第10話「大パニック!大掃除」

  [chapter:大掃除の班決め]

  ここはケモノ界のさいたま市大上区。ケモノ小学校埼玉校はそこに建っている。

  今回の話は12月後半、終業式の2日前から始まる。

  4年1組では、ハツカネズミの森口 美樹先生が児童と話し合い、大掃除の班決めをしている。

  このクラスは教室、廊下、トイレ、昇降口の4ヶ所を担当する。教室担当は以下の6匹に決まった。

  ・栗田 永雄(太ったシマリス)

  ・稲荷山 紺助(太ったキタキツネ)

  ・金子 真里(白猫)

  ・遠藤 隆志(ドブネズミ)

  ・場丹井 姫子(白うさぎ)

  ・新井 美井子(太ったアライグマ)

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  [chapter:いたずら計画]

  翌日、朝の会が終わると早速大掃除が始まった。

  「はい、みんな移動して!」

  森口先生の合図で、児童はそれぞれの場所に移動した。

  「それじゃ、先生は職員室の掃除に行ってくるわ。みんなもきれいにするのよ。」

  「はい、もちろんです!」

  栗田くんたち6匹は元気よく答えた。

  森口先生が教室を出ると、6匹は真面目に掃除を始めた。

  栗田くんと稲荷山くんはほうき、真里ちゃんと姫子ちゃんは雑巾、遠藤くんと美井子ちゃんは壁や黒板の担当だ。

  このペースで続ければ、十分きれいにできるだろう。

  森口先生が職員室に向かっていると、柴犬の小山 裕先生(4年2組の担任)に出会った。

  「森口先生、さっきから柴田くんが見えないんですよ。担当場所にいませんでした。」

  柴田 貂助くんは4年2組に所属するテンの男の子。常軌を逸したいたずらっ子で、しょっちゅう周囲を悩ませている。

  「まあ、そうなんですか?本当に困った子ですよね。」

  「ええ、あの子はいたずら以外に楽しみがないようですね…」

  その柴田くんは、1階の階段下にイタチの立売堀 洋次郎くん(3年生)と潜んでいた。

  「洋次郎、前に言った通りにやるんだ。4年1組の大掃除をめちゃくちゃにしてやる!」

  「もちろんだよ、柴田くん!」

  2匹はトカゲに化けて職員室に入った。イタチもテンも化けられる種族だ。

  すべての教師が揃っているが、全員が掃除に夢中で2匹には気がつかない。もっとも、ただのトカゲに目を留める事もないだろう。

  2匹は壁に下がった各教室の鍵を見つけると、家庭科室と図工室の鍵を盗み出した。どちらも1階にあり、その周辺は掃除場所に含まれていないため近くには誰の姿も見えない。

  職員室を出た2匹は元の姿に戻り、鍵を開けてそれぞれの部屋に入った。

  「これと、これと、これもいけるな。」

  「後はこれに、これに、ぼくの物も使おう。」

  道具が揃うと、4年1組に向かった。

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  [chapter:掃除のはずが…]

  4年1組に到着。廊下組は階段側に移動したため、教室の前には誰もいない。

  「よし、まずはこれだ。洋次郎は誰か来ないか見張ってろ。」

  「了解。」

  柴田くんは廊下の掃除ロッカーからチョークの粉が入った袋を取り出した。いたずらの道具は先程ここに入れている。

  続いてドアを少し開け、袋の中身を教室に撒いた。

  「な、何これ!」

  「前が見えないわ…」

  突然白い粉が降ってきたため、教室内の6匹はパニックになった。ドアに付いている窓から見ると、教室に霧がかかったようだ。

  「よし、今度はこれだ!」

  柴田くんは家庭科室から持ってきた小麦粉の袋を開け、教室に撒いた。

  「息が、く、苦しい…」

  「何これ…どうなってるの…」

  6匹は咳き込み、教室はさらに白く染まった。

  柴田くんと立売堀くんは顔を見合わせ、笑っている。

  「ああ、面白くなってきたぞ!」

  「柴田くんはいたずらの天才だね!」

  「少し落ち着いたら、次のいたずらだ!」

  漂っていた小麦粉の大部分が床に落ちた頃、栗田くんたちはようやく落ち着いた。

  「せっかくきれいにしてたのに、また汚れちゃったよ…」

  「まずはこの粉を掃除しないと…」

  栗田くんと稲荷山くんは、チョークの粉と小麦粉をほうきで掃き始めた。

  「あーあ、ぼくの毛皮が粉まみれになっちゃった…」

  「服まで粉だらけよ!早く洗濯したいわ。」

  「掃除機さえあれば楽なのに…」

  「本当に気分が悪いわ。いったい誰がやったの?」

  美井子ちゃんと遠藤くんは雑巾で壁を拭いている。

  (粉が付いちゃったから、念入りにきれいにしないと!)

