白狐転生百合奇譚(後編)

  二人が樹に違和感を感じたのも無理はなかった。

  なぜなら樹から感じる気配は狐人の、特に上位存在レベルのものだった。

  しかしなぜ? そんな疑念を抱きつつも二人は黙って樹の後をついていくことにした。

  しかし、森の中をしばらく歩くうちに二人の疑問は確信へと変わっていたのだ。

  「結良、もしかすると樹さんから感じる気配は……」

  「え?まさかそんな事ないよ佐紀ちゃん」

  「いえ、間違いありません。これは……」

  そう言って佐紀は前を歩いている樹をじっと見据える。

  「でも……やっぱり信じられないよ」

  結良はやはり拒否の反応を示しつつも自分もまた感じる樹からの気配もまた否定できずにいた。

  「ええ、私も同感です。でも、これは間違いありません」

  佐紀の断言するような口調に結良は少し落ち着きを取り戻すと、改めて樹の背中に視線を向ける。

  「でも……確かにこの気配は……」

  そしてそのまま黙り込んだまま黙ってしまったのだった。

  そのまま3人は森の中を進み続けていたのだが、不意にその雰囲気が変わったのは祠まで戻ってきた時だった。

  突然樹の歩みが止まったのである。

  「どうしたんですか?」

  「樹ちゃん?」

  佐紀と結良が心配して声を掛ける。

  すると樹は振り返ると、

  「ねえ、二人とも……わたし、なんだか変なの」

  そんな樹の言葉に佐紀と結良は首を傾げる。

  しかし次の瞬間、その言葉の意味を理解したのだった。

  「身体の中、特にこの辺りが熱くなって……」

  下腹部をそっと押さえる。

  毛並みに覆われた狐の顔の中でもどこか赤くなっているのがわかる。

  「あと、頭の中に見た事のない場所とかやった事ない事とかがいっぱい浮かんできて……わたし、知らないのに」

  「樹さん?」

  「樹ちゃん?」

  佐紀と結良が心配そうに声を掛ける。

  しかし今の樹にはそれに答える余裕もなかった。

  「それが頭の中でどんどん広がってくの……わたし、どうしたらいいのか……」

  「落ち着いてください! 樹さん!」

  そんな様子を見た佐紀は樹を抱き寄せると頭を優しく撫で始めた。

  結良もまた姉の行動に驚きながらも見守る事にしたようだ。

  そしてしばらくして落ち着いたらしい樹はゆっくりと口を開いた。

  「ありがとう、もう大丈夫」

  その言葉に安堵する佐紀だったが、その表情はどこか切ないものがある。

  優良もまた複雑な顔で樹を見つめる。

  しかし、樹は顔を上げると思いをぶつける。

  「佐紀、結良、わたしと……して!」

  「えっ?」

  「はっ?」

  突然の言葉に佐紀も結良も思い切り驚くしかない。

  「今は大丈夫だけど、頭の中いっぱいにある記憶とその……むらむらした感じはきっと収まりきらないと思う」

  樹の言葉に二人は顔を見合わせる。

  「うまくは言えないけど……そういう事をすればその辺りがはっきりするような気がする。もしかするとわたしがわたしじゃなくなるかもしれない。でも、はっきりさせたいの」

  「樹さん……」

  そんな樹の真剣な言葉に佐紀と結良は互いに頷き合った。そして、

  「分かりました。樹さんの望み通りに」

  「うん、あたしも!」

  2人の言葉に樹も覚悟を決める。

  「ありがとう……じゃあお願い」

  そう言うと樹は洞窟の中に二人を導く。

  先ほどとは真逆の流れ。しかし、込められた思いに変わりはない。

  三人は静かに洞窟の中に入っていく。

  [newpage]

