その8にゃん:たまちゃんの存在

  「たまちゃん、何処に居るのー……?」

  みおちゃんはたまちゃんを捜していました。

  大切なたまちゃんが突然、みおちゃんの元から居なくなってしまったのです。

  「ねえ、たまちゃんってばー」

  いくら呼び掛けても、何処を捜してもたまちゃんは見つからず、みおちゃんは泣き顔で落ち込んでしまいます。

  その場にへたり込んでしまい、もうたまちゃんを捜す気力も喪失します。

  「みおのせいだ。みおが目を離しちゃったから……」

  みおちゃんは自身を責め、自暴自棄になってしまいそうでしたが……。

  「え、たまちゃん?」

  みおちゃんには微かにたまちゃんの声が聞こえました。

  微かな声を頼りにたまちゃんを捜します。

  「たまちゃん! やっと見つけたー、みおのたまちゃん……」

  みおちゃんはようやくたまちゃんを見つけ出しました。

  しかしたまちゃんは一瞬だけ振り向くと、すぐにそっぽを向いてしまい……。

  「あ、待ってよー!」

  その場から走り出してしまい、そのまま何処かへ行ってしまいました。

  「待って、たまちゃんー……ねえ、待ってよー。お願い、みおの事を置いて行かないでー……!」

  みおちゃんはとてつもない不安に襲われながら、たまちゃんを追い掛けました。

  しかしたまちゃんは行方を眩ませてしまい、みおちゃんが追い着く事はありませんでした。

  「うわあーん、たまちゃーん……」

  気付けばみおちゃんは、いつの間にかにゃあにゃあ学園の屋上まで来ていて……大泣きしてしまいます。

  「元気出して! スマイルスマイル!」

  「え、あなたは……誰?」

  「あたし、ここだよ!」

  「ここ……ここねちゃんなの?」

  「違うよー、ここだよ☆ いつも夢の中で会ってるよね! そっか、覚めると忘れちゃうんだね!?」

  「……一体何の事?」

  みおちゃんは「ここ」と名乗る、紫色で少しミステリアスな猫少女に会いました。

  彼女は月明かりに照らされながら、笑顔でみおちゃんに話し掛けます。

  「あれ、みお……いつの間にか猫少女になってる」

  「あの子がみおちゃんの中に入り込んだからね。ここがそうしたのと同じようにさ♪」

  「そっか、だからみおは猫少女に……ここちゃんもなの?」

  「そうだよ☆」

  「何処かに入ったの?」

  「さあ、どうだろう!」

  「それじゃ分からないよー……」

  ここちゃんが言うには、どうやら何処かに入ったらしいようですが……みおちゃんの夢の中へ入り込んだ、と言う事なのでしょうか?

  「みおちゃん、安心して。真実は必ずしも見えているものだけじゃないよ」

  「それ、にこちゃんにも言われた」

  「でもさ、見えてないからって絶対にもう見えない、とも限らないんだよ?」

  「どういう事?」

  「安心して☆ たまちゃんはいつでもみおちゃんの側に居るからさ! みおちゃんの心はキラキラだよ!」

  「みおの心、キラキラなの?」

  「うんうん! ここには分かるよ? だって、ここもみおちゃんの側に居るから。みおちゃんの事は良く見てるからさ!」

  「みおの事、いつも見ているの……?」

  「いつも美味しい卵焼き、頑張って作ってきてくれるよね☆ みやちゃんも喜んでるもの。みおちゃんは優しいんだね☆」

  月の装飾が印象に残る猫少女ここちゃん。

  そんな彼女と月明りが照らす屋上でお話をしながら、みおちゃんは……。

  [newpage]

