餅怪獣パニック!?どうするドラゴフレイム‼︎

  「キキキキキキ!!!」

  人々の悲鳴が飛び交う街中では、コウモリのような姿をした巨大な怪獣がビルを薙ぎ倒しつつ暴れていた。

  「出たな、吸血怪獣『バトラ』!この僕が相手だ‼︎」

  そんな怪獣を見上げ叫ぶ少年の名は『秋守 昇太』。

  普通の男子中学生を装っているが、その正体は街を怪獣の魔の手から守る正義のヒーロー『ドラゴフレイム』なのだ!

  「いくぞ!変身‼︎」

  そう叫んで変身アイテムを起動し、ぐんぐんと巨大化しつつ光を纏って変身していく昇太。

  しかし…

  「なっ!?何これぇ!?」

  その姿はいつものピッチリスーツに身を包んだ正義のヒーロードラゴフレイム!…のものではなく、マグマを操る巨大怪獣『ボルグ』の姿だった。

  「あー、もう!仕方ないなぁ‼︎」

  「キキッ!?」

  仕方なくその姿でバトラに突進していく昇太。

  突然のことに動揺したバトラは翼で逃げようとするも間に合わず…

  ずしいぃぃぃぃぃぃぃぃぃんっ!!!

  「キキキーッ!!??」

  勢いよく炎を纏った必殺タックルを喰らい、倒されてしまうのだった。

  [newpage]

  「ちょっとボス!なんで僕怪獣にしか変身できないんですか!?これ結構恥ずかしいんですよ!?」

  数時間後。彼が所属する組織『ジャスティス・ウイング』のアジトにて、昇太は小さなコウモリ獣人に話しかけていた。

  「貴様がこの前バグラにやられた際、その『フレイムチェンジャー』が故障してしまったようだな。まあ怪獣にされてた女の子も救えたし、結果オーライではないか。」

  「どこが!?」

  バトラに寄生された現場に倒れていた女子小学生の映像を見てうんうんと頷くコウモリ獣人に、昇太は呆れた。

  「まあ我が輩ならチェンジャーの修理に数分しかかからんのだが、なにぶん材料が手元に無くてな…。今Am○zonでポチッたから、明後日には届くだろう。」

  「それじゃあ明後日まではこのチェンジャーで変身しなきゃいけないのか…。怪獣が現れないといいけど…。」

  そう呟いて、昇太はため息を吐くのだった。

  [newpage]

  「なー昇太!勉強教えてくれよ!!!」

  翌日、昇太はクラスメイトの『大崎 竜牙』に泣きつかれていた。

  彼は転校してきた昇太にできた最初の友達で、おバカで明るい怪獣好きの男子中学生だ。

  「コイツ、中間の成績めっちゃ酷かったんだよ。再試通るまで延々と放課後居残りらしいし、もうボクの手には負えないな。」

  「数学で7点ってさ〜、コレ算数すら結構怪しいんじゃないの〜?」

  「ちょっ!?彪斗、点数のことは言うなって!!!」

  呆れた顔で竜牙と共に来たのは『長谷川 羽流』と『手塚 彪斗』。同じく昇太のクラスメイトだ。

  「あはは…。それはかなり酷いね…。」

  「しょっ、昇太にまでそんなこと言われた…。」

  「まあ僕はこういうの得意だし、分からないことあれば教えてあげる…よっ!?」

  そう言った途端、昇太はお尻の上に何かただならぬ感触を覚えた。

  どこかむず痒いような、つい最近も感じたような…

  「ごめん!僕ちょっとトイレ行ってくるね‼︎」

  「お、おう!大丈夫か?」

  そう言うと昇太は即座にトイレに駆け出し、個室でズボンを脱ぎ自身のお尻を振り返り見た。

  「なっ!?なにこれぇっ!?」

  そこには、ずりゅんっ!!!と大きな怪獣ボルグの尻尾がズボンの中に窮屈そうに収まっていた。

  尻尾の付け根周辺では、ボルグのゴツゴツした黒っぽい皮膚が人間の皮膚を侵蝕し始めている。

  「どうしよう…チェンジャーの影響がこんな所にまで出てるんだ!今日は学校早退しないと…!」

  そう言うと昇太は誰にも気づかれないように気をつけつつ、どんどん大きくなる尻尾を引きずるようにして帰路を辿るのだった。

  [newpage]