  しばらくして、洞窟の中から甘い声が響いてくる。

  それは三人の狐人が愛し合う音色。

  佐紀と結良が樹を愛し、そこから奏でられる音色だった。

  「んっ……あんっ……」

  荒い息遣いと共に聞こえるその声は次第に大きくなっていく、

  そして……

  「あっ!ああっ!!」

  樹は一際大きな声を上げると同時に体を大きく反らせる。

  それと同時に彼女の秘所からは愛液が流れ出し、その快楽の強さを表していた。

  そんな様子を見た佐紀と結良もまた興奮を抑えきれないといった様子で樹の身体に覆い被さる。

  「樹ちゃん……」

  「樹さん……」

  2人の吐息が耳にかかる度に樹の身体は反応してしまうのだった。

  「ねえ、もっとして……」

  そう言って2人に懇願すると、今度は佐紀がゆっくりと口付けてきた。

  「んっ……」

  そして、そのまま舌を絡ませてくる。

  (あれ?佐紀ってこんなに積極的だったっけ)

  樹は戸惑いながらもその心地良さに身を委ねていた。

  そんな様子を見て結良も負けじと唇を重ねてきた。

  今度は先程よりも激しく貪るような口付けだった。

  (これも悪くないかも……)

  2人から与えられる快楽に身を委ねているうちにだんだん意識が遠くなっていくような感覚に陥る。

  (このままずっとこうしていたいな……)

  そんな思いとは裏腹に樹の頭の中にさらなる記憶が満ちていく。

  (なんだろう?この感じ……)

  「んっ……あっ……」

  (わたし、頭が変になりそう)

  しかしそれは嫌な感覚ではなくむしろ快感に近いものだった。

  まるで頭の中が書き換えられていくような感覚に樹は恐怖を抱くことすらなかった。

  それどころか逆にもっとして欲しいとすら思ってしまうほどだった。

  そんな樹の変化に気付いたのか佐紀と結良も動きを止めて様子を伺っていた。

  そしてしばらくの沈黙の後、おもむろに佐紀が口を開いた。

  「樹さんの中で……目覚めようとしています」

  「うん……樹ちゃん、変わりたがってる気がする」

  結良も樹の動きに注視せざるを得ない。

  その間にも変化はさらに進行していく。

  樹もまた、

  (なんだろう……)

  そんな疑問を抱きつつも、樹は自分の体の中に今まで感じたことのない何か熱いものが込み上げてくるような感覚に襲われていた。

  そして同時にその熱に呼応するかのように改めて下腹部の奥の方が疼き始めるのを感じた。

  「あ……ああ……」

  樹は無意識のうちに尻尾を揺らし、内股を擦り合わせるようにしてモジモジと腰を動かしてしまっていた。

  「結良……覚悟はできてますか?」

  「うん……なんとかだよ佐紀ちゃん」

  顔を見合わせると、二人は身を悶えさせる樹の毛並みに改めて自分たちの毛並みを添わせる。

  「んっ……」

  (なにこれ?)

  二人に愛撫されるうちに樹は自分の体が今までに感じたことのない感覚に包まれていくのを感じ取っていた。

  それはまるで全身が熱くなり、同時に力がみなぎっていくような感覚だった。

  そしてそれと同時に自分の中に何か別のものが入ってくるような奇妙な感じもしていた。

  (わたし……どうなっちゃうの……?)

  そんな不安を抱きつつも樹はその変化に身を任せることにした。

  「はぁ……はぁ……」

  息を荒げながら樹は自分の中の何かが変わっていくのを感じていた。

  (なんだろう……この感じ……おぼえてる……しってる……)

  それと同時に頭の中がクリアになっていくような感覚を覚えてもいた。

  (うん……しってる、このかんかく……)

  そんなことを考えているうちに段々と意識が遠のき始めるのを感じた。

  姉妹の攻めも勢いを増す。

  「あっ……ああっ……」

  (わたし、どうなっちゃうんだろう?でも、なんだか気持ちいいかも……)

  そんな思いとは裏腹に樹の頭の中はさらに変化していく。

  それは今までに感じたことのない感覚だった。

  しかし不思議とそれが嫌ではなかった。むしろもっと欲しいと思ってしまうほどだった。

  そしてついにその時がやってきたのだ。

  「あっ……ああ……」

  (くる!)

