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俺の名前は[b:[[rb:金 > かね]][[rb:吉 > よし]][[rb:威 > たける]]]。生まれ育った地方の小学校で教師をやっている。俺はその学校では五年二組の担任をやっているのだが、ありがたい事に生徒はみんないい子ばかりで俺も助かっている。
俺の学校では、10月になるとハロウィンパーティーをやることになっており、今日はクラスでその準備を始めていた。
「と、いうわけで明日からのホームルームは飾り造り、それと本番当日のルートに関してだ。みんなは本番までに何に仮装するか考えておいてくれよ」
「はーい!」
元気な返事が教室に響く。こういうイベントがやってきた時の子供は特に笑顔になっていて、見ていてこちらも微笑ましく思えるのだ。
「金吉先生!」
「有馬か。どうした」
うちのクラスの生徒――出席番号1番、[b:[[rb:有 > あり]][[rb:馬 > ま]][[rb:友 > ゆう]][[rb:二 > じ]]]が俺に話しかけてきた。この子はどちらかといえばおとなしく、俺に積極的に話しかけてくるような子ではない。だがこうやって今俺に相談しにきていた。
これは教師として少しでも信頼されている証だろう。そう思うと少し嬉しくなる。
「ハロウィンの仮装についての話なんですけど……」
「相談か? それなら先生、いつでも力になってやるからな!」
「本当ですか?」
「ああ」
「じゃ……じゃあ、僕の家に来てくれませんか?
あっ、ハロウィンの前日……29日でいいんですけどっ」
正直の所、俺は内心困っていた。
一応、俺は教師という立場なのだから相談という理由だとしても有馬の家へ家庭訪問以外の理由で来てもよいものなのだろうか。しかし、可愛い生徒が頼んでいるのだから断るのも偲ばれる。
どうしたものか……
「ダメですか?」
「……分かった。29日だな。夕方くらいでいいならいいぞ!」
「ありがとうございます! 僕、どうしても先生が必要で……それじゃあ、約束ですよ!」
「ああ、約束だ!」
こうして俺はひとまず有馬と別れた。その後、俺はいつものように業務をこなし、ハロウィンパーティーの準備もクラスの生徒とともに進めていった。
そしてあっという間に時は過ぎ、ハロウィンパーティー前日……10月29日の放課後になっていた。
「先生、さようならー!」
「気をつけて帰れよー」
終業のベルが鳴る。生徒の挨拶に一人ずつ返していた俺は、有馬の家へ向かう準備をはじめていた。
「ま、一・二時間くらい有馬と相談してまた学校へ戻れば大丈夫だよな」
どうやら有馬はもう帰ったようだ。あまり遅れると有馬を待たせてしまうかもしれない。俺も早く有馬の家へ行かなくてはな。
[newpage]
◆
「先生、いらっしゃい」
「約束通り来たぞ」
「じゃ、じゃあ、どうぞ上がってください……」
俺は有馬の家へ上がる。以前家庭訪問に伺った時と変わらない、普遍的な家だった。部屋には大きな本棚が置かれており、中には大量の本が積まれていた。親は相当な本好きなのだろう。
「お父さんとお母さんはいるかい? できれば挨拶をしておきたいんだが……」
「両親は共働きなので、今は……だから、僕の部屋で少し話をしませんか? 仮装のための衣装の話とかもしたいので」
俺は有馬に案内されるまま有馬の部屋に向かう。話だけならリビングでもいいと思うのだが……まあ、仮装の衣装が有馬の部屋にあるからという理由なんだろうとそう思う事にした。
「お茶でもどうぞ、先生」
「おう、悪いな」
俺は出された麦茶をちびちびと飲むとふと部屋を見渡す。そこは至って普通の子供部屋といった感じだったが、俺はリビング同様大量の本が積まれた本棚に目がいった。中は漫画に小説に参考書といったラインナップだ。最近の親は教育熱心な者が多いなと俺は感心していた。
「で、仮装は何にする事にしたんだ?」
「それなんですけど……僕、狼男とキョンシーで迷っているんです。先生はどれがいいと思いますか?」
