形成された白銀の兜と鎧が装着されていき、自慢の武器である両刃斧と盾を握る。

  守護ヒーロー……1000万人に1人程度しかなれない存在。地球防衛軍に志願した俺は強靭な肉体そして崇高な心を認められて守護ヒーローに抜擢されたのだ。守護ヒーロー・マグナとして謎の生命体から侵略を受けている地球を、人々を守ること、それが俺の使命だった。

  鎧を纏ったことで体はより重くなるがヒーロースーツが筋力を増強してくれるため、さっきよりも早く走ることができる。俺は地面を蹴り上げると大きく跳躍して声の主がいる方向へと舞い降りる。

  「よっと! ここらへんか……なんだあいつら!?」

  どすんと大きな音ともに着地した俺はそこで異様な光景を目にした。

  黒ずくめのタイツに身を包んだ獣人達が何かを取り囲み、殴る蹴るの暴行を加えていた。

  「イ"イ"ィ"! このヒーロー弱いゾ!」

  「イィィィ! もっと痛みつけてやれ……!」

  「いでっ! うごっ! くそぉぉぉおお!」

  黒ずくめの奴らに取り囲まれている「何か」はおそらく助けを求める声の主なのだろう。

  ずんぐりと太った熊獣人。被っているヘルメットは割れ、体のふとましいラインを強調するような黄色いスーツは所々が破けている。

  というか、あいつのスーツ……どこか守護ヒーローのスーツと似ている。もしかしたら俺の同業かもしれない。情報を聞くためにも早く助けなければ……俺は両刃斧を振りかざした。

  「そいつから離れろ!」

  「「「イ"イ"イ"ィ"ィ"!? なんだアイツは!?」」」

  俺の存在に気づいた黒ずくめの獣人共は熊獣人への攻撃を止めて俺に飛びかかってくる。

  黒ずくめの獣人の1人─シルエットからすると狼獣人だろうか─が鋭い爪で俺に傷つけるようとするのを、すかさず盾で防ぐ。自慢の盾には傷一つ付いていない。俺は両刃斧を振り下ろした。

  「イギィィィィぃいいいいい!!」

  真っ二つにされた黒ずくめの獣人は爆発四散する。俺は爆風を盾で受けると残った黒ずくめの獣人達に向き直る。

  「さあ、次はどいつがこうなりたい?」

  「イイィィィ! こいつ強いぞ、スメルスカンク様に報告しなケレバ」

  俺に恐れをなしたのだろう、黒ずくめの獣人達が我先に退散していく。深追いは必要ないだろう。

  「うぅ……?」

  「おい、お前! 大丈夫か?」

  黒ずくめ獣人に取り囲まれてボロボロにされた彼に駆け寄り頭を抱える。半壊したヘルメットを脱がすとスーツと同じ黄色い瞳で俺を弱々しく見つめ返してくる。よかった、ダメージは受けているが深手ではなさそうだ。

  「はぁはぁ……助かった、ありがとよ」

  「そんなことは気にしなくていい、守護ヒーローとして当たり前のことをしたまでだ」

  「ヒーロー……!? あんたもヒーローなのか?」

  俺の言葉に驚き丸い瞳をさらに大きく広げる熊獣人。思った通りだ、こいつも俺と同じヒーローらしい。

  「ああ、俺は地球の守護ヒーロー・マグナだ。あんたは?」

  「おいらは……ムサシ。ティア・ガーディアンズの大地のヒーロー・ランドイエローだ」

  これが俺とムサシの出会いだった。

  [chapter:マグナとムサシ 〜悪臭の中に咲く友情〜]

  [newpage]

  「へぇー、つまりマグナはその『ちきゅう』っていう星から来たってことなのか。ワレワレハ ウチュージン ダ……って奴だな、わはは!」

  行く当てもなかった俺はムサシの所属するヒーロー組織の基地に向かっていた。道中ムサシから聞いた話によると、俺が今いるこの惑星は「ティアース」というらしい。環境や生態系は俺がいた地球に限りなく似ているが文化レベルはまだ発展途上のようで高層ビルや大規模工場などは存在せず、自然と調和した生活を送っているらしい。

  平和そうに見えるここティアースにも魔の手が伸びてるようで、それが異次元からの侵略者タイラント帝国というらしい。

  さっきの黒ずくめの奴らが下っ端戦闘員ってことか……まったくどこの世界にも悪い奴ってのはいるんだな。

  「それで、お前はなんで下っ端戦闘員なんかにボコボコにされてたんだ?」

  「うっ……おいらはヒーローになったばかりだからまだ力を使いこなせてないんだよ……」

  俺たち守護ヒーローは地球の技術を結集した機能を持ち合わせているが、この星のヒーロー達は「ガイア」という自然の力を操って侵略者達と戦うそうだ。

  ヒーロー毎に操る力が異なるようで、ムサシは大地のガイアの所有者とのことだがまだ使いこなせてないとのことだ。

  「はぁ、そんな力不足が戦場にしゃしゃり出るんじゃねーよ」

  「う、うるせー! おいらだって成り行きでヒーローになっちまって……周りに付いていけてねぇのはわかってるんだ……けど、なんとか皆を守りたくて必死なんだよ……!」

  声を荒げ大きな瞳に涙を浮かべながら突っかかってくるムサシ。

  ……しまった、また無神経な言い方しちまった。俺はさすがに申し訳なさを感じた。

  「悪かったよ、ムサシ。けど、今のままじゃ良くないことはお前にもわかるだろう? もし良かったら俺が特訓に付き合ってやる……だから泣くなって」

  「本当か、マグナ!?」

  謝罪の意も込めて取り繕うように言った言葉に飛びついて来るムサシ。……なんだ、そのひまわりみたいな真っ直ぐな瞳は? そんな目で見られたら引くに引けなくなるじゃないか。

