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OGREISM HERO(前編)【FANBOX試し読み】

  [chapter:サンプル]

  それは、遥か先の未来の物語――

  地球に、突如謎の物体が宇宙から飛来する。それは、人間とも動物とも全く異なった姿の――まさしく異形の者と形容できる、そんな生物達が封じられたものだった。

  「それ」は地球に到着するなり封印されていた生物達を解き放ち、人類を危機に陥れた。

  その生物達は、この地球を支配するためにやってきたと宣言しそれをまさしく数年で有言実行してみせることになる。

  それは人間が空想していた「怪物」と呼ばれる架空の存在によく似た生物であり、それに違わぬ力と凶暴性で瞬く間に人類の脅威となった。

  当時は地球上に数億人も存在していた人間達は、怪物達に蹂躙され着々とその数を減らしていきいつしかその人々を脅かすその存在は「怪人」と呼ばれ、恐れられるようになる。

  それから年月が流れ、人間は怪人が支配する最悪の未来を変えるべく、怪人に対抗する術を研究しはじめるようになった。

  テレビの中の作り話――人類を脅かす脅威を退ける正義の味方、ヒーロー。その夢のような存在だった者を人類は作り上げようとしたのだ。政府は『ヒーロー育成プロジェクト』と称して素質のある人間達をヒーローとして教育することに決定し、怪人に対抗できる武器や装備の開発も開始された。

  人類は努力の甲斐あって、何人かの“ヒーロー”を育成することに成功する。しかしそのコストは莫大なものであり、そう簡単には数を増やすことができずにいた。

  だがヒーローはその力を最大限に発揮し、いくつかの怪人を倒していく。その実数は少ないものの、人類は怪人に対抗できる術をとりあえずはだが手に入れたのだった。

  しかし、怪人達もそんなヒーロー達の活躍を黙ってはいなかった。

  「わかった、そいつの弱点はそこだレッド!」

  「よし、いくぜぇ!」

  人気のない廃墟で、赤と青のボディスーツを見に纏った青年が二人、怪人と対峙していた。

  都内では今日も今日とて地球を支配するべく怪人が跋扈している。そんな怪人と日夜戦っているのがこの彼たち、レッドサンシャインとブルーフルムーンである。

  レッドサンシャインこと[[rb:砥>と]][[rb:場>ば]][[rb:野>の]][[rb:太>たい]][[rb:陽>よう]]は、普段はラグビー部の主将で、『一度決めたことは最後までやり抜く』が信条の熱血漢である。自分も世界のために役に立ちたいという理由でプロジェクトに参加し今では向かうところ敵なしのエースヒーローにまで成長した。

  対するブルーフルムーンこと[[rb:小>こ]] [[rb:西>にし]] [[rb:睦>む]] [[rb:月>つき]]。彼はサンシャインとは対照的に常に冷静で爽やかな雰囲気を持った男であった。都内でもその名を知らぬ事なしと言われる名門校にトップクラスの成績で入学しその学校で生徒会長とヒーローを兼任している。自分の知識と可能性を活かして世の中に貢献したいという理由でプロジェクトに参加し、今や太陽と並ぶエースヒーローの座を勝ち取った。

  炎の力で相手を圧倒するサンシャイン、怪人を分析し弱点を見つけ出しサンシャインのサポートをするフルムーン。この二人のコンビは今日本で活躍しているヒーローの中でも最強格と言われているほどの逸材であった。

  「おし、今日もいっちょ上がり!」

  「油断するな。敵はまだこの近くに潜んでいるかもしれないんだ」

  「わーってるよ、フルムーンも少しは肩の力抜かないと勝てる相手も勝てなくなるぜ?」

  「お前が抜きすぎなんだ」

  言い争いはするものの、二人は中々いいコンビだと自他共に評判だった(“自”は主に太陽だが)。しかし、そんな二人に史上最高の危機が訪れようとしていた――

  ――あくる日の朝。それは突然やってきた。

  『山岳と森林の双方にて同時に”怪人“が出現! 今すぐに現場へヒーローを派遣されたし! 繰り返す。山岳と森林の双方――』

  いつもは一ヶ所に出現していたはずの怪人が今日は二ヶ所に出現したのだった。当然ながら戦力を二つに割かねばならず、どちらにどのヒーローを派遣するかの緊急会議が行われていた。

  「時は一刻を要する。直ちに希望の場所を宣言されたし!」

  司令官の号令が基地内に響き渡る。サンシャインとフルムーンは、はじめは二人一緒に向かう予定であったのだが、お互い別々の場所に行き情報を共有した方が良いだろうと睦月が提案したため、サンシャインは森林、フルムーンは神社へ向かうこととなった。

  「じゃ、無事で戻ってこいよ」

  「こっちのセリフだ。まあ、お前なら可能だと信じている」

  二人は少しの言葉をかけ合うと、それぞれの現場へと向かっていった。

  ◆

  フルムーンは目的の山へと到着した。そのキャンプ場だった場所では既に他のヒーローと怪人の部下である戦闘員が激しい戦闘を行なっていた。

  「オニ、オニー!」

  「くっ、こいつら数が多いっ! とても怪人のとこへなど行けん!」

  一枚だけの虎柄の布を腰に巻いている小さな赤鬼の姿をした戦闘員が、体の何倍もの大きさの金棒をヒーローに向けて振り回している。ヒーロー達も冷静に対処するがなかなかの数を有しており、防戦一方の様子であった。

