第5話「玉責めはこうするの」

  [chapter:プロローグ]

  ここはケモノ界のさいたま市[[rb:大上区 > おおかみく]]。時は9月22日…3連休の初日だ。

  「それじゃ、行ってきまーす!」

  ホッキョクグマの[[rb:保良 阿蓮 > ぽうら あれん]]くん(小学3年生、ぽっちゃり体型)は連休中、くるみ農園を営む親戚の家に泊まる。

  「行ってらっしゃい。」

  「いっぱい楽しむのよ!」

  父親の[[rb:部亜 > べあ]](力士体型)と、母親の[[rb:由紀子 > ゆきこ]](太目)が見送った。

  部亜はケモノ小学校埼玉校の教師(6年1組担任/相撲部顧問)をしているため、ここからは保良先生と表記する。

  [newpage]

  [chapter:妻は見ていた]

  その日の午後、保良先生は大上駅西口のウルフデパートに出かけた。

  「くるみ割り器を買ってくる。阿蓮がくるみを大量に持ち帰りそうだからな。」

  「わかったわ。行ってらっしゃい。」

  ペンチ状のくるみ割り器を買って出た時、ぽっちゃりしたホッキョクグマの女性が話しかけてきた。

  「すみません、あなたもしかして[[rb:極ノ海 > きょくのうみ]]ですか?」

  「え?はい、そうです。」

  保良先生はかつて、「極ノ海」という四股名の力士だった。

  「えー、本物なの!? 嬉しい!私相撲ファンなんです!

  もちろん現役の力士が好きですけど、昔の力士も結構好きなんですよ。特に極ノ海は私と同じ種族だから親近感沸くんです!」

  「こんな若い子でもファンがいるのは嬉しいな。」

  保良先生と女性は相撲について話しながら、大上駅構内を通った。

  その頃、由紀子は駅構内のアパレルストア「ファンタジーランド」を訪れていた。夫に内緒で自分の服を買っている。

  (これに決めたわ…あら、あれは!)

  彼女は保良先生と女性が歩いている現場を見てしまった。

  (まあ、なんて事を…許せないわ!)

  慌てて服を買い、急いで家へ向かう。

  (帰ってきたらお仕置きしなきゃ!)

  何も知らない保良先生と女性は、大上駅の東口へ。

  「好きな力士と一緒に話せて、最高の気分でした!

  これからデートだから、話のネタになるかなー。どうもありがとうございました。」

  女性は似た体型の彼氏に駆け寄った。

  「お待たせー!ねえ、さっき誰に会ったと思う?」

  「君の事だから、有名な力士かな?」

  「そう。あの極ノ海!ここにいるなんて思わなかった!」

  保良先生は2頭を眺めながら微笑み、上機嫌で帰宅した。

  (今日はいい事をした気分だな。)

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  [chapter:拷問される保良先生]

  「ただいま。くるみ割り器買ってきたぞ。」

  玄関に入ると、由紀子は真面目な顔で立っていた。

  「あなたの事で話があります。そこに座りなさい。」

  「な、なんだ?何かあったのか?」

  保良先生が仕方なく座ると、由紀子は怖い顔で問い詰めた。

  「ちょっと、さっき一緒に歩いていたあの女は誰なの!?」

  「え?あの場にいたのか?」

  「服を買いに行ったのよ。それより誰なの!? 教えてちょうだい。」

  「あ、あの女は俺のファンで、前から俺の事が好きだったと…」

  「まあ、やっぱりそうだったのね!私とあなたが婚約した時、絶対に浮気しないと誓ったじゃないの!」

  「違う!そういう意味じゃないんだ!あの女は相撲ファンで…」

  その時、由紀子の目が黒から金色に変わった。

  「いや、あなたは間違いなく浮気をした。だからお仕置きが必要ね!

