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2学期初日の教室は、夏休みの思い出話に花が咲いていた。ひときわ花、いやコーヒー豆急に真っ黒になったのは、埼玉のド田舎かあら帰ってきたケイちゃん([[rb:慧太郎 > けいたろう]])だった。
「じゃじゃん!」
泥棒が持ってるような風呂敷を開いて出してきたのは、色とりどりのドングリだった。
「何これ? 色ぬったの?」
「うぅん、元から。山のヌシにもらったんだぁ」
「まーた、ホラ話かい。ええかげんにせいっ!」
こうちゃん([[rb:康喜 > こうき]])はケイちゃんにデコピンをする。これまで、ケイちゃんは空飛ぶ島を見たとか、人語を話す魚と出会ったとか、怪しい話をしてきたからなぁ。
「ホントだよー。種うめるの手伝ったから、お礼にくれたんだよー」
「トト〇みたいな話だな、それ」
僕の頭の中で、トト〇が連呼される。きっと、この前の金□―の影響に違いない。
「これおいしんだよ、食べてー」
「よぉーし、食べてやらぁ。その代わりクソマズかったら、校庭10周な!」
こうちゃんは白いドングリを口に入れた。最初は眉間にしわを寄せていたが、次第にほぐれいていく。
「何だよ。けっこーうまいじゃねぇか」
こうちゃんが食べ続けていくと、顔に白い毛が生えだした。体がふくらんで服がはじけ飛ぶ。どんぐりの副作用か!?
「出せ、早く!」
「あん? どうしたんだニャ。ニャ!?」
こうちゃんは語尾がおかしくなったことに気づき、慌ててスマホのカメラで顔を映す。映っているのは、白いデブ猫人間だ。
「ニャアアアアアア! 猫になってるううううう!?」
「わわわわわわ! どうしよ、どうしよ」
「おもしろ! たーべよっ!」
「バカ! やめろ」
アホウのケイちゃんは銀のどんぐりを食べ始めた。すると、彼の体は細長くなって、全身に銀のうろこが生えだす。顔つきが犬みたいになって、触手のようなヒゲが生える。何と、教室をぐるっと一周する銀の竜になった。
「なっ、何だ、こいつぅー?」
「一体、何がどうなってんの?」
2人が変身したことで、教室中はパニックだ。そんな中、クラス一の美少女のむーちゃん([[rb:夢香 > むか]])が近づいてきた。
「これ食べたら、変身できるのね……」
「むーちゃん、それ食べちゃダ、ムムム」
ケイ竜のヒゲに口を封じられる。こいつぅ、愉快犯ってやつかぁ!
むーちゃんはドングリを口の中に入れ、飲み込んじゃった。
「あっ、あつ、熱い……!」
彼女の体がふくれ上がり、白い毛がびっしり生える。くりっとした目がつり上がり、口から牙がはみ出る。彼女はケイ竜より大きくなって、天井ギリギリの巨大オオカミになった。
「むーちゃん、でっかいねぇ」
「服着れなくなっちゃったぁ♥」
竜とオオカミがほのぼのしてる場合かよ! すでにクラスメイトは逃げ去って、教室には僕と3匹だけだ。
「[[rb:征次 > しょうじ]]ぃ! てめぇだけ人のままってのは、良くないよニャア?」
こう猫が意地悪な笑みを浮かべて、寄ってくる。ヤバい! 僕も逃げないと……。
「逃げちゃダメだよー」
ケイ竜の体が巻き付いて、身動きが取れない。でも、口を閉じていたら、変身することはない!
「オラ! 口を開けるんだニャ!」
こう猫の馬鹿力に必死にたえる。ここをたえれば、先生や警察が来て助かるんだから――!
「そういう時は、こうやるの」
むー狼が口を大きく開けて、動物園臭い息を吹きかけてきた。
「くっ、くせぇー!」
「今ニャ!」
「あっ、しまっ」
僕の口の中に茶色いドングリが入った。吐き出そうとするが、こう猫に口を押えつけられる。ドングリが食道から胃に移るのを感じる。もう人の体がおしまいだぁ。
僕のあちこちに茶色い毛が生えだし、服がやぶけていく。尻に変な感触、尻尾か、丸くて大きい。こう猫より一回り大きくなって、おデブなケモノになってしまった……。
「ニャハハハ。タヌキになってやがんの」
「タヌキか……」
どうせなるんなら、キツネやリスみたいにスラッとした動物が良かったよ。スマホのカメラで確かめたら、信楽焼きの狸そのものになっていた。
「あら、タヌキかわいいじゃない」
「キ〇タマでとんでとんでとんでー」
「もぉ、どうすんだよぉ」
「生きてるかぁ!」
教室のドアが開いて、ヤノ先が顔を出した。こう猫は先生の口目がけて、ドングリを投げる。見事に口の中へストライク!
「ブ、ブブゥ!」
ヤノ先はこう猫や僕よりも肥えて、ピンクの豚人間と化した。
※※※
謎のドングリや僕達の体が徹底的に調べられたが、結局何もわからなかったらしい。僕達は姿が変わったものの、今までどおり学校に通っている。
「あー、早く高校生にならないかニャア。そしたら、猫カフェでバイトできるのニャ:
「6年後だろ、早くて。その頃には人に戻ってるかもよ」
「いいよニャア、ショウは。人になれるんだから」
「うん。まぁ、数分しかもたないけどね」
念を込めると、色んな物に変身できるようになってきた。最近はもうタヌキのままでいいような気がしてきた。
ちなみに、ケイちゃんとむーちゃんは教室に入りきらないので、屋上からリモート授業だ。休み時間に会いに行けば、とても喜ばれる。
「出欠取るぞぉ」
ヤノ先は豚扱いされるのが嫌で、ダイエットしたり、牙をつけたりしたが、失敗。今はサングラスをかけ、短い手でチョークを器用に使い、フゴフゴ言いながら授業している。
放課後になれば、屋上の2匹と遊べるから待ち遠しい。昨日はケイちゃんに乗って富士山を見に行ったけど、今日は何をしようか。僕の新しい変身レパートリーを見せようか、それともむーちゃんのもふもふの上でお昼寝か。あっ、こうちゃんにプロレスの再戦するんだっけか。
やりたいことが多くて悩むなぁ~。
(おしまい)
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