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怒れる拳、笑顔に当たらず?【後編】

  [chapter:緊急対策会議]

  グリーティングルームに到着すると、先程の4小隊に加えて、待機をしていた総勢30小隊が集結していた。

  一同が着席をすると、藤堂が思い悩んだ顔でグリーティングルームへ入室し早速会議を始めた。

  『それでは…これより落書き事件緊急対策会議を行う。事態は深刻化しているためよく聞いて欲しい』

  藤堂からの第一声を聞いてただ事ではないことを理解すると、一同が真剣な瞳で構えた。

  『まずは現状報告する。第一報は惑星ファレイダーの駅員からの協力要請だった。駅構内で落書きをしている男が一人いるとな。最初はアクルクス小隊に対処要請したが、落書き犯に壊滅。その後リゲル、スピカ、ケフェウスに対処へ向かわせたが、いずれも小隊で行動不能となり落書き犯を逃している。落書き犯は奪った小型艇で未だ逃走中だ』

  藤堂が真剣に内容を説明している最中、バルジの後方から徐々に薄ら笑いが聞こえた。

  『くくく、たった一人の落書き犯相手に4小隊が取り逃がしたとは、無様だな』

  『ふふふ、確かにな。それにあのローレンス隊長までやられたとは、格好がつかんな』

  『くく、あれではSDFとして不甲斐ないかぎりだな』

  当事者でない小隊長からの身勝手な発言にバルジは呆れていた。

  (この…馬鹿者どもが。ローレンス達はSDF内でも精鋭部隊だ。その4小隊が纏まってやられたことにもっと危機感を持てんのか。それにしても先程のこいつらの負傷具合を確認したが外傷は全くなかった。実際ここにいるローレンスとジュリアも見たところ無傷だ。だが、司令は小隊で行動不能と説明をしている。一体どういう意味だ?)

  一連の事象を考察している最中も、壇上にいる藤堂は話を続ける。

  「それでは、肝心の落書き犯について説明を行う。ローレンス隊長、実際に受けた被害も合せて説明を頼む」

  「……はい」

  何処か気乗りがしていないローレンスは静かに壇上へと向かった。

  少し心配そうに傍観をしていると、能面のような顔でローレンスは説明を始めた。

  「……それでは落書き犯について説明をする。犯人は管理局の調査により判明している。名前は自称ミスター・スマイリー、本名は微笑 真治郎 28才。メキシカン風の格好が特徴的だ。それでこいつの犯行手段は……」

  犯行手段について説明が始まると、バルジをはじめ他の小隊長も思わず息を飲んだ。

  一同が注目する中、ローレンスは真剣な瞳で告げた。

  「……自身の笑顔を見せることで対象を1時間も笑い転げさせ行動不能にさせることだ」

  「…………は?」

  意外な説明に思わずバルジの口から漏れた乾いた声はグリーティングルームで木霊した。

  その声に一同の視線がバルジに向くと、正面にいるローレンスからも怒りの視線を送った。

  室内が静まり返る中、唖然としたバルジは質問を投げかけた。

  「ろ、ローレンス隊長。それは何の冗談だ?」

  「バルジ隊長、私がこの場でそんな冗談を言うと思うのか?奴には特異体質がある。放たれる笑顔を直視した瞬間に狂い悶えるほどの爆笑が起きる。立つことすら困難で、とてもではないが追撃できる状態ではない」

  「では…4小隊ともその笑顔の餌食になって爆笑で悶絶した……と?」

  「だからそう言っているだろ」

  「だ、だがな。それならば無機物のロボやアンドロイドなどで対応すれば良いのではないか?」

  「あのな!俺がそれを思いつかないと思うのか!どういうカラクリか知らんが、差し向けた警護ロボ共もシステムショートを起こして全滅だ。その上防犯システムも奴の笑顔を捕捉した瞬間に謎のシステム故障を起こす始末だ」

  「なっ?!なんだと?!」

  予想外の状況に絶句していると、隣にいたジュリアの恨みの籠もった声で進言した。

  「あのふざけた顔……モニターで捉えても効果があるわよ」

  「は?!そ、そうなのか???」

  「えぇ。お陰様で司令室にいたメンバーは全員悶絶するほど爆笑する羽目になったわ。想い出すだけで腹立たしい。いっその事、殺したくなるわ」

  「そ、そうだったのか……1時間も笑いで悶絶とは…大変だったな」

  気が抜けたように応対していると、ジュリアとローレンスが睨みながら告げた。

  「貴方……呑気な事を言っている場合ではないわよ」

  「その通りだ。次のターゲットはお前らだぞ」

  「は?!そ、それはどういう事だ???」

  再び舞い降りた不可解な事に今度は藤堂が補足を入れた。

  「それが…ケフェウスを撃退したのちにミスター・スマイリーは犯行声明を残した。『次はディスティニー駅とSDF車両のビックワンを狙う』とな」

  「はぁ?!」

  不可解な犯行声明を聞いて一瞬思考が停止するが、気を取り直して質問をした。

  「で、ディスティニー駅は何となく分かりますが、何故ビックワンが狙われるのですか!」

  「これは私の推測だが、彼は『放浪の天才芸術家』と言っていてな。恐らく自身の芸術を宇宙に広めるために活動をしているのだろう。それで始発駅のディスティニー駅舎とSDF車両シグナル番号001であるビックワンをターゲットにしたのだろう」