なるほど。と俺は思った。
狼男は割とベターな選択だと思うがキョンシーとはなかなか渋い。去年の生徒がした仮装は狼男、魔法使い、ジャックランタン、吸血鬼、ゾンビが主だったが、やはりキョンシーはいなかった。
「有馬はキョンシーを知ってるのか。ピョンピョン跳ねる奴だろ」
「はい。キョンシーといえばあの姿勢が有名ですが、キョンシーはちゃんとした埋葬をしなかった死体が生き返ってしまった者で、死後硬直で身体が固まり動かないのでああいう姿勢を取っているんでしたよね?」
「よく知ってるなぁ、キョンシー好きなのか?」
「え、えっと家の本に書いてあったのでそれで覚えたっていうか……」
それでも勉強熱心なのは良いことだ。と俺はまた感心した。折角だから俺は有馬のやる気を尊重してあげようと、そう思った。
「そんなに知ってるんならいっそここはキョンシーにしてみるのはどうだ? 去年もキョンシーの仮装した子はいなかったから新鮮だと思うし」
「先生はそっちがいいんですか? 先生がいいって言うのなら、そうしますけど……」
「そうか! ならそうすれば良いと思うぞ! まあ、最後は有馬の意思で選べばいいと思うけどな」
そう言った瞬間、有馬は何かを決めたような顔をした後、勉強机の棚を漁る。そこから何かを取り出した有馬は、それを俺に見せてきた。
「先生、これを……」
それは何やら不思議な文字が刻まれたお札だった。多分キョンシーの仮装用に使う小道具なのだろうが。
「先生、……してください」
有馬が何かを小さい声で呟いたその時、何故か俺はその声に[[emphasismark:従いたくなった > ﹅]]。何故なのかは分からないが、有馬の言葉にはそうせざるを得ない魔力があった。
「『契約』……してください。金吉先生……
あなたの残りの人生を、僕にください」
「あっ……、ああ…………」
俺は、有無を言わさずそう言う事しかできなかった。俺の思考の中は彼の言葉に肯定すること、それだけしか頭になかった。彼の、有馬友二の言葉は絶対だと、いつしか俺の脳にはそう刻み込まれていた。
その瞬間、ぺたりと、糊も使っていないのに、俺の額に有馬の札が貼りついた。
「あ、うっ……!?」
そこから、俺が全身で感じたものは熱があらかた抜けていくような感覚。肉体にみなぎるエネルギーが、活力が、あの札に全て吸い取られていくかのような、魂そのものがなくなっていくかのような……そんな感覚が。
「ああぁ……なんだぁ、これぇ……。どういうっ、ことだぁ……!?」
「ハロウィンは、不思議な力を呼び込みやすい日……だから都合がいいんですよ先生……。
あなたは、僕と契約を交わしたんです。僕の使い魔となる契約をね」
つかい……ま……!? 何で、俺が……有馬の……? そもそも使い魔とはどういう……。
有馬は、目の前にいる彼は、一体何者なんだ……!?
「クラスのみんなには黙ってたけど、実は僕、魔法界の住人なんです。
魔法授業の一環で、僕の歳ほどになると、人間界の者を一人使い魔にするという宿題を課せられるんです。
昔は人を攫ったりしていたらしいですけど、今はそうもいきませんからね。
だから「ハロウィンの仮装」にかこつけて使い魔の契約を無理やりさせることが今はメジャーになっているんです。だから、僕もそれに乗っかろうかと」
魔法……!?
人間界……?
聞き慣れない現実離れした単語が次々有馬の口から紡がれていくが、俺当人はこの異常な現実と未だに体じゅうから抜けていく何かに苛まれ、そんな言葉は頭にまったくといって入ってこない。
「使い魔は、狼男かキョンシーのどちらかにしようと思ってたんですけど、先生がキョンシーが良いって言うので、そっちにする事にしました。嬉しいですか、先生?」
そういうことだったのか。
俺はてっきり、仮装のことを言っているのかと思っていた。いや、有馬は俺がそう考えるだろうと読んであえてそんな質問をしたのだ。
小学生らしからぬ言葉を紡ぐこの少年ならば、そのくらいの頭は回るだろうと根拠なしに考えていた。
『嬉しいですか』だと?