  樹は直感的にそう悟った。

  次の瞬間、樹の頭の中で何かが弾けた。

  「あっ!あああっ!!ああああああーっ!」

  今まで経験した事のないくらいの快感に襲われ、吠えるような声をあげながら樹の身体は大きく仰け反り、秘所からは大量の潮が吹き出し辺り一面に飛び散る。

  それと同時に樹の頭の中に様々な記憶や知識が一気に流れ込んでくる。それは今まで自分が知らなかったはずのものばかりだった。

  しかしなぜかそれが当たり前のように思えたのだ。まるで元々知っていたかのように。

  「はぁ……はぁ……」

  軽く痙攣する樹に姉妹は心配そうな声をかける。

  「樹ちゃん大丈夫?」

  「どこか痛い所はありませんか?」

  しかし、樹は首を横に振るとゆっくりと起き上がった。

  「ううん……平気」

  そんな樹の様子を見て二人は安心したようだった。

  しかし、その気配を感じ二人の顔が一瞬険しくなる。

  その思いを示すように樹は口を開いた。

  [newpage]

  「佐紀、結良、わたし、全部思い出した……わたしが狐理宇なんだ」

  その言葉に佐紀と結良は複雑な表情を浮かべる。

  「うん……話せば長くなるけどわたし、ここに来る時本当はここのお社に入るはずだったんだけど何か失敗しちゃったのかな……まだ受精卵の時の人間の元の中に入っちゃってそれから……」

