事件から五日が経過していた。
警察も捜索隊も未だ大規模に動いている。
ヒーローたちも必死の捜索を行っている。
特にボンベマンへの期待度は他のヒーローたちのそれよりもはるかに大きい。海に落ちた人間の捜索程彼が活躍できる場は皮肉にもあり得なかった。
シュテルンビルト市民を初め、シュテルンビルトのヒーローを知る者たちは誰もが事の成り行きを見守っていた。
あるものは半ば絶望と共に、あるものは一縷の希望を胸に――日常生活を過ごしながらも、ずっとワイルドタイガー、鏑木・T・虎徹の無事を祈り続けていた。
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[chapter:今のところシリアスに展開しております]
五日前、ヒーローたちに出動の要請がかかった。銀行強盗である。
犯罪が多いシュテルンビルトのオーソドックスな事件と言えるが、当然だが犯人は毎回違うし、ヒーローたちも毎回同じように出動できるとは限らない。ヘリオスエナジーにいたファイヤーエンブレムはヒーロースーツを着用した後、マイカーで出動した。クロノスフーズビル前で『ファイブミニッツクッキング』をしていたロックバイソンはその場でトランスポーターのカタパルトから発射され、見物客を大いに沸かせた。授業を受けていたブルーローズは早退した後、トランスポーターに拾ってもらい、曲を流しながら現場へ急行した。ジュンの散歩中だったスカイハイは一旦自宅に帰ってから、自宅前でトランスポーターに乗り込んで出動した。休日だったドラゴンキッドは家族のために買った荷物を偶々通りがかった折紙サイクロンに押し付けて、トランスポーターと合流するため、オデュッセウスコミュニケーションに走った。一方、荷物を押し付けられた折紙サイクロンは配送サービスを行っている一番近くの店に駆け込み、ドラゴンキッドの住所を知らないことに頭を抱えた後、自宅へ発送してもらう手はずを整えた後でヘリペリデスファイナンスに連絡を取ったため、盛大に怒られた。そんな性格である。
そして、タイガー&バーナビーは襲われた銀行の近くの浜辺で雑誌のインタビューを受けていたため、そのまま出動した。アポロンメディアからも程近かったため、犯人と対峙する前にトランスポーターと合流できると算段を付け、上着を羽織っていたが、ほぼ水着姿で現場に向かった。運が悪かったのは、ヒーローズが来る前に犯行を終わらせ、船で国外に逃亡しようとした犯人たちとばったり出会ってしまったことだろう。
5対2。完全武装の犯人とヒーロースーツどころか普段着すら着用していないタイガー&バーナビー。
先手を取り、一瞬で終わらせるために能力発動させるのは当然のことだった。
「虎徹さんッ」
「おう」
犯人に駆け寄りながら、バーナビーが能力を発動させる。
横並びで共にかけていた虎徹よりも、能力を発動させた分バーナビーが前に出た。
(3・2)
一瞬でバーナビーは自分が倒す敵の数と虎徹が倒すであろう敵の数を想定し、一番遠くにいる敵の背後を取るべく地を蹴った。ハンドレットパワーは自身の能力を百倍にする能力だが、加減を間違えると当然明後日の方向に力のベクトルが向くことがある。虎徹がよくやることだが、敵の背後を取ろうとして、野次馬の中に突っ込むというハプニングもある。だが、バーナビーも力加減は絶妙であったため、一番奥にいた敵の後ろ、数十センチのところへと着地を決めた。想定通りである。当然、その後の行動も考慮に入れていたため、着地した足を軸に、その勢いのままバーナビーは回し蹴りをした。予想では一人撃破、運が良ければもう一人巻き込んで二人倒せるかもしれない、くらいにしか思っていなかったが、敵が密集していたおかげでドミノ倒し式に四人を倒してしまった。これで残る敵は先行していたため、他の四人とは離れて走っていた一人だけとなった。
バーナビーは四人が完全に戦闘不能であることを確かめ、武器を取り上げた。
ほぼ水着姿の丸腰であるため、縛るものはなにもない。バーナビーは仕方がなく、近くにあったコンテナを少々強引な手段で開け、空いた扉が上に来るようにコンテナを立てると、中に犯人を放り込んだ。その間、四分ほどの出来事である。五分もかかっていない。いくらバーナビーが鍛えていると言っても、ハンドレットパワーなしでは一連の動作をやり遂げることは難しいが、決してできないわけではない。
一通り作業を終えると、バーナビーは笑みを浮かべながら建物の角を曲がった。
回し蹴りをした際に犯人たちが飛んで行ってしまった方向と手頃そうなコンテナを探した結果、虎徹とバーナビーの間に建物の死角が発生した。
「虎徹さん」
残るは一人だけだった。
恐らく虎徹が確保しているだろうと油断していた。
一通り作業を行ったため、ハンドレットパワーを発動させて五分が経過した、ちょうどバーナビーが建物の角を曲がり、虎徹の名を呼んだ瞬間に。
「バニーッ」
切羽詰まった虎徹の、バーナビーを呼ぶ声。そして、パンッという乾いた音とドボンと何かが落ちた水音がバーナビーの耳に届き、そこにいるはずの人物がいなかった。
続きます。が、シリアスはここで終わりだと思います。。。。多分。