処刑された鮫獣人海賊船長の呪いで 冒険者達が欲望に溺れて海賊に堕ちる話

  スカルアイランド──別名、海賊島とも呼ばれるこの島を拠点とするシャークネス海賊団、その船長である鮫獣人、キャプテン・バルバトスは窮地に陥っていた。

  「畜生め! オルカスの野郎、俺様を海軍に売りやがったな」

  スカルアイランドに今まさに十数隻の海軍艦が迫ってきていたのだ。だというのに、スカルアイランドには海賊船は1隻も残されていなかった。

  副船長であるオルカスが付近の島に略奪を仕掛けると言って、部下も船も引き連れていった直後の海軍の襲撃だ。残されたのはキャプテン・バルバトスとわずかな子分達のみ、オルカスの裏切りは明白であった。

  島の海岸に海軍艦から数十名の海兵が降りてくる。彼らがキャプテン・バルバトスのいる島の中心部に大挙として押しかけてくるまで数刻もかからないだろう。

  「親分、どうしやしょ!?」

  「キャプテン、おいら達が奴らを食い止めてる間に逃げてくだせぇ」

  オルカスの作戦に取り残された子分達がキャプテン・バルバトスに進言する。蛸獣人のダゴン、烏賊獣人のイカリ……忠義に篤い彼らはオルカスのクーデターを邪魔すると判断して見捨てられたのだろう。キャプテン・バルバトスは顎髭に手を当てながら思案する。

  彼らを盾にしたところであの数の海軍兵だ、大した時間稼ぎにならないことは明白であった。

  『ここまでの戦力差だ……悪戯に反撃をしても怪我するだけだ。万事休すか……しかし、だ』

  「許されねぇのは裏切り者オルカスだな……おまえら、俺様のことは言いから今すぐ逃げろ」

  「だ、だけど親分……!」

  「うるせぇ! シャークネス海賊団の掟『みっつ、船長の命令は絶対』だろ! しかしな、ただで捕まってやる気はねぇ。10年間待て……おまえらは近くの島に身を潜め、シャークネス海賊団再興の準備をしとけ。わかったな!?」

  「「よ、ヨーホー……!」」

  ダゴンとイカリの子分達2人が背筋を正して海賊らしい返事をするとスタコラサッサと逃げていく。島の裏手からなら脱出できるだろう。その後ろ姿を見送りながらキャプテン・バルバトスは自らの誇りである海賊帽を被り邪悪な笑みを浮かべた。

  「さてと……オルカスの野郎に置き土産をしておかなきゃな」

  地面に置かれた蓋を開けば、そこには地下室に通ずるハシゴが立てかけられていた。大きな体躯をゆさゆさ揺らし狭い穴を降りていった先には煌びやかな金銀財宝が隠されていた。

  シャークネス海賊団が10年に及ぶ略奪行為で蓄え続けた財産。それを目の前にしてキャプテン・バルバトスはサーベルを抜き、自らの左腕に切り傷を刻めば赤い血がポタポタと彼の水かきの付いた手に流れ、地面に滴り落ちていく。

  彼はその血を使い財宝を取り囲むように六芒星の紋章を地面に描いていく。

  「ふぅ、ふぅ……さあ、悪魔よ。俺様にもう一度力を貸せ」

  血の六芒星を刻んだ彼は左手を前にかざし呪咀を唱え始めながら、右手でベルトを解きズボンをパンツを下ろしていく。海棲獣人特有の股間部分のスリッドからは凶悪なまでに怒張した男性器がもたげており、むんずと掴んだソレを雄々しく扱き始めた。

  「はぁはぁ……くぅ……! 俺様の精を喰らうがいい……! シャアァァァァッック!!」

  ビュル! ビュルルルルル!!

  床に刻まれた六芒星にキャプテン・バルバトスの亀頭から迸る欲望の液が吐きかけられると、六芒星が ぼぅ……と紅く輝き出し魔法陣の内側から黒い煙が湧き出して財宝を包んでいく。

  「さあ、悪魔バルバトスよ! キサマの力でこの財宝に俺様の魂を……呪いを刻め」

  悪魔バルバトス、ソロモン72柱に名を数えられた悪魔。かつてただの鮫獣人だった彼は悪魔との契約により強大な力と財宝を見つけ出す能力を得てキャプテン・バルバトスと名乗るようになった。

  今、その悪魔の力を顕現して彼の軌跡の証である財宝に呪いと彼自身の魂を刻んでいく。金貨や銀貨にはキャプテン・バルバトスの顔を象った紋章が刻まれ、宝石や宝剣にも同じような紋章が浮かび上がってくる。

  儀式が終わり、息を荒くしたキャプテン・バルバトスは金貨を1枚握り締めてニヤリと笑った。

  「オルカスよ。俺様を裏切った報いを受けるが良い! ガーハハハハハ!!」

  その日、キャプテン・バルバトスは海軍に捕らえられた。大挙した海兵達に堂々とした態度で迎えた彼は一切の抵抗もせず潔くお縄にかかったと言う。

  彼は海軍が保有する監獄に収監された後、度重なる殺戮や略奪行為が罪状に挙げられ死罪が言い渡された。死刑執行の間際、彼はこう言い残したと言う。

  「俺様がスカルアイランドに残した財宝は100億をくだらん! この島の頂にある小屋に隠してきた! さあ、愚か者共よ。欲望のままに目指すが良い!」

  この言葉は世界中の冒険者達を沸き立たせ、皆がスカルアイランドを目指し始めた。大航海時代の始まりであった。

  [newpage]

  キャプテン・バルバトス死刑執行から10年の月日が流れた。その間、数多の冒険者が財宝を目指してスカルアイランドへ潜り込んだが全てが失敗に終わっていた。

  鬱蒼とした木々に囲まれたスカルアイランドの最頂部を目指すことがそもそも困難であった。

  さらに、クーデターによりシャークネス海賊団を乗っ取ったオルカ達が何らかの理由により意思を無くしたゾンビと化して島中を徘徊するようになり冒険者たちを襲い始めたことでバルバトスの財宝を得るのは不可能だと誰もが思い始めていた。しかし……

  「やっとここまで来れたね。みんな最後まで気を抜かないように行こう」

  黒と白の毛皮に包まれた健脚の持ち主であるシベリアンハスキー獣人のアドニスとその仲間達はついにたどり着いたのだ──スカルアイランドの最頂部に位置するキャプテン・バルバトスの小屋に。