  樹は軽く苦笑いを浮かべる。

  「でも……樹ちゃんは樹ちゃんだから」

  「ええ、今はこうして樹さんとしてここにいるんですから」

  そんな樹を佐紀と結良は優しく抱き寄せる。

  樹もそのぬくもりに浸っていたが、あえて二人を引き離す。

  「でも、わたし……狐理宇―「元のわたし」に戻らないと。そしてそれは……」

  少しだけ間をおいて樹は言葉を続ける。

  「わたしが「樹」じゃなくなるって言う事」

  すでに樹の中では狐理宇としての意識や記憶が樹のそれを上書きし始めていた。

  あくまでも「樹」は「狐理宇」の一時的な姿でしかなかった、と言う事なのだろうか。

  しかし、その言葉に対して佐紀と結良は微笑んでみせる。

  「大丈夫ですよ」

  「樹ちゃんは樹ちゃんだから」

  二人の目には迷いはないようだった。

  たとえ樹がこの先どんな存在になろうとも彼女に対する思いが変わる事はないと言う確信に満ちていた。

  そんな二人の言葉を聞いているうちに、樹の中に少しずつではあるが意識が薄れていく感覚が訪れてきた。

  まるで夢の中に落ちようとしているかのように……。

  「そうだね……狐理宇に戻っても一緒。二人はわたしの巫女なんだもの……」

  その瞳からは少し涙が流れている。

  その気配が九分九厘狐理宇のものに変わっていることを感じた佐紀と結良は思わず声を上げる。

  「樹ちゃん?」

  「樹ちゃん……」

  それに対して、彼女は微笑んでみせた。

  「じゃあ……わたし、「元に戻る」ね」

  その途端、佐紀と結良がかけていた「なんちゃって狐人化」が解け、一瞬人間女性としての樹の裸身が現れる。

  しかし、その身体はみるみる変化していく。

  体格は一回り、二回り大きくなりながら相応のたくましさを得ていく。

  肩幅は広く、腰回りもがっちりとしたものになり、両腕と両足も筋肉が張っていく。

  形のよかった胸のふくらみも縮みながら胸筋となり、秘所もまた女性から男性のそれへと変化していく。

  しかし、最大の変化はその全身。

  素肌は獣毛に覆われ、耳と顔は獣-狐のものに変わっていく。

  引き締まったお尻からは九本の尾が伸び、その目元や口元、両手足には金色の隈取が浮かぶ。

  人間女性から狐人男性へ―樹は変わっていく。

  その姿はまさに神と呼ぶにふさわしいものだった。

  「はあっ!」

  樹―だったその狐人は声を上げ、かっと目を見開くと一瞬空気が破裂する。

  そこから満ちる気もまた高次—神といえるものであった。

  「ふう……ようやく顕現できたか」

  やや渋い声で自分を、周りを見回すその姿を見て佐紀と結良はやや震えながら声を上げる。

  二人の声に狐人男性はゆっくりと振り返る。

  「狐理宇様……」

  「狐理宇さま……」

  佐紀と結良はとっさにその前にかしずくと、尻尾を下げて恭しく一礼する。

  「佐紀と結良よ、我の現臨に協力してくれた事、感謝するぞ」

  それに対し狐人―狐理宇は優しく声をかける。

  そして二人にそっと膝をつくと、

  「人として―樹としてお主らと過ごしたひと時も忘れてはおらぬ」

  とそっと語る。

  それに対して佐紀と結良は狐理宇が樹の記憶も持っていたことに一瞬顔を赤くするも、

  「いえ、とんでもございません。我々一族は代々狐理宇様の巫女としてお仕えしております故」

  「うん、でも樹ちゃんじゃなくなったのはちょっとだけがっかりしてるけどね」

  「結良!」と佐紀が慌てて遮ろうとする。

  しかし狐理宇はそれを制し言う。

  「よい、我も驚いているのだ。まさかこのような流転を経る事になったとはな……だが……」

  とそこで狐理宇は口をつぐむ。

  その表情にはどこか戸惑いが感じられた。

  佐紀と結良はそれを察し、それ以上の追求を控える。

  そんな二人を見て狐理宇は少し微笑むと、

  「しかし……今はまだ我の本来の力を出すことは難しい」と言う。

  その言葉に佐紀は首を傾げる。

  「そうなのですか?」と疑問を口にする。

  それに対して狐理宇は小さく頷くと言った。

  「我も樹は我の中で消えたものと思っておったがなかなかどうして、我の中で眠りについておる。よほどお主らへの思いが強かったのであろうな」

  そう言って明るく笑う。

  「では樹さんは消えてはいないのですね?」

  「うん!良かったぁ!」

  佐紀と結良が安堵の表情を浮かべる。

  「うむ、だからこそお主らの力を貸してほしいのだ」

  狐理宇の言葉に二人はハッとして表情を引き締める。

  「はい、どうすれば宜しいでしょうか?」

  「何か方法があるんですか?」

  姉妹の問いに狐理宇は静かに頷く。

  そして姉妹に方法を伝えると二人は一瞬驚いた顔をしたがすぐに覚悟をきめたようだ。

  「わかりました」

  「うん、やってみるよ!」

  そんな二人を見て満足そうに微笑む狐理宇であった。

  [newpage]

  「では……参ろうか」

  狐理宇が力を籠めると辺りが強烈な気の渦に包まれる。

  「こ……これは!?」

  「すごい力だよ!」

  佐紀と結良が驚愕の声を上げる。しかしそれは次の瞬間には期待へと変わっていた。

  狐理宇の中で何かが集約される。

  それは徐々に大きくなりながらやがて狐理宇の中で一つの塊となった。

  「よし、今だ!」

  佐紀と結良は狐理宇のその言葉に大きく頷き合う。そして同時にその力を解放させた!

  「うんっ!!」

  「はいっ!!」

  狐理宇には及ばずとはいえ佐紀と結良は全身全霊を高めていく。

  全身の獣毛が逆立ち、耳と尻尾がぴんと張る。

  身体を彩る隈取も輝きを宿しているようだ。

  姉妹が力を籠めると狐理宇の中に収縮したそれが一気に流れ込んできた。

  「ああっ……」

  「ううっ……」

  その力を受け取った佐紀と結良は思わず声を上げる。

  それは今まで感じたことのない力だった。

  (この中に……樹さんが……)

  (樹ちゃんを感じるけど……強すぎる……)

  それは彼女たちにも感じ取れるほどの強大なものであった。

  しかし、二人の顔に恐れはない。いや、恐れていてはいけない。

  そんな二人を見た狐理宇は静かにうなずくと言った。

  「いいぞ、その調子だ」

  その言葉に佐紀と結良はさらなる力を込め始める。

  「はい、頑張ります!」と佐紀が。

  結良も「うん、任せて」と答える。

  そして、二人は力を合わせ、心を合わせてその光の塊をつかみ、じわじわと引き出していく。

  「ううっ……くっ……」

  「ううぅっ……」

  二人は苦しげな声を上げるがそれでも手を止めることはない。

  ここで諦めたら……。

  (樹さんに今度こそ会えなくなる……!)

  (樹ちゃんがいなくなるなんて嫌だ……!)

