[chapter:パーティーへのお誘い]
時は2016年12月22日、場所はケモノ界の埼玉県さいたま市[[rb:大上区 > おおかみく]]。
そこに建つケモノ小学校埼玉校では、終業式が開かれた。
式後の4年1組では、児童たちが通知表を覗きながら様々な表情を見せている。
シマリスの[[rb:栗田 永雄 > くりた ながお]]くんとキタキツネの[[rb:稲荷山 紺助 > いなりやま こんすけ]]くん(共に太っている)は、割と良い成績だった。評価欄には3と4が並んでいる。
「良かった…安心したよ。」
「ぼくもだよ。冬休みはたくさん遊ぼうね!」
2学期最終日のため、児童は午前中で下校する。
「さあ、帰ったらいっぱい遊ぶぞ!」
「何して遊ぼうか?」
栗田くんと稲荷山くんが話していると、背後から声をかけられた。
「あの、あなた方にお話がありますの…」
声の主はスマートで上品なホッキョクギツネの女の子──4年2組の[[rb:雪見 > ゆきみ]]カトリーヌ[[rb:理沙 > りさ]]ちゃん。
彼女は日本とフランスのハーフで、町一番の大金持ちだ。
「理沙ちゃん、どうしたの?」
「あさっての夕方5時から、私の家でクリスマスパーティーを開きますの。良かったら来てくださらない?持ち物は特にないですわよ。」
「クリスマスパーティーか。もちろん行くよ!」
「じゃあぼくも!稲荷山くん、あさってが楽しみだね!」
帰宅した稲荷山くんは、母親の[[rb:常子 > つねこ]]に事情を説明した。
「まあ、楽しそうね。行っていいわよ。」
「やった!」
そこへ妹の[[rb:万梨阿 > まりあ]]ちゃん(3年生)が来た。
「ねえねえ、何の話?」
彼はまた説明した。
「えっ、パーティー?私も行きたい!」
「パーティーは多い方が楽しいから、万梨阿も一緒に行こう。」
「やったー!楽しみー!」
喜ぶ万梨阿ちゃんを見ながら、稲荷山くんは部屋に戻った。
(万梨阿、嬉しそうだったな…
さてと、宿題宿題。パーティーまでに終わらせるぞ!)
それから、計算ドリルを始めた。
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[chapter:パーティーに行こう!]
12月24日の昼、稲荷山くんは書き初め以外の宿題を終わらせた。
また、この日の昼食は通常より少なめだった。母親はパーティーで大量の料理が出る事を計算に入れていた。
「万梨阿、もう行こう。」
「パーティー楽しみ!」
16時40分、稲荷山兄妹は家を出た。
「お母さん、行ってきます!」
「行ってらっしゃい。楽しんでね!」
住宅街には、イルミネーションの飾られた家が散見される。
「お兄ちゃん、綺麗だね!夢の中にいるみたい!」
「イルミネーションって幻想的だよな、万梨阿。」
1分も歩かないうちに栗田くんと合流した。彼は隣のブロックに住んでいるため、すぐに会う事ができる。
「栗田くん、今日は楽しもうね!」
「ごちそう楽しみだね!」
「ぼくも楽しみだよ。理沙ちゃんの家では豪華な料理がたくさん食べられそうだね!」
「理沙ちゃんのお父さんはフランス生まれらしいよ。だからフランス料理もあるんじゃない?」
「ぼくたちは滅多に食べられないよね。ますます楽しみだ!」
食いしん坊の2匹は、食べ物の話で盛り上がっている。
さらに歩くと、2匹の白うさぎと合流した。クラスメイトの[[rb:場丹井 姫子 > ばにい ひめこ]]ちゃんと、5年生の[[rb:宇佐山 楽美斗 > うさやま らびと]]くん(相撲部所属で太っている)だ。
「姫子ちゃんも誘われたの?」
「そうよ、栗田くん。せっかくだから宇佐山くんも一緒なの!」
「仲がいいね!」
その時、背後から声をかけられた。
「おお、栗田に稲荷山に宇佐山じゃないか!」
振り向くと、力士のような体のホッキョクグマが立っていた。[[rb:保良 部亜 > ぽうら べあ]]先生(6年1組の担任/相撲部の顧問。45歳)だ。
「先生も行くんですか?」
「そうだ。阿蓮が誘われたから、私と妻も行くことにしたぞ。」
妻の[[rb:由紀子 > ゆきこ]](やはり太っているが、保良先生よりは細身)と、息子の[[rb:阿蓮 > あれん]]くん(ぽっちゃり体型の3年生。万梨阿ちゃんのクラスメイト)も同行している。