  「アドニス、そう言ってるおまえが さっきから尻尾を振りっぱなしだぞ。興奮してヘマするんじゃねぇぞ」

  「う、うるさいよ、チュチュ!」

  特徴的な大きな耳を持つフェネック獣人チュチュが冷やかしながら、薄桃色の艷やかな毛皮をアドニスの硬い毛皮に擦りつける。

  「2人ともじゃれ合うな、行くぞ」

  つるりとした紺色の体表を光らせながらイルカ獣人のドルーが2人に睨みを利かせる。

  スカルアイランドから50海里ほど離れた小さな島ノーブルアイランドで生まれ育った彼らは冒険者として様々な宝物を求めて旅を続けていた。

  幼馴染の彼らは阿吽の呼吸で険しいダンジョンを踏破し続け、今まさに1番の大物であるキャプテン・バルバトスの財宝に向けて歩みを進めていた。

  夢にまで見た100億の財宝まで あと一歩。アドニスとチュチュは浮足立っていたが、冷静なドルーの言葉に気を引き締め直す。アドニスがゆっくりと小屋の扉を開けば、ツンとするカビの匂いが鼻を突く。

  いかなる罠が用意されているかと身構えていたが、扉の向こうは埃かぶった机や椅子が置かれただけの簡素な部屋であった。

  とても財宝が隠されているようには見えなかったが、しばらく中を探しているとチュチュが大きな耳を立てながらけたたましい音を鳴らして足踏みをする。

  「突然どうしたの、チュチュ?」

  「やめろ、埃が立つだろ」

  突然の行動に驚くアドニスと顔をしかめるドルーであったが、チュチュは何かに気づいたようだ。

  「アドニス、どうやらこの部屋のどこかに地下の入口があるようだ」

  「なんだって?」

  「音の響き方が違う所がある」

  フェネックキツネのそれと同様にチュチュの大きな耳には体温調整をする機能を持つが、音にも非常に敏感であった。彼は床下の音の反響の仕方から、何か空間が隠されていることを察知したのだ。

  「よし、私に任せてもらおうか」

  そういうとドルーはつるりとした額を床に押し当てる。イルカ獣人は額から超音波を出すことで障害物との距離や大きさを判別することができ、暗闇の中でも歩いたり泳いだりすることができるのだ。

  ドルーはさらに高度なことをしようとしており、床に超音波を発して反響する音から隠し通路の入口を探し当てようとしていた。

  しばらくしてドルーが頭を起こして指を差す。その先には簡素な部屋に不釣り合いな肘掛けの付いた豪華な椅子があった。おそらくキャプテン・バルバトスが座っていたであろう、その椅子をどかすと下になっていた床には取っ手が付いており、まさしく地下通路への隠し扉であった。

  「ビンゴ! 2人とも、さすがだね。よし、この先にきっと……」

  ハシゴを降りて暗闇を進んだ その先には……

  「すごい、これが100億の財宝」

  目を眩ませるほどの金銀財宝が積み上げられていた。

  「これは……まさか……本当だったとはな」

  「うひゃひゃ、すげぇ! こんだけありゃ俺達3人一生遊んで暮らせるぜ」

  銘々の喜びを見せる彼らであったが、ふと嗅覚が優れる犬獣人のアドニスは不快な腐敗臭を察知する。ヒクヒクと鼻を鳴らして後ろを振り向いた先には匂いの主が立っていた。

  「お、おぉ……おまぇら、その宝に……手を出、出すなぁぁ」

  そこには彷徨う腐乱死体が白目を向きながら迫ってきていた。おそらく元は鯱獣人であったのだろう、頭部や臀部に鰭が付いており腐り爛れた肌であるが目の上に白い模様が確認できた。

  「こいつ、ここを守ってたのか?」

  今まで出会ってきたゾンビのような横縞シャツではなく、海賊船長であることを感じさせる出で立ちは どこか哀れさを感じさせるものであった。筋肉が千切れて持ってるだけでも やっとのサーベルを振り上げながら、アドニスに迫っていく。

  「2人とも僕に任せて! てやぁーーっ!」

  アドニスは体勢を低くして右足で踏み込む。サーベルの一閃を軽くかわすと左足を軸足にして、そのままゾンビの腹に強烈な蹴りを喰らわせた。

  「ごぼっ!」

  シベリアンハスキー獣人のたくましい健脚から繰り出された蹴撃はゾンビを壁際に吹き飛ばした。どす黒い血を口から噴き出しながら、ぐったり項垂れる。

  「かわいそうに……シャークネス海賊団の残党かな? ゾンビになったって聞いてはいたけど、どうして……」

  「おい、アドニス。そんなことより早くこの財宝を持ち帰ろうぜ!」

  倒れたゾンビに思いを馳せるアドニスを尻目にチュチュとドルーは財宝に夢中になっていた。

  「もう……わかったよ」

  アドニスは財宝の山からこぼれ落ちていた1枚のコインを拾い上げた。鮫頭の模様が刻まれた純金の金貨を握り締めた瞬間、アドニスの脳内に誰かの声が響いた。

  『やっと来たか……さあ、存分に欲望に溺れろ』

  一瞬、アドニスの意識が遠のく。凶悪な存在に脳を鷲掴みされたような奇妙な感覚。この財宝をここから持ち出しては行けない、アドニスは直感的にそう思う。しかし、財宝を布袋に詰め込む手を止めることはできなかった。

  アドニス達は自覚していなかったが、財宝を見つけてから彼らの目は血走り、口元からは涎を垂らし、股間は常に勃起し先走りを迸らせていた。

  もしこの異変に違和感を覚えていたら、後に起こる悲劇は防げていたのだろうか……その問いに答えられるものは誰もいない。

  ──────

  ────

  ──

  数刻の後、アドニス一行は財宝の山を全て舟に詰め込んでスカルアイランドを後にした。小屋の地下室、取り残された鯱獣人のゾンビ……かつてオルカスと呼ばれていた彼は瞳孔を失った目で床に落ちた1枚の金貨を見つめながら弱々しく呟いた。

  「だめ……だ。その財宝を……使っては……」

  [newpage]