  その想いで二人は光の塊を引き上げる。

  もし二人が力を抜けば最悪二人は光の塊ごと狐理宇の中に引き込まれるであろう。

  そして二人も狐理宇の中に消える事になる。

  それはそれで樹とともに……なのかも知れないが、二人の、そして樹の記憶を知る狐理宇にはその結末を認めることはできない。

  二人にとってそれは死よりも辛い事だ。

  狐理宇の中に引き込まれれば二人はそのまま次の転生の時まで樹とともに眠りにつく事ができれば幸いな方だろう。

  しかし、その結末には未来がない。

  そして狐理宇も三人がここで消え去った事を負い目に感じながら長い年月を過ごさねばならないだろう。

  そんな思いは二人にはしてほしくないしさせたくないのだ。

  「う……くっ……」

  「ううぅっ……」

  二人の顔には苦痛が浮かんでいる。しかしそれでもその手を緩める事はない。

  「二人とも……無理をするでない……」

  狐理宇がそう声をかけると、佐紀と結良は首を左右に振る。

  「いいえ……樹ちゃんのためですから」

  「うん、だから頑張る!」

  そんな二人の様子を見て狐理宇も覚悟を決める。

  「わかった、ならば我も全力で行こうぞ!」

  そう言うと狐理宇は全身から力を放出する。

  それは二人に負けじ劣らずのものだ。その気に触れただけで周囲の木々は震え、地面が波打つ。

  しかし狐理宇は神域にある者の名に恥じぬその力を振るい自分の中に集まった光を全力で押し出す。

  そもそも再生と共に消えるはずだった魂をかき集めて送り出すという事は神の摂理、命の摂理にも抵触しかねない程の事であり、それ以前に狐理宇の力をもってしても容易ではないことであった。

  しかし、それでも彼はそれをやり遂げようと心に決めていた。

  「う……くっ……」

  「ううぅっ……」

  佐紀と結良は苦痛に顔を歪める。

  二人の力をもってしても、狐理宇の力を借りてもそれは容易ではない事は二人もわかっている。

  だが二人は決して諦めない。樹の為に……そして自分達の為に……。

  そんな二人の想いに応えるかのように徐々にではあるが光が引き出されていく。

  その勢いは凄まじく、周囲の木々をなぎ倒していく程だ。

  しかし、佐紀と結良はその勢いに負けじと力を込め続ける。

  「くっ……うううっ……」

  「うっ……ああっ……」

  苦痛に歪む二人の顔には滝のような汗が流れ落ちているがその手を緩めようとはしない。

  だが徐々にではあるがその力も弱まっていくのがわかる。

  二人はもう限界が近いのだろう。

  そんな二人を見て狐理宇は思わず叫んだ!

  「二人とも止めろ!」と。

  しかし、二人は最後の力を振り絞り、そして吠える。

  「うああぁぁぁぁぁぁぁぁーっ!!」

  「やああぁぁぁぁぁぁぁぁーっ!!」

  その叫びと共に光はついに引き出される。

  「よしっ!」

  「いけたっ!」

  「やったぁ!!」

  狐理宇と佐紀・結良は喜びの声を上げた。

  光の玉は引き出され、宙に舞うがそのまま一気に落下する。

  「っ!樹さん!」

  「樹ちゃんっ!」

  最後の力の一かけらを振り絞るように佐紀と結良はその地点に立つと、身体をいっぱいに広げて光の玉を受け止める姿勢をとる。

  「樹ちゃん!帰ってきて!!」

  「お願いっ、戻ってきてください!」

  二人の叫びと共に光の玉は二人の身体にがっちりと受け止められるが、その勢いで地面に倒れこむ。

  そして……。

  「ううっ……」と佐紀が頭を押さえながらゆっくりと身体を起こす。

  「ううぅっ……」結良もそれに続いて起き上がる。

  「大丈夫?」と佐紀が声をかけると「うん、何とか」と結良が答える。

  「良かったぁ……」と安心する二人だったが、ふと我に返り辺りを見回す。

  自分達がしっかりと抱きかかえているのは光の玉。

  その中には……樹を感じる。

  二人が声をかけようとした瞬間、光の玉は輝きを強めると佐紀と結良を飲み込んだ。

  [newpage]

