腹の音の変化

  ぐ~、っと腹が鳴る。

  その音に、昔なら適当に食事を済ませていた。空腹を満たす事が出来たなら何でもいい。

  部屋を出て、冷蔵庫を漁る。食事というものにまるで興味がなかった。

  きゅ~、っと腹が鳴る。

  その音に、鼻がひくつく。台所からおいしそうなにおいが漂ってくる。

  台所に向かえば案の定、妻が美味しそうな食事を用意してくれていた。出来立てを味わいたいが為に俺はいてもたってもいられず、部屋から出発してしまったというわけだ。

  今と昔。食生活の変化は音を通して如実に出た。

  ぐ~、の音色は「何でもいいから早く食わせろ」と乱暴なもの。健康度外視で目につく物を何でも食べた。

  きゅ~、の音色は妻に胃袋を抱きしめられたもの。掴まれると、ぎゅ~、だが俺の音色は、きゅ~、だ。

  胃袋を優しく包む妻の料理。ぽかぽかと俺の胃を刺激しては、心からの感謝を口から出させる。

  「ありがとう」の一言に、妻から「きゅん!」と音がする。