  ノーブルアイランドに帰還した彼らはまさに英雄のように祭り上げられていた。港に舟を着けた彼らを島民一同が取り囲み好奇の目を向ける。

  小さな舟いっぱいに乗せられていた金銀財宝は陽の光を反射する海面よりもキラキラ輝き、見る物を魅了させた。

  チュチュが財宝の山に手を突っ込み宙へ放る。島民達は投げられた財宝に我先にと群がる。

  「へへ、見ろよ。俺達の宝にみんなが群がってるぜ」

  「チュチュやめろ。下品だ」

  ドルーが諌めるとチュチュがつまらなさそうな顔をする。

  「へっ、なんだよ。貧乏なこの島の奴らにとって俺達は英雄だぜ。このくらいのことしたってバチは当たらねぇだろ」

  「そういうこと言っちゃダメだよ、チュチュ。村長、僕らはこの宝物の半分を皆さんに寄付します」

  アドニスの言葉に島民だけでなく、チュチュもドルーも目を丸くした。

  「アドニス、おまえ何を勝手に決めてやがる!?」

  「こんな大金、僕らだけじゃ使い切れないでしょ? それに海賊の略奪で親を失った僕たちを育ててくれた、この島の人達には恩返しをしたいと思ってたんだ。いいでしょ?」

  「それを言われるとな……」

  ドルーは渋々うなずくがチュチュはあからさまな悪態をつく。

  「あーあ、ほんといい子ちゃんのおまえを見てると反吐が出そうだよ。勝手にしやがれ。俺はこの金で飲んで来るよ」

  それだけで数万の価値がある純金の金貨数枚を握り締めてチュチュが酒場へと歩いていく。その後ろ姿を見送りながらアドニスはため息をついた。

  「いいのか、アドニス?」

  彼らの親代わりであるウミガメ獣人の村長が心配そうに声をかける。

  「いいんです、こういう時のチュチュは素直になれないんで。それよりも僕らみたいに海賊のせいで親を亡くした子ども達のために、このお金は使ってください」

  アドニスが金貨を1枚、村長に手渡す。鮫頭が刻まれた金貨を村長が握り締めた瞬間、彼の老いた瞳が妖しく紫色に光ったように見えた。

  「……ありがとう。ありがとう、アドニス。皆の者! 今日は宴じゃ、この島の英雄を祀り上げるための宴をするぞい!」

  村長の発した大号令に島民達が沸き立ち忙しなく動き始める。

  「ちょっと村長、そんなことしなくても……それに僕もドルーもお酒は苦手ですし……」

  下戸であるアドニスにとって宴などありがた迷惑であったが、続く言葉をドルーが制する。

  「まあ、せっかくの好意なんだから甘えようぜ。私はチュチュのことを探してくるが……おまえはどうする、アドニス?」

  「そうだね……宴が始まるのは夜だよね? 長旅で疲れてるし、ちょっと部屋で休むことにするよ」

  そう言ってアドニス達は銘々の方向へ足を進めたが、ふとアドニスは振り返る。

  燦々と輝く太陽の下、海に面した港の広場、あくせく宴の準備を始める優しい島民達、心地よい潮風が毛皮を撫でる……アドニスの大好きだった風景の中に存在する海賊の宝の山はどこか異質な存在のように映ってしまった。

  ──────

  ────

  ──

  「ったくよ、あの甘ちゃんには付いて行けねぇよ」

  港からほど近い酒場の小さなバーでチュチュは早速酔いつぶれていた。大きな道の先まで赤く染めた彼はカウンターの向こうに立つ初老のパンサー獣人のマスターに管を巻いていた。

  「まあまあ、昔馴染なんだからアドニスが優しすぎることは知ってるだろ?」

  「だけどよぉ、あの財宝の半分を島に寄付なんて、正気じゃないぜ」

  そう言ってチュチュはウイスキーの入ったグラスをグッと傾ける。度数の高いロックで飲んでるとは思えない飲み方にマスターは目を丸くした。

  「おいおい、けっこうなペースで飲んでるけど大丈夫か?」

  「ふん、金はいくらでもあるんだ。これで高い酒でも持ってこぃ……ひくっ」

  しゃくりあげながら金貨をマスターに渡すチュチュ。マスターがため息をつきながら金貨を受け取った瞬間だった。

  『コイツを喰え』

  マスターの頭の中でドスの効いた低い声が響いた。突然のことに辺りを見回すが早い時間ということもあり客はチュチュしかいない。

  「あん、どうしたマスター?」

  「い、いや……」

  赤ら顔のチュチュが上目遣い気味にコチラを見てくる。マスターはその姿をどこか艶かしかく感じてしまった。子供の頃から知ってる、ましてや同じ雄である彼のことを性的な目で見始めていることに気づいたマスターは、まるで獲物を目の前に舌なめずりする肉食動物のようにチュチュの体に手を伸ばしていく。

  「んあっ……な、なにを!?」

  瞳に紫色の光りを宿したマスターは、カウンターからずいっと体を乗り出し、噛み付くように自らのマズルをチュチュのマズルへと押し当てていく。

  「ん、んん! ……んぐっんんん」

  口内に脂臭いタバコの強い臭いが塗り込めらていくのを感じた時、チュチュは初老のマスターに口をこじ開けられ舌をねじ込まれていることに気づいた。

  「ンン!? グゥ……! ま、マスターやめろ……!」

  「へへ、生意気なガキが……可愛い反応するじゃないか♡」

  マスターはチュチュの細く軽い体を持ち上げると、そのままカウンター内に引きずり込んでいき、野生のパンサーそのままにチュチュの体にのしかかっていく。

  子供の頃から知っている優しいマスターの凶行に何が起きたかわからないまま再びの口づけを受け入れていくチュチュだったが、次第にアルコールだけではない何かに自分の頭が ぼぅとしていくのを感じた。

  『そのまま体を委ね、堕ちていけ』

  「はぁはぁ♡ やめてくれ、マスター……俺にそんな趣味は……♡」

  「俺にだってねぇよ♡ だけどな、この金貨が俺に言ってるんだ、『オマエを喰え』ってな♡」

  ンチュ♡ ……クチュ♡ グチュ♡

  長い長い口づけ。肉食動物の獣人同士の荒々しく貪るような接吻は正気であったはずのチュチュの心を汚染していく。

  「チュチュ、おまえ高い酒が飲みてぇんだったな……じゃあ、特別な酒を飲ませてやるよ♡」

  そう言い放ち、おもむろに立ち上がると前掛けを外して始めるマスター。ネコ科獣人特有の突起の付いたペニスが凶悪なまでに勃起してチュチュのマズルの前に突きつけられた。

  「咥えろ」

  「なっ……!」

  チュチュは困惑した。それはマスターの行為そのものではなく、何の抵抗もなくそれを咥えてしまった自分に対してであった。

  クチュ……ジュル……クチュ

  ゆっくり歯を立てないようにマズルを前後に動かし、拙く舌を絡めていく。

  「おほぉ♡ 俺の嫁より上手いじゃねぇか♡ ほれ、もっと強く吸えよ……おらっ!」

  ジュポッ! グチュ! クチュ!