  「きゃあああああっ!」

  「うわぁぁっ!!」

  まばゆい光の中に包まれた二人が目を開けた時、そこは一面の光の空間だった。

  「ここは……?」

  「樹ちゃん、どこ?」

  二人は辺りを見回すが何も見えない。

  「わからない……けど……」

  「でもこの感じって……」

  佐紀は何かに気づいたようにつぶやくと、結良もそれに続いて言う。

  「……うん」

  そして二人は同時に同じ方向に視線を向けると、そこには人の形をしたものが浮かんでいた。

  その姿はまさに……。

  「あれは……樹さんですよね」

  と佐紀が言う。

  「樹ちゃんだ……」

  と結良も続ける。

  そこに浮かんでいたのは人間の姿の樹。

  全裸で浮かぶその姿には狐人になってた時とはまた違うものを感じる。

  二人は佐紀と結良は顔を見合わせると頷き、手を伸ばす。

  すると、その手に応えるように樹の身体がこちらに近づいてきてその頬に触れる。

  その顔には表情はなかったが、それでもその手からは何か温まるものを感じさせる。

  「あ……暖かい……」

  「うん……樹ちゃんの体温を感じるよ」

  そんな二人の行動に答えるかのように光の空間はさらに輝きを増していく。

  その瞬間、輝きに当てられる様に樹は佐紀と結良を押し倒すとそのまま二人の唇に自らの唇を重ねる。

  舌こそ入れないものの狐人のマズルに器用に人の唇を添わせていく。

  さらに両手で二人の胸の一方をつかむとつまみあげ、もみ上げていく。

  「んっ……んふっ……」

  「あっ……やぁっ」

  突然の事に驚きながらも、佐紀と結良は抵抗しない。

  むしろ積極的に受け入れているように見える。

  「樹ちゃん……んっ……」

  「樹ちゃん……いいよ……」

  佐紀と結良は舌を伸ばし、樹と舌を絡めていく。

  そしてお互いを貪るように求めあう。

  「んふっ……んんっ……」

  「あっ……やぁっ」

  その行為に二人はさらに興奮していくようだ。

  二人の股間からは愛液があふれ出し太ももを伝っていく。

  そんな二人を見て樹はさらに激しく責め立てるようにする。

  胸から手を離し、その手で二人の秘所に手を伸ばしていく。

  まるで先ほど二人に愛された分を返すかのように。

  「あっ……樹さぁんっ……」

  「やんっ……樹ちゃぁん」

  そんな二人の反応に気をよくしたか、樹はその手を激しく動かし始める。

  その刺激に佐紀と結良は身体をくねらせるがそれでも抵抗はしない。

  それどころか自ら腰を動かし、もっと強い快感を求めるようにさえ見える。

  樹はさらに二人を強く攻め立てる。

  両足で二人の片足をからめとり、毛並みのあちこちに唇を合わせ、必死で二人の胸を、秘所をいじっていく。

  「やっ……もうだめぇっ!」

  「いっちゃぅっ!!」

  そして二人は同時に絶頂を迎えたのだった。

  「はあっ……はぁ……」

  「んっ……くぅ……」

  二人は荒い息を整えると、その場に倒れこむ。

  しかし樹は二人の股間に手を滑り込ませるとそのまま指を動かす。

  「やっ……そこはっ……」

  「あああんっ!」

  そんな二人にもかまわず樹は手を動かし続ける。

  そして再び佐紀と結良の股間が濡れたその時、樹も自らの秘所から愛液を滴らせている。

  それを感じ取った二人は余韻に浸る間もなく顔を合わせる。

  「結良、私達も……!」

  「そうだね佐紀ちゃん。あたし達も樹ちゃんを気持ちよくさせなきゃ!」

  そして、ふさふさの尻尾で樹の素肌をからめとると改めてその狐のマズルで口づけの雨を降らせ、片手で樹の胸に、もう片手で樹の秘所に触れる。

  三人は―正確には姉妹二人と樹はそれぞれに愛し合う形になった。

  「樹さん、私達が気持ちよくしてさしあげますから、その分気持ちよくしてくださいね」

  「そうだよ!あたしたちと気持ちよくなりあおうね!」

  そんな二人の言葉に樹も嬉しさで身体を震わせる。

  「あ……ああ……さき……ゆら……」

  いつしか樹の口からおぼろげに声が漏れる。

  「樹さん」

  「樹ちゃん」

  二人はそう呼びかけながら樹の身体を愛撫しつづける。

  そんな二人の行為によって、再び樹の身体も反応し始める。

