駅弁の話

  私は旅行の移動手段に汽車をよく選ぶ。

  その理由は駅弁。日本の駅弁には季節や土地によって一期一会の出会いが存在する。

  それを味わわずして、何が旅行か。駅弁は日本の文化。故にこれも旅行の醍醐味である。

  購入した駅弁をすぐに開けるのはナンセンス。私は汽車が走り出すのを待つ。

  発車のベルが先か、私の腹の音が鳴るのが先か、ここは我慢比べと行こうじゃないか。

  空腹は最高のスパイス。走り出した汽車が見せる風景を肴に駅弁を味わう。

  おっと、急な揺れにおかずを落とさぬよう気をつけなければ。

  箸を進めていると、近くからジュウゥゥゥ…と音がした。

  小さく煙を上げるあの箱は、加熱式の駅弁。という事はもしや牛たん弁当か?

  まさに駅弁界の蒸気機関車。煙が収まると走り出す食欲。

  駅弁を食べている最中だというのに私の腹が鳴ってしまう。

  次の駅で私も加熱式駅弁を購入するとしよう。

  食べ過ぎてしまうお弁当。これもまた、旅行の醍醐味である。