  『にゃあ~! にゃあ~! にゃあ~!』

  「ん、もう朝……少し寝過ごしちゃった」

  最近色々疲れる事も多いようで、みおちゃんは珍しく寝過ごしました。

  「またあの夢。最近何度も見るんだよね……何かを追い掛けていて、誰かが出てきたような……良く覚えてないや」

  みおちゃんは最近、決まって同じ夢を良く見ます。

  でも目が覚めると細かい部分を覚えていなくて、ほとんど忘れているのです。

  「心臓が凄くドキドキしてる……一体何だろう。でも……考えても分からないや」

  アホ毛だけは残しつつも、抜けてるのは卒業してしっかり者になったみおちゃん。

  彼女は一息つくと、冷静に頭を落ち着かせて……。

  「よし、今日も元気に頑張ろう。外はとても気持ち良さそう」

  カーテンを開けると程良い陽射しが差し込みます。

  猫はひなたぼっこが大好きなので、みおちゃんもお日様に当たるのが好きみたいです。

  「まずは着替えなくちゃ」

  みおちゃんはタンスとクローゼットから必要な物を取り出します。

  みおちゃんは着替えながら、姿見の前でスポーツブラ越しに自分の胸を見つめました。

  「みおの胸、ちっちゃい……」

  どうやらみおちゃん、貧乳を気にしているようです。

  「お兄ちゃんって今は女の子だけど、やっぱり胸の大きい子の方がいいのかな……?」

  みおちゃんはお兄ちゃんを意識するあまり、胸を大きくしたいようです。

  「みおの胸、大きくなりますように……」

  みおちゃんは小さな声でつぶやいてから着替えました。

  次に赤いリボンを2つ取り、姿見を見ながら髪を解かして綺麗にセットします。

  「大事なお気に入りのリボン。うん、バッチリ!」

  みおちゃんは両サイドに赤いリボンを着けました。

  みおちゃんにとって、このリボンはとても大切な物のようです。

  「今日もバッチリだね。あとは身支度を済ませたらお料理だね」

  みおちゃんは一通りやる事を済ませて、1階の台所へ下りて行きました。

  [newpage]