  「あ、ああ。早く地球に帰りたい所だけど方法もわからないからな。帰る方法が見つかるまでなら付き合ってやる」

  「うぉっしゃ! あんたみたいに強いヒーローに稽古つけてもらえるなんて最高だぜ。そうと決まれば[[rb:鮫島のおやっさん > アクアマスター]]に話をつけて、さっさと稽古しなきゃだな!」

  出会ってそう時間も経っていないというのにコロコロと表情を変えて話すムサシに少なからず好感を抱いていた。

  フィジカル的に優れた身体能力を持っていることは見た目からも判断できる。歩き方や身のこなしからすると何かしらの武術をやっていたのだろうか、きっといい……カ…ジン……ヒーローになるはずだ。

  「えっ……なんだ今のは?」

  「おい、マグナ! 何ぼーってしてるんだよ。早く基地に戻ろうぜ!」

  いつの間にか少し先を歩いていたムサシの声にハッとする。一瞬、思考にノイズが混じった。気のせいか? 俺は薄ら寒い不安を覚えながらも小走りでムサシを追うのだった。

  ──────

  ────

  ──

  ティア・ガーディアンズの基地に着いた俺は簡単なメディカルチェックを受けた。どうやら俺の体はこの惑星の獣人とほぼ同じ組成でできているらしい。まったく不思議なこともあるもんだな。その後、俺はヒーロー部隊長であるアクアマスターと面会することになった。

  「お前さんが守護ヒーローのマグナくんか。……そんなに見つめんでくれんか、照れるわい」

  「あ、いや……」

  強面の鮫獣人……俺と同等もしくは それ以上の力を持つであろう目の前のヒーローを警戒し、気づかない内に値踏みするような目で見ていたらしい。指摘されるまで気づかなかった。

  「ランドイエローから話は聞いとる。わしの部下を助けてくれたこと礼を言わせてくれ、ありがとう」

  「守護ヒーローとして当然なことをしたまでだ。俺が何故このティアースにたどり着いたのか理解はできていないが、地球への帰り方がわかるまで俺はお前らに協力する」

  少々不遜な言い方をしている自覚はあるが、それは緊張の裏返しだ。アクアマスターはにこやかな表情を浮かべながらもはこちらの出方をうかがっていることは目を見ればすぐわかった。

  「わしらも猫獣人の手が借りたいくらい人手が足りん。お前さんがそう言うてくれるなら甘えさせてもらいたい」

  アクアマスターの言葉を聞きながらも緊張のあまり腋が汗で湿り気を帯びてくる。……俺はハッとする。戦闘後に体を拭いていないじゃないか!

  まずい……豚獣人の特性か、俺は自身の体臭が好ましいものでないことを自覚していた。普段から野菜食中心にしたり、デオドラントシートを携行して定期的に体を拭いたりとケアを欠かさずにしていたが匂う時は匂ってしまうのだ。

  「もちろん、その間の衣食住の提供や地球……への帰還方法を見つけるための協力は惜しみなくさせてもらうぞ。ところで、お前さんが住んでたその……地球という星に付いてじゃが」

  アクアマスターの話が終わらない。焦る気持ちは発汗を促進していく。しかもストレス由来の汗はより臭いが強いとも聞いたことがある。グショグショに濡れていく脇の下に接している部分のヒーロースーツに染みが浮かび上がってくる。

  「は、話はこんな所でいいか? 申し訳ないが先ほどの戦闘で疲れているから休ませてもらいたいんだが」

  「おお、すまんのう。つい話が長くなってしまったわい。歳を取るといかんのう。この基地内にお前さん用の部屋を用意してある。ランドイエローに案内してもらってくれ」

  アクアマスターが話をしている間にこっそりフゴフゴと鼻を鳴らして臭いを嗅ぐ。もわっと汗の臭いに混じって、どこかスパイスのようなツンとした刺激臭が嗅覚を刺激する。幸い、机を隔てて座るアクアマスターにはこの臭いは届いていないようだ。嗅覚に鈍い海棲獣人で良かった……

  「む、本当に顔色が悪いのう? 大丈夫か、マグナくん」

  「だ、大丈夫だ! 気遣い感謝する。それでは、ここで失礼させてもらうぞ」

  俺は慌てて椅子から立ち上がり部隊長室を後にした。良かった、これで俺の臭いはバレなかった……そう思いながら扉を閉め、後ろを振り向いた瞬間だった。

  「マグナ〜! お疲れちゃんだぜ」

  むぎゅっと柔らかい体毛の感触が俺の胸から下に触れる。恐る恐る見下ろした先にはティア・ガーディアンズの制服に着替えたムサシが俺の体に抱きついていたのだ。

  「[[rb:鮫島のおやっさん > アクアマスター]]の話、長かっただろ? 俺が部屋まで案内するから今日はゆっくり休んで……」

  「うわ、うわ……うわわわ!」

  身長210cmの俺に対して、だいたい160cm前後のムサシの頭はちょうど俺の脇の下あたりに位置してしまう。マズルの先の黒鼻をスンスンと鳴らすムサシの体を思わずドンと突き放す。

