【N番煎じネタ】オリエンタル王コテツ(始まりと小話のみ)

  シュテルンビルト大陸には、七つの国が存在している。

  タイタンインダストリー共和国

  ヘリオスエナジー公国

  オデュッセウスコミュニケーション民国

  ヘリペリデスファイナンス連邦

  クロノスフーズ王国

  ポセイドンライン市国

  そして、アポロンメディア帝国

  アポロンメディア帝国摂政アルバート・マーベリックが第一後継者のバーナビー・ブルックスJr.に神妙な面持ちで話しかける。

  「バーナビー、心して聞いて欲しい」

  「何ですか、マーベリックさん」

  アポロンメディア帝国はブルックス王家のものである。二十年前バーナビー・ブルックス一世が妻エミリーと共に暗殺されているので、本来はバーナビー・ブルックスjr.が帝王バーナビー・ブルックス二世を名乗るべきなのだが、アポロンメディア帝国帝王となるためには既婚であることが絶対の条件であった。そのため、未婚のバーナビーは未だJr.であり、バーナビーが結婚するまでという約束で、事実上一世の親友のアルバート・マーベリックが摂政となり、帝国を動かしていた。

  「非常に残念なことなのだが……君と結婚できる女性がいない」

  マーベリックの言葉があまりに衝撃すぎてバーナビーの思考が止まる。

  「正確には君の身分に見合った女性が、現在このシュテルンビルト大陸に存在しないと言うことだ」

  マーベリックが告げた恐ろしい事実にバーナビーは停止しかけている脳を必死に動かして、現在のシュテルンビルト大陸の状況を思い出す。

  アポロンメディア帝国後継者のバーナビーと釣り合う身分と言えば、自ずと自国の有力貴族か他国の王家、またはそれに準じた立場のものの娘となる。

  「タイタンインダストリー共和国の大統領ライル氏の娘がちょうどいいと言っていませんでしたか?」

  タイタンインダストリー共和国……名の通り共和国であるため、選挙によってTOPは入れ替わってしまうが、現大統領であるライル氏は五期連続の約二十年間、タイタンインダストリーの大統領を務めている。

  やり手という訳ではないが、実直な性格と有言実行する行動力が国民に慕われ、彼以外のものが大統領になることはほぼないだろうと噂されている逸材だった。

  当然、その家族にもネームバリューがあり、それなりの教育を受けていることが予想されているので、彼の一人娘ならば申し分ないと帝国の有力貴族たちも納得していた。大統領制なので、一人娘とはいえ跡を継ぐことはないだろうというのも大きな理由の一つだった。

  「彼女が駄目ならば、オデュッセウスコミュニケーション民国元首の養女は?」

  元首――やはり国民が決めるためその地位は確立されているわけではないが、現元首は過去何人か元首を排出したことのある家系であり、古くは王族の血を引いていると伝えられている。残念なことに現元首には子どもがいないため、分家の子を養女同然に可愛がっている。

  「残念だが、彼女たちは既に嫁いでいる。いや、ある国の後宮にいると言った方が良い」

  「後宮……?」

  「そうだ。このシュテルンビルト大陸より船で二日ほどの場所にあるオリエンタル王国。彼女たちがいるのは、その国だよ、バーナビー」

  「オリエンタル王国!? あの極悪非道な?」

  バーナビーは息を呑む。

  オリエンタル王国――彼の国については、いい噂を聞くことはない。

  シュテルンビルトでは悪の代名詞、悪魔の国とも言われることが多い。

  特に現国王のコテツは、国王になるために父王を暗殺し、兄王子を放逐したことを始め、黒い噂が後を絶たない。

  「それは……人質、ということですか?」

  「恐らくは……」

  マーベリックが言葉を濁す。

  だが、意を決したのか、バーナビーにはっきりと告げる。

  「だが君は結婚しなければ帝位を継げない」

  「はい」

  「だが身分の釣り合わないものを正妃に迎えることも……難しいだろう」

  現在のアポロンメディアは帝王不在ということもあり、様々な不正が横行し、暗殺なども平然と行われている。

  こんな状態で身分のないものを正妃に迎えればどうなるか分からない。だが他国の身分のある者の娘ならば、それ自体が抑止力になり、下手に手を出すことはできない。下手に手を出して、他国と戦争ともなれば自滅するのは眼に見えている。

  「ならばバーナビー……オリエンタル王国の姫を娶ってはどうだろう?」

  「え? あの、国からですか?」

  「そうだ。もしくは彼の国からタイタンインダストリー大統領の娘かオデュッセウスコミュニケーション民国元首の養女を救出するしかないだろう」

  マーベリックの提案にバーナビーはしばし考え込んだが、直ぐに結論を出した。

  「では……オリエンタル王国に行ってきます。オリエンタル王の娘を娶るにしても、タイタンインダストリー大統領の娘やオデュッセウスコミュニケーション民国元首の養女を助け出すにしても、実際にこの眼で見ないことには何とも言えませんから」

  「バーナビー……」

  マーベリックが昔を懐かしむように目を細めてバーナビーを見つめる。

  「君は父親に似ている……頑固なところがそっくりだ。だが、だからこそ、君は一度言ったことを取り消さないだろう。わかった。オリエンタル王国には事前に連絡をしておこう。君に手を出せば、アポロンメディア帝国を敵に回す旨をしっかりと伝えておこう」

  「マーベリックさん……ありがとうございます」

  こうしてバーナビーは悪逆非道な王・コテツのいるオリエンタル王国に赴くのであった。

  [newpage]