  「あ……あぁ……ああん!」

  「ふふ、可愛い声ですね……」

  「もっと聞かせてほしいな」

  佐紀はそう言うと、自分の胸に手を持っていき揉み始める。

  結良もそれに倣って同じようにする。

  そして二人は同時にその先端をつまむとそのまま引っ張るようにした。

  「あっ……いい……」

  樹のおぼろげな喘ぎ声が聞こえる。

  「ふふ、気持ちいいみたいですね」

  「もっとしてあげるね!」

  そう言って二人はさらに強く引っ張る。

  樹はビクンっと身体を震わせるがそれでも抵抗はしないししない。

  むしろそれを受け入れているようにも見える。

  「佐紀……結良……わたしも……あなたたちを……」

  樹は二人の名前を呼ぶとそのまま顔を近づけていくと、二人もそれに応えるように顔を近付けていき、そして唇と唇が触れ合った。

  「んふっ……んん……」

  そんなキスをしながら樹は手を動かすことをやめない。

  その手の動きに合わせて佐紀と結良はしなやかに悶え、その流れを樹の肌に、樹の胸に、樹の秘所に注いでゆく。

  「んっ……んん……」

  樹は身体をくねらせて二人の愛撫に応える。

  その反応を見た二人はさらに勢いを増していった。

  そして二人は一度唇を離すと、今度は左右から挟み込むようにして樹の胸を舐め始める。

  「あうっ……!」

  突然のことに驚きながらも嬉しそうな声を上げる樹に、佐紀はさらに追い打ちをかけるように胸を甘噛みしたり舌を這わせたりする。

  「あっ!そこっ!」

  乳首への刺激を受けて大きく反応する樹を見て結良も負けじと反対側の胸にしゃぶりついた。

  そしてそのまま舌を使って胸全体を愛撫していく。

  「ああん!」

  二人の激しい攻めに樹は身をよじらせて悶えるがそれでも二人は決して手を休めない。

  「あっ……ああっ……」

  「んんっ……やんっ……」

  やがて樹の手は二人の秘所に触れた。そしてそのまま指を滑らせるようにして刺激を与えていった。

  「ひゃうっ!」

  「きゃっ!」

  いきなりの強い刺激に二人は思わず声を上げる。

  だが樹はその手を止めることなく動かし続けた。

  その勢いに合わせて溢れ出した愛液が樹の手を濡らす。

  そしてその濡れた手のまま再び二人の胸を先程よりも激しく、そして強く揉みしだく。

  しかしその強い刺激にも佐紀と結良は嫌がるそぶりを見せない。

  それどころか、もっとしてほしいとばかりに樹に身体を押し付けてくる。

  そんな二人の行動に樹も応えるかのようにさらに強く攻め立てていった。

  「ああぁっ!いいっ!」

  「ああんっ!そこぉっ!」

  佐紀と結良の二人は声をあげながらも負けじと樹を攻める。

  「はあっ……気持ちいいよぉ」

  樹もそれに答えるかのようにさらに手の動きを加速させていく。

  その動きに合わせて佐紀と結良の二人は身体をくねらせる。

  「やっ!そこっ!あんっ!」

  そんな姉妹の声を聞きながら樹はさらに激しく動かしていく。

  絡み合ううちに佐紀と結良、そして樹は器用に足を絡め、それぞれの秘所を重ねあう体勢で愛し合う。

  両腕で―姉妹は尻尾も込みで身体を支えながら、佐紀と結良はそれぞれに自分の秘所で樹のそれを愛してゆく。

  もちろん樹もまた一対二にひるむ事無く自分の秘所で二人の秘所を愛してゆく。

  互いの秘所が密着しこすれあう感覚に三人はそれぞれ声を上げる。

  「ひいっ、樹さん、強いですっ!」

  「あっ!樹ちゃんっ!気持ちいいよっ!」

  「んんっ!そこ、いいっ!」

  佐紀と結良がそう声を上げる間にも樹は構わず腰を動かす。

  その動きに合わせて二人もまた嬌声を上げる。

  そして樹の限界が近い事を悟った二人はさらに動きを速めていき、先に佐紀と結良が絶頂を迎え体を仰け反らせる。

  しかしそれは同時に樹を頂点へと押しやるきっかけともなり、そこから先はもう止まることなく一気に駆けぬける。

  そして―。

  「「「イッくぅぅぅぅぅぅぅっ!」」」

  次の瞬間、三人の秘所からは大量の潮が吹き出す。

  そしてそのタイミングに合わせるように樹も全身を大きく痙攣させると勢いよく達し、その勢いで佐紀と結良の二人は吹き飛ばされかけるほどだったがそれでもなんとか踏みとどまった。