  「うぉ!? いででっ……何すんだよ、マグナ」

  何の前触れもなく突き飛ばされ床に尻餅をついたムサシが俺の顔を見上げながら不服気な表情を浮かべている。

  「す、すまないムサシ! ……だけど、俺はあまり体をくっつけられるのが好きじゃないんだ」

  「お、おう。悪かったよ……」

  俺の剣幕に押されたムサシが申し訳なさそうな顔を浮かべる。気まずい空気の中で俺は自室として用意された部屋へと案内された。

  [newpage]

  それから1ヶ月が経った。

  俺は助っ人ヒーローとしてティア・ガーディアンズに所属しタイラント帝国との戦いに参加していた。残念ながら地球への帰還方法は見つからずにいた。早く地球に戻って侵略者の魔の手から皆を守らなければ……逸る気持ちはあるものの、こればかりはどうしようもない。

  今日も今日とてムサシのトレーニングに付き合っていた訳だが……

  「ちくしょー、また負けちまった!」

  「攻勢に回るとすぐに隙ができるのがお前の悪い癖だぞ」

  模擬戦を終えて横たわるムサシを見下ろしながらため息を吐く。

  今日に至るまで何度も模擬戦を繰り返したが結果は29戦29勝……俺とムサシの間には確実な実力の差があったので当然と言えば当然であった。

  「とはいえ、最後の足場を崩す技は良かったぞ」

  この1ヶ月でムサシの技のパターンとかなり増えてきた。

  今回の模擬戦もムサシは大地のガイアの力で俺の足場の砂利を操って砂の渦を作った。意表を突かれた俺は足を取られ体勢を崩された隙に初めて一太刀を入れられてしまった訳だ。……まあ、その後に油断した隙を突いてカウンターをお見舞いしてやったけどな。

  「だろう? 名付けて『アリジゴク』!」

  「そのまんまじゃねーか……まあ、初めて俺に一発入れられたんだ。何か1つくらい願い事を聞いてやってもいいぞ」

  ムサシの1ヶ月の努力を労おうと、つい口を滑らせる。その言葉を聞いたムサシはニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた。

  「それなら……たまには、おいらの土俵で戦ってもらおうじゃねーか」

  そう言ったムサシがリュックから取り出したのは……道着だと?

  ──────

  ────

  ──

  ムサシに連れられて来たのは彼が通ってる柔道場だった。どうやらティアースでも地球と同じ武道や格闘技があるようだ。全く持って不思議な偶然があるもんだ。

  古びた道場の畳の上で柔道衣を着させられ白帯を巻いた俺は、同じく柔道衣を着て黒帯を巻いたムサシと相対していた。

  「へへ、案外似合ってるじゃねえか。でけぇ奴は柔道衣が似合うからな」

  「俺がデブだって言いたいのか」

  ムサシをじろりと睨む。柔道は防衛軍の訓練で齧った程度の経験しかないが、いくらムサシが柔道の有段者と云えども身長も体重も俺の方が遥かに大きい。この体格差は埋めようがないだろう。

  礼をして畳に上がる。双方に目を合わせて再度礼をして……

  「はじめ!」

  審判のかけ声と共に俺はムサシの襟に手を伸ばした。首後の奥襟を掴めば、こちらが有利になる。しかし、ムサシはその狙いを察知してか両袖を掴んで俺の腕の自由を奪う。

  「くっ……なんて力だ」

  なんとか腕の自由を取り戻そうとするがムサシの握力が強く、なかなか切ることができない。普段の戦闘とは異なる動き方に翻弄され気づけば滝のような汗を流していた。そのままムサシのペースで動かされて体勢を崩されてしまう。

  「おらよっとーー!」

  と、ムサシが威勢の良いかけ声と共に俺の体にもぐりこませるようにしゃがみこみ、背中を畳につけると足を俺の太ももの付け根あたりにかけて勢いよく蹴り上げるよう後ろ手に投げた。捨身技の1つ……巴投げだ。

  「うおっ!」

  「技あり!」

  投げられながらも空中で体勢を変えたため、背中から着くことは避けられたが審判から「技あり」の号令がかかる。早く体勢を変えなければと思った時にはムサシの腹が俺の顔に覆いかぶさっていた。

  「ふごっ……ぷぎぃ!」

  寝技の1つ上四方固めをかけられて身動きが取れない。その時ハッと気づく。

  今、俺は大量の汗をかいた状態だ。きっとキツい体臭を発し始めているはずだ。その状態でムサシに密着されているということは俺の体臭に気づかれてしまう。

  「ふぐぐっ! ぶほーー!!」

  体を離そうとジタバタ手足を動かすが、腰を掴まれ腹で顔と首を潰されている状態では体重差があれど体を動かすことは叶わなかった。暴れれば暴れるほどに体力は奪われ呼吸が苦しくなる。