  「そんな身勝手な……ですが、ここまで被害をもたらして投降しないのであれば、こちらも武力による実力行使するべきではありませんか?」

  バルジが追及すると、藤堂をはじめローレンスとジュリアがため息をついた。

  「はぁ…馬鹿が」「はぁ…能天気ね」

  「はぁ…それが出来れば苦労しない」

  「ど、どういう事ですか???」

  未だに理由が分からず困惑しているバルジに藤堂は憂鬱な顔つきで返答した。

  「これは総司令より直々の命令だ。この自称ミスター・スマイリー 微笑 真治郎は絶対に殺害してはならない。必ず…生け捕りにせよ…との事だ」

  「なっ?!」

  「「「「「はぁぁぁぁぁ?!」」」」」

  予想外の条件にバルジをはじめ他の小隊長も驚きながら怒りの声を上げた。

  「ちょ、ちょっと待ってください!そんなのあんまりじゃないですか!」

  「そうです!そんな訳の分からない特異体質があるのにどうやって対処しろというのですか!」

  「無茶苦茶な命令も大概にしてくださいよ!」

  「キミ達の気持ちは充分理解できる。だがこれは決定事項だ。それを踏まえて対抗策を協議してほしい」

  藤堂からの悲痛な要望に嫌な顔をしながらもバルジは腕を組んで思考を巡らせた。

  (なるほどな。道理でローレンス達がやられたはずだ。しかしこれはかなり難儀な敵だ。ジュリアからの情報からしてリアルタイムで笑顔を直視すれば行動不能になると。笑い狂うということはおそらく脳への伝達神経を刺激している。だとしたら、ユキの治療でもどうにもならんだろうな。殺傷能力のある武器の使用が不可となると、生け捕りにするにはターゲットの顔を直視せずに、麻酔ガンで眠らせるしかない。だが、麻酔ガンの射程はあまり長くない。射程圏内では間違えなくターゲットの顔を認識してしまう。ターゲットの顔を見ずに、撃てる距離まで近づくには………ん?待てよ……)

  様々な策略を考えていると、あることが過ぎり、確認の為隣にいるジュリアに声を掛けた。

  「………なぁジュリア。あの笑顔はどのくらい認識すれば効力が発揮されるか分かるか?」

  「え?さ、さぁ…流石にそこまでは計測できていないわ」

  「ならば質問を変える。モザイク状態で笑顔を見た場合はどうだ?」

  「そ、それはモニターで検証したけど、大丈夫だったわよ」

  「……そうか。ならば、方法はこれしかないな…」

  バルジから漏れた言葉にその場の一同が注目すると、代表で藤堂が尋ねた。

  「……バルジ隊長。何か思いついたのか?」

  「はい。かなり愚策ですが、ひとつだけ対抗策はあります」

  「ほ、本当か!それはどのような策なのだ??」

  期待感たっぷりの藤堂からの追及に再び一同が注目するも、発案者のバルジはしれっと答えた。

  「……すみませんが、今はお答えできません」

  「「「「はぁぁぁぁぁ?!」」」」

  無責任とも捉えられる発言にその場の一同から不満の声が漏れた。

  そして、同期仲のローレンスとジュリアが即刻抗議した。

  「お、お前!この非常時になんだその返答は!!!」

  「そうよ!何か思いついたのならハッキリ言いなさいよ!!!」

  「だから、今は言えんと言っているだけだろ。それに内容的にもあまり人に言える事でもない」

  「貴様……それでもSDFの小隊長か!!!」

  「貴方ね……冗談も大概にしなさいよ!!!」

  「何とでも言え。ただ……対抗策を講じるにも準備に時間が欲しい。藤堂司令、ターゲットがディスティニー駅に到着するまで、あとどれ程ですか?」

  「……推測では…あと4時間後だ」

  「……分かりました。では、何とか間に合うように今から準備をしてきます。すみませんが、少しでも時間が稼げるように対抗策を検討してください。ローレンス隊長、俺のシリウス隊員を臨時でお前に預ける。好きに使ってくれ。では司令、会議中で申し訳ありませんが、私は一旦ここで失礼します」