  マスターが手を当てながら腰を大きく振れば、口の中のトゲチンポが暴れ回り苦しそうにえづくチュチュ。嬲られるという初めての感覚に困惑しつつも異常な興奮を覚えたチュチュのペニスもまたムクリと顔をもたげていく。

  「ペチョ♡ グリュ♡ チュルルル!」

  「おほぉぉぉぉおおお♡」

  激しく吸い付くような口淫にマスターが立ったまま海老反りのような姿勢になる。体の奥底から溢れる性欲の滾りに我慢ができなくなった彼はチュチュの大きな耳を掴み、ぐいっと自分の股間へと引き付けた。

  当然トゲチンポはチュチュの喉奥へと突き刺さるが、口から離すことは許されなかった。

  「おらよっ! 特別な酒だ。こぼさず飲めよ……♡ グルニャァァァア♡♡」

  ドピュッ♡ ビュルルルルル♡

  ビクビクと口内で跳ねたトゲチンポから熱い迸りが喉奥へ直接注がれていく。しょっぱく、塩辛く、生臭い風味がチュチュの口内いっぱいに広がっていく。決して美味しいと思う訳がないはずだというのに、今のチュチュにはどんな酒にも勝る美酒のように感じられた。

  ゴクン

  喉仏の動きで嚥下したことを確認したマスターは好色そうな笑みを浮かべたままチュチュの口を解放していく。

  「誰彼構わず欲望をぶつけるのが、こんなに気持ちいいことだとはな……さあて、俺はこの金貨を使って、もっと楽しいことをしにいくか……」

  カウンターを後にするマスター。取り残されたチュチュはゆっくりと目を開く。その瞳には紫色の妖しい光が宿っていた。

  『どうやら冒険者共は、この島の島民よりも精神が強いようだが……色欲の味を知ったらこのザマか』

  チュチュの脳内に声が響くと同時に、胸ポケットに入れた金貨もまた妖しい輝きを放つ。

  『……おまえの仲間にも欲望の味を教えてあげな』

  なぜか脳内の声に逆らえず、ふらふらと立ち上がったチュチュは涎を垂らしながら、乾いた欲望を満たすために店を後にするのであった。

  [newpage]

  港に面する広場では着々と宴の準備が進められていた。しかし、それはどこか歪なものであった。

  宴に必要な大量の酒や豪華な食事はどこにも見当たらず、代わりに広場の地面いっぱいを使って赤い六芒星が描かれていた。

  そして、色とりどりの服を着ていたはずの島民達は皆が一様に赤いバンダナを頭に巻き、紺の横縞柄の白いシャツに着替えていた。それはまるで海賊団の……すでに存在しないはずのシャークネス海賊団の船員達が身に纏っていたものと同じ姿であった。

  「この島の奴らはどうしたってんだ?」

  かつてシャークネス海賊団の一員であり、スカルアイランドから命からがら逃げ出し、ノーブルアイランドに辿り着いた蛸獣人ダゴンと烏賊獣人イカリは広場に広がる光景に唖然としていた。

  冒険者がシャークネス海賊団の財宝を持ち帰って来たという噂を聞きつけて、それを見に来た彼らが目にしたのは かつての自分たちと同じ格好をして何かの準備をしている島民達だった。

  これまた同じように赤いバンダナを目深に巻いたウミガメ獣人の村長が財宝を配って材料を買いに行くようを指示していた。

  「おまえら、何をしている?」

  ダゴンが村長に尋ねる。村長は2人の姿を認めると紫色に光る瞳を弓形に歪めながら金貨を2枚差し出した。

  「キャプテン・バルバトス、復活の儀じゃよ」

  「なっ、親分の!?」

  「この金貨は……お、あぉぉ!?」

  ダゴンとイカリが金貨を握った瞬間、聞き馴染んだドスの効いた声が脳に直接響いていき、彼らの瞳にじわりと涙が浮かび、どこか恍惚とした表情へと変わっていく。

  「親分……そうか、あんたはこの日のために……!」

  「こうしちゃいられねぇ。おい、俺達にも服をよこしな」

  彼らもまた島民と同じ服装に着替えると、禍々しい儀式の準備に加わるのであった。

  ──────

  ────

  ──

  一足遅れてバーを訪れたドルーは もぬけの殻になった店内を見て首を傾げた。チュチュがいなかったことよりも入口の鍵も締めずにマスターまでいなくなっていたことが不可解であったが、ひとまずはチュチュを探すため他の酒場も当たってみることにした。

  「おい、早く酒を出せ! 金は、金はいくらでもあるんだ」

  酒場でスタッフに胸ぐらを掴みかからん勢いで凄む狼獣人の手には、先ほどチュチュがばら撒いた財宝の1つが握られていた。

  「全く昼間から堕落的に酒など飲んで……いい気なもんだ」

  酒を飲めない彼やアドニスにとって酒場の喧騒や匂いは好ましいものでなく、早くチュチュを見つけてこの場から去りたいのが正直なところではあった。

  金と酒は人を狂わせる……とはよく言ったものだ。とは言え、狼獣人の鬼気迫る様相に違和感を覚えながらチュチュを探すドルーであったが、どうにも見つからず市場へと足を伸ばす。

  「オヤジ、赤い布と白地に紺の横縞柄の布をくれ。お代はこの金貨で頼む!」

  「酒をありったけ頂戴! 金はいくらでもあるわ」

  宴の準備だろうか島民達があらゆる店で買い出しをしている様子を何度も見かける。店中の品物を買い漁り、ドルー達が持ち帰った財宝で支払いを済ませる彼らの表情からは楽しげな様子は見られず、どこか切迫感すら覚えるものであった。

  耳を澄ませばアチラコチラから姦しい喧騒、怒鳴り声が聞こえてくる。

  「何かおかしいぞ…… 」

  穏やかな気候ゆえに人柄の良い島民が多いノーブルアイランドで、市場といえどここまで荒んだ雰囲気に包まれることなど今まではなかった。

  「まさか……」

  ポケットに入れていた金貨を取り出す。自分達が持ち帰った財宝が何か凶兆をもたらしているのではないか……現実的で理性的な思考を持つドルーでもその直感を一笑に伏すことはできなかった。

  早くチュチュを見つけて、アドニスにも報せなければ……ドルーがそう思った、その時──

  「ドルー……♡」

  背中から呼びかけられ振り向いた先にはチュチュが立っていた。

  「チュチュ、どこに行っていた? 探したぞ……んん?」

  ドルーが文句を言いかけたところで唐突にチュチュに抱きつかれ言葉を失った。チュチュの艷やかな毛並みがドルーの肌に触れれば、じんわりと温まりが伝わってくる。

  「どうした、チュチュ……? きゅ、きゅいっ♡」

  チュチュの抱擁に行動も思考も停止させてしまったドルーであったが、海棲獣人である彼の股間に位置するスリッドに何かが無理やりに詰め込まれていく感覚に普段の彼では決して出さないような嬌声を上げて飛び退いてしまう。

  「私に何をした!?」

  飛び退いた拍子に背中から倒れたドルーが体を起こすと、いつの間にやら履いていたズボンのチャックが開かれており、そこから晒されたスリッドに金貨が2枚差し込まれていた。