  「小さいくせになんてバカ力だ!」

  見た目は小さな子供のようだがその力は普通の成人人間を遥かに凌ぐパワーを持っており、それか何十人も密集しているのだからさすがのヒーローも手に負えないでいた。

  「……すまないが、お前達はそのまま戦闘を続けてくれ。俺は単体で怪人を叩く!」

  「無茶だフルムーン! 君は後方支援には長けているが、戦闘ではその力を最大限に発揮できないはず……!」

  「俺をみくびるな。戦闘員を見る限り、相手は力と数で押すタイプのようだ。ならばその親玉も戦闘員に似て単細胞だと、そのくらいは推測できる。それならば俺一人でもどうにでもなるはずだ」

  「それでも、まずは戦況を落ち着かせてから……!」

  「つべこべ抜かすな。お前達は戦闘に集中しろ。親玉を叩けば敵の士気も大幅に減少するだろう」

  「あっ、おい!」

  そう言うと、フルムーンはヒーローや戦闘員の間をいとも容易く潜り抜け、奥へ奥へと走っていった。他のヒーローが声をかける頃には、フルムーンはすでにその場からいなくなっていた。

  「心配だ……あの人、冷静なように見えて自分意見は曲げない頑固なとこがあるからな……」

  「オニィー!」

  「くっ!」

  「独り言をしている暇があるなら敵を倒せ! 次の敵が来るぞ!」

  「わかった!」

  戦闘員は際限なく増えていく。ヒーローも十人がかりで応戦しているが、どうにも戦局は拮抗するばかりだった。

  「どこだ、敵の親玉は」

  フルムーンは一人広い山の奥地を走り回っていた。この近くに根源である怪人がいるはずなのだ。そこで彼は考える。相手が出てこないならば、逆に出てくる場所を見つければいいと。

  (まずは身を隠すか。おそらく奴はヒーローを倒すために戦闘員をさらにけしかけるはず。ならば戦闘員自身に奴の居場所を教えてもらえばいい)

  フルムーンはヒーロースーツの迷彩機能を利用して近くの草叢に身を隠すと、辺りをじっと見つめる。ただその場が動くのを虎視眈々と見守る。

  「索敵モード、オン」

  マスク内のモニターを切り替え、敵の正確な位置を確認する準備に入る。しばらくの時間が経った時、向こう側から黒い影が走っていくのをフルムーンは確かに目にした。

  (戦闘員! 間違いない、奴はこの奥だ!)

  フルムーンは敵の位置を確認したや否や草叢から音もなく飛び出し、戦闘員を奇襲にかかる。

  「はっ!」

  「オニィー!?」

  フルムーンは自らの武器、月光刀により戦闘員を薙ぎ払う。そのまま戦闘員がやってきた方向へとただひたすら走る。その途中で出くわした戦闘員も月光刀で一刀両断する。

  (ここまでは予定通り……さて、本当に奴はいるのか……これが罠で俺らヒーローを戦闘員を餌におびき出す可能性もあり得る……警戒を怠らないに越したことはないな)

  走りながら月光刀をすぐに全力で振れる位置に構え直す。その瞬間、下品な笑い声が辺り一面に響き渡った。

  「グハハハハハハハハッ!」

  「……貴様か。怪人の親玉は」

  フルムーンの予想は的中していた。そこには、明らかに先の戦闘員とは大きさもオーラも違う者がいた。戦闘員と同じく真っ赤な体に二本の角、そして一枚の腰布だけが股間を隠している。

  それこそが、今回神社に現れた怪人『赤鬼』であった。

  怪人は、本来人間の間に受け継がれていた空想上の生き物によく似た姿であることが多いのだが、今回の怪人も例外ではなく、日本で語り継がれている地獄の生き物によく似ている。

  (今度は鬼か。しかし妙だ。怪人はやけに俺達がよく知る生物を模している場合が多い。まるで、俺達の頭の中を具現化しているような……)

  「ヒーロー様がこんなに早くやってくるとはなぁ。戦闘員はどうした?」

  「……そんな事、お前達怪人に説明する必要はない」

  ある考えを巡らせていたフルムーンだが、赤鬼の声により戦闘態勢に入る。刀の刃を怪人に向けると、相手の出方を伺うように構える。

  「そうかい。ならくたばりやがれぇ!」

  赤鬼はフルムーンの挑発を受けやかましい声をあげながら向かっていく。大きい図体のせいか動きは遅いが、ベテランのヒーローでも気圧されてしまうような威圧感、力そのものの塊が向かってきている。しかしそれでも彼は冷静だった。

  [[jumpuri:続きはFANBOXで> https://www.fanbox.cc/@jinogrehead/posts/2682398]]

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