そんなわけないだろう。嬉しいはずがない。はずなのに……
「そっ……そんなわけ……」
「その割には、体は正直なんですね」
有馬に指摘されて俺は気づいた。俺のチンポがビンビンと勃起していることに。
それを自覚した途端、頭の中に[[rb:靄 > もや]]のようなものがかかる感覚がした。それはおそらく快楽。悦楽。性的快感。
有馬への言葉を拒否する俺自身思考とは裏腹に、脳と肉体は彼の使い魔になるという事実を勃起という生理現象で応えてしまっている。
肉体と精神が乖離する感覚。それは生まれて初めて感じた絶望以上の、言い表せぬ感情だった。
「先生はキョンシーになるんでしたよね? なら絶頂の快楽はここで覚えとかないと」
有馬はそういうと何故か動くことのできない俺の下へ移動し、勃起したチンポを扱き出した。性知識に疎いはずのその幼い容貌とは裏腹に、その小さな手で俺の逸物をねちねちと弄る。
「気持ちいいですか? 僕にペニスを扱かれるのは……
これはご褒美です。使い魔になってくれてありがとう、先生」
『ありがとう、先生』。
皮肉で言われたはずのその言葉が、何故か俺はとんでもなく嬉しく感じていた。その言葉だけで、俺は何度も絶頂できるような気がするほどに。
虚ろになった全身がビクビクと快感に跳ねる。脳中にピンク色のいなずまが激しく光る。ひとたび当たれば即死してしまうほど激しい雷に撃たれたかのような感覚が俺を襲った。こうして俺は、教え子にチンポをコかれながら何度も、何度も射精したのだった。
「うわっ、臭い……すごい量ですね先生。
僕もいつかこうなっちゃうのかな……」
逸物が精液を吐き出すたびに、頭の中から大切な思い出が抜けていく。授業に追いつくため必死に勉強した学生時代、憧れの教師になるために努力した日々、そして、教師を目指すきっかけになったあの先生とも思い出も……。
教え子によって、ただの精液として排出されていく俺の思い出。何故射精とともに記憶が抜けていくのかは分からなかったが、脳みそに修正液をかけられたかのように頭の中が真っ白になっていく感覚を目の当たりにして、俺はその残酷な現実を受け入れるしかなかった。
それに、射精のたびに抜けていくのは記憶だけではない。生気、エネルギー。生きるために使われていた活力という活力が、精子と一緒に抜けていっているのだ。
絶頂とともに冷たくなっていく体。指先の感覚はもうない。体は快感で火照っているはずなのに、冷凍庫に入れられて筋肉ごと凍らされているかのような感覚が俺から消えないのだ。
体どころか、脳も感情すらも凍えていく。何もかもが失われるこの感覚は、恐らく『死』だ。
俺はこれから死ぬのだ。少なくとも教師で人間の金吉威は、間違いなく死を迎える。
「さようなら先生。そして、ハロウィンで会いましょう……」
俺は、ありまの、ことばを、さいごに、しこ……うが…………と――
[newpage]
◆
「死んだか。少なくとも人間としてはね」
今日、僕は金吉先生を殺した。魔法使いが必ず通る道とはいえ、やはり大切な先生を使い魔にしたのは割と後味が悪く思う。
「明日のハロウィンパーティーが最後の思い出か……」
担任を使い魔にしてしまった以上、もうあの学校にはいられない。父がある程度手を回してくれるとはいえ、かつての担任を手元に置いておく関係上、現状維持のままだと色々と不都合がでてくる。
そもそも使い魔を使役するくらいの年齢の者は長期間の魔法界での修行が必修科目となるため結局はここを離れなくてはならないのだが。
「先生……」
先生は白目を剥いたまま突っ立っている。肉体の感触は矢張り氷のように冷たかった。先生は、キョンシーに転生するために一時の死を迎えたという事だ。
「魔札の力から逆算すると転生は約半日後といったくらいか……」
最早ただの抜け殻と化した先生を鑑賞しながら、僕は人間界での生活を回想する。
入学時は関わると面倒なことになるからと、人間界の者とは比較的距離を置いていた。そんなところに彼は現れた。
『悩みごとがあるなら、相だんに乗るぞ』
それが先生が僕に言った最初の言葉だった。正直、こんな僕に親身になって話しかけてくれたことが、僕は嬉しかった。
人を避けて生きてきた僕を、クラスメイトはそれを感じ取っていたのか皆距離を取っていた。それは僕にとっては願ったりだったし、それでいいとも思っていた。だけどそれでも、僕は先生の言葉が嬉しかったのだ。