「阿蓮くんは家族で行くのね!」
「うん、万梨阿ちゃん。でも本当はぼくだけで行きたかったんだけどな…
ママに連絡したら、ママも行くって言いだして、成り行きでパパも行く事になって…」
落ち込む阿蓮くんに対して、稲荷山くんがフォローした。
「まあ、参加者が多い方が楽しいじゃない。」
「それもそうだね。今日は楽しもう!」
合計8頭のパーティー参加者は、会場の雪見家へ向かった。
この辺りでは一番大きな家に住んでいるため近所でも有名だが、この8頭はいずれも中に入った事はない。
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[chapter:理沙ちゃんの家]
しばらく歩くと、雪見家が見えてきた。
「わあ、すごい!」
「なんてきれいなのかしら…」
「夢の中にいるみたいだ…」
そこは3階建ての大豪邸で、全体にイルミネーションが取り付けられている。8頭はしばらくそれに見とれた。
栗田くんがインターフォンを押すと、重厚な鐘の音が響いた。
「さすがセレブだ…」
自動で開いた門をくぐり、広い庭を横切ってドアの前へ。理沙ちゃんがドアから現れた。
「皆様、ようこそいらっしゃいました。中へどうぞ。」
玄関も一般家庭と比べて、3倍ほど広い。8頭分の靴が並べられても、まだスペースがあるほどだ。
「さあ、こちらへ。」
案内された場所は大広間だった。ここがパーティーの会場だ。
部屋中に飾られたモール。中央に置かれた大型のテーブル。部屋の隅には立派なクリスマスツリーが飾られている。
「理沙ちゃん、これ本物の木?」
「よくわかりましたわね、稲荷山くん。毎年ノルウェーから取り寄せてますの。」
「やっぱりセレブは違うね!」
そこへ理沙ちゃんの両親が入ってきた。
「皆様、ようこそいらっしゃいました。」
「はじめまして。よろしくお願いします。」
「私は理沙の父、フィリップ・ルナール。フランスの名門貴族です。」
「私は母の雪見 すみれ。雪見航空の社長の娘です。現在は夫と共に、子会社の雪見観光に勤めています。」
それを聞いた一同は驚いた。
「えっ、あの会社って理沙ちゃんと関係あったの!?」
「すごいよ、理沙ちゃん!あんな大きい会社と関係持ってるなんて!」
雪見航空も、雪見観光も、新聞広告やCMでよく見かける企業だ。
しばらく挨拶が続き、終わった所でフィリップが言った。
「さあ、今から料理が来るよ。」
その言葉に喜ぶ一同。特に栗田くんは歓声を上げた。
「わーい、待ってましたー!もうお腹ペコペコだ!」
「栗田くんもお昼を少なめにしたの?」
「いや、今日はお昼とおやつを抜いたんだ。たくさん食べたいからね。」
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[chapter:パーティー開幕!]
着席してしばらくするとドアが開き、6匹のメイド(白猫、白うさぎ、アライグマ、レッサーパンダ、キタキツネ、カワウソ)が入ってきた。
彼女らが押しているワゴンには、何種類もの料理が乗っている。チーズフォンデュ、グラタン、ピザ、サラダ、天ぷら、ブイヤベース、稲荷寿司…
「あの稲荷寿司、全部私が作りましたの。」
「ぼくの大好物だ!理沙ちゃんありがとう!」
「いえいえ、どういたしまして。
さあ皆さん、パーティーの始まりですわよ!」
別のテーブルに料理が並べられ、パーティーが始まった。
「それでは、いただきます!」
11頭はビュッフェのように料理を盛り付け、席に着いて食べ始めた。
「すっごくおいしい!こんなの初めてだよ!」
夢中で食べ続ける栗田くん。
太る事を望まない阿蓮くんも、それを忘れたように料理をむさぼっている。
宇佐山くんと姫子ちゃんは、お互いに食べさせ合っている。
保良先生とフィリップは、会話を楽しみながら食べている。
「相撲部はどのような雰囲気の部活動ですか?」
「和気藹々とした明るい部活ですよ。部員たちはみんな楽しく相撲を取っています。
顧問の私も指導にやりがいを感じます。あの子たちがどこまで強くなるか楽しみですよ。来年はどんな新入生が来るか期待しています。」
稲荷山くんと万梨阿ちゃんも夢中で食べた。普段は食べる機会の少ない料理ばかりだ。