  ドアの近くに置かれたバケツで雑巾を洗い、また拭き始めた。

  教室の外では、柴田くんが墨汁の瓶を持っている。彼はドアを少し開け、バケツに墨汁を注いだ。

  何も知らない美井子ちゃんはそのバケツで雑巾を洗い、続きを始めた。

  (さて、また洗って…

  え?なんでこの水、真っ黒なの?まさか…)

  彼女は恐る恐る壁を見た。

  「ギャーッ!か、壁が汚れてるーっ!」

  その声に残りの5匹が集まった。

  「粉が片付いたと思ったら、今度は…」

  「さっきまできれいな水だったのよ。いったいなんで?」

  教室の外では、2匹が小声で喜んでいる。

  「大成功だね。」

  「よし、洋次郎もやってみな。」

  「わかった!」

  立売堀くんは反対側のドアを開け、もう1つのバケツに墨汁を入れた。そのバケツを使っている遠藤くんは気がついていない。

  (今日はおかしな日だな…)

  考えていた遠藤くんは、バケツの中を見ずに雑巾を入れてしまった。

  「ええーっ!いつの間にこっちまで…」

  「どうなってるか見ようよ!」

  2匹はトカゲに化け、ドアの隙間から教室に入った。

  「うわあ、壁が見事に汚れてる!」

  「さあ、この調子でどんどん汚しちゃえ!」

  「いったいどうなってるのよ…」

  美井子ちゃんはドアを開けて外を見た。

  「あら、誰もいない…変ね。」

  ドアを閉めたが、その直前に2匹は廊下に戻った。

  (ひとまずバケツをきれいにしないと。)

  美井子ちゃんと遠藤くんは手洗い場に行き、バケツの水を替えた。

  2匹が教室の中に入ると、柴田くんと立売堀くんは元の姿に戻った。

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  [chapter:ケーキと卵]

  「さあ、次はぼくが!」

  柴田くんはホッキョクギツネの女の子に化けた。4年2組の雪見カトリーヌ理沙ちゃんだ。

  教室のドアを開け、女の子のような口調で呼びかける。

  「稲荷山くん、お手紙ですわよ。」

  「あ、理沙ちゃん。何?」

  稲荷山くんは渡された手紙を読んだ。

  稲荷山くんへ

  もうすぐクリスマスだからプレゼントを差し上げます。

  ケーキ1ホールです。全部食べてください。

  雪見カトリーヌ理沙より

  「ケーキだって?ありがとう!早くちょうだい!」

  「こちらですわよ!」

  柴田くんは稲荷山くんの顔にケーキを投げつけた。家庭科室の冷蔵庫から持ってきた物だ。

  「ぐあっ!何をするんだよ、理沙ちゃん…」

  稲荷山くんの顔や服、近くの床は生クリームまみれになった。

  「それではごきげんよう!」

  「理沙ちゃんったら、なんでこんな事を…」

  稲荷山くんはぼやきながらも、顔や服に付いたケーキを夢中で食べた。

  「いくら金持ちだからって、ケーキを粗末にするのはひどいよ!」

  「本当に今日は変な日ね…」

  遠藤くんと真里ちゃんは、床に落ちたクリームを拭いた。

  「さあ、まだまだ行くぞ!」

  今度は教室の上から生卵が投げ込まれた。

  「危ないっ!」

  栗田くんはすぐに受け取ったが、連続で卵が投げ込まれる。

  「それっ!それっ!」

  夢中で受け取るうち、彼は5個の卵をジャグリングのように投げていた。

  「栗田くん、上手だね!」

  「そんな事言ってないで助けてー!止まらないよー!」

  叫びながらジャグリングを続けるうち、足を滑らせて転んでしまった。

  「あーっ!」

  落ちてくる卵を両手とお腹で受け止め、1つも割らずに済んだ。

  「ああ、助かった…ほんとにどうなってるの?」

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  [chapter:4年1組大パニック!]