  「合わせ技一本!」

  「ぶひっ!はぁはぁ……う、うぅ……」

  審判のかけ声と共にムサシの腹の圧迫も緩み呼吸ができるようになる。

  「へへ、30戦目にしてやっと1勝だな……ってマグナお前泣いてんのか!?」

  気づけば瞳は涙で濡れていた。それは負けたことが悔しくてではない。おそらく自分が臭いことがバレてしまったことによるショックからであった。

  「ぐすっ……ムサシ、ごめん。俺の体、臭かったよな?」

  「な、なんだって?」

  「俺はこの臭いのせいで防衛軍の仲間からも煙たがられてたんだ……こんな臭くて太った俺がヒーローなんて失望しただろ?」

  仲間の心ない一言で自分の体臭がキツいことを自覚してしまったこと、大好きなサウナで汗を流していたら他の客が部屋から出ていってしまっこと……

  様々な過去のトラウマがフラッシュバックしていき、堪えきれず涙ながらに告白する俺の顔をムサシはキョトンとした表情で見つめていた。

  「……それで普段やたら距離を取ってた訳か。なんだ、くだらねーな!」

  俯いていた俺はムサシの言葉に顔を上げると同時に汗だくの道着のままに抱きつかれた。

  「お、おい……! 離れろ」

  「いいかマグナ、おいらは子供の頃から柔道やってんだぜ。汗くせぇ奴とも散々組んできたし、野郎の臭いなんか今さら気にならねぇよ」

  「で、でも……」

  「マグナは口は悪いし、ぶっきらぼうだけどよ。こうやっておいらの特訓にも付き合ってくれる優しくて強いヒーローだ!」

  「臭いからヒーローにふさわしくないなんて、そんなこと言う奴はおいらがぶん投げてやるよ。ま、太ってるのはお互い様だけどな、だーっはは!」

  そう言ってムサシは照れ隠しのように笑った。初めて言われた言葉は俺の胸にすっと染み込んでくる。

  「う、うぅ……ふふ、あはは」

  気づけば俺は泣きながら笑っていた。そして、ムサシの汗だくの体を同じく汗だくの体で力強く抱き返した。

  「ムサシ、ありがとう……! お前に会えて俺は本当に良かった」

  「ああ、これでおいら達『親友』だな!」

  親友……防衛軍でも仲間と距離を取ってきた俺をそう呼んでくれるのか?

  ビービー!

  感極まり次の言葉を見失った俺の感傷を遮るようにムサシが腕に身に着けていた通信機がけたたましい音を鳴らす。

  『タイラント帝国の怪人が出現した。ランドイエローは指定ポイントまで急行してくれ』

  「怪人が出たって……!? 行くぞ、マグナ!」

  ムサシが慌てた様子で道着のまま駆け出していく。その後ろ姿を追いかけながら俺は口の中で先ほど耳にした言葉を反芻した。

  

  「怪人……」

  その言葉を聞いた時、さっきまで温かかった心がスッと冷えていくのを感じた。そして、あのノイズ混じりの無機質な声が再び俺の頭の中で響いた。

  決マ…ダ。ヒーローマグ…ハ「体…怪人」ニ改…スル──

  [newpage]

  「グフフ、久しぶりの出番ダベな〜……気張らんとイカンべよ」

  指定されたポイントに現着した俺達を待っていたのは腹が異様に出張った白黒の毛皮のスカンク獣人……いや、怪人だった。すでに変身した俺達は怪人と対峙して構えを取る。

  「マグナ、こいつは今までの戦闘員とは訳が違う、注意しろ!」

  「グヘヘ、その黄色いスーツ……おめぇが最弱ヒーローのランドイエローだべ? ははぁん、弱そうな奴たべナァ!」

  「なんだと! もういっぺん言ってみろ!?」

  「挑発に乗るな、ムサシ! 相手の思う壺だぞ」

  露骨な煽りに怒りを燃やすムサシをたしなめながらも俺は敵の出方をうかがっていた。見たところ強力な武器などは持っていなさそうだ。

  ここは一気に制圧するのが良いかもしれない。そう決めた俺は横目でムサシに合図する。

  「オラは臭害怪人スメルスカンクだべ……!ヒーローども覚悟するベヤァ」

  鋭い鉤爪を振り上げながら向かってくるが特別動きが速い訳でもない。手を振りかぶりながら突撃してきた怪人の攻撃を盾で受ける。

  ガキン!

  鉱物がぶつかり割れるような音が響く。俺の白銀の盾には傷1つ付かず、逆に怪人の鉤爪が根元から折れてしまった。

  「ギョェェエエ! 痛いべ〜!」

  「いまだムサシ! 奴の足場を崩せ」

  「おっしゃー! くらえ、アリジゴク!」

  ムサシが地面に手をつき叫びを上げれば、ズズズッと怪人の足下の砂利が流砂となっていき片足を飲み込んでいく。

  「あんれぇぇ……足が砂に取られて……だべェェ!」

  無様にも怪人は頭から倒れてしまう。フサフサとした白黒毛皮の尾に隠れた尻を空に向けて無防備な体勢で地面に突っ伏した怪人を目の前にして俺は両刃斧を振り上げた。

  「終わりだ、怪人め!」

  首を狙って振り下ろそうとした、その時だった──

  ブォォォォォオオオオ! ぶびゅっ! ぶぶっ!