  バルジは説明を終えると、立ち上がってそのままグリーティングルームを退出しようとした。

  急転直下で告げた事に対して怒りが爆発したローレンスが猛反発した。

  「き、貴様!!!俺にシリウスの面々を預けるだと!無責任な上、身勝手すぎるだろ!!!」

  扉前で怒号が飛んできて思わず歩みを止めた。

  「無責任ではない。最善を尽くしているだけだ」

  「俺にはそうは見えん!貴様まさか、自身の保身の為に逃げるのではないだろうな!!!」

  鬼の形相で追及した事に対してバルジは少し振り向いて笑みを溢しながら答えた。

  「安心しろ。俺が守りたいのは自身の保身ではなく、銀河鉄道そのものだ。何があろうとも、銀河鉄道はSDFが守る。そうだろ?ローレンス隊長」

  「ば、バルジ…」

  唐突に向けられた青い瞳には疑いの色は全くなかった。言葉を詰まらせ会話が終わると、バルジは早々にグリーティングルームから退出してしまった。

  残された一同は結局バルジを再び呼び戻すことはせずに限られた時間で対抗策を検討した。

  長い廊下を歩きながらバルジは携帯で連絡をしていた。

  ピロロロ…ピっ!

  「ユキ、すまんが俺と一緒に医局へ来てくれ。大事な任務を頼みたい」

  その後、バルジはユキと共に医局へ向かい、他のシリウス一同は共同ミーティングルームでケフェウスと合同で作戦会議をしていた。

  「……以上が、現状で判明している犯人の特性だ。なお、バルジ隊長は別行動で準備を進めているため、本作戦では私が臨時で2小隊の指揮を取る。いいな!」

  「「「了解!」」」

  ケフェウス一同がいつものように返事をする中、呼び出されたシリウスは困惑をしていた。

  学「ちょ、ちょっと待ってください!バルジ隊長が別行動で準備しているってどういう事ですか?!」

  ロ「そのままの意味だ。理由は奴から言われておらんから、俺には分からん」

  学「そ、そんな…」

  デ「けど、本当にバルジ隊長は何も言ってないんですか?」

  ロ「あぁ。藤堂司令を前にしても結局なにも言わなかった。ただ、時間稼ぎをして欲しいことと、シリウス一同を俺に預けるとだけ言い残して何処かに行ってしまった」

  デ「そうっすか」

  ル「もしかして…ユキが退出していったことに何かあるのかしら?」

  デ「さぁな。こういう時の隊長は絶対に作戦を漏らさないから分からねぇよ」

  ル「そうね。上手くいくといいけど…」

  デ「だな。隊長がお手上げじゃ、ディスティニー駅もビックワンも全部気色の悪いペイントの餌食になっちまうもんな」

  ル「それは流石に嫌よ」

  デ「だな」

  学「同感」

  シリウス一同が肩を落としていると、ローレンスが一喝した。

  「呑気に雑談をしている場合ではないぞ。奴がディスティニーに到着するまであと3時間しかない。それまでに体制を整える必要がある」

  「ですけど、実際どうするんですか?直視したらアウトなんですよね」

  呆れ顔のデイビットからの追及に対してハッキリと答えた。

  「あぁ。我々も経験したが、一秒でも直視したら発動条件が満たされる。そうなったら1時間笑い地獄だ」

  「げっ…マジかよ。ちなみに…ローレンス隊長もご経験者ですか?」

  「お前、わざと聞いているだろ。経験していなければここまでの危機感は持たん」

  「ですよね……で、マジでどうするんすか?」

  睨まれた事により少し怯えながら尋ねると、対抗策を一つ提示する。

  「ひとつ試したいことならある」

  「それは何ですか?」

  「要するにターゲットの顔を脳が認識したらアウトで、認識しなければセーフと言うことだ」

  「………ローレンス隊長。それ、すげぇ当たり前のことですけど…」

  「分かっている。要するに目隠しをしていれば、ターゲットに接近できるということだ」

  「そりゃそうですけど…そんな目隠しなんてしたら相手が全く見えないじゃないですか」

  「重々承知している。だから作戦はこうだ。まず目隠しをして近づく隊員を一人選抜。ターゲットから距離を置いた俺がインカムで行動の指示を出す。目隠し隊員はその指示通りに行動をする。他の隊員はターゲットの揺動を行う」