  さあ、ズボンとふんどしを今すぐ脱ぎなさい!」

  しぶしぶそれに従うと、由紀子は玄関の棚からロープを取り出して、保良先生を柱に縛りつけ、手も後ろで縛った。

  彼は高校時代の痛い記憶がよみがえった。

  「おい由紀子、まさか玉責めじゃないだろうな…」

  「その通りよ!覚悟しなさい!」

  「いいから聞いてくれ!あれは誤解だ!」

  「あなたの話なんかどうでもいいわ!この浮気亭主め!」

  彼女は玉を全力で踏みつけた。

  「うぎゃあああーっ!

  なんと…恐ろしい…死ぬかと…思った…」

  「これはまだ序の口よ。」

  その時、由紀子は保良先生の買ったくるみ割り器に目をつけた。

  「あらあなた、いい物買ってきたじゃない。早速テストするわ。」

  「おい、やめろ!それはそうやって使う物じゃないだろう!」

  「あら、英語じゃ金玉もnutsと呼ぶのよ!だから同じ物よ!」

  彼女はペンチ状のくるみ割り器で玉を一度に挟んだ。玉は潰れたように変形する。

  「ああーーーーっ!死ぬー!」

  「浮気亭主に用はないわ!だから最後にこうやって痛めつけてやるのよ!」

  「だから、話を聞いてくれ!あれは浮気じゃないんだ!」

  「この大嘘つき!もっともっと痛めつけるわよ!」

  今度は阿蓮くんの部屋に入り、何かの箱を持ってきた。

  「その箱は何だ?」

  「理科の授業で使った電極セットよ。」

  「阿蓮はそんな物使ってたか?」

  「ここにあるのが証拠よ。さあ、行くわ!」

  彼女は電極を玉に接続し、スイッチを入れた。

  「んヴぉえwhgんわえrgっじゃrげ!

  ああ…大事な部分に雷が…そろそろやめてくれ…これでは不能になる…」

  「浮気亭主は不能になるべきよ!」

  「だから…あれは…違うんだ…」

  「その言い訳は聞き飽きたわ!次はもっと恐ろしい事をするわよ!」

  由紀子は一旦、その場を離れた。

  (今のうちに脱出しよう…)

  ロープをほどこうとしたが、丈夫なためほどけそうにない。もがいているうちに彼女が戻ってきた。

  「さあ、次はこれを使うわ!」

  今度は大型の洗濯ばさみと目玉クリップを2つずつ持っている。

  「もう二度と精子を出せないように…」

  ためらいもなく、それらで玉を挟んだ。

  「ぎゃhん4おvhgつgwwぎwvれおytk!」

  「あーら、目をつぶってキーボード打ったような悲鳴ね!いっその事ずっとそんな声しか出せないようにしてやるわ!アハハハハッ!」

  彼女は怒りのあまり、頭が変になったようだ。

  由紀子は狂った笑い声を立て、3時間近く玉責めを続けた。

  指ではじき、蹴り、棒で叩き、チリソースを塗りたくり、再びくるみ割り器や電極を使い…

  玉はおぞましいほどに腫れ上がったが、それでも保良先生は意識を保っていた。

  「ああ、由紀子よ…正気に戻ってくれ…」

  「私はこれが正気なのよ!私は世界一の玉破壊者よ!

  そうだ、次は竿を切り取りましょう。これであなたは不能者よ。

  良さそうな刃物を探してくるから、長い間連れ添った竿に別れを告げなさい。アハハハハ、イヒヒヒヒ!」

  彼女は不気味に笑いながら、台所へと消えた。

  (刃物を選ぶのには時間がかかりそうだから、今のうちに何とかしないと!)

  [newpage]

  [chapter:救い]

  その時、手を縛っているロープが緩んできた事に気がついた。

  (しめた、手は動かせそうだ!)

  急いでロープをほどき、両手を解放した。

  (よし、これで体の方も…いや、無実を証明しないと!)