  気の抜ける音が怪人の尻から聞こえた瞬間、その尻穴から勢いよく黄色いガスが噴出された。

  「な、なんだ……ゔっ! この臭いは……!?」

  呼吸に合わせて豚鼻に入り込んできた有色ガスからは硫黄や納豆や腐敗した生ゴミ……体を内部から傷ませていくようなひどい臭いが漂っており俺はすかさず兜のバイザーを降ろした。

  「ゲヘヘ……オラァびっくりしてオナラが漏れちまったべ……恥ずかしいベなァ……♡」

  「これが おなら だと? いったいどんな物を食べたら、こんな臭いになるんだ!?」

  俺の体臭とは全く異なる種類の悪臭に辟易する。幸いバイザーが臭いをある程度カットしてくれる。このままガスが霧散するまで耐えれば……

  「げほっ! うっ……がはっ!」

  「ムサシ!?」

  隣に立っていたはずのムサシが、いつの間にか激しく咳き込みながら地面に横たわっていた。

  「ゲヘヘ……オラのガスは『ガイア』の力を弱らせる効果があるって……オラを改造してくれた科学者が言ってたべ」

  「ムサシ、大丈夫か!? おい!!」

  「うぅ、マグナぁ……」

  抱きかかえ呼びかけるが反応が薄い。意識を朦朧とさせているのだろうか、焦点の合わない瞳で俺の目を見返してくる。

  ムサシが装着しているヘルメットは俺の兜のようにガスを遮断できないため、こうしている間もムサシの体は衰弱していく。このままでは……

  「くぅ……むぅぅっ!!」

  親友を守らなければ……その一念で俺は兜を外した。途端にガスの強烈な劇臭が嗅覚に突き刺さる。臭いが目に染み涙が溢れるが、ガイアを持たない俺にとってはただの臭いガスでしかなかった。

  「しっかりしろ、ムサシ……ここで待っててくれ」

  「マグナ……?」

  自らが被っていた兜をムサシの頭に被せてやる。バイザーが降りて臭いを遮断すればムサシの目に生気が戻る。

  「おまえの匂いがするな……」

  「……臭いか?」

  「……へへ、なんだか安心するぜ」

  冗談ぽく言うその言葉に俺は安堵と喜びを覚えた。ムサシに笑い返すと、すぐに斧と盾を構えてスメルスカンクに向き直った。

  「だべ? オメェはガイアのヒーローじゃないんだべか?」

  「そうだ、俺は守護ヒーロー・マグナ! 地球を、そして[[rb:親友 > とも]]を守る戦士だ。 うぉぉぉおお!!」

  俺は叫び声を上げながら斧を振りかざし全力で駆け出した。

  一撃で決める! 決意を胸に強烈な一撃を喰らわせようとした俺を見るスメルスカンクの顔は、しかし好色に満ちていた。

  「なら、コッチを使ってみんべ♡」

  スメルスカンクはくるりと後ろを向けると、フサフサの尾と尻を俺に見せつけるように突き出し、そして──

  ブゥゥゥゥウウウウウウ♡

  先ほどとは異なるピンク色のガスを俺に吹きかけた。

  「ぶふうぅぅぅう♡」

  甘ったるいが、しかし確実に毒だとわかる腐敗臭……その匂いを嗅いだ俺は奇妙な感覚に襲われる。脳が蕩け、全身を駆け巡る血はまるで沸騰したように熱くなる。

  「な、なんだこれは……全身がアツくて……♡ うぅぅわぁぁああ♡」

  「これは催淫ガスってンだべさ。この臭いさ嗅いだら……オメェはこの臭いの虜だべ♡」

  全身に力が入らない♡ 体がヒクヒクと震えて、斧と盾が手から滑り落ちていく♡ 興奮で胸の鼓動は高鳴り全身の毛穴という毛穴から汗が噴き出していく。

  守護ヒーローの力まで失われていき、身に纏っていた鎧の維持ができなくなり光の粒子となって消えていく。

  「ウヒョヒョ〜! オメェさん、そこそこのモン持ってんじゃねぇべか♡」

  鎧の下に隠されていた股座……そこにある俺のイチモツは促進された血の巡りによりギンギンに勃起しておりヒーロースーツを突き破らんばかりに屹立していた。

  「違うぅぅ♡ これは……♡ 俺はこんなんじゃ!」

  

  「素直になんべぇ……ほれ、もっと臭いを嗅げ!」

  堪えきれず仰向けに地面に倒れた俺の視界を何かが覆う。スメルスカンクが俺の顔に跨ったのだ。スメルスカンクがどこか楽しげに股を開けば、クパァと肛門が開きヌメリとした粘膜が俺の豚鼻に[[rb:密着 > キス]]してくる。

  「んんんっ♡♡ ぶふっ!?」

  「へへ、さてイくべや……んんんーーー!!ンンーーー!!」

  スメルスカンクの唸り声と共に肛門が蠢く。まずい、まさかこいつ……さっきのガスを!? 俺は力の抜けきった体でスメルスカンクと地面にサンドイッチにされた顔を抜こうとしたが、時すでに遅しだった。

  ブブブーーーー♡♡ ブリュ♡ ブスブス♡

  ガス噴気孔と化した肛門から俺の鼻穴へと直接注入されていくピンク色のガス……俺の頭が、肺が、血液が、臭いに犯されていく。触ってもいないのにイチモツが……チンポがヒクヒクすりゅ♡

  「スーーーッ♡ ぶぶふぅぅぅうううう♡」

  もっと嗅ぎたい、この臭いをもっと♡

  気づけば俺は鼻穴を目一杯に開いてガスを多量に取り込んでしまった。幸福成分が脳内に大量に分泌されて、もう何もかもどうでも良くなってくる♡

  これは♡ もう……ダメだ♡♡♡

  「ぶひぃーーーーー♡♡♡」

  ビュルルル♡ ビュク!ビュビュ!!