『有馬、先生といっしょに給食を食べよう』
『無理するな。お前のペースでいいんだ』
『えん足は楽しかったか』
『有馬はべん強熱心だな』
『ねつがあるのなら無理をしなくていんだぞ』
『先生はお前らが大好きだ』
ノートには先生に言われて嬉しかった言葉が羅列されている。学校から帰るたびにつけていたもので、これが僕にとっての唯一で一番の宝物になっていた。
「先生。……ずっと、好きでした」
僕は直立不動の先生の唇に、そっと接吻をした。
◆
「始まったようだね」
朝、目を覚ました僕は丁度先生がキョンシーとして転生するところを目の当たりにした。綺麗なチョコレート色をしていた瞳が、魔札の光と同じ真っ赤な色に染まっていく。
小麦色に焼けた健康的な肌が、生気の抜けた青白い色に変化していく。艶のある真っ黒な髪は脱色され白色に、爪と牙は鋭く尖り伸びていく。
僕は寝ぼけた頭を働かせて先生の変化を克明にノートに書き写していく。使い魔への変化に関するレポートは魔法学校での課題の一つだからだ。
先生は「あ、あがっ……」と少しだけ呻いた。ふと見ると股間の膨らみがピクピクと痙攣している。無意識に性的な快楽を感じているのだろうか。
しばらくして、先生が着ていた衣服に変化が起きる。グニャリと粘土のように形を変えたかと思うと闇色の中国風の衣装になったのだ。それはよく本やテレビでキョンシーが着ている衣装と酷似していた。
間髪入れず、どこからともなく帽子と靴が現れると先生の頭と足に着せられる。これで先生は本当にキョンシーとして転生したのだった。
「あ……ああ……」
低く小さな声で先生は呻いた。口からは唾液がしとどに溢れ出している。
直立していた体が、唐突にびん! と強制的に手を前に突き出す姿勢へと変化した。こうして見れば先生は本当にキョンシーにしか見えない。
触らせてもらった体はガチガチと鋼のように固く、いくら手を下ろさせようとしてもビクともしない。肉体が死を迎えたため全身が硬直しているのだろう、と僕は思った。
「気分はいかがですか」
「大変……善い……心地、です…………。
ご主人、様……。なんなりと…………ご命令を……」
たどたどしい口調で僕を“ご主人様”と呼ぶ先生。既に意識は魔札の中に用意された使い魔の魂に入れ替えられていた。
先生の魂は既に精液として蒸発したためあの世に逝けず、この世にもとどまれず、存在そのものが消失してしまったのだろうか?
『魂の精液化』は6年の保健体育で学ぶために、僕はまだその内容を正確には理解していない。最低限の知識は蓄えてはいるが、矢張り、僕にもまだ知らない事はあるという事だ。
「今日はハロウィンパーティーですよ。先生が先生として存在できる最後の日です。今日だけはあなたは金吉威という教師を演じてください」
「分かり……ました……ご主人様……」
手を前に突き出したまま膝立ちになる先生。恐らく彼にとってこれが跪くということなのだろう。
「先生、ごめんね」
「んっ……」
僕は先生のズボンを脱がすとペニスを露出させた。先生のペニスは肉体同様精液をとき放った時のまま停止している。体内の血液は既に循環してすらいないはずなのに。萎える前に海綿体が硬直でもしたのだろうか?
「ゾンビでも射精とかできるのかな?」
僕は好奇心のまま先生のペニスに刺激を与える。快感は感じているのか先生はしきりに喘ぎ声をあげていた。先生の喘ぎ声を聞いているとペニスを扱く僕の手も否応無しに早まっていく。
「うおぅ……」
絶頂に達した先生は、いきり立ったペニスから新鮮な精液を放った。どうやらキョンシーになったことで精巣が再び活動をはじめたようだ。死人ではあるが一応生命活動を続けているといったところだろうか。
「ん……」
僕はつい先生の亀頭から垂れる精液を舐めた。母が読んでいた本の真似をついしてみたくなったのだけれど。
「苦っ……。精液ってこんな味なんだ……」
呑み込むと喉がピリピリとし、お世辞にも美味しいとは言えないものだ。でも、先生のものはそれでも良いものだと思えた。僕は割と本気で先生の事が好きだったのだろうか。
「……んっ…………」
「……むっ……くちゅ……」
僕は先生にも僕の気持ちを確かめて欲しくて、キスをした。ディープキスという舌と舌を絡めるキスの仕方があったのを以前本で読んだ。僕は見様見真似でそれをやってみただけなのだ。