  「堅物のあんたにゃ、それぐらいしないとわかりそうになかったからな♡」

  下卑た笑みを浮かべるチュチュは普段の彼とは程遠いものであった。慌ててスリッドから金貨を抜き取ろうと自らの指を入れるが、水かきの付いた手ではうまく取り出せずに逆に奥に入り込んでしまい──

  「きゅううぅぅ♡」

  格納されているペニスが2枚の金貨に擦られて、おもわず力強い喘ぎを口から漏らしてしまう。

  「ギャハハ、おもしれぇな……あんたがそんなに悶えるなんて……しっかりキャプテンの呪いが効いてる証拠だな」

  「はぁはぁ……♡ 呪い……だと♡ きゅっ!? きゅおおおお♡」

  ブブブブブブブブブ♡

  スリッドの奥まで入り込んだ金貨はまるで生命を持ち始めたようにブルブルと震え始める。電動バイブの役割を担った金貨が激しく振動するたびにドルーは甲高い鳴き声を漏らし、その場に立つことすらままならなくなる。

  「次第にあんたにも聞こえてくるはずだぜ……キャプテンの声が……ほら、もう1枚だ……♡」

  「やめ、やめろ……♡ きゅおおおお♡」

  地面に仰向けに倒れるドルーのスリッドからヌルヌルとした分泌液が漏れ始めれば、チュチュは金貨をまた1枚そのスリッドへと近づけていく。

  ヌルリと容易に入ってしまった合計3枚の金貨がスリッド内をかき混ぜていけば、太くも短いドルーの紺色のペニスが勃起した状態でスリッドから顔をもたげていく。

  「あぅ♡ このような場所で……♡ 私はなんと、なんと……はしたない♡」

  大勢の人が集まる市場の通路で痴態を晒していく自らに羞恥心を覚えながらも、周りの人々はそれを気にする様子もなく彼らもまた自らの欲望に突き動かされていた。

  『欲望に従え、そのまま射精しろ』

  脳に響くのはドスの利いた雄の声。その声の主に誘われるようにドルーは3枚の金貨ごと自らの剛直を握り締めていき、そして──

  「きゅぅぅぅうう♡ きゅおおおぉぉぉんんん♡」

  ピューーールルルルル♡

  路上へと自らの精をぶち撒けた。その瞬間、周囲の人々と同じようにドルーの瞳にも紫色の光が宿った。

  『頃合いだな……おまえら全員、港の広場へ集まれ! 儀式を始めるぞ……!』

  再び声が脳内に響く。他の島民にも同じ声が聞こえたのだろうか。あれほど姦しかった喧騒はピタリと止み、一様に全員が広場に向かい始めるのだった。

  [newpage]

  「さあ、宵も更けた……頃合いだな」

  港の広場はすっかり暗闇に包まれていた。目深く被った赤いバンダナと紺の横縞柄の白シャツに身を包んだダゴンとイカリが顔を見合わせる。

  「てめぇら、今日は我らがキャプテン・バルバトスの……シャークネス海賊団の復活の日だ! 気張って行きやがれよ」

  「「「おおおーーーーっっ!!」」」

  雄も雌も、若者も老人も関わらず島民全員がシャークネス海賊団船員の格好をして雄叫びを上げている。彼ら全員の瞳にはどんよりとした紫色の光が灯っていた。

  「さあ、雄どもよ。前へ出ろ」

  イカリのかけ声と共に雄獣人達が六芒星の中心に鎮座する財宝を取り囲むように前に出る。一様に血走った瞳を財宝に向けながら口元からは涎をダラダラと垂れ流している姿は欲望に塗れたケダモノそのものであった。その中にはチュチュやドルーの姿も見られた。

  「これより、親分の……いや、キャプテン・バルバトスの復活の儀を執り行う!」

  「この財宝には彼の魂が込められている。そこにおまえらの欲望の汁をぶっかけることで、悪魔との契約が完了してキャプテン・バルバトスは受肉するという算段だ」

  荒唐無稽な事を語るダゴンとイカリの顔は、しかし真剣そのものであった。村長から手渡された金貨を握り締めた時に脳に直接 流れ込んできたキャプテン・バルバトスの声が彼らにその指示を出したのだ。

  キャプテン・バルバトスは自らが海兵に捕まる間際に悪魔バルバトスに願い、自らの魂を財宝に宿した。

  それは呪いとなり、彼を裏切ったオルカスをゾンビへと変えた。

  そして、自らの復活のために財宝を求める冒険者達を待ち、ついに儀式を完成させようと言うのだ。

  俄には信じ難い話であるが、ダゴンとイカリは信じていた。

  シャークネス海賊団船員にとって船長の命令は絶対なのだから──

  「「さあ、新たなシャークネス海賊団の子分達よ。親分のために溜まりに溜まった欲望を吐き出すがいい!」」

  2人が同時に言い放つと同時に島民達は半ズボンを降ろして、各々が持つチンポを晒して一斉に扱き始めた。

  「はぁはぁ……こんなのチンチン……ぎもぢいぃぃ。なんか変だよぉぉ。でも、気持ちいいよぉぉ♡」

  陰毛が生え始め精通を迎えたばかりの柴犬獣人の少年も、

  「うっうぅ……こんなに滾ったのは何十年ぶりじゃろうか♡」

  現役時代はとうに過ぎてすっかり生気を失っていたウミガメ獣人も、

  「あふあふ……早く……♡ キャプテン・バルバトスを……早く♡ い、イきてぇぇ♡」

  「うあぁぁ、私はこんな……♡ こんな自堕落な……自慰に……♡ あ、あぁ、オナ、オナニー気持ち……ブルルルル♡」

  苦難を乗り越えてこの島に戻ってきた冒険者達すらも、ただひたすらに自らの性器を扱き続け、荒い息や嘆声、嬌声を漏らしていく。

  「はぁ……はぁ……俺達もイクぞ!」

  「おうよ、親分の復活を盛大に祝おうぜ!」

  発情期の雄が放つムンとした熱気が広場を満たしていく中で、ダゴンとイカリもまたその輪の中へと加わり、いきり立った剛直を粘液まみれの触手でヌラヌラと扱き上げていく。

  ヌチュ……ネチョ……クチュ……! ネチョ!

  粘っこい淫らな音が次第に大きくなる。その音は周囲の雌獣人達の理性も狂わせていき、雌雄問わずにマスターベーションに耽る様は淫獄としか形容ができない絵図であった。そして──

  「あぁぁあ♡ ボク、おチンチン……! なんか変……わおぉぉぉんん♡ チンチン汁でちゃうぅぅぅ♡」

  「うほっ♡ 何十年ぶりの……射精じゃぁぁあぁあああ……!」

  「ひぃぃぐうぅぅ♡ イッちゃ……イグよぉぉぉ♡」

  「ダメだ……もう我慢が……♡ あ、ペニスから精液が……チンポォォ、おかしぐなりゅーーーー♡♡」

  ドビュル!ビュルルルルルルルルルルル!ビュッビュルルドビュル!ビュルルルン!