「どれもこれも最高の味だよ!」
「いくらでも食べられちゃうね!」
1時間後、すべての皿が空になった。
「あー、食べた食べた!」
稲荷山くんは膨れたお腹を優しくなでた。
「お兄ちゃん、狸みたいだね!」
「すごいね、稲荷山くん!これだけ食べて運動もすれば、大きく強くなれるよ!」
「うん、ぼく頑張るよ。」
「もうこれ以上は入らないな…」
一番食べた保良先生は、大きくなったお腹を撫でている。
「どの料理も本当においしかったよ!…ゲエーップ!」
宇佐山くんは大きなげっぷをした。
「し、失礼、理沙ちゃん!こんな所でげっぷしちゃって!」
そこへ白猫のメイドが入ってきた。
「そろそろデザートを用意しましょうか?」
栗田くんと宇佐山くんが続けて言う。
「ぼくたち、お腹いっぱいです…」
「いくら別腹でも、今は食べられそうにありません…」
「わかりました。では後で用意しますね。」
メイドは皿を回収し、大広間を出た。
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[chapter:大量のデザート]
「それまでどうしようか?」
阿蓮くんの言葉に、理沙ちゃんが答えた。
「映画を見ましょう。お父様、スクリーンを!」
父親が壁のスイッチを押すと、天井からスクリーンが降りてきた。
「すごいすごい!こんなの学校でしか見たことないよ!」
「さあ、上映開始ですわ。」
理沙ちゃんはアニメ映画「アナグマと雪の女王」のDVDをプレイヤーに入れ、照明を切った。
映画が始まると、一同はスクリーンに釘付け。ミュージカルシーンでは一緒に歌い出す子も出た。
約110分後、映画が終わった。
「あー、楽しかった!」
「ぼくは映画館でも見たけど、やっぱり楽しいね!」
感想を言っていると、メイドたちがワゴンを押しながら入ってきた。
「デザートの用意が出来ました。」
ブッシュ・ド・ノエル、クリスマスプディング、シュークリーム、ドーナツ、クッキー、各種ジュース…様々なデザートが並べられる。ひときわ目立つ物はウエディングケーキ並みに大きいデコレーションケーキだ。
「皆さん、お腹は空いてきましたか?」
理沙ちゃんの質問に、栗田くんと稲荷山くんが答えた。
「うん、空いてきたよ。」
「ぼくのお腹も落ち着いたよ。またたくさん食べるぞ!」
「なんたってデザートは別腹だもんね!」
晩餐の続きが始まった。
「クリスマスプディングなんて初めてだよ!」
「このクッキーもおいしいね!」
栗田くんと稲荷山くんは仲良く会話しながら食べている。
「私も入れて!」
万梨阿ちゃんが口を挟んだ。
「わかった。入れてあげるよ。何が言いたいんだ、万梨阿?」
「あのね栗田くん、お兄ちゃんのお腹、もふもふのプニプニですっごく気持ち良い触り心地なの!まるで毛の生えたお餅みたい!」
栗田くんは笑ったが、稲荷山くんは盛大に突っ込みを入れた。
「万梨阿、毛の生えたお餅ってなんか気持ち悪いぞ。食欲なくなるからやめてくれ!」
「えー、面白いと思ったのに…毛の生えた饅頭なら良かった?」
「それもだめだ!せめてクッションとかまともな物に例えて欲しかったよ…」
デザートが3分の1ほど減った所で、理沙ちゃんが言った。
「さあ、そろそろケーキを配りますわ。」
すみれがケーキを22等分する。
「皆さん、2切れずつどうぞ。」
「本当においしそうなケーキだね!」
「早く食べたくてたまらないよ!」
そのケーキは見た目通り、非常に甘かった。濃厚なクリームに、シロップ漬けのフルーツが挟まっている。
「高級な味だね!」
甘い物が好きな栗田くんと稲荷山くんは、喜んで食べている。
「来て良かったね!」
「本当だわ。こんな高級なケーキは初めて!」
宇佐山くんと姫子ちゃんも幸せそうだ。
「本当に仲がいいんだな。楽しんでくれよ。」
保良先生はしみじみと2匹を見つめていた。
[newpage]
[chapter:理沙ちゃんと2匹で]
稲荷山くんが2切れ目を食べていると、理沙ちゃんに話しかけられた。
「あの、稲荷山くん。ちょっと話があるんですの…」
「どうしたの、理沙ちゃん?」
「廊下に来て欲しいですわ。」
「わかった。でもなんで?」
「それは向こうで話しますわ。」
(こんな時にいったい何の用だろう?