でもそれは僕の中をじゅんと温かくするもので、それはなんというか、とても善いものだった。何度も何度もしたい、続けたいと感じた。
「ん。はぁ…………。
おっといけない、もうこんな時間か。学校に行かなきゃ」
興奮冷めやらぬまま、僕は最後の人間界での登校をはじめた。
[newpage]
◆
「金吉先生は今日体調不良でお休みです。ただ軽いものなので、ハロウィンパーティーには参加できるかもしれないそうです」
別の先生からそう報告があった。どうやら人間界では先生の処遇はそういうことに[[emphasismark:なった > ﹅]]らしい。
どよめく生徒たちの声の中には『金吉ってうるさかったし、休んでくれてラッキーだったな』『ハロウィンパーティーも休んでくれんかな』などというクラスメイトの声が聞こえた時はどうにかしてやろうかと思ったりもしたが、[[rb:大 > おお]][[rb:事 > ごと]]になるのはもっとダメなのでぐっとこらえた。
「今日の授業は終わりです。今夜はハロウィンパーティーですので、モンスターの仮装をして大人の人と一緒に校門前へ集まること。夜道は怪しい人物などに気をつけて安全に来てください」
代行の教師が定時報告を終えると放課後を迎えた。僕にとってはこれが最後のホームルームだった。
さよなら、僕のもうひとつの学校。
……でもまだ少し、まだやることがある。
◆
「トリック・オア・トリート!」
「お菓子をくれなきゃイタズラするぞ!」
クラスメイトや、隣町の子供の声が町中に木霊する。皆思い思いの仮装をして指定された家に向かって練り歩く。
父によれば町内会の仕掛人の家の人達がお菓子を用意して待っているらしく、子供たちは先生や町内会の役員の指示に従って家を回るよう誘導されるのだった。
「お、金吉先生」
「どうも、相沢くんのお父さん」
「有馬くんは魔法使いで、金吉先生はキョンシーですか。割と渋いですね」
「そうですか、ありがとうございます」
僕のクラスの相沢の父が話しかけてきた。今はキョンシーに金吉威の人格を演じさせているため、おそらくはボロが出ることはないだろう。
「どうして金吉先生は有馬くんと? 有馬くんのお父さんはどうしたんですか?」
「有馬の、お父さんは、仕事で、来られない、ので、代わりに、私が」
「そうですか。大変ですねー」
「どうも」
先生は僕が用意した回答を指示通りに淡々と話し出す。相談として先生を呼び出していたためクラスメイトも「ははあ、だから先生と話ししてたのか」と思うだけで怪しまれることはなかった。
「ハロウィンパーティーに出た感想は?」
「俺は、お前と、一緒に、出られて、嬉しい。楽しい。有馬も、嬉しいだろ?」
先生は不気味な作り笑いを浮かべながらそう言う。たとえまがい物だったとしても本来の先生がそう言うだろう言葉を口にしてくれたのは正直嬉しかった。
「いい子ですね、先生。じゃあ、そんな先生にプレゼントがあります」
「何だ」
「誕生日おめでとう、先生」
それは顔の上半分を覆う紫色の仮面だった。これは先生が使い魔として生きていくためのものだ。
もう先生は、世間では金吉威は今日死亡した事となる。既にその話は魔法学校の教師を通して魔法協会が実行済みだろう。
そのための、金吉威としての正体を隠すための仮面だ。今日から先生は使い魔として一生の時を顔を隠しながら生きていくのだ。
「ありがとう……」
先生はそう言うと仮面を被った。二度とそれが外れることはないだろう。その時、僕は先生にとてつもなく重い業を背負わせてしまったと実感した。
だから僕は責任を持って先生と一生寄り添っていかねばならない。それが魔法使いとなる者に与えられし試練の一つなのだから……。
[newpage]
◆
翌日、僕の通う魔法学校では課題の使い魔の発表会が行われていた。
クラスメイトはヴァンパイア、ゾンビ、狼男、夢魔、インプ、獣人、爬虫人など、様々な種類の使い魔を従えている。
その中でキョンシーを使い魔にした魔法使いはやはり少ない。しかしそれは先生が深層的に望んでいたことなのだから、僕はそれを受け入れる。そもそも拒むつもりは毛頭ないのだけれど。
「そういや、人間界ではいまだに異性愛と同性愛に関しての不毛な議論を続けていると聞いたけど、本当かな?」
「人間界はまだまだ発達が緩やかだね。魔法界は既に性に対する垣根は存在しなくて性別関係なく愛する権利が当たり前にあるから、人間界でその話をまだしてるって聞いた時は驚いたなぁ」