  「今日は寝過ごしちゃったし、猫少女に変身して能力アップしちゃおっと」

  魔法猫少女に変身すると身体能力がアップするので、作業効率などあらゆる能力がアップするのです。

  みおちゃんの場合アホ毛センサーが使えるようになりますが、それだけでなく色々な能力が強化されます。

  「魔法猫少女! 始動!」

  みおちゃんはいつもの調子で呪文を唱えて変身します。

  「はうー! いつ変身してもこの感覚、ゾクゾクする……」

  魔法猫少女に変身する事に喜びを覚えるみおちゃん。

  お兄ちゃんとは正反対で、みおちゃんは猫少女に変身するのが嬉しいのです。

  「猫少女ってステキ……何でこんなに可愛いの? ねえ、何でなの? みおが猫少女で、お兄ちゃんも猫少女……はうー」

  みおちゃんは悦に入って、若干妄想モードになりかけましたが……。

  「……急いでご飯作らないとね。卵焼きも沢山作らないとだもの」

  みおちゃんは猫少女の能力を使い、俊敏な動きでテキパキと料理を進めます。

  『ジューーー!』

  「うーん、いい匂い。みおって料理の天才なのかな」

  美味しそうな卵焼きの匂いが台所内に漂い、みおちゃんは自分の料理を自画自賛します。

  みおちゃんは相当料理の腕に自信があるようです。

  「かつおダシを混ぜると風味も違うよね」

  みおちゃんお得意の味付け、かつおダシ入りの卵焼きです。

  食べた者の胃袋をガッチリと掴む事間違いなしです。

  「よし、上手く焼けたね。あとは冷めないうちに包丁で切り分けてっと……よし、できた」

  みおちゃんは大量の卵焼きを切り分けました。

  自分の分、たまちゃんの分、そしてねこちゃんとみやちゃんの分です。

  最近はすっかりみやちゃんが卵焼きガチ勢なので、それに応えてかなりの量を作りました。

  「皆に美味しいって喜んでもらえるかな」

  みおちゃんはウキウキしながら卵焼きを詰めていき、次々に他の料理も作ります。

  「お兄ちゃんのお弁当は……うん、やっぱり猫のキャラ弁かな」

  たまちゃんはキャラ弁を嫌がっているようですが、みおちゃんはキャラ弁愛を貫き通します。

  料理好きのみおちゃんにとって、キャラ弁作りはもはやステータスなのでしょう。

  「お兄ちゃんどうせ嫌がるだろうね、でもそんなお兄ちゃんも可愛いんだもん♪」

  何だかんだでいつも残さず食べてくれるお兄ちゃん。

  みおちゃんはそれが嬉しくて、キャラ弁作りを止められないのです。

  「ふう、我ながらいい出来だよ。今日も良きかな」

  食べ物で猫の顔を作り、みおちゃん渾身のキャラ弁が出来ました。

  みおちゃんはキャラ弁の出来の良さに満足です。

  「さーてと、お兄ちゃんのお弁当には愛情を込めないとね! おいしくなーれ! らぶにゃんにゃん♪」

  みおちゃんはここねちゃんにも負けないくらいのラブポーズで、お兄ちゃんのお弁当に愛情を注ぎました。

  「……こんな所、絶対お兄ちゃんに見られないようにしないとね」

  自分でやっておいて、何だか少し恥ずかしくなってしまったみおちゃんでした。

  きっとみおちゃん、毎朝こんな事をしているのかもしれませんね。

  「あとは自分のお弁当と、朝ご飯のおかずと……」

  みおちゃんはテキパキと動き、どんどんと料理を作り上げます。

  そしてみおちゃんは一仕事を終えると、2階へ上がって行きました。

  『ガチャン』

  「お兄ちゃん、入るよ?」

  みおちゃんはお兄ちゃんの部屋へ入るとベッドへ向かいます。

  「お兄ちゃん朝だよ、起きて」

  「むにゃむにゃ……もう食べられにゃいにゃあ」

  「お兄ちゃん寝言言ってる、夢でも見てるのかな? 可愛い」

  みおちゃんよりも年下のお兄ちゃん。

  今の状態では妹みたいな存在で、みおちゃんにとってはとても可愛いのでしょう。

  「まさか女の子になって、みおよりも年下だなんてね。こんな事、普通は誰も予想すらできないよね」

  たまちゃんの寝顔を見ながら、みおちゃんは微笑みます。

  「あ、お兄ちゃんを起こさないと。お兄ちゃん朝だよ、起きて?」

  「むにゃあ……すぴー」

  「あら、お兄ちゃんも猫少女に変身してる……寝ぼけて呪文唱えちゃった?」

  みおちゃんは可愛いお兄ちゃんをいつまでも眺めていたい、と言う気持ちを必死に抑えて……。

  「起きてよ、お兄ちゃん」

  「みにゃー……」

  「お兄ちゃん、起きないとお布団の中入っちゃうよ」

  「うーみゃあ……」

  たまちゃんはよっぽど寝付きが良いみたいで、起きる気配がありません。

  「お兄ちゃん、キスしちゃうね?」

  「にゃにゃあ!?」

  「あ、起きた。お兄ちゃん、おはよー♪」

  みおちゃんの言葉と行動に反応したようで、たまちゃんは慌てて起き上がりました。

  「みお、心臓に悪い起こし方は止めるにゃ。いつも言ってるにゃん……あれ、あたし猫少女ににゃってる……」

  「だってお兄ちゃん、こうでもしないと起きないでしょ? アラームでも起きないくらいだし。寝ぼけて変身してるくらいだし」

  「にゃ、にゃってー……起きたくにゃい……」

  「猫は良く眠るって言うものね。アラームでも起きないって、猫精霊の影響なのかな?」

  「きっとそうだにゃ、にゃからこれは不可抗力であたしが悪いんじゃにゃくて」

  「でも起きない訳にはいかないもんね? 遅刻しちゃうもんね?」

  「そ、それはごもっともだにゃん……」

  たまちゃんの中には「猫精霊」が宿っているようで、その影響で猫っぽい部分が出ているようです。

  しかしみおちゃんの正論に対して、たまちゃんはぐうの音も出ませんでした。

  「まずはご飯を済ませちゃお? みお、先に下で待ってるよ」

  「分かったにゃ、すぐ行くにゃん」

  みおちゃんは先に台所へ戻ります。

  [newpage]