  情けない鳴き声と共に俺は果ててしまった。しごいてもいないのにドクドクと精液が宙に向かって放たれる。

  穴という穴から体液を垂れ流し爛れた淫臭にまみれた俺は射精の快感が全身を走ると同時に意識を手放してしまった。

  [newpage]

  「ここは……?」

  ふと目を覚ます。俺は何もない暗闇の中で1人佇んでいた。たしかスメルスカンクのガスで射精して気絶して……そうだ、ムサシは? ムサシは大丈夫なのか? 辺りを駆け回るが親友の姿は見当たらない。それどころか何もない空間は無限に続いてるようにも感じられた。

  「よう……マグナァ」

  ふと声がする。嫌悪感を抱かせる下卑た、しかしどこかで聞いたことがあるような声……

  俺は声のした方を振り返り、そこにいた存在を見て目を丸くした。

  「俺……?」

  「そうだ、俺様だ」

  そこにいたのは確かに俺だった。しかし、どこかが違う。目元を覆う黒いマスクはそのままだが額には黄色地の丸にして囲まれた「臭」の文字が刻まれており、ヒーローの誇りであるヒーロースーツは腕と股間部分に、アームカバーとパンツにしか見えないほどの布地だけを残して、あとは肌色のだらしない肥満体を晒している。

  手に持つ得物は自慢の斧と盾ではなくトイレの詰まりを直すのに用いるスッポンに変わっている。何よりも……

  「お前、なんて臭いだ……」

  兎にも角にも臭いのだ。先ほどのスメルスカンクの放つガスとはまた異なる生活の中で蓄積されたような汗臭、ワキガ、獣臭に精液臭……思わず鼻を抑えてしまった俺を嘲笑うようにマグナはこちらに歩み寄ってくる。

  「おいおい、忘れちまったのかよぉ? 俺様はお前だ。お前は自分の臭いを嗅がせるのが大好きな変態怪人だろぉ?」

  「なんだと、そんな訳が……待て、俺が怪人?」

  何かがおかしい。違和感を覚えながらも、俺は自分の姿をした目の前の存在から目を耳を離すことができなくなっていた。

  「ほんとに忘れちまったようだなぁ? 俺様は地球を侵略する怪人軍の手先、体臭怪人マグナだろ?」

  「俺が怪人軍の手先? 体臭怪人マグナ?」

  訳がわからない。と、激しい頭痛に襲われる。俺の脳裏にあの声が再び──しかし、今までと異なり鮮明に──響いた。

  決マリダ。ヒーローマグナ ハ「体臭怪人」ニ改造スル──

  そうだ。俺はある日の任務中に敵の怪人改造生命体に飲み込まれて怪人へと改造されたのだ。臭いの元となる雑菌を体中に塗りたくられ、大量の脂質や塩分を無理やり取り込まされ、細胞の1つ1つから臭いを発する体へと改造されたのだ。

  怪人となった俺はあれだけ気にしていた体臭を他人に嗅がせ、自らの臭いをマーキングするような変態へと変わっていった。

  そして、ある日。怪人軍の上位存在から指令が下された。

  体臭怪人マグナ、オマエニ新たなを指令を与エル。怪人トナル新たな個体ヲ異星カラ連レテ来ルノダ。ユケ、同胞ヨ──

  惑星ティアースに派遣された俺だったが、ワープホールから出た際に着陸に失敗して頭を打ったことで怪人としての記憶と能力を一時的に失ってしまい今に至るのだ。

  「全部思い出した……俺は」

  「俺様……だろぅ?」

  怪人マグナがヒーローマグナに近づいてくる。強烈な体臭、俺にとって忌むべき臭いがさらに濃くなった悪臭……しかし、俺はその臭いが嫌ではなくなっていることに気づいてしまった。

  「臭い……俺、臭い」

  「そうだ、俺様は臭い」

  怪人マグナがヒーローマグナを包み込むように抱き締めれば、ブヨブヨとした肉と肉が混じり合うような感覚に陥る。俺はこの感覚もまた嫌ではない……むしろ気持ちいいと感じていることに気づいてしまった。

  「俺、太ってて臭い……」

  「そうだ、俺様は太ってて臭い。そんな俺様がヒーローな訳がないだろぉ♡」

  でも、そんな俺をムサシはヒーローだって……親友だって認めてくれたんだ。だから、俺は怪人に戻りたくなんて……

  「じゃあ、あいつを俺様と同じ怪人にしちまおうぜ。そうすれば、お前とあいつはずっと親友でいられるぜ♡」

  ……そうか、ムサシを怪人にすればいいのか。そうか、そうだよなぁ♡

  「ぶひひひ♡ やっとわかったようだなぁ、さあ行こうぜ、俺様よぅ」

  ──────

  ────

  ──

  「グヘヘ、オラの臭いで射精しちまうだなんてヒーロー様も情けねぇべな……んぉぉ?なんだべ、この臭いは!? くせ、くせぇぇべぇぇ」

  「ぶひ、ぶひひひひ♡」

  スメルスカンクが滑稽にのたうち回りながら俺様の体から飛び退く。

  邪魔な尻がどかされ、俺様は立ち上がりながらスンスンと鼻を鳴らしてガスを吸い込む。

  こんなものを臭いと思っていたなんて……今の俺様からすれば香しい春の花畑にいるのと同じだった。

  「よぅ、この惑星の怪人様よぉ♡ よくも俺様をコケにしてくれたな? 俺様がお前に本当の臭いを教えてやるぜぇ♡」

  俺様の姿が[[rb:仮初 > ヒーロー]]の姿からみるみる[[rb:本来 > 体臭怪人]]の姿に変わっていく。眠っていた体表の雑菌が活動を開始し、ぷぅぅんと臭いが辺り漂っていく。

