道具専門店1

  あれ、あんなお店、あったっけ。

  まぁここの通りは怪しいやら危ないやらで色々有名だから、怖い雰囲気のお店がひとつ増えた所で何も不思議じゃないけど…

  「クス、気になるの?貴和」

  立ち止まった俺を見ていたであろう千秋さんにそう聞かれ、俺は慌てて首を振る。

  「ちがっ、いますよ

  行きましょう」

  さっさと歩き出した俺を捕まえて、千秋さんは優しく促した。

  「入るだけ入ってみない?

  私がいるから何かあったら守るし」

  その言葉に安心してしまう。

  少しの葛藤の後、俺は千秋さんと共に、そのお店に入ってみることにした。

  カランカラン。

  「いらっしゃい」

  「……」

  「わぁ、すごい✨」

  お店の壁やら棚やらに並べてある商品を目にして俺は絶句し、千秋さんは瞳を輝かせた。

  「おおぉ、こういうの探してた!」

  「綺麗〜」

  「ねぇねぇ、どう?似合うかな」

  お店の中をうろちょろしながら千秋さんが手に取るのはどれも、俺にとっては凶器にしかならないもの。

  得体の知れない飴やバカでかいパドル、ケイン……

  入るんじゃなかった……帰りたい…

  「もう出ましょうよ…

  俺外で待ってます」

  「貴和、待ってよ

  …怖いの?」

  俺の身体が小刻みに震えていることに気付いた千秋さんの言葉に、俺は目に涙を溜めながら答えた。

  「怖いに決まってんでしょっ?

  お、おおしりがいたくなるのはいやですっ」

  「…フフ、そっかぁ

  怖いんだ…可愛いね」

  愛おしそうにキスをされ、俺は目を閉じて涙を流す。

  「っく……千秋さん俺の事愛してますか」

  「ん?喧嘩売ってるのかな?」

  「ひ、ぅ…ちが、っ」

  「聞くことないでしょう?

  どうしてそんな事を聞くの?」

  「だ、て……」

  道具を持ってる千秋さんはそれだけで怖い。

  「と、にかくそれおいてくださいっっ」

  「クスクスそんなに怒らなくていいでしょ

  何が言いたいの」

  「…俺の事愛してるなら道具買わないで……」

  縋るようにそう言ってしまった俺に、千秋さんは可愛くて仕方ないと言うように唇を歪めた。

  その欲に染まった顔が、密かに俺は好きだった。

  それはこんな怪しい店の照明下でも変わらないらしい。

  「フフフ、そんなに怖い?

  私が道具を持つのが、私に道具でお仕置きされるのが

  そんなに怖い?貴和」

  「ひく、こわ、ぃっ」

  「クスクス…素直でいい子

  でもね、愛してるから、お仕置きするんだよ

  大切だから悪いことしたら叱るの

  それで貴和が困らないように、周りからの評価が無駄な所で落ちないように。

  貴和自身が、少しでも傷付かないで済むように」

  「ぅ、ぅ……」

  涙がポロポロと頬を滑る。

  でも、言ってること、わかる。

  俺のためだって、わかってる。

  お仕置きは、いつもお尻が痛いけど、それが千秋さんが俺に与えてくれる愛情の一種だって、わかってる。

  「…だからね、貴和が見ただけで怯え出すほど痛いものも必要でしょ?」

  ニコリと綺麗に笑った千秋さんに、俺は目を見開いた。

  「話のつながりぜんっぜんわかんないっ!」

  思わず地団駄を踏むように千秋さんから離れると、千秋さんは面白そうに俺を見るだけ。

  「ここの道具、試し打ちしてもいいんだって

  だからちょっとお尻貸して?」

  「取り外しできるなら喜んで貸しますよ…

  あと痛みを感じなくて済むなら…」

  「それじゃあ試し打ちの理由がないじゃない笑

  …おいで?貴和」

  「やだっ絶対やっ」

  「……貴和」

  「なんで痛くされるのに行かなきゃいけないんですかっ」

  「私が来なさいって言ったから」

  千秋さんの雰囲気が変わって、俺は息を飲んだ。

  「貴和は誰のもの?」

  「へ……」

  「答えられないの?」

  「ぇ、ぁ……」

  「貴和、“come”」

  「っぁ、や、ぁ…」

  Commandで強制的に歩かされて、千秋さんの目の前に来る。

  「貴和は、誰のもの?」

  「……っは」

  口をパクパクさせても何も出てこない。

  空気が…Glareが強すぎるんだ、だから何も話せない。

  「……ふぅ…」

  「っは、ぁ…ち、ちあきさ、ちあきさ、の」

  千秋さんが一時的にGlareを弱めてくれたから、慌てて答える。

  「そうだね……私のだよね」

  「ん、ひく、は、ぃ」

  「私のなんだから、私の言うこと聞かなきゃダメでしょ?」

  「…は、ぅ…」

  「そうだよね?」

  「ん、っはぃ」

  「じゃぁお尻出せるね?」

  「ふ、ぅ、ぅぅ……は、ぃ、」

  「いい子。」

  そう言って俺の頭を撫でた千秋さんは、俺を脇に抱えるようにして俺のお尻を出すと、俺に道具を見せた。

  「まずこれ、分厚めのパドルね」

  その声が少し弾んでて、なんだか気持ち的に諦めようと思った。

  好きにして。

  「…いくよ」

  ピタピタと何回かパドルがお尻に当てられる。

  それがスっと離れた次の瞬間。

  バシィィン!

  空気を裂くような大きい音がして、それと同時にお尻の肉を潰されたんじゃないかってくらいの衝撃が走った。

  びっくりして固まっていたけど、だんだん急速に痛みを感じてくる。

  「つっっつ"」

  声にならない声を漏らす俺に、千秋さんは満足そうだった。

  続く