  「はぁ……今日もキス、しそびれたな」

  みおちゃんはお兄ちゃんを待ちながら、ぼそっとつぶやきました。

  「お兄ちゃん、本当に起きなければキスしちゃおうと思ってたのに」

  「みお、お待たせだにゃん」

  「にゃにゃっ!?」

  「ん、どうしたにゃん? みお」

  「にゃ、にゃんでもにゃい……」

  みおちゃんは聞かれてないかと焦りましたが、たまちゃんの様子的に大丈夫だと思ったようです。

  「にゃんだかあたしみたいにゃ言葉ににゃってるし、おかしにゃみお」

  「あはは……」

  みおちゃんは頬を少し赤く染めていました。

  「今日も美味しそうだにゃ」

  「うん、腕によりを掛けて作ったからね」

  「いつも大変にゃのにごめんだにゃ。朝の事、全部任せっきりににゃっちゃって」

  「いいのいいの。みお、こういうの得意だし大好きだから」

  「みおも見違えるくらい、しっかり者ににゃったよね。少し前は相当抜けてるドジッ娘にゃったのに」

  「だってみおがしっかりしないと、お兄ちゃんのお世話できないでしょ」

  「お世話って……ま、まあ確かにそうにゃけどさ」

  元々は抜けているだけでなく、ドジッ娘だったそうなみおちゃん。

  でもたまちゃんが女の子になった事で、みおちゃんはたくましくなったのです。

  「でもアホ毛だけはにゃおらにゃいね」

  「こ、これは! 癖っ毛だから仕方ないの! 直るものなら直したい……」

  「でもいいんじゃにゃい? みおのトレードマークみたいで可愛いにゃ」

  「か、可愛い……かな?」

  みおちゃんはお兄ちゃんに言われたのが嬉しいようで、再び頬を少し赤く染めました。

  「さ、さあ食べよ、今日はお兄ちゃんの大好きな鮭だから! ね!?」

  「え、うん。じゃあいただくにゃ」

  「いただきまーす……」

  みおちゃんはまるでお兄ちゃんを誤魔化すかのように、朝ご飯を促しました。

  「お兄ちゃん、いつも美味しそうに食べてくれるよね。いつもみおのご飯で、お兄ちゃんが笑顔になってくれて嬉しいな」

  「うん、あたし、みお大好きにゃ」

  「にゃにゃにゃにゃにゃ!?」

  たまちゃんは突然こんな事を言い出し、みおちゃんは顔を赤くして焦りました。

  「美味しいみおのご飯が大好きだにゃん。ってみお、にゃんか顔赤いけど熱でもあるにゃ?」

  「にゃ、にゃいよ!? ご飯が大好きにゃんだね、そっかそっちね、うん、そうだよね」

  「また猫喋りににゃってる……変にゃみお」

  みおちゃんはたまちゃんの言葉を勝手に勘違いしてしまい、1人で恥ずかしくなってしまいました。

  みおちゃんは胸をドキドキさせながら、朝ご飯を少しずつ食べました。

  「ごちそうさまだにゃ」

  「じゃあお兄ちゃん、先に着替えててね。みお、洗い物が終わったら行くよ」

  「分かったにゃん。じゃあ後の事はお願いするにゃん」

  「すぐに済ませちゃうからね。お兄ちゃん、1人で着替えられるよね」

  「だ、大丈夫にゃから……! 全くもう、みおは過保護にゃんだってば」

  「だって心配なんだもん、お兄ちゃん元は男だったから」

  「それはそうにゃけど……あたしにゃって、いつまでも男のつもりではにゃいんにゃから」

  「じゃあうちでもたまちゃんって呼んでいい? そっちの方が可愛いし♪」

  「それは止めて……家でくらい、ちゃんとお兄ちゃんって呼んで欲しいにゃ……」

  学園では仕方なくたまちゃんと呼ばせていますが、本音ではお兄ちゃんと呼んで欲しいたまちゃん。

  やはり兄としての威厳は失いたくないようです。

  「じゃああたし、先に2階に行くにゃん」

  「うん、みおもすぐに済ませて行くからね。あと変身解いておいてね」

  「分かったにゃんー」

  「お兄ちゃん、猫少女が恥ずかしい割りには起きてからずっとそのまんまだったね」

  その後みおちゃんは猫少女の身体能力を活かして、残りの家事をあっと言う間に片付けます。

  「こんな猫の手でも物は掴めるし、猫少女の能力って凄いよね。それにとっても可愛いんだもの♪ はうー」

  みおちゃんはまた少しの間、悦に浸っていました。

  「それにしても……お兄ちゃんも天然なのかな。いきなりあんな言い方するから驚いちゃった」

  そんな事を考えつつ、みおちゃんは家事を終えました。

  [newpage]