  「さっきのお返ししてやるよぉ」

  地面をのたうち回るスメルスカンクに近づくと、首根っこを鷲掴みにしてそのマズルを俺様のパンツの中に突っ込んでやった。

  「んべぇぇぇ!!!! こ、これはなんだべぇ!? おらぁ、こんな臭い……嗅いだことねぇべやぁぁぁ」

  「ぶひひひひ♡ 俺様の細胞1つ1つから臭ってんだぁ♡ 最高にハイな気分になれるだろぉ♡」

  パンツに突っ込んだマズルから漏れた熱い息が俺様のチンポにかかる度に、これまたイカくせぇ俺様の我慢汁が先っぽからドビュドビュ溢れていく。たまらずにその口の中へといきり立ったチンポをねじ込む。

  ジュポ、ジュポ、ジュポ♡

  「ンベ、ンンべ!! ぐるじぃべぇ、ぐさいべぇぇ! い、いびるぅぅ、ぐろっぐざぁあ……! おだすけをぉ……!!」

  何やら呻いているのが気色悪いが、その度にマズルの中で舌が動き俺様のチンポを舐めるのが気持ちいいので そのままにしてやれば、次第に俺様の肥大化した金玉袋から怪人精液が込み上げてくる。

  「ぶひ、ぶひひひひ♡ 久しぶりの怪人射精……ぶひぃぃぃぃ!!」

  ビュルルルルルル!

  「フゴォッ!? んだべぇぇエエエ!!!

  ンゴォォッ!!」

  子孫を残すためではなく臭いマーキングに特化した精液をスメルスカンクの喉奥に断末魔の声を上げ、文字通り昇天してしまったのか白目を剥いてぐったりとしてしまった。

  「ぶひぃ、ぶひぃ……ちぇ、自分以外の臭いには弱ぇのかよ……やっぱりこの惑星の怪人は大したことねぇな」

  マズルを抜いてやり地面に横たわるスメルスカンクの顔を踏みつけるが何の反応もない。どうやら、本当に事切れたみたいじゃねえか……まあ、いいや♪

  俺様は本来の指令を遂行するために、俺が助けた[[rb:親友 > ターゲット]]の下へと向かうのだった。

  [newpage]

  あの後、俺様は[[rb:マグナ > 俺]]を信じて待っていたムサシを汚して犯し尽くしてやった。

  同じヒーローとして尊敬していた存在が、世にも醜い怪人の姿で現れた時は言葉では表せない程のショックを受けていたな♡

  俺様の臭いを散々嗅がされながら尻穴を犯されて体では嫌がりながらも口では「マグナは臭くなんかねぇ……! 正気に戻ってくれよぉ」なんて叫びながら白目を剥いて気絶した時は大笑いしてやった。

  倒れたムサシを小脇に抱えながら、この惑星に来た時に使用したワープホールを発見して飛び込むと地球上空に浮かぶ怪人軍の母艦に帰還した。

  「体臭怪人マグナ、ただいま帰還しました」

  マグナ、連絡モ寄越サズ何ヲシテイタノダ? オマエヲ任務ニ就カセテカラ1年ノ月日ガ経ッタゾ──

  怪人軍の長である上位存在の前で跪きながら俺は衝撃を受けていた。

  1年だと? ティアースでは1ヶ月しか経っていなかったはずなのに。なるほど、これがウラシマ効果って奴かぁ?

  上位存在の話によると俺がいない1年の間に防衛軍は強力な兵器を開発しており、怪人軍は劣勢に立たされているとのことだった。

  「ぶひひひひ♡ それは失礼しました。けど、俺様の手土産を怪人に改造すれば一気に形勢はひっくり返りますよ♡」

  俺様は巨大な怪人改造生命体を見上げる。

  この中に取り込まれたムサシは今まさに怪人改造の前段階として身体情報を読み取られているのだ。

  上位存在が興味深く異星のヒーローの解析データを読み上げていく。

  データベース照合……地球外ノ 存在ノタメ該当ヒーロー ナシ。

  体臭怪人マグナ カラノ情報ヨリ本個体ヲ「ムサシ」ト呼称スル──

  ムサシガ持ツ特殊ナ能力「ガイア」ハ地球上デハ使用不可デアル事ガ判明。

  ヒーロースーツ解析 モ マグナ ガ着用シテイタ物ト比較スルト格段ニ劣ル。破棄ヲ推奨──

  男性器ハ通常ノ雄個体ト比ベテ成長ガ乏シイ──

  身体スペック ハ優良。特ニJUDOヲ経験シテイタ事ニヨリ体力、柔軟性、技巧ニ特筆スベキ点ガ見ラレル──

  キマリダ。ヒーロームサシ ハ 「柔道怪人」ニ改造スル──

  気絶したまま抵抗もできないムサシ[[rb:がかつての俺 > ヒーローマグナ]]と同様に触手による改造を受けていく映像がモニターに映る。

  触手が口の中に挿入され、筋肉と脂肪を増量するために過剰なたんぱく質と糖分を摂取させられていく。どんどん腹を膨らませ苦悶の表情を浮かべるムサシだが吐くことも許されず、どんどん栄養を供給されていく。