  全員が一斉に……寸分違わないタイミングで射精に至り、妖しい輝きを放つ財宝を各々の白い欲望が汚していく。その時、皆を囲む六芒星が、ぼぅ……と紅く輝き出し魔法陣の内側から白い煙が湧き出して財宝を包んでいく。

  欲望を吐き出した島民達が呆けた様子で その光景を見ている中でダゴンとイカリはその煙の中を覗き込むように目を凝らしす。

  儀式の終わりを告げるように一陣の生ぬるい潮風が煙を払う。

  そこにあった100億の財宝はなくなり、代わりに彼らにとって100億以上の価値ある存在──死んだはずのキャプテン・バルバトスが威風堂々たる様で仁王立ちしていた。

  「クク、ククク! ついに……この日を幾星霜待ったことか……これが久方ぶりの肉体か……」

  海賊船長の衣装は身に纏っておらずとも傷だらけの体から放たれる禍々しい覇気は、まごうことなき本人であることを物語っていた。

  かつての肉体と寸分変わらない──悪魔との契約により魂の籠もった財宝と雄の欲望まみれの精液を混ざり合ったことで形作られた──新たな肉体を確かめるように手足を動かした彼は広場中に響き渡る声で笑い出した。

  「ガハハハ! 全て、全て思い通りだ……俺様はついに蘇ったのだ……跪け、新たな子分どもよ! 今からこの島は俺様のシャークネス海賊団の…再起の旗揚げの地となるのだ!」

  「「「「「ヨーーホーーー!!」」」」」

  シャークネス海賊団の掟……船長の命令は絶対である──この掟が金貨を通じて脳に直接刻まれたノーブルアイランドの島民達……今となってはシャークネス海賊団の船員達はその場に跪き海賊船員としての かけ声を上げる。

  「親分、10年間……待ちわびてやした!」

  「親分なら絶対戻ってきてくれると信じて、この島の裏手に海賊船を用意しておりやす!」

  「おお、ダゴンにイカリか……久しいなぁ! なんと船を用意してくれているとは、さすがは俺様の子分よ!」

  すかさずキャプテン・バルバトスの前に出たダゴンとイカリは感涙の涙を流しながらひれ伏す。満足げな表情を浮かべたキャプテン・バルバトスであったが、すぐさま周りで跪く子分達へ目線を向ける。

  「しかし、まずは1番の功労者どもに礼をせんといけねぇな! 財宝をこの島に運んだ冒険者どもよ、前に出ろ……」

  「「へい! キャプテン!」」

  人に従うのが大嫌いなチュチュが、普段はボソボソと喋るドルーが、今までなら決してしないような媚びへつらうような大きな声で返事をしながら慌てて主の前に飛び出す。

  「1人足りねぇな……いや、ちょうど来やがったな?」

  3人組の冒険者達の1人がいないことを訝しんだキャプテン・バルバトスは子分達の輪の向こうへと目をやり邪悪な笑みを浮かべた。

  ──────

  ────

  ──

  「いけない寝過ごしちゃった……! もー誰か起こしてくれればいいのにさ」

  アドニスが目を覚ました時、外はすっかり暗くなっていた。ブツブツと文句を言いながら慌てて港の広場に向かおうとした彼は、しかしそこで異様な光景を目にすることになった。

  島民達は広場の中央に向けて、何かを崇めるように跪いていた。その姿は皆が赤いバンダナに、白地に紺の横縞が入ったTシャツ……まるで海賊の船員の様な姿に変わっていた。

  何より広場の中央に運んだはずの財宝はなくなっており、そこには見たこともない巨体の鮫獣人が裸体を晒して立っていた。

  『なんで、みんな海賊みたいな格好してるんだろ? それにあの鮫獣人……どこかで見たことが……』

  「ククク、遅刻だぞ……この宴の主賓アドニスよ!」

  島民達が形づくる輪の外から様子をうかがっていたアドニスだったが、離れた距離にいるにも関わらず、まるですぐ近くにいるように錯覚させる大声で鮫獣人から声をかけられ思わず総毛立つ。

  「こっちへ来い、アドニス! お仲間のチュチュも、ドルーもお待ちかねだぞ」

  その声に反応して島民達が道を開ける。訝しむような表情を浮かべながら、アドニスは広場の中央に向けて歩みを進める。鮫獣人に近づいて初めて気づいたが、その足元にはチュチュとドルーが海賊船員の格好をして床に頭を擦り付けひれ伏す姿があった。

  「チュチュ! ドルー! どうしてそんな姿を……?」

  自分と同様に海賊に親を殺された彼らが海賊船員の格好など受け入れるはずはない。この島に住む人々なら同じように思い、海賊の真似事などするはずがないのだ。原因の一端が間違いなく、この鮫獣人であることは明白であった。

  「君が島のみんなをこんな風にしたの!?」

  「こいつらをこんな風にしたのは俺様だが……その原因の一端を作ったのはおまえだぞ、アドニス」

  「僕が……?」

  思わぬ回答に虚を突かれるアドニスが青い瞳を丸くする。鮫獣人は腕組みをしながら語り始めた。

  「そもそもはおまえら冒険者が俺様の財宝を奪い、この島に運んだことが始まりだ。全くこんな小さな島に運びおって……大都市のある島であれば、船員ももっと集まっただろうに……まあ、あの憎きオルカスをのした蹴りは見事なものであったからな。それに免じて、おまえには……」

  「 ちょっと待って……! 『俺様の財宝』って?」

  引っかかる言葉だった。そんなはずはないのだ……だって、彼は10年も前に死んだはずなのだから……アドニスが青ざめた表情で鮫獣人に問いかけると鮫獣人は不敵な笑みを浮かべて答えた。

