未来捏造 行方不明事件 悲劇は・・・【完】

  [chapter:結末をど忘れしてました]

  バーナビーが能力を発動させる。

  ウィンドパーカーがひらりと翻り、バーナビーの姿が消える。

  バーナビーが敵の後ろを陣取って敵を倒す一瞬、虎徹も向かってくる敵を攻撃すべく、能力を発動させた、はずだった。

  能力を発動させ敵に対峙すれば、いつもとなにかが違っていた。

  敵が両手で掴みかかってきたので、虎徹も応戦する。両手が絡み合い、押し問答がはじまり、直ぐに気がついた。

  ハンドレッドパワー発動時、腕力は百倍になる。目の前の、明らかに能力を発動させていない敵と力が均衡するはずがないことに。

  不審に思うが、敵と対峙している以上手を抜けない。力が均衡しているのだから、一瞬の気の緩みが命取りになりかねない。

  「こ、んのやろ!」

  虎徹が力を込めて敵を押しやるが、敵は一瞬バランスを崩しただけですぐに態勢を立て直す。

  手が使えないなら、当然足が出る。

  柔道の要領で足技を駆使するが、敵も当然黙っていないし、足も出る。

  何回かの攻防の結果、虎徹は相手を弾き倒すことに成功した。

  「観念しやがれ」

  押し倒した結果、相手は俯せに倒れ、敵も虎徹も一時的に手が自由になるが、そのまま押し倒した状態で拘束すれば虎徹の勝ちである。

  だが、相手は奥の手を出した。銀行強盗をするのだから、当然の備えとも言える。だが、普段からハンドレッドパワーを発動させていた虎徹には、その考えが欠如していた。

  無駄な抵抗のように、敵が仰向けになろうと足掻く。押さえつけている虎徹と目が合う。その瞬間、敵は懐から早業のように取り出した拳銃で虎徹を撃った。

  当然、虎徹は能力を発動しようとした。

  だが、感覚がなかった。

  能力が発動した感覚も、能力の発動が終わった感覚も、そして、能力が使えるようになる為に身体がクールダウンしているという感覚も、全くなかった。

  銃弾が直撃したPDAが壊れ、その衝撃で虎徹はバランスを崩した。

  目の端に相棒の姿を捉え、そして悟った。

  自分が落ちた水音が、終幕を告げる。

  虎徹は、感じることのできなくなった感覚に、自分の能力が永遠に失われたことを自覚した。

  水に呑まれる。

  絶望に落ちて行く。

  能力が消えるかもしれないと常に思っていた。だが、前兆は全くなかった。

  1分という制限で出来ることを模索している最中だった。こんなに突然消えてしまうならーーそう思ってしまった自分の考えを嫌悪した。

  ーーここで終わる。

  このまま消えてしまえばいい。

  能力がなくなったことを誰にも気付かれることなくーーヒーローのまま、生涯を終わらせたい。

  [newpage]

  [chapter:想定より長くなりすぎてます。というか回想考えてなかったのに、どっから出てきたっ]

  捜索七日目。

  ワイルドタイガーこと、鏑木・T・虎徹の捜索は打ち切られた。

  表向きは行方不明。だが、その実、一部のものにはシュテルンビルト以外の場所で生存が確認されたこと、発見者であるライアンと一緒であることが知らされた。

  そして、虎徹の能力が完全になくなったことも。

  ヒーロー管理官がヒーローたちを前に重々しく言葉を発する。

  「誠に遺憾ながら・・・」

  それは、ある終わりを告げる言葉だった。

  [newpage]

  [chapter:長かった(書き終わるまでが)。長かった(思い出せなかったよ、一瞬)だから、サクッと終わらせてみた]