  ローレンスからの説明を聞いていたピエールは作戦に不安を感じていた。

  「ローレンス隊長、それはいくらなんでも無謀なのではありませんか?」

  「元より、無謀は覚悟の上だ。殺害が不可である以上、麻酔ガンが届く距離まで接近するにはそれしかない」

  「それは分かりますが、その目隠し隊員は一体誰が務めるのですか?」

  「正直それが一番の難問だ。誰か志願者はいるか?」

  ローレンスからの問いかけに一同が目を背ける中、ある人物が名乗りを上げた。

  「ローレンス隊長、俺がやります!」

  「有紀くん?!」「学?!」

  志願したのは有紀。意外な志願にローレンスは少し険しい表情をして確認した。

  「有紀、状況は理解しているのだろうな。指示を出すのはバルジではなく、俺だ。それでもお前は指示通りに動けると言えるのか?」

  少し重みのある声音で尋ねると、学は少し下を向いて話を始めた。

  「ローレンス隊長。確かに不安な部分はありますし、バルジ隊長が留守な時にいつものようにできる自信はありません。でも…」

  「でも?」

  「俺!バルジ隊長を信じています。隊長が時間を稼いで欲しいと言っているのなら、たとえ捕獲が出来なくてもそれだけはやり遂げる自信はあります!」

  顔を上げて向けられた迷いなき真剣な瞳に反論する言葉はなくローレンスも覚悟を決めた。

  「……分かった。お前の命は俺が預かる。ならば早速実戦訓練をするぞ」

  「はい!」

  「宜しい。皆はここで他に打開策がないか検討を続けてくれ。襲撃時刻前に再集合して奴を迎え撃つぞ」

  「「「「「了解」」」」」

  それから一同は各々がミスター・スマイリーを迎え撃つ準備を整えて、3時間後の刻限を迎えた。

  [newpage][chapter:スマイルVS空間鉄道警備隊]

  管理局エントランス前。

  多勢のSDFが武装した状態で待機をしていると、一隻の飛行艇が着陸した。

  着陸した飛行艇からはハイカラなメキシカン風の服装の男性が降車してきた。

  「ふふ、初めまして、SDFの皆さん。私はミスター・スマイリー。放浪の天才芸術家です。こんなに大勢のファンがお出迎えとは嬉しいですね。サインが欲しい方はいますか?」

  唐突の自己紹介に対して、外部スピーカーから藤堂が応対した。

  『銀河鉄道管理局司令の藤堂だ。貴様がミスター・スマイリーだな。お前は既に包囲されている。無駄な血は流したくはない。速やかに武器を捨てて投降しろ』

  「ふふ、私は武器など持たない。私は放浪の天才芸術家。私の作品を宇宙に広めるため日々創作活動を行っている。だからここで止まるわけにはいかない。銀河鉄道管理局にも私の作品を提示してあげよう」

  『悪いがそういうわけにはいかない。投降しないのであれば、こちらとしても強硬手段に出るに他ないぞ』

  「頭のお堅い方々だ。そういう血に飢えた考え方は私には理解出来ない」

  『どうやら交渉決裂だな。宜しい。総員に通達!SDFの総力を掛けてミスター・スマイリーを確保しろ!!』

  号令が掛かった瞬間に5小隊が一斉確保に向かった。

  駆け足で駆け寄った時、ミスター・スマイリーは一同に満面の笑みを披露する。

  【ミスター・スマイリー♡♡♡】

  総勢30人程のSDF隊員は直視した瞬間に動きを止めた。

  「「「「「ぷっ!ぎゃはははははっ」」」」」

  「「「「「ぐっ!ぶははははははっ」」」」」

  「「「「「ふぐっ!あははははははっ」」」」」

  「「「「「ばっ!がははははははっ」」」」」

  「「「「「ぷっ!だははははははっ」」」」」

  武装した隊員は武器を放棄し腹を抱えてその場に倒れてしまった。

  悶絶する隊員を通り過ぎ、ミスター・スマイリーは管理局エントランスへと侵入し、エントランス内で落書きを始めた。

  楽しそうにペイントをしていると、今度は10機の警護ロボがミスター・スマイリーへ交戦を始めた。

  『止まりなさい!速やかに降伏を…』

  【ミスター・スマイリー♡♡♡】

  ビリビリビリ………ドカン!!!プシュ~

  警護ロボはミスター・スマイリーの顔を認識した瞬間にAIユニットがショートを起こし、誘爆が起きて行動不能となってしまった。

  警護ロボを片付けた頃にはエントランスには世にも奇妙なクマのイラストが大きく描かれていた。

  満足そうにすると、再び移動を開始し、管理局内へ進行を開始した。

  進行をしながらあちらこちらにイラストを描いていると、今度はスピカが立ち塞がった。

  遠距離で対峙すると、一斉にワイヤガンを放ち無数のワイヤーでミスター・スマイリーの動きを封じた。

  「残念だったわね。あなたの発動距離は分析済よ。この距離ならあなたのスマイルは私たちには届かないわ」

  ジュリアが勝ち誇った表情をしていると、ミスター・スマイリーはポケットからあるボールをスピカのところに転がした。

  コロコロ…

  愛「え?なによ…これ」

  マ「もしかして…爆弾?!」

  シェ「えっ?!ウソでしょ?!」

  スピカ3娘が困惑しているとボールが突然真っ二つに割れて開いた。

  パカっ!