  「うわ…なんか変なモン踏んじゃったよ…。」

  その日の夕方。帰宅途中の男子高校生が、何やらネバネバした白いスライムのようなものをうっかり踏んでいた。

  足から剥がそうと奮闘するも、かなり粘着力が強いのかなかなか剥がすことができない。

  その時だった。

  にょろーーーーん

  「うわっ!?」

  突如足元のスライムが大きく伸び、あっという間に彼の身体を包み込んでしまった。

  スライムはもにょもにょ蠢きながら中に閉じ込められた男子高校生を弄んでいく。

  やがて男子高校生だったモノはスライムと融合しでっぷりとした、ウサギのような耳をもった目の無い怪獣の姿に作り替えられ…

  「ーーーーーーーー♡」

  喜びのような、声にならない声を上げた。

  「うわぁぁぁぁぁぁっ!!??」

  目の前で起こった現実離れした惨状に慄く他の男子高校生目掛けて、怪獣はもにゅんっ💕と大きなお尻からダイブし彼を体内に飲み込む。

  しばらくもにゅもにゅしてお尻から吐き出すと、もう一体のウサギ怪獣が出来上がっていた。

  「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!??」

  逃げ出そうとする女子高校生にも容赦せず、二体の怪獣はその大きなお腹で彼女をサンドイッチする。

  二体のお腹の間でもにょもにょされ女子高校生だったモノもだんだん姿を変えていき…

  「ーーーーーーーー♡」

  三体目の怪獣となって、驚く女子高校生2人組を襲いに行くのだった。

  [newpage]

  「なー、結局昇太の奴帰って来なかったけど大丈夫かな?」

  人々が怪獣にされている少し前、竜牙達は結局あの後帰ってこなかった昇太にプリントを届けに行っていた。

  「ねぇ大崎君?今日の再試行かなくてよかったの?多分先生怒ってるよ?」

  「昇太に勉強聞けなかったし、どーせ今日やっても落ちて再々試喰らうからいいんだよ。ていうかなんで委員長までいるんだよ…。」

  竜牙に心配そうに声をかけたのは、クラス委員長の『亀宮 渚』だ。しっかり者で真面目だが、彼女は怪獣ごっこが大好きでビルを薙ぎ倒す自分に興奮する変態だ。

  「むしろ委員長1人に行かせれば良かっただろ。今更だけどなんでボク達まで着いて来てるんだ?」

  「え〜?いいじゃん♪友達なんだし。まあ竜牙は置いてって再試受けさせといた方が良かったかもね〜。」

  「ちょっ!?そんなこと言うなって‼︎」

  そんなことを言いながらも昇太の住むアパートへと向かっていた四人だが、実は彼等には共通の秘密がある。

  それは彼等が宇宙から来たTF生命体によって寄生され、怪獣に変身できるようになった、ということだ。

  彼等はこれまでも幾度となく怪獣に変身し、同じように寄生され怪獣にされた人々を元に戻してきたのだ。

  「おっ、ここか!おーい、昇太いるか〜?」

  「なっ!?竜牙君!?なんでここに!?」

  そんな今まで街を救ってきたヒーローとはかけ離れた子供らしい連続ノックで呼び出す竜牙に、昇太は困惑した。

  何故なら今の彼は、チェンジャーの故障によりすっかり全身が怪獣ボルグのものへと変化してしまったからだ。

  [uploadedimage:15529418]

