のっぽさん

  のっぽさんは何でも知っている。僕やママやパパ、じーじやばーばの事だって何でも知っている。

  「何でもは知らないよ。私が知っているのは、お爺さんと君のパパ。そして君の事くらいだ」

  何でママやばーばの事は知らないの?

  「彼女達は、ウチにやってきたお嫁さんだからね。でも、お婆さんや君のママがどれだけ綺麗だったか、私はよく知っているよ」

  ばーばって綺麗な人だったの?

  「そうだよ。ただ、お婆さんは君が赤ちゃんの時、旅に出たんだ。あの時は悲しかったなぁ…ウチに来た時の喜びを知っているからこそ、悲しみもひとしおだったよ」

  旅に出たら戻って来られないの?

  「少なくとも、私がならすベルの音で旅立ったのなら、もう戻って来られないよ」

  その時、真夜中にも拘らずのっぽさんのベルが鳴った。

  「ごめんね。もうお別れだ。私とお爺さんは天国へとのぼる。どうか、元気で」

  のっぽさんはそう言うと、百年休まずに動かし続けたその足をそっと止めた。