  栗田くんは棚の上に卵を置き、掃除を再開した。

  「終わるまであと30分か。これなら間に合いそうだ!」

  しかし、いたずらはまだ続く。

  「夏休みに使ったのを1つ残しておいたんだ。これはすごい騒ぎになるぞ!」

  柴田くんは長い導火線の付いた打ち上げ花火を取り出し、マッチで火をつけドアの隙間から投げ込んだ。

  「さあ、上から見物だ!」

  2匹はトカゲに化け、上の窓から中に入った。

  投げ込まれた花火は、遠藤くんの手へ。

  「わっ!花火が!あげるよ!」

  栗田くんに投げられた。

  「そんな!あげる!」

  稲荷山くんの手に渡った所で、真里ちゃんが横から取った。

  「私に貸して!」

  彼女は花火をバケツに入れた。

  「これでもう大丈夫よ。」

  「ああ、良かった…ありがとう!」

  「簡単な事よ。」

  「ああ、せっかくの花火が…悔しいっ!」

  「ロケット花火にすれば良かったかもね。」

  「こうなったら最後の手段だ!教室をめちゃくちゃにしてやるぞ!」

  柴田くんと立売堀くんは、上の窓から様々な物を投げ込んだ。

  図工室の絵の具を使った色水、生卵、水風船、コショウ爆弾、唐辛子爆弾。

  きれいになりかけていた教室の中はたちまち水や卵で汚れ、栗田くんたちはくしゃみと涙が止まらなくなった。

  「ああ苦しい!目が痛い…」

  「もう無理だ…」

  栗田くんは新鮮な空気を吸うために、教室の外に顔を出した。

  その時、戻ってくる森口先生の姿が見えた。

  「大変だ!先生が戻ってきちゃった!」

  「え、もう戻ってきたの!?」

  「そんな!こんなに汚れてるのに!」

  「今からきれいにするなんて無理だよ!」

  「ああ、どうしましょう!」

  「とにかくやれるだけやろう!」

  6匹はほうきや雑巾を持ち、慌てて掃除を始めた。

  一方、それを聞いた2匹も慌てていた。

  「どうしよう、どうしよう!」

  「よし、それじゃ…」

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  [chapter:いたずらの結果]

  森口先生は教室のドアを開けた。

  「ただいま。みんな…

  まあ、ちょっと、何よこれ!? ドッキリのつもりなの?こんなに汚くするなんて許せないわ!」

  滅多に怒らない先生が怒鳴り声を上げたため、真里ちゃんが弁解した。

  「違います!私たちは真面目にやっていたのに、いろいろおかしな事が起こったんです。

  突然バケツの水に墨汁が混ぜられたり、いろいろ投げ込まれたり…」

  栗田くんと稲荷山くんも言った。

  「そうです!ぼくたちがやったんじゃありません!」

  「ぼくたちがこんな事をすると思いますか?」

  「…そう言われればそうね。あなたたちは真面目なんだから。」

  森口先生が冷静さを取り戻した所で、姫子ちゃんが言った。

  「こんなひどいいたずらをするのは、柴田くんぐらいね!」

  その言葉で彼女は思い出した。

  「そうだ、小山先生が言っていたけど、掃除が始まった時から柴田くんがいないらしいのよ!」

  廊下に小山先生が立っていたため、彼女は尋ねた。

  「すみません、柴田くんを見ていませんか?」

  彼は異様に焦りながら答え、後ずさりを始めた。

  「え、柴田くん、ですか?さあ、見ていませんね…

  それにしても、本当に困った生徒ですよね。いったいどこへ消えたのか…」

  「何か変ね…」

  その時、彼のしっぽが壁のフックに引っかかった。

  次の瞬間体が上下に分かれ、上半身が柴田くん、下半身が立売堀くんに変化。2匹の化けた姿だった。

  「やっぱりあんたたちだったのね!ちょっと来なさい!」

  2匹は落ち込んだ。

  「ああ、またしても失敗だよ…」

  「今度は成功すると思ったのに…」

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  [chapter:2匹の末路]

  2匹はそれぞれの担任にたっぷり説教され、放課後に4年1組の掃除をする羽目になった。

  もちろん家にも連絡が入ったため、帰宅後も母親に叱られた。特に主犯の柴田くんは、過去以上に厳しい説教を受けた。

  「あんたはどうしてそういたずらばっかりするの!そんな悪い子に育てた覚えはないわ!」

  「だって、みんなが困っている様子を見るのが面白くて…」

  「なんてひどい子かしら!またお尻100回叩くわよ!」

  「どうかやめてください…もうぼくは絶対にいたずらしません…本当に心を入れ替えていい子になりますから許してください…」

  「何度そういえば気が済むのよ!もうその言葉は信じないわ!

  次にいたずらしたら、あんたの毛皮をはがして売っちゃうわ!テンの毛皮は高く売れるのよ!」

  「それだけは、それだけは絶対にやめてください!」

  「さあ、どうしようかしらね…」

  何度叱られても懲りない柴田くん。彼のいたずら癖は当分治らないだろう。

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  翌日は終業式。

  4年1組は目を見張るほどきれいな教室で、2学期最後の日を迎えた。

  [chapter:おしまい]