  「おっ!いたいた!先生に頼まれてプリント持ってきたぜー!」

  「頼まれたの私なんだけど…まあいいか。」

  「あっ、ありがとう!その、郵便受けに入れておいてくれるかな?」

  「何言ってんだ。1人暮らしなのに体調崩すとか大変だろ。」

  「おれたち何か手伝うからさ〜。中に入れてもらえないかな〜?」

  今の姿を見られたくなくて必死に正体を隠すために帰らそうとする昇太だったが、四人の優しさが仇になり頭を抱えた。

  その時だった。

  『オイ昇太!街に怪獣が現れた!出動だ!』

  「ええっ!?でも僕今怪獣状態なんだけど…」

  彼のボスから連絡が入り、街で怪獣が暴れていることを知った。

  「え、えっとさ、来てもらって悪いんだけど、人に移るような病気だったら悪いしさ…」

  「だったら尚更放っておけねーよ!今お医者さん連れてきてやろうか!?」

  どうにか帰らそうと奮闘する昇太だったが、なかなか四人は帰らず押し問答になってしまう。

  その時。

  ズシンッ!!!

  「ーーーーーーーーー♡」

  「うわっ!?なんだコレ!?」

  「白い…ウサギみたいな怪獣だね〜!?」

  上の方の階であるにも関わらず物凄い勢いでジャンプし、四人の前に怪獣が着地した。

  「その音…‼︎外で何が起こってるの!?もしかして怪獣!?」

  「ああ!ここは俺達に任せてお前は逃げろ‼︎」

  「ほら、外に出て!私が昇太君を逃してあげるから‼︎」

  「そ、そんなこと言われても…」

  そう言って戸惑う昇太だが、その外では怪獣相手になんとか立ち向かっている竜牙達の声が聞こえる。

  それを聞いて考え込む昇太だったが、やがて頷いた。

  「…僕がやらなきゃ。竜牙君達に正体がバレたっていい!こんな姿でもみんなを守る、それがヒーローの使命なんだ‼︎」

  自分を守るために立ち向かう竜牙達の姿にそう決心し、葛藤の末昇太はバン!!!と大きな音を立ててドアを開いた。

  

  「えっ!?昇太君!?その姿って…‼︎」

  「まさかボルグ!?ってことは…‼︎」

  「…僕が来たからにはもう安心だ。僕はヒーロー、ドラゴフレイムだ!!!」

  そう言ってボルグ姿の昇太は、勢いよく怪獣に飛びかかった。

  そのまま怪獣と共にアパートから派手に落下し、怪獣を地面に叩き落とした。

  「よし、コイツは気絶したな。…ん?」

  地面に叩き落とされ、気絶した怪獣を見下ろす昇太。

  しかしそんな彼の周りには、何体もの白い怪獣が彼に狙いを定めていた。

  「ーーーーーーー♡」

  「ーーーーーーーーーーー♡」

  「…まずいね。ここまで繁殖力が強い怪獣とは想定外だったよ。流石にピンチかな?」

  覚悟を決めて意識を集中しようとした、その時だった。

  「待てよ昇太!いや、ドラゴフレイム!手伝うぜ!」

  「りゅ、竜牙君!?それにみんなも!?」

  竜牙達四人は、昇太の背後から颯爽と現れた。

  そして…

  「「「「変身!!!」」」」

  四人とも自身の相棒怪獣と融合し、その身体を変化させていった。

  彼等の身体はどんどん太く肉づいていき、皮膚も怪獣のものに覆われ骨格も変化していく。

  そして…

  「ギャアァァァァァァァァァッス!!!」

  「シュシュシュシュシュシュ!!!」

  「グオォォォォォォォォォ!!!」

  「ガメェェェェェェェェェ!!!」

  バグラ、モスガ、ガドン、ガメスの四体の怪獣が、その場に現れた。

  [newpage]