そうだ、食べられないように確保しておこう。)
稲荷山くんはケーキとフォークを持ち、廊下に出た。
「理沙ちゃん、何があったの?」
「稲荷山くん、実は…実は…
私、稲荷山くんと友達になりたいんですの!」
突然の告白に彼は驚いた。
「ど、どうしてぼくなんかと…学校にはもっとかっこいい子がたくさんいるよ。それにぼくの家はここより狭いし…」
「私、稲荷山くんの体型が前から好きでした。狐なのに丸っこくて、愛嬌があるからですわ。
でもクラスが違うから、なかなか話しかけられなくて…だから今ここで…」
「ぼくも理沙ちゃんと友達になりたいよ。理沙ちゃんは可愛くて優しくてお金持ちだからね。」
「ありがとうございます。」
「理沙ちゃん、口を開けて。」
「何ですの?」
稲荷山くんは自分のケーキをフォークで切り、理沙ちゃんの口まで運んだ。
「これ食べて。友情の印だよ。」
「わかりました。嬉しいですわ。」
2匹は仲良くケーキを食べ、大広間に戻った。
「稲荷山くん、何があったの?」
「理沙ちゃんがぼくと友達になりたいって言ったんだ。また友達が増えたよ!」
「良かったね。」
「うん!それじゃ続きを食べよう!」
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[chapter:パーティーはお開き]
やがてデザートの皿も全部空になり、パーティーはお開きとなった。時刻は20時30分。
「理沙ちゃんと友達になれたし、たくさん食べてお腹いっぱい!ぼくは最高に満足したよ!」
「ウップ、なんか食道にまで食べ物が詰まってる気分だよ…でも満たされた証拠だね。」
栗田くんと稲荷山くんはもちろん、全員のお腹が完全に満たされた。
パーティーに招待された8頭は、膨れたお腹に苦労しながら玄関へ向かった。
「足元が見えないわ…それにスカートがきつい…」
「みんなは普段からこんな風に見えてるのね。よく平気ね…」
細身の万梨阿ちゃんと姫子ちゃんは、特に苦労した。
「皆さん、楽しかったですか?」
理沙ちゃんの質問に、一同が次々と答える。
「もちろん!」
「おいしい料理がたくさん食べられたからね!」
「映画も見られて楽しかったよ!」
「宇佐山くんと過ごせて良かったわ!」
「ぼくも大好きな姫子ちゃんと一緒にいられて良かったよ!」
「楽しんでくれて光栄ですわ。では皆さん、メリー・クリスマス!」
8頭は玄関を出た。
「皆さん、さようなら!」
「さようならー!」
「今日はありがとう!」
理沙ちゃんはドアが閉まるまで手を振っていた。
[newpage]
[chapter:それぞれの家へ]
夜の住宅街を、8頭の丸々としたケモノが歩いている。パーティー帰りの一同だ。
「本当にどの料理もおいしかったね!」
「明日は何も食べられそうにないよ…」
その時、阿蓮くんが叫んだ。
「しまった!ついつい食べ過ぎちゃったよ!ぼくは太りたくないのに…」
「いいじゃないか!4月から相撲部に入ったらどうだ?」
「もう、パパったら!ぼくは陸上部でいいんだよ!」
これには皆笑った。
しばらく歩いた所で、保良一家と別れた。
「栗田、稲荷山、宇佐山。また3学期に会おう。」
次の角で宇佐山くん、姫子ちゃんとも別れた。
「姫子ちゃん、家まで送ろうか?」
「もちろんいいわよ。ありがとう。」
その先で栗田くんも別れた。
「稲荷山くん、今日は楽しかったね!また明日!」
残った稲荷山くんと万梨阿ちゃんは、歩き疲れたため立ち止まって会話をした。
「お兄ちゃん、楽しい夜だったね!」
「そうだな、万梨阿。」
「私のお腹、いつものお兄ちゃんみたいになっちゃった!足元がすごく見づらいけど、お兄ちゃんはこれで大丈夫なの?」
「慣れてるから大丈夫だよ。でももっと太りたいな。」
「どれくらい?」
「そうだな…少なくとも100キロまで!」
「今日はたくさん食べたから、5キロぐらい増えるかもね!」
2匹は膨れたお腹を揺らしながら、家に向かった。
「私、妊娠したみたい!」
「妊娠って言ったら、最近不思議な事が起きてるよね。世界中で…」
「そうそう、妊婦さんのお腹にいる赤ちゃんが急成長して、次々と生まれている…」
「いったいなんでだろうね?何かの始まりのような気がするよ。」
「何の始まり?」
「何かはわからないけど、ただ事でないのは間違いないね。」
[newpage]
[chapter:エピローグ]
準備は着々と進んでいる。
私の夢見た実験が始まるまで、あと1週間ほどだ。
数多くの犠牲者は出したが、皆が私の実験を応援するため、喜んで犠牲になってくれたのだ。そう思う事にしよう。
[chapter:おしまい]