  シュテルンビルト入りをした虎徹を待っていたのは、怖い顔をしたバーナビーだった。

  ライアンの陰に隠れようとした虎徹をバーナビーがいち早く捕獲し、怯える虎徹に笑顔を向ける。

  「遅いですよ、おじさん」

  どこで何をしていたのかーーそんな事をバーナビーは聞かない。ただ「遅い」と虎徹を怒る。

  「バニ・・・バーナビー、俺は・・・」

  「急ぎますよ、おじさん。早くしないと記者会見が終わってしまいますから」

  虎徹の腕を掴むとバーナビーは走り出す。

  「記者、会、見? 俺のヒーロー引退の?」

  「違いますよ、もっと重要な発表があるんです」

  「俺の引退よりも、かよ?」

  虎徹の足が止まる。能力がなくなってしまった以上、ヒーローを辞めざるを得ない。ヒーローの前提はネクストである事だからだ。

  「俺は・・・」

  「虎徹さん」

  バーナビーが思いのほか優しい声で虎徹を呼んだ。

  「絶望するのは、今日の発表を聞いてからにしてください」

  バーナビーが虎徹の手を引き、ターミナルの中央に特別に設けられた記者会見スペースに虎徹を誘う。

  そこには多くの報道陣に囲まれてたヒーロー管理官がいた。

  「・・・故に、今後ヒーローになる条件からネクスト能力者であることは外させて頂きます」

  虎徹は一瞬、我が耳を疑った。

  「バニ・・・」

  「ええ。これからのヒーローにネクスト能力は必要ありません。ですから、貴方がヒーローを辞める必要はないんですよ、虎徹さん」

  「え、けど・・・」

  ヒーロー管理官が虎徹とバーナビーに視線を向ける。バーナビーが頷き、虎徹の背中を押した。

  「まだまだ、貴方はこれからです」

  背中を押されて一歩前に出た虎徹に報道陣の目が向く。

  誰かが「行方不明のーー」と言い出したが、その声が広まる前にヒーロー管理官が虎徹を示した。

  「彼が、ネクスト能力者でなくともヒーローとしてやっていけるという実例になってくれるでしょう」

  報道陣が、物見遊山の人々が騒めく。

  「いきなり、実績もない新人を第一号にするほど司法局も馬鹿ではありません。行方不明とは、当局の演出に過ぎません。完全にネクスト能力がなくなったこと、そして、なくなってもヒーローとしてやっていけるかどうかというテストをして頂いた結果、ワイルドタイガーはネクスト能力がなくなってもヒーローとしてやっていけると当局が判断しました」

  勿論、虎徹は今までライアンと共にいた。テストを受けた記憶はーー。

  「って、あれかよっ」

  テストは受けた。

  ライアンによって、大富豪の護衛が務まるかどうか、という内容だったが、大勢の前でさまざまなパターンの実戦さながらの手合わせをした記憶はある。

  「いつのまに・・・」

  いや、ライアンがバーナビーと連絡を取り合っている可能性は視野に入れていた。

  ライアンからバーナビーに虎徹の能力がなくなったことも告げられている可能性もあった。

  だが、それにしても対応が早すぎる。

  「以前から準備していたんですよ」

  虎徹の隣に立ち、バーナビーが笑う。

  「行きましょう。みなさんが僕たちを待っています。貴方はこれから、希望になるんです。ネクスト能力がないからヒーローになれないと嘆く子どもたちに、ネクスト能力がなくてもヒーローになれることを証明するために」

  バーナビーの言葉が虎徹の心に希望を灯す。

  自分のためではない、誰かのために、これからもヒーローを続けて良いのだと。

  「行きますよ、虎徹さん」

  「おう! 行くぜ、バニーちゃん」

  それは、今までのヒーローの在り方の終わり。

  これからの子どもたちのための始まり。

  「ネクスト発見当初はネクスト能力者であることが差別の対象となり得ました。ですが、ネクスト能力者が多いシュテルンビルトの現状を鑑みると、ネクスト能力者でないことがデメリットとなる可能性があり、ヒーローという職業に憧れる子どもが増える中、ネクスト能力を持っていないという理由で職業を選べないというのは、あってはならないことでしょう。故に今後ヒーローになる条件からネクスト能力者であることは外させて頂きます」

  END

  [chapter:悲劇は新たな希望となる]