  【ミスター・スマイリー♡♡♡】

  開いたところから映像でミスター・スマイリーの笑みがリアルタイムで映し出された。

  直視した瞬間、スピカ一同はワイヤガンを手放した。

  愛「ふっ…きゃははははははははは」

  マ「ぷっ…あはははははははははは」

  シェ「ふふ…ぷははははははははは」

  笑い転げる3人を見ていたジュリアは呆気に取られていた。

  「なっ?!なんてことを……しょうがないわ。だったら力ずくでも!」

  麻酔ガンを構えて発砲しようとすると、ミスター・スマイリーはワイヤーを鞭のように投げ、ジュリアに巻き付けた。

  「ちょ?!や、やめなさい!放しなさい!!きゃあっ!」

  ドサっ!

  巻き付けられたままワイヤー思いっきり引かれた事によりバランスを崩して転倒をした。

  「痛たた…もう!何するの…」

  【ミスター・スマイリー♡♡♡】

  転倒をして横渡っているジュリアにミスター・スマイリーが笑みを向けると、怒っていた顔が徐々にほっぺたを膨らませて顔面が崩れた。

  「ぷっ!あははははははははっまたはははっこれへへへ」

  地べたで笑い続けるジュリアを通り過ぎ、さらに奥へ進行を続けた。

  しばらく歩み続けていると、今度はデイビットとルイが影からそっとある物をミスター・スマイリーへ投下した。

  ボーーーーン!

  投げ込まれたのは煙幕弾。辺り一面煙に包まれる中、デイビットとルイは麻酔ガンを構えて静かに進んでいった。

  「へへ、これだけの煙じゃ流石に顔なんてよっぽど近づかないと拝めねぇからな」

  「作戦は分かるけど、視界が悪いのは私たちも一緒よ」

  二人が警戒して進んでいくと、突然正面に大きく何かが見えた。

  (げっ?!煙幕投影ってそんなのありかよ?!)

  (ウソでしょ?!)

  【ミスター・スマイリー♡♡♡】

  二人が見たのは煙幕に投影されたミスター・スマイリーの笑顔。

  直視した瞬間二人は手に持っていた麻酔ガンを床に落とした。

  「くくく…ぎゃははははは」

  「ふふふ…きゃははははは」

  デイビットは腹を抱えたまま後ろに倒れ、ルイも腹を抱えたまま床に転げた。

  転げた二人をニコニコしながら通過すると、長い廊下の先には操車場だった。

  ミスター・スマイリーがゆっくり進むと正面には目隠しをした学が立っていた。

  「おや?またSDF隊員さんですか?」

  「俺は有紀学。あなたがミスター・スマイリーですね。俺は無駄な戦いはしたくありません。スマイリーさん、お願いだから降伏してください!」

  「ふふ、随分と若いSDF隊員さんですね。ですが、私にはこの芸術を宇宙に広める重大な使命があります。ここで立ち止まるわけにはいきません」

  「……どうしても…だめですか?」

  「無理ですね。諦めてください」

  ミスター・スマイリーからの返答を聞いて学はやむを得ず麻酔ガンを構えた。

  構えた姿を見たミスター・スマイリーは不気味な笑みを溢して、学の方へ駆け出した。

  迷いなく学めがけて驀地に進んでいると、物陰に隠れていたコーリーとピエールが飛び出して左右から奇襲を掛けた。

  二人が駆け寄り射程距離まで近づくと、3人同時に麻酔ガンの引き金を引いた。

  バキューン!バキューン!バキューン!

  突然の発砲に対してミスター・スマイリーは咄嗟にジャンプ力で高く上空へ回避した。

  「なっ?!そんなのありかよ!」

  「ウソ?!」

  予想外の行動にピエールとコーリーは上空に回避したミスター・スマイリーを見上げた瞬間。

  【ミスター・スマイリー♡♡♡】

  見上げた二人に見せつけるようにミスター・スマイリーは満面の笑みを披露した。

  やられたと思った瞬間、二人も両膝を床について四つんばい状態になった。

  「ぷっ!あはははははは」

  「ふっ!ふふふふふふふ」

  二人が笑い狂っている声が麻酔ガンを構えたまま学は悲痛な思いでいた。

  「ピエールさん!コーリーさん!」

  『有紀!気を抜くな。奴はまだお前から正面より10m先にいる。気にせずにそのまま連射を続けろ』

  「は、はい!」

  バキューン!バキューン!バキューン!

  インカムから聞こえたローレンスからの指示で正気に戻り、指示通りに連射を続けた。

  連射に対してミスター・スマイリーは不規則に動きながら絶妙に回避を続けている。

  学まであと3mのところまで来たところで、スマイリーは学の目隠しに手を伸ばした。

  『左に回避しろ!』

  「っ?!」

  咄嗟に指示に有紀は慌てて左の側に回避をした。

  紙一重で目隠しを死守すると、再びローレンスが指示を出した。

  『右側に向けて撃て!』

  「くっそ!」

  バキューン!!

  体制を崩しつつも放たれた閃光はまたしてもギリギリのところで回避された。

  ひらりと回避をすると、最後に隠れていたキムが飛び出してミスター・スマイリーの背後に抱き付いた。

  ガシっ!