  「なっ!?もしかして…竜牙君がバグラの正体だったの!?」

  「ああ!どーだ!すげーだろ!?」

  『何度も言わせるな。貴様の声はコイツには届いていないと言ってるだろう。それより、来るぞ。』

  調子に乗る竜牙に彼と融合したバグラは答え、促した。

  すると四体の怪獣は慣れた手つきで、襲いかかる何体もの怪獣を倒した。

  「ーーーーーーーーーーーッ!!!」

  「ーーーーーーッ!!??」

  「ーーーーーーーーッ!?!?」

  するとその内の一体が、突如周りの怪獣達を飲み込みながらぐんぐんと大きくなっていった。

  『奴は取餅怪獣【ウサドン】。元々は月に住んでいたが、人間に乗り移りネズミ算式に繁殖することを覚えた害獣だ。ああやってボスは他の奴等を吸収してデカくなることもできる。』

  「よし、ここは僕が行く。一緒に頼めるかな?竜牙君…いや、バグラ!!!」

  「おう!…って聞こえてないんだっけな!まあいいか!」

  当然昇太には竜牙が鳴き声を上げたようにしか聞こえなかったのだが、それでも彼の言いたいことは理解し頷いた。

  そして残る地上の怪獣は他の3体に任せ、2体は力を込めて巨大化するのだった。

  「ーーーーーーーーッ‼︎」

  「胸の宝石…あれがコアだ。あれを壊せば、コイツもみんなも元に戻る‼︎」

  「なるほどな。そんじゃあいっちょやってやるか‼︎」

  そう言うと、2体は一気にウサドンとの距離を詰めるためドスドス走り出す。

  そんな彼等目掛けウサドンは口から餅弾を放つのだが、彼等は炎で餅弾を燃やし、引っ付いた餅は電撃で取り除いた。

  「「はあぁぁぁぁぁぁっ!!!」」

  ドカッ!!!

  「ーーーーーーーーーーッ!!??」

  2体はそれぞれ炎と雷を纏った尻尾で、ウサドンを殴り飛ばす。

  ウサドンはそれに怯み、狼狽えているようだった。

  「さてと、そろそろトドメだね。」

  「ああ!お前の身体、焼き焦がしてやるぜ!!!」

  すると2体は力を込めつつ口を開き…

  「ボルケーノ光線!!!」

  「ライトニング光線!!!」

  そこから炎と雷を纏ったビームを発射した。

  2つのビームは混ざり合ってウサドンに直撃し…

  「ーーーーーーーーーーッッッ!?!?!?」

  派手に爆散し、ウサドンを打ち倒したのだった。

  [newpage]

  「ほら、竜牙。その問題また間違えてる。ちょっとミス多いからいくつか例題出して特訓しようか。」

  「うわっ!?マジかよ!?昇太結構スパルタだな…。」

  「お前が昇太に教えてって言ったんだろうが。」

  翌日の昼休み。昇太に勉強を教えてもらっている竜牙を3人は眺めていた。

  「それにしてもさ〜、昇太あんなことになっちゃうなんて、あの変身アイテム欠陥品なんじゃないの〜?」

  「あはは…今日ボスが治してくれるらしいんだけどさ。その為にわざわざ放課後ジャスティス・ウイングのアジトにまで行かなきゃいけないから大変だよ。」

  「えっ!?ジャスティス・ウイングって、あつてあの有名なドラゴレンジャーにボッコボコにされたシュバルツが設立した組織でしょ!?凄い‼︎行きたい行きたい‼︎」

  「うーん…まあいいか。あの人なら大丈夫でしょ、多分。放課後みんなで行こうか。」

  「あ!それなら俺も知ってる‼︎超行きたい!!!」

  「竜牙は再試あるでしょー?昨日サボったぶん今日こそはちゃんと受けないと〜。」

  「そうだな。ただでさえ昨日サボったこと先生にブチ切れられてたし、今日は受けとけ。」

  「ええっ!?そんなぁ!!!」

  教室が笑いに包まれる中、彼の絶叫が響くのだった。