  「そうだ……俺様の財宝だ! 俺様はキャプテン・バルバトス! 悪魔との契約を履行し、地獄より蘇ったのだ!」

  「キャプテン・バルバトス……」

  その名を聞いたアドニスは思わず尻餅を着いてしまった。その名は海賊嫌いな彼にとって憎しみと恐怖の対象であった。

  本人を目の前にして直に感じる圧倒的な恐怖に足が竦んでしまったのだ。

  「すまんな、アドニス」

  「おまえも諦めてキャプテンに従え」

  その隙を突くようにドルーとチュチュがアドニスの体を両脇から抑えんでいく。

  3人の中では1番の馬力を持つアドニスであったが、さすがに2人がかりで来られては手も足も出ない。

  「2人とも何するんだよ……!? こいつに何かされちゃったんでしょ? 正気に戻ってよ……!」

  「無駄だ! 俺様の魂が籠もった金貨を持った者は欲望が増幅され、俺様に忠実に従うようになる呪いを込めた」

  「そんな……あの財宝が?」

  財宝を手にした時に一瞬だけ脳内に響いた声と今目の前にいるキャプテン・バルバトスの声が完全に一致する。あの財宝こそが彼により仕組まれた罠であったのだ。

  「おまえは呪いに耐性があるのか、どうにも効きが悪いが……どれ、俺様が直々にシャークネス海賊団の掟を教え込んでやろう」

  かつての仲間に抑え込まれて身動きが取れないまま、キャプテン・バルバトスがアドニスの服に手をかける。ミチミチと生地が音を立てて引き裂かれていく。

  「俺様の復活祭に遅れてきた罰だ。シャークネス海賊団の掟『ひとつ、時間厳守は絶対』 ふん!」

  アドニスの服が引きちぎられていく。皮のベルトまで力ずくで引き抜かれれば、ズボンもパンツも降ろされて黒と白の毛皮、引き締まった肉体、強烈な足技を繰り出す健脚、その付け根には……申し訳なく縮こまった犬チンチンが広場の中央で晒されていく。

  「クハハ、そんな太い足だというのにペニスはガキのようだな!」

  「や、やめてよ! なんのつもり!? ワォん!?」

  両腕をドルーとチュチュに取られているために隠すこともできずに赤面するアドニスの体にキャプテン・アドニスの巨体が馬乗りになる。

  重みに耐えかねて苦悶の声を上げるアドニスのマズルを水かきの付いたキャプテン・バルバトスの手がなで上げる。その手からは強烈な精液の匂いが感じ取れた。

  「がっ……! ぐぁっ……! く、くさい……」

  「精液を媒介に形成した体だ…どうだ? 雄くせぇだろぉ? グヘヘ、今からこの体で直々におまえに呪いを刻み込んでやろう」

  そう言ってキャプテン・バルバトスが力むと股間に位置するスリッドから凶悪なまでに硬くなった鋭いペニスが飛び出してきた。

  「な、何それ……ドルーのと全然違う……」

  同じ海棲獣人のドルーがスリッドに格納していたペニスの形や大きさと全く違うモノを目にして驚くアドニスだったが、その表情を見てキャプテン・バルバトスはため息をつく。

  「はぁ……これが俺様の本気だと思ってるのか? 舐められたもんだな……シャァァ!」

  次に目にする光景にアドニスは自分の目を疑うことになった。気合を込めたキャプテン・バルバトスのスリッドから全く同じ大きさの鋭利なペニスがもう1本飛び出してきたのだ。

  「へへ、これがヘミペニスって奴だ……さあ、アドニス。おまえにシャークネス海賊団の証を刻んでやるよ!」

  「い、いやだ! やめてよ!」

  唯一自由な脚を必死でバタバタさせるアドニスだったが、そんな抵抗はキャプテン・バルバトスにとっては児戯に等しかった。アドニスの足首を掴むとぐいっと大股に開かせて、その間に巨大を押し込んでいく。

  「 いいか、アドニス。この俺様のヘミペニスを受け入れたら貴様はシャークネス海賊団の一員だ……!」

  「誰が、海賊なんかになるもんか……痛っ!」

  キャプテン・シャークネスが愛撫代わりにと大きな頭をアドニスの足へと擦り付ければ、まるでヤスリで肌を削られたような痛みが走り、おもわず体を跳ねさせる。

  「おっと、鮫肌は[[rb:やわ > ・・]]なおまえには刺激的過ぎたか? そんなに力を入れられたら入口も硬くなっちまうがよ……おい! 景気づけにアレ持って来い」

  呼びつけられた村長がノロノロと動きながらビール瓶を1本持ってくる。奪い取るように手に取ったビール瓶を一息で口に含んだキャプテン・バルバトスはそのまま自らのマズルをアドニスのマズルへと口づけて口移しでビールを飲ましていく。

  じゅる……ぐちゅっ……

  否応なしに注がれる大量のアルコールが喉を通る度に下戸であるアドニスの顔が赤くなっていく。

  「んくっ……! んぐっ……ごくっ」

  「ぷはっ! 飲んだか、アドニス? 溢すんじゃねーぞ、シャークネス海賊団の掟『ふたつ、船長からの盃は絶対』だ」

  元々[[rb:下戸 > ゲコ]]であるアドニスにとって、このわずかなアルコール摂取ですら致命的であった。頭がぼーっとして全身に力が入らなくなる。

  「いい感じに力が抜けてきたじゃねぇか。よし、そろそろぶち込んでやるか。おまえら離していいぞ」

  「「へい、キャプテン!」」

  すっかり酔っ払ってしまったアドニスはドルーとチュチュからの拘束が解けても、逃げる判断も下せずに呆けるしかなかった。

  「ぐるる……」

  キャプテン・バルバトスの巨体にがっしりとホールドされたアドニスは鮫肌のざらりとした感触に包まれながらも小さく呻くことしかできない。

  「よーし、まずは1本……いっとくか!」

  十分に解されていないはずのアドニスの肛門へとヘミペニスの1本を無理矢理に押し込んでいけばアドニスが声にならない悲鳴を上げる。そして──

  バチン!

  キャプテン・バルバトスの突き出た腹が相対的に小さく見えるアドニスの体を打ちつける音が辺りに響いた。

  「わぅ……! がぅ…… うぅぅうう!」

  初めて肛門で受け入れる雄ペニスに強烈な痛みを覚えながらも耐えることしかできないアドニス。同族の犬種ではなく鮫のペニスの尖った先端はアドニスの直腸を突き破らんとする勢いで挿入されていく。

  「ヒヒ、ヒヒヒヒヒ! こりゃいいな、久方ぶりの雄マンコの感覚……こりゃ堪らねぇぜぇぇぇ!」

  ビチン! バチン! グチュ!