  「あら?」

  「へへ、流石に真後ろなら笑顔を見せられないだろ!有紀、今だ!」

  「でも…それではキムさんが!」

  「当ってもどうせ麻酔ガンだ!構わず撃て!」

  迷いなき声を聞いて学は麻酔ガンを構えて引き金を引いた。

  バキューン!

  放たれた閃光がミスター・スマイリーに当る直前に、体を思いっきり反転させ背中向けた。

  「うわっ!ちょ、マジ…ぐわっ!」

  「き、キムさん?!」

  背中に張り付いていたキムは振り回された結果、学が放った麻酔を諸に受け倒れてしまった。

  銃撃が空振りに終わっている事にローレンスは嫌な汗をかいていた。

  (また躱された。あの図体でよくも回避できるな。放浪の天才芸術家と名乗るよりも天才回避家と名乗った方がいいような気がする。しかしまずいぞ。部下全員が行動不能となってしまった。これでは有紀だけでは厳しい)

  『有紀、一時撤退だ』

  「え?!で、でも!」

  『このまま戦っても勝機はない。無駄死にするだけだぞ』

  ローレンスからの指示を聞いた学はしばらく硬直するが、決心はついていた。

  「……嫌です。俺は…逃げません!あとの事はお願いします!!!」

  『有紀?!』

  学はローレンスの命令を無視して目隠しを外し、ミスター・スマイリーの位置を確認すると再び瞼を閉じて駆け出した。

  勢いよく駆け出した姿に呆気に取られたミスター・スマイリーはそのまま立ち尽くしていると、諸に学の体当たりを受けた。

  「うわっ!」

  「くっ…スマイリーさん!お願いです!もうこんなことはやめてください!!!」

  瞼を閉じたまま必死に要求すると、下敷きになっているスマイリーが声を漏らした。

  「い、痛い!痛いよ!」

  下敷きにされているミスター・スマイリーからの悲痛な声を聞いて思わず瞼を開いて確認した。

  「え?す、すみません?!大丈夫で…」

  【ミスター・スマイリー♡♡♡】

  確認の為、開いた瞳が仇となり、直視した学は大きく目を開いた。

  「…ぷっ!!あはははははははっ」

  笑い狂っている学はそのまま横倒れて腹を抱えた。

  見るも無惨な姿に隠れていたローレンスは頭を抱えた。

  (有紀め…馬鹿者が。困ったな…いよいよ万策が尽きてきた。これでは管理局内すべてが落書きされてしまうのも時間の問題だ。バルジ…本当に対策をしているのだろうな!)

  状況が悪化している状態に苛立ちを感じていると、ミスター・スマイリーは移動を開始した。

  「さてと、確かもう少し進んだら車両場ってところよね。芸術の為にも早く行かないと!」

  ミスター・スマイリーはスキップをしながら、列車が停車している車両場へと向かう。

  (いかん。あの先はビックワンの車庫だ!バルジ、もう猶予はないぞ!)

  危機感を感じつつも打開策が思いつかない為、一先ず距離を取りながら後を追った。

  [newpage][chapter:笑いは人の薬]

  追尾していると、あっという間に車庫に到着して、目の前にはビックワンがあった。

  「これが…SDF車体識別番号001ビックワン。確かに美しい車体ね」

  「芸術家に褒められるとは…光栄ですね。ミスター・スマイリー…いいえ。微笑 真治郎さん」

  ミスター・スマイリーが声に反応して前を向くと瞼を閉じたままのバルジがゆっくりビックワンから降車してきた。

  無事に降車すると微笑みながら、優しい口調で会話を始めた。

  「初めまして。私はSDFシリウス小隊隊長のシュワンヘルト・バルジです。微笑 真治郎さん。出来れば貴方を見ながら話をしたい。少しだけ微笑むのを控えていただけませんか?」

  「初めまして。ミスター・バルジ。良いですよ。但し、銃を構えたら直ぐに微笑みますのでご注意を」

  ミスター・スマイリーの発言を聞いて、バルジはゆっくりと瞼を開いた。

  「お心遣い感謝します。微笑 真治郎さん」

  「いいですよ。それで、侵入者のわたくしと何のお話をするおつもりですか?」

  「他愛もない話ですよ。あなたの経歴を少し調べました。あなたは宇宙美大落選後も人々を喜ばせるために日々創作活動をしているようですね」

  「えぇ。そうですとも。それが何か?」

  「正直、私には芸術の才はありませんので、あなたの作品が良いか悪いかは判断できません。でも、人々を喜ばせ幸せにしようとしていることは、評価されるべきだと思います」

  「ミスター・バルジ。貴方はとてもいい感性をお持ちのようですね。その通りで私は皆を幸せにしたい思いでイラストを描き続けているのです」

  「なるほど。それは聡明ですね。しかし、それは我々も同じですよ」

  「…何ですって?」

  「我々銀河鉄道管理局も銀河鉄道で幸せを運ぶために運行しています。それを守るのが我々SDFです」

  「それの何処がわたくしと同じなのですか?」

  「銀河鉄道の施設ならびに列車も制作した人々が誰かの幸せになって欲しいと願って作り出した物です。このビックワンにも制作者の願いが込められています。それを無下にして良いとは私は思えない」