「姿形は同一とはいえ、その本質はまったく異なる。故に人類と魔法使いの相互理解の可能性はほぼゼロに近い……か。僕としては、その垣根もさっさと取っ払ってもらいたいものだけど……まだそれには遠そうだね」
魔法学校ではクラスメイト同士の他愛のない会話があった。人間界での体験をみんな語り合いたくて仕方がないのだろう。
「保健体育は来年に使い魔を使っての性行為の実習、再来年には精液と魂の因果関係についての授業だっけ?」
「それよりも魔法学が来年からかなりレベルが上がるらしいからそっちが心配かな。やっぱりクラスの高いコースは魔法学の成績が一番重要になってくるし」
「使い魔の正しい使い方や人間との正しい折り合いの付け方とかも意外と難しいらしいよ。若いうちから差別意識を消していかないと魔法界で生きていくのにすごく困るよってママが言ってたし」
中には授業が本格化するこれからに備えて話し合いをしている熱心な者もいる。僕も両親のように偉大な魔法使いになるべく努力をしなければならない。つくづくそう思った。
「ご主人様、明日、授業で、使用する……魔法書です……。
明日に備えて、呪文の、書き慣らしを……」
「分かってるよ、ありがとう威」
先生が慣れない体を駆使して魔法書を持ってきてくれた。ただ股間をずっと膨らませているのは目のやり場に困る。使い魔にゾンビ系が少ない理由がわかった気がした。
◆
「先生、今日もやろうね……」
「性行為の、実習は、来年から、なのですが……予習にしては、いささか、早計、なのでは……」
「そんなんじゃないよ。何度も言ってるだろう。僕は、君が好きだからやってるんだ。今日は先生の尻の穴に入れてみたいんだ。
アナルセックス……っていうんだっけ? 本で読んでちょっと気持ち良さそうだったから」
僕はアナルセックスの記述がある本と、絵を先生に見せた。先生はしばらくキョトンとした顔で本を見つめると、理解した顔で袴を下げくるりときびすを返し僕の目の前に立った。
「まずは、ローションを手に垂らしてっと……」
家に置いてあったローションを指に絡めると先生の尻の穴に指を少しずつ入れていく。
「んっ」
ピース状にした指を左右に開いたりして先生の尻穴をほぐしていく。指を抜き差しするとねっとりとした糸が先生の尻穴から垂れてきた。小刻みにひくひくと震える尻穴がとてもいやらしく思えた。
「やっぱり死体だから、あんま入んないね……」
「申し訳、ございません……ご主人、さま、あっ!」
それでも固かった尻穴は抜き差しを続けるにつれ少しずつ緩くなっていく。僕の皮を被ったペニスもそろそろいたいほどに勃起してきている。
「そろそろ、いいよね」
僕は、我慢できず、ペニスを先生の尻穴に突っ込んだ。その瞬間、僕にビリビリと電気が走った。
「ああっ!」
僕はつい大声で叫んだ。そのまま感覚に任せて昔見たアダルト映像の記憶を頼りに性行為を開始した。
尻の奥を突くように、尻穴の中を前後するように、僕は腰をガクガクと振った。
「あっ、あっ、ああっ!」
「ああ……う、うっ、ううおおっ!」
「先生の尻膣内、気持ちいい!」
先生も気持ちいいのかいやらしい声で呻いている。僕もその気持ち良さに腰を振る速度が早まっていく。
温度が消え失せひんやりとした背中に抱きつく。先生の背中はやっぱり大きくて、包容力があって、僕が一度手に入れたかったその背中そのものだった。
キョンシーの温度のない背中が、何故かとても温かいように感じた。
「先生! 使い魔になってくれて、ありがとう! 僕、先生が……先生が……うっ!」
とうとう僕は絶頂に達し、先生の中に僕の精液を出した。まだ子供だからちょっとしか出ないけど、大人になったらもっといっぱい精液を注ぎ込みたい。そう思った。
先生も僕と同じく手も使わず射精してしまう。先生が快楽の笑みを浮かべているのは、仮面越しでもよく分かった。
「はぁ、はぁっ……先生大好き……これから、ずっと一緒にいてね……」
「うっ……んああっ。
……かしこまりました、ご主人様……」
「これから、楽しくなりそうだよ……」
僕はこれから起こるであろう楽しい日々を頭に浮かべながら、眠りについたのだった……。
END
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