  ――シュテルンビルト大陸から船で二日ほどかかる位置に、その島国はあった。

  ――小さいながらも特産品に特化しているため、シュテルンビルト大陸のどの国も一目置く国――オリエンタル王国。

  ――現在の王は悪逆非道。

  「アクギャクヒドウ? どういう意味? え? 残酷で人の道を踏み外し、人を人とも思わない? すっげぇひでぇ奴だな、そいつ。どこの王様だよ? ……へ? ええええええええええええええええええええええ、俺ぇぇぇぇぇぇ!?」

  ――父王を暗殺し、その遺体すら荼毘にふさなかった。

  「親父? さぁ? どっかで海賊やってんじゃね? 海賊王になるって飛び出していったからさ。流石にまじぃだろ、王様が家出なんてさ。だから航海中の行方不明ってことにしたの。行方不明だからふら~っと帰ってきても問題ねぇだろ?」

  ――理由なく兄王子を追放した。

  「兄貴? 港にいただろ? 酒樽転がしてた強面の兄ちゃん。それが俺の兄貴。親父が飛び出てっちまったから、アニキも切れてさぁ。あん時は大変だったぜ。『父さんが好き勝手にやるなら、俺だって昔からやりたかった酒場をするからなっ! コテツ、お前が王様やれっ! 兄貴命令だ』ってな。ひでぇだろ?」

  ――妻を殺した犯人を惨殺し、その親兄弟、親戚までも根絶やしにした。

  「奥さんの死因? 病死だぜ。五年前くれぇに流行り病が流行ってさ。ウィルスだっけ? なんか異種だか変種だかで抗体が効かなかったんだよ。今じゃ、ちゃんとに直ぐに対処できるようにしたけど、あん時はさ……あぁ、今はもう変種だろうとなんだろうとイチコロだぜ」

  ――娘を溺愛のあまり客人の目に触れさせない。

  「楓? 楓なら学校だぜ。へ? 家庭教師? うちビンボーだからそんな金ねェの」

  ――タイタンインダストリー共和国の大統領の娘を娶り……

  「はぁ? 何言ってんのよ。歌手になる夢をお父さんが反対してるのが悪いんじゃないの。あいつ、夢をあきらめなくていい方法があるとか言ってくれたのよ。ちゃんとに歌手になる手伝いしてくれるし……まさか後宮入りだとは思わなかったけど……形だけなのよ……あいつ、私のことなんて何とも……」

  ――オデュッセウスコミュニケーション民国の養女を連れ去り……

  「え? なんでこの国にいるのかって? だって珍しい食べ物がたくさんあるんだよ。全部食べてから帰んないと」

  ――クロノスフーズ王国の勘当された王子を側近にし……

  「俺の親父とあいつの親父が親しかったんだがな……あいつの親父にあいつとあっちこっちに連れまわされて一年のうち、自分の国にいるより、他国にいることの方が多かったんだ」

  「その結果『そんなにオリエンタルの親子がいいなら、永久就職しろっ!』って追い出されたんだよな」

  「え、永久就職ぅぅぅぅ!?」

  ――常に中立のポセイドンライン市国ですら彼の国を警戒し……

  「ん? オリエンタル王? あぁそうだねぇ。彼を一言で言うなら(人を)落すことにかけては地上最強だぞ★」

  変換後「ん? オリエンタル王? あぁそうだねぇ。彼を一言で言うなら(国を)落すことにかけては地上最凶だ」

  ――ヘリペリデスファイナンス連邦の大統領の息子を留学させ……

  「オリエンタルっ! ビバ・異文化っ! なんで短期留学しかできなんでしょう? ぼ、僕、この国に一生住みたいのにっ!」

  ――ヘリオスエナジー公国の公主自ら交渉に赴かせる。

  「ねぇ、タイガーちゃん。今日こそいいお返事頂戴」

  「俺はいいんだけどよぉ」

  「お、お前っ! 俺のこと売る気か!? 俺は絶対に勘弁だからな」

  「だってよ」

  「うんもぉ。牛ちゃんったらいけずぅ」

  「お前もよく来るよなぁ……暇なのか?」

  「まさかっ。けど、牛ちゃんに会うためなら時間を作るわよ」

  「あ、そ」

  「うぉおおおおおおおおおおおおお」

  [newpage]

  「お父さんっ!」

  「ん? なんだ、楓ぇ」

  「決算が間違ってるっ! どうして小学生の問題間違えるの!?」

  「へ?」

  「すまねぇなぁ、コテツ。お嬢ちゃんが突然今までの書類見せろって乗り込んできたな」

  「ベンさんのせいじゃありませんよ」

  「もうもうもうっ! お父さんが簡単な計算間違えるって噂本当だったんだね! すっごく恥ずかしかったんだからね」

  「へ? か、楓?」

  「小学生の問題、完璧にできるまで近寄らないで、ヘンタイっ」

  「ちょっ! 折角、アポロンメディアから来る兎ちゃんを楓と迎えに行こうと思ったのに……」

  「え? 兎?」

  「そうそう。アポロンメディアがわざわざ送ってくれるんだから多分希少種だぜ」

  「それって……」

  「珍しいってこと」

  「行くっ!」

  こうして親子二人で兎ことバーナビーを港まで迎えに行くのだが……虎徹の勘違いは、アポロンメディアの使者から渡された手紙にお茶を零したことにある。

  おしまい