  「そ、それは…確かにそうだが…」

  「微笑 真治郎さん。あなたが自身の芸術を広めたい気持ちは多少なり理解できる。何処にでもとは難しいですが、管理局に掲示できる場所を設けてもらないか私が上層部へ働きかけてみます。だから…ここは一旦諦めてもらえないでしょうか?」

  言葉巧みに交渉をしている様子を離れたところからローレンスは呆れながら傍観していた。

  (この期に及んで交渉だと?!馬鹿が。一体どれだけの被害が出ていると思っている!それにこの程度の話で諦めるのならここまでの騒ぎは起こさんだろうが!)

  バルジの交渉に唖然としていると、ミスター・スマイリーは静かに返答した。

  「ミスター・バルジ。あなたのお考えは正しいとは思うよ。だけど、わたくしは一度決めた事は最後までやり遂げるつもりです」

  「…つまり、私の願いは聞き入れて貰えないということでしょうか?」

  「えぇ。わたくしはそこのビックワンに芸術を刻み、次はディスティニー駅を私の美学で埋め尽くします。それが、わたくしの放浪の天才芸術家としての責務なので」

  「………そうですか。それは残念です。出来ることならば、話し合いで解決をしたかったのですが」

  「ご期待に応えられず、すみませんね。ミスター・バルジ」

  交渉決裂が決まった瞬間、見守っていたローレンスは嫌な汗を流していた。

  (これでもはや話し合いでの解決はなくなった。バルジ……一体これからどうするつもりだ)

  静かに見守りながら、息を飲んでいると事態は動いた。

  しばらく沈黙をしていたバルジは一気に真剣な瞳へ切り替わり、目にも留まらぬ速さでホルスターより麻酔ガンを引き抜いて構えた。

  カチャ!

  【ミスター・スマイリー♡♡♡】

  バルジが麻酔ガンを構え引き金を引くよりも先に、ミスター・スマイリーは満面の笑みを見せた。

  直視した瞬間、バルジは腹を抱えて徐々に肩を振るわせた。

  「く、くく、くくく…あはははははは」

  (ば、バルジ!?)

  笑いに耐えられたくなったバルジはその場で膝をついてしゃがみ込んだ。

  その無様な様子を傍観していたローレンスは絶句した。

  (あの馬鹿!!!何を馬鹿真面目に真正面で対峙しているのだ!まさか早抜きで対処できると思っていたのならばとんでもない間抜けだ。これならば、まだ有紀の方が賢かったぞ)

  馬鹿笑いをしている姿に呆れていると、ミスター・スマイリーは歩みを再開させた。

  「許してください、ミスター・バルジ。さてと、それではこの黒が似合うビックワンへわたくしの芸術を刻ませていただきましょうか」

  にこやかにしゃがみ込んでいるバルジの横を通り過ぎようとすると、一発の銃声が鳴り響いた。

  バキューーーーン!!

  放たれた白い閃光はミスター・スマイリーの脇腹に命中した。

  「えっ……う……そ……」

  バタン!

  ミスター・スマイリーは麻酔の影響で睡魔に襲われ、そのまま地べたに倒れた。

  何が起こったのかと、周囲をみたローレンスは大きく目を開いた。

  目にしたのは先程まで爆笑をしていたはずのバルジが真剣な瞳で麻酔ガンを構えている姿。

  ミスター・スマイリーが眠りについたことを確認すると、ゆっくりと立ち上がった。

  「ふぅ……どうやら麻酔が効いたようだな。さて…早めに拘束をしておくか」

  安堵の息を漏らしながら電子手錠をかけているバルジの元にローレンスは駆け寄った。

  「バルジ!これは一体どういう事だ!!」

  少し怒りの声で叫ぶと、声を聞いたバルジは周囲を見渡していた。

  「ん?この声は……ローレンスか?」

  「何を言っている。俺に決まっているだろ。というか何処を向いて話しているのだ!」

  依然として違う方向を向いていることを指摘すると、バルジは笑みを溢した。

  「あはは、これはすまんな。やはりこれでは対話は難しいな」

  意味深な言葉をぼやきながら、麻酔ガンをホルスターへ戻し、突然グローブを外した。

  不可解な行動を不思議そうに見ていると、バルジは目元に指を近づけていく。

  その後、両目に触れると目をパチパチしながら振り向いた。

  「ふぅ…あ~さっぱりした」

  「サッパリしたって…一体どういう事だ?」

  「ん?あぁこれのことか?」

  バルジが見せたのは指先で光るコンタクトレンズ。

  「これは…コンタクトレンズか?だがお前は確か裸眼だろ?」

  「あぁ。これはユキに用意してもらった視力を落とすコンタクトレンズだ」

  「視力を……落とす?」

  「あぁ。これを付けると一時的に視力を下げることができる。わざと視野を悪くしたことにより麻酔ガンの射程外ではターゲットを認識することが出来ん。だから、俺は微笑みの影響を受けなかったというわけだ」