  ズボンのポケットからスマートフォンを出し、SNS「Twittiger」を開く。

  (さあ、これで…)

  震える指で「デート 極ノ海」と検索する。

  (どうか、あの女がTwittigerを使っていますように…)

  画面を見ると、ある投稿が表示された。

  「今日デートだったんだけど、そこに行く途中で極の海に会っちゃった!

  憧れの力士と会話ができて最高の気分!デートも大成功で最高の日になったよ!」

  この文章と共に、保良先生が見たカップルのツーショットが掲載されていた。

  (よし、これを見せればなんとか…)

  その時、由紀子が料理用の巨大なはさみを持ってきた。

  「さあ、竿に別れを告げる準備はいいかしら?」

  「ま、ま、待ってくれ由紀子!切る前に最後の願いを聞いてくれ!」

  「最後の願いって何よ!」

  「頼むからこれを見てくれ!これは本当だ!」

  保良先生が画面を見せると同時に、由紀子の目が黒に戻った。

  「まあ見てやってもいいわ…え、これ本当なの?」

  「そうだ!そうなんだ!誤解なんだ!だからそのはさみをしまってくれ!」

  「はさみって何の事…あら?私いつの間にはさみを持ってたのかしら!?

  それにあなた、その玉はどうしたのよ!」

  「どうしたって…全部お前にやられたんだぞ!死ななかったのが不思議なぐらいだ!」

  「私はあなたを怒って、それからあの写真を見せられて…あら?いつの間にか夕方になってる?」

  「まさか、記憶がないのか?」

  「そうよ。でもあなたがそう言うなら、私が全部したようね。

  ああ、私ったら…なんというひどい事を…

  本当にごめんなさい。なんでこんな事をしたかわからないけど、あなたを不能にする所だったわ…」

  正気に戻った由紀子は、涙を流して謝った。

  「ああ、玉が痛くて苦しい…」

  「治療費は全部私が払うし、玉が治るまでなんでもするわ。どうか私を許してちょうだい…」

  翌日の午前中、保良夫妻は病院に出かけた。太ったツキノワグマの医師が、下半身を診察する。

  「うわ、これはひどい…」

  様々な処置が行われ、最終結果が出た。

  「全治1週間です。毎日この薬を塗ってください。」

  「ああ、1週間で治るのか…良かった…」

  [newpage]

  [chapter:エピローグ]

  さらに翌日、阿蓮くんが帰ってきた。

  「パパ、ママ、ただいま!」

  「お帰りなさい。楽しかった?」

  「もちろん!お土産ももらったよ!ほら、くるみをこんなに!」

  「あら、おいしそうね!早速くるみのケーキを作りましょう!」

  由紀子はくるみ割り器をカチカチ鳴らしながら持ってきた。

  「おい由紀子、やめろ!やめろーっ!」

  慌てて逃げる保良先生。

  「ねえパパ、なんでくるみ割り器が怖いの?」

  「いや、それは秘密だ。お前には言えない。」

  「ねえ、なんで?教えてよ!」

  「言うわけにはいかん!」

  「そうそう、今日は一緒にお風呂入ろうね!」

  「い、いや、しばらくはママと入ってくれ。」

  「どうして?別にいいじゃん!」

  「もうその話はするんじゃない!」

  彼の生活は、しばらく苦労が多くなりそうだ。

  「そう言えば阿蓮、理科の授業で電極を使った事はあるか?」

  「電極はないよ。どうして?」

  「阿蓮の部屋に電極セットがあったんだよ。」

  「そんなセット、知らないよ!夢でも見たんじゃないの?」

  保良先生は考えこんだ。

  (じゃあ、あれは全部夢だったのか?でも現に玉はまだ痛い。するとやはり現実か?)

  いくら考えても、その理由はわからない。それも当然だった。

  あの時、由紀子には何が起きていたのか?それはまだ語れない…

  [chapter:おしまい]