  「お兄ちゃん、着替えた?」

  「うん、どうにか……」

  「大丈夫そうだね。最初の頃なんて服脱いで、穿いているパンツ見るだけで失神しそうだったよね」

  「は、恥ずかしいからそういう事は言わにゃいで……」

  「はいはい、分かってまーす。じゃあ姿見の前に座ってね」

  みおちゃんは手にくしを持ち、丁寧にお兄ちゃんの髪を解かします。

  「みお、ところで何でいつも髪のセットは猫少女でやるの?」

  「この姿で居る方が可愛いもの」

  「いや、絶対嘘でしょ……」

  「半分はほんとだよ? 猫少女の方が手先も器用になるし、お兄ちゃんの髪のセットも上手く行く気がするんだ」

  みおちゃんはお兄ちゃんの髪をセットする時、いつも猫少女に変身してから取り掛かります。

  今日は寝過ごした事もあり、たまたま朝からずっと猫少女でしたが。

  「そうかな、人間状態でやっても同じなんじゃない?」

  「猫少女で仕上げた方がいい感じだもん」

  どうやらみおちゃんには、みおちゃんなりの拘りがあるようです。

  「あとはリボンを着けてっと……はい、出来上がり!」

  「うん、バッチリだね。さすがみおだよ」

  「可愛いお兄ちゃんの為だもん♪」

  「別にあたし、リボン無くてもいいんだけどね」

  「せっかく女の子なんだから、可愛くしなくちゃ♪」

  「猫少女に変身するだけでも嫌なんだけど……」

  「どっちのお兄ちゃんも可愛いけど、みおは猫少女のお兄ちゃんも大好き」

  みおちゃんにとって、お兄ちゃんとの楽しい朝の一時。

  たとえある程度の時間を掛けてでも、お兄ちゃんと楽しくお話しながら可愛くセットするのが至福の一時なのです。

  「みお、時間掛け過ぎじゃない? また学園ギリギリになりそう」

  「間に合えばいいんだよ。お姉ちゃんには妹を可愛くする義務があるのです!」

  「ドヤ顔で言われても……みおは妹でしょ」

  「今はお兄ちゃんの方が年下なのに?」

  「それを言われるとぐうの音も出にゃい……」

  2人は準備を済ませて今日も学園へ向かいます。

  [newpage]

  いつも通り登校して、いつも通り授業を受けて、いつも通り楽しくランチタイムをして。

  みおちゃんは何だか視線を感じつつも、どうせにこちゃんだろうと特に気に留めず。

  今日もあっと言う間に1日が終わりました。

  「みおちゃん、じゃあねぇ」

  「うん、またね。にこちゃん」

  みおちゃんはクラブ活動へ向かうにこちゃんと別れて、お兄ちゃんが待つ昇降口へ向かいます。

  「みおちゃん見ーっけ☆」

  「え、みやちゃん? どうしたの? 猫少女の姿で現れて……何かデジャヴ感あるけど」

  みおちゃんはまた襲撃されると思ったようで、一応いつでも変身できるように身構えます。

  「大丈夫だいじょーぶ、攻撃しないってば! あんまりおいたが過ぎると卵焼きもらえないもんね!?」

  「ならばいいんだけどさ」

  「あのねみおちゃん! さっきたまちゃんがにこちゃんと一緒に居たよ!」

  「え、にこちゃんって……猫少女の?」

  「そうだよ! 男の娘じゃなくて女の子の猫少女のにこちゃんだよ☆」

  みおちゃんはつい数分前、お友達のにこちゃんと別れたばかりです。

  もしにこちゃんが同一人物だとすれば、こんなに速くたまちゃんの元へ行けるのでしょうか?

  みやちゃんが目撃している辺り、相当な速さで移動できないと難しそうです。

  (結局にこちゃんって……やっぱり別人なのかな)

  「じゃあみおちゃん、明日も卵焼き宜しくね☆ たまちゃん、無事だといいね!?」

  「え、ちょっと待って。みやちゃん、それってどういう意味……」

  みおちゃんはみやちゃんにそう言われて、昨日の事を思い返していました。

  そういえばにこちゃんはどうやらたまちゃんを見ていたらしく、そしてにこちゃんと一緒に居たと言うたまちゃん。

  みやちゃんはたまちゃんの事を無事だといいね、と言っており。

  みおちゃんが冷静に考えた結果、この事から導き出される答えは……。

  「はっ! もしかしてにこちゃんの目的って……お兄ちゃん!?」

  みおちゃんは何だか胸騒ぎを感じました。

  今度は誤解ではなく、にこちゃんの真意に気付いたようで……。

  にこちゃんは悪の存在に警戒していると言っていました。

  それでお兄ちゃんの事を見ていた、と言う事はつまり……。

  「理由は分からないけどにこちゃん、お兄ちゃんを悪の存在だと思ってる?」

  みおちゃんはやたらと勘が良いのです。

  嫌な予感がしたみおちゃんは、すぐにお兄ちゃんを捜しに行こうとしましたが……。

  「あ、みおちゃん居たー」

  「ここねちゃん? どうしたの?」

  「あのね、みおちゃん。落ち着いて聞いてほしいの。実はたまちゃんがね……行方不明になったの」

  「え、お兄ちゃんが行方不明!?」

  いつも間延びした喋り方のねこちゃんが、珍しく真剣そうな口調でみおちゃんに言いました。

  みおちゃんもついつい動揺してしまい、たまちゃんと言うのさえ忘れてしまい……。

  (にこちゃんが……お兄ちゃんを何処かに連れ去った!? お兄ちゃんが……危ない!)

  何故かたまちゃんの事を悪の存在、と思い込んでいるらしいにこちゃん。

  にこちゃんに連れ出されたらしいたまちゃんは、果たして無事なのでしょうか?