  「なっ?!」

  意外な発言に再び絶句した。

  バルジが考案した作戦は、視力が落ちるコンタクトレンズでわざと自身の視力を著しく低下させた上で、あたかも喰らったかのように芝居をし、ターゲットが油断をして麻酔ガンの射程距離まで近づいた時に仕留めるということ。

  「まさか…そんな詐欺師じみた事をしていたとは…ではあの交渉もわざとか?」

  「あの交渉の半分は本音だ。出来ることならば、話し合いで解決をしたかった」

  「それまた……ふざけた事だな」

  「まぁいいではないか。電子手錠もして、一先ず確保できたのだから穏便にしてくれ」

  「はぁ……もうどうでもいい。あ…これは事後報告だが、お前の部下は全滅したぞ」

  呆れ果てているローレンスがぼそっと告げた事に思わず声を上げた。

  「は?!お、お前!あいつらを自身の代わりに犠牲にしたのか!」

  「は?!好きで犠牲にしたわけではない!大体、貴様が作戦を黙秘していたのが悪いのではないか!」

  「『敵を欺くにはまず味方から』と昔から言うだろ!」

  「屁理屈ばかり言うな!!」

  二人が盛大に言い争っていると、ビックワンから整備士の一同が降車してきた。

  「ありゃ~せっかく解決したっていうのに何というか…」

  「でも、とりあえずビックワンが落書きされずに良かったですね、暁さん」

  「そうだな。多くの犠牲だったが、何とは解決で何よりだ」

  「そうですね」

  暁と整備士クルーが雑談をしていると、遠くからある男がやってきた。

  「皆さん~お待たせしました!!!」

  大声を上げてやってきたのはキリアン。

  なんやら装置を持って走っている。

  ((キリアン?何だか…嫌な予感が…))

  言い争っていたバルジとローレンスが振り向くと、得体の知れない寒気が全身を駆け巡った。

  「キリアン…こんなところにどうした?」

  「もうミスター・スマイリーなら確保…」

  「もう安心してください!この僕が開発したこの『ギャラクシー・スマイリー』であいつにも笑い地獄を味合せてや…おっととと、うぎゃ!」

  ドカン!!

  「「っ?!?!」」

  バルジとローレンスが声かけをした直後、駆け足で向かっていたキリアンは盛大にその場に転倒した。

  転倒したショックで転げた装置は勝手にシステムが起動した。

  ピロロロロロロロ…

  「ば、バルジ…これはまさか?!」

  「ま、まずいぞ!速やかにここから待…」

  【ギャラクシー・スマイリー♡♡♡】

  システムが起動し、車庫中に見えるほどの大きな顔が映し出され、車庫全体に木霊した。

  その場にいた全員が直視した瞬間に、徐々に顔面が崩れ始めた。

  「ぐっ…くくく…あはははははは」

  「ふっ…ふふふ…がはははははは」

  バルジとローレンスは腹を抱えてその場に四つんばいになった。

  笑いながらバルジは近くで笑い転げているキリアンへ必死に尋ねた。

  バ「あはははっキ…リアン…これ…は…いつ…まで…続くのだ?!」

  キ「ぎゃはははっ…計算…では…30分…程です」

  ロ「あはははっ…何とか…解除は…できん…のか」

  キ「ぎゃはははっ…突貫だった…ので…解除まで…考えて…いません…でした」

  ロ「がははははっ…この…大馬鹿…者が…!」

  バ「あははははっ…この…大馬鹿…者が…!」

  キ「ぎゃはははっ…すみ…ません!!!」

  その後、暫しの間、管理局内では多くの者の笑い声が館内に響き渡り、奇怪な事件は幕を下ろした。

  それから30分後。

  キリアンの宣言通りに効果が解除されると、バルジとローレンスは呼吸を乱しながら未だに仰向け状態で地べたに転がっていた。

  「ぜぇ…ぜぇ…これは…生き地獄だな、ローレンス」

  「ぜぇ…ぜぇ…だから…あらかじめ…言っていただろう…生き地獄だと」

  「ぜぇ…ぜぇ…そう…言えば…以前…有紀が…笑うと…健康に…良いと…言っていたな」

  「ぜぇ…ぜぇ…それは…本当か?適当なことでは…ないか?」

  「ぜぇ…ぜぇ…これは…カンナさんからの…情報だから…間違えはない」

  「ぜぇ…ぜぇ…そうか」

  「ぜぇ…ぜぇ…だが…いかに健康的でも…笑いは…程ほどが…いいな」

  「ぜぇ…ぜぇ…激しく…同感だ」

  【完】

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