  しかし、これだけでは面白くねぇな。ムサシは俺様の親友だ。もっと相応しい姿に堕としてやらねぇとなぁ……そうだ、いいことを思いついたぞぉ♡

  俺はパンツを脱ぎ、先ほどムサシのケツ穴に突っ込んでいたチンポを晒しながら自分の股座を撫で回し、その手を鼻前に掲げて……

  スーーーーーーーーーッ♡

  「ぶひっ♡ 思った通り最高の臭いがするぜぇ♡ この俺様のニオイ菌をムサシにも塗りつけてやってくれませんかねぇ?」

  ……許可シヨウ──

  怪人改造生命体の口が開き飛び出た触手が俺様の体を舐め上げ全身の臭い菌を拭っていく。

  「おん♡ あんっ♡ あぁん♡ これで柔道怪人ムサシが寝技を仕掛ける度に臭い攻めもできるって算段よぉ♡」

  触手に撫で上げられ我ながら気色悪い喘ぎ声を漏らす俺様、こんな姿を見たらムサシはきっと幻滅するだろうなぁ……まあ、お前もこうなるんだけどな♡

  モニター上に映るムサシにニオイ菌が塗りたくられていく。その悪臭にやっと目を覚ましたムサシは状況が把握できないまま触手により蹂躙されていく。

  「うぇっ! げほっ! なんだこれ、何すんだよぉぉ! くせぇよぉ! マグナァ、助けてくれぇぇ」

  こんな目に合わせたのが俺様だということは薄々覚えているはずなのに、俺様に助けを呼ぶ姿は健気でもあるが滑稽そのものだなぁ。それに……

  ムサシ、性的興奮ヲ確認。怪人化ニ影響ヲ与エナイタメ射精サセテ治メル事ヲ推奨──

  「な、おいらは興奮なんて……おい、なんでこんなことに?」

  モニターに映るムサシのガキチンポは可哀想な程にガチガチに硬く、小さいながらもそのいきり立った姿を主張していた。

  「ギャハハ! さっき俺様の臭いを散々嗅がせてやったからなぁ。脳が俺様の臭いを求めちまってしょうがねぇんだろぉな」

  触手ニヨル性感帯へノ刺激ヲ実行スル──

  ニョロニョロと肉壁から伸びた数本の触手がムサシの乳首に、ガキチンポに巻き付いていき緩やかな刺激を与えていく。

  ニョル♡ クチュ♡ クチュ♡ ニュルルル♡

  「あ、やめっ……♡ おいら、そんなところ責められても……気持ち良くなんか……♡ うっ、うぅぅ♡」

  ニュルン♡ グチュルル♡ チュボチュボ♡

  俺様のチンポより太い触手が開通されたばかりのムサシの尻穴の入口をノックする度、ムサシの体温が上がり、顔を赤面させて汗腺が開いていく。

  「あぁ♡ やめて……くれっ、おいらが、おいらじゃなくなっちまう……♡ あっ……あぁぁぁぁあああ♡♡♡」

  グチュルン♡

  粘液を纏った触手がズッポリとムサシの中へと入っていく。アイツおもしれぇ、雄交尾2回目だってのに感じてるじゃねえか♪

  ムサシ ノ 体表カラ規定値以上ノ体臭ガ発生シタ事ヲ確認。サラナル ニオイ菌を付着セヨ──

  徐々にニオイ菌が馴染み始めたのかムサシの体からは大量の汗と共に臭いの湯気が立ち上り始める。涎を垂らし、瞳を虚ろにして、触手責めを受けるムサシを見てたら……俺様も勃っちまうじゃねーか♡

  「ああっ! ああぁぁー ! イク♡ イグゥゥゥ♡」

  ビュルルル♡ ビュルルルルルル♡

  ムサシのチンポから勢いよく白濁液が射出される。ぜぇぜぇと肩で息をしながら俺様レベルではないにしても悪臭を放つ体に成り果てたムサシ。

  その瞳は意志が失われたように虚ろで、過剰な栄養を摂取させられ面白い程に膨らんだ腹になったムサシの体が繭状の装置に閉じ込められていく。

  この中は時空が歪んでおり地球上で1分が経過すると繭の中では1日が進むのだ。食事と排泄は管理され洗脳処置も進み、最終的には怪人として産まれ直すことになるのだ。

  「はぁはぁ……おいら、くせぇ……♡ 腹もこんな出ちまって……♡ もう……ヒーローなんて……名乗れねぇよ……う、うぐっ……みんな、すまねぇ……♡」

  仲間への謝罪の言葉を最後にムサシは完全に繭に包まれてしまった。

  ティアースから遠く離れた地球に連行されたお前の声はかつての仲間達に届くはずもねぇんだけどな♡

  ムサシを包んだ繭が怪人製造生命体の口から外に排出される。ネバネバと粘液がついたまま床に落とされた繭の中では怪人軍への忠誠心を植え付けるための思考洗脳が施されていることだろう。

  俺様は繭に触れ、まだ見ぬ[[rb:怪人 > とも]]に語りかけた。

  「さぁて、次なる作戦は地球侵略を再開させるのか、はたまた怪人を作るための新たな個体を集めにティアースに戻るのか……どっちにしてもお前と一緒なら最高に面白いことができそうだぜ、[[rb:柔道怪人ムサシ > 同胞]]よ♡」

  BAD END