  さぞ気持ちいいのだろう、キャプテン・バルバトスは尾鰭をご機嫌そうに振りながら太い腰をガシガシと動き、アドニスの奥へ奥へと入り込んでいく。

  「ワン! ワォン! うぅぅぅぅううう!」

  「1本じゃ物足りなくなってきたか、盛りの付いた雌犬がよぉ……! もうちょっと解したら……いよいよ本番だぜ」

  グジョ……♡ クチュ……♡ グチュゥウ♡

  「クゥゥン♡ ガルルゥゥウウ♡ あぐっ……うぅぅ♡」

  「シャァァァ! オラぁぁああ!」

  アドニスの肛門をかき混ぜる淫らな水音とアドニスの嬌声、そしてキャプテン・バルバトスの怒気を孕んだようなかけ声が広場に響く。

  「オラ、アドニス! 早くキャプテンに忠誠を誓えよ!」

  「アドニス、シャークネス海賊団は君を歓迎する。早く忠誠を誓うんだ」

  かつての仲間達はアドニスが犯されるのをヤジを飛ばしながら見ていた。彼らの股間もまたぼってりと膨らんでおり、この異常な光景に興奮しているのが見て取れた。

  「はぁ♡ はぁ♡ いやだ、僕は……海賊なんかに……」

  せめてもの抵抗、アドニスは涙を浮かべながらも自らの心が堕ちないよう歯を食いしばった。と、キャプテン・バルバトスの動きが止まる。

  「よく耐えてるなぁ、アドニス……だがな、そろそろおまえには最後通牒をくれてやらないとなぁ」

  そう言ったキャプテン・バルバトスはヌルリと1本のペニスを抜いた後、もう1本と併せて2本ごと握り締めるとアドニスの解れた肛門に宛てがい腰を前に押し出していく。

  「あぐっ! いやぁ……ンンン───♡♡」

  グチュグチュ♡ ニュル♡ グチュン!

  粘液にまみれた2本分のペニスをすんなりと受け入れたアドニスが痛みと同時に感じた快感に耐えるためには、ザラザラとした鮫肌の背中に腕を回してしがみつくしかなかった。

  「素直になってきたなぁ、アドニス♡ さあ、最後の掟を教えるぞ……『みっつ、船長の命令は絶対』……復唱しろ」

  「はぁ、はぁ♡ ワォォン♡ ウゥゥ……ワン♡ ワン♡」

  ジョリジョリ!

  「キャイン! キャイン!」

  快楽に頭をやられたように犬の鳴き声を上げるだけのアドニスを躾けるように腹の鮫肌を擦り付けて痛みを与えていく。

  「駄犬がよ……もう一度言うぞ、シャークネス海賊団の掟『みっつ、船長の命令は絶対』」

  「あぅ、わぉぉん……♡ みっつ、……船長の……命令は……ぜっ、絶対……ですぅぅ♡ ワォォン♡」

  バチン! バチン! グチョン! グチョン!

  復唱すれば ご褒美と言わんばかりに腰の振りを早めていく。1本の鮫ペニスの先端は直腸を、もう1本が前立腺を的確に突いていきアドニスの新たな快感の扉を開こうとしていた。

  「さあ、そろそろフィナーレだ♡ はぁ……ぐぅあぁ! シャァァァ! いいか、俺様の欲望を腹に受けたら……♡ おまえは俺様の子分だ……いいなぁ!?♡」

  「わん♡ わん♡ はぃぃい、キャ、キャプテン……♡」

  キャプテン・バルバトスの声に余裕がなくなり、腰の動きがさらに早くなっていく。アドニスは自らも腰を振り、自分の最奥でキャプテン・バルバトスを受け入れようとする。そして──

  「おらぁぁぁぁああああ!! イクぞぉぉおお! …………シャァァァァァァク!!!」

  ドビュ……ビュルルルルルルル!!! ビューーーーーールルル! ドクドク♡ ドロドロロロロ♡

  キャプテン・バルバトスの叫びの数秒の後、犬の遠吠えだけが響き暗い海へと消えていった……

  この日、名実ともキャプテン・バルバトス及びシャークネス海賊団は復活した。

  [newpage]

  『キャプテン・バルバトス蘇る!』

  『シャークネス海賊団、復活! ノーブルアイランド周辺の島々で頻発する略奪行為』

  このような見出しの新聞が発刊されるまでに時間はかからなかった。

  新たなシャークネス海賊団の本拠地となったノーブルアイランドを中心として行われた彼らの悪行は瞬く間に世界中に広まった。

  絞首台でキャプテン・バルバトスの亡骸を確認した海軍は、それが悪魔の所業であるなどとは露知らず蘇った彼を再び拿捕して処刑するために十数隻の軍艦をノーブルアイランドへと向かわせた。

  「キャプテン、来ましたぜ! 海軍の奴らだ」

  ノーブルアイランドの港にて、新生シャークネス海賊団の砲手・チュチュが大きな耳を立てながら双眼鏡を覗きながら船長に報告をする。

  「この潮の流れと天候からすると……2時間後には、この島は射程内に入るでしょう」

  海から顔を出しながら報告するのは新生シャークネス海賊団の航海士・ドルーだ。彼らの切羽詰まった報告を受けながらもキャプテン・バルバトスは不敵な笑みを浮かべた。

  「しゃらくせえ……! 子分どもにありったけの大砲を用意させろ、迎え撃ってやるぜ!」

  「へい、親分!野郎ども、海戦の準備だ!」

  水夫長のダゴンがかつての島民達に命令を伝える。しかし、それでは物量に劣るシャークネス海賊団がジリ貧になることは明白であった。キャプテン・バルバトスは勝ち筋を見つけるために思考を巡らせる。

  「よし、島に注意を引き付けてる間にバルバトス号で奴らの後ろに回り攻撃を仕掛ける。その役目は……」

  「キャプテン、僕に任せてください!」

  停泊している海賊船バルバトス号にすでに乗り込んでいる誰かが叫ぶ声が聞こえる。キャプテン・バルバトスは声の主の方へ顔を向け口元をニヤリと歪ませた。

  「ほう。おまえが行ってくれるか、アドニス副船長?」

  「へい! 僕と操舵手のイカリさん、それにドルーとチュチュで海兵の奴らに挟撃を仕掛け奴らを皆殺しにします!」

  まっすぐな瞳、優しい声ながらも物騒な言葉を言い放つアドニスはシャークネス海賊団の船員と同じ姿をしていた。

  あの日、受肉したばかりのキャプテン・バルバトスの濃厚な[[rb:精液 > 呪い]]を体内に受け入れたアドニスの精神は穢され尽くし、誰よりも海賊を憎んでいた彼は、誰よりも船長に従順な存在へと心も体も変えられてしまった。

  今や彼はキャプテン・バルバトスの命令でどんな残虐な行為も行う新生シャークネス海賊団の副船長へ堕ちていた。

  真面目で温厚な姿勢はそのままであるが、忠誠の証として体中にシャークネス海賊団のタトゥーを入れたアドニスに かつての面影は残っていない。

  「期待してるぞ、アドニス! 海兵どもに……いや、世界中に……新生シャークネス海賊団の力を見せつけてやろうぜ!」

  「ヨーーホーー!!!」

  犬の遠吠えのように海賊としてのかけ声を上げるアドニスの気持ちは高揚しており、そのふさふさとした尻尾を一生懸命に振り続けるのであった。

  The End