  それと同時に樹もまた脱力感に襲われ倒れそうになるが、二人の姉妹に支えられる形で何とか持ちこたえることが出来た。

  そのまま三人は優しく抱きとめ合うとそのまま唇を重ねるのだった。

  光の中で起きていた秘め事に気づくことなくただ光の玉を見つめていた狐理宇が光が消えた時に目に入ったもの。

  それは重なる様に倒れこむ佐紀と結良、そして人の姿の樹が重なるように倒れている姿だった。

  狐人と人の差を問わずにその裸身を重ね合わせて愛しあった三人の肌は今も火照りながら震え、姉妹の毛並みと樹の素肌には今も汗が引いていない。

  そしてその顔はともに上気し、艶やかに濡れながら穏やかな笑みを浮かべていた。

  「どうやら樹を取り戻せたようだな」

  そうつぶやくと佐紀と結良に目を向ける。

  「二人とも大儀であった。これからも我の至らぬ所を補ってくれ。ただ、樹といちゃつくのもほどほどにせねばな」

  苦笑しつつも樹に目を向けると、

  「我の手違いでお主には迷惑をかけたな。我と分かれた以上はお主はお主の道を行くがよい。我はせいぜい加護の一欠けらでも与えよう……」

  と告げる。

  「さて、我も再生したばかりで少々無理を過ぎた。とりあえずは社でしばし英気を養うとしよう……」

  そう言うと狐理宇は静かに社の中に消えていく。

  そしてそこには満ち足りた笑顔で素肌を重ねあいながら眠る人間と狐人、三人の女性の姿だけがあった……。

  [newpage]

  その後、この件の影響といえる事件があったりとか樹が半妖の存在に覚醒したとかいう話はまったくない。

  あくまでも樹は人間の女性で佐紀と結良は白狐人の姉妹でしかないが、三人の交流は変わってはいない。

  ただ変わったとすれば……。

  神社の社務所から私服姿の佐紀と結良、そして少しお疲れの樹が出てくる。

  もちろん姉妹は人間の姿に化けているし、樹は言うまでもない。

  三人のやり取りは先ほどまで行っていた巫女舞の練習の話題になっていた。

  「ふう……まさか巫女舞がこんなに疲れるなんて思わなかった」

  樹はややため息交じりにこぼす。

  「そうですね。巫女舞は神に奉納する舞ですので一つ一つの動きにも意味が込められています。その一つ一つをきちんとこなせなければ巫女舞は成立しません」

  「でもさ、樹ちゃんって運動得意だからそういうのも楽々こなすと思ってたよ」

  佐紀と結良がそう言うと、樹は少し困った顔で答える。

  「うーん……確かに運動神経はいい方だけど、さすがにあそこまでの激しい動きを要求されるとは予想外だったわ……」

  そう言いつつまたため息をつく樹に佐紀と結良は顔を見合わせる。

  「まあ、何事も初めてというのは大変ですからね。それに今回は練習ですから本番ではちゃんと巫女舞をこなせますよ」

  「それに樹ちゃん、結構筋がいいんだからきっと上手くいくよ!」

  二人がそう言うと樹も少しはやる気になったのか顔を上げる。

  「そう?ありがとうね。それなら本番でも気合入れていかないと!」

  その顔に佐紀と結良も笑みを浮かべるが、ふと樹は思いついた顔になる。

  「そう言えば二人って巫女舞の舞台に立つまでが早かったように見えるけど……それも狐人特効って事?」

  軽く突っ込むような樹の問いかけに思わず苦笑する二人。

  「そうですね。でも、「白狐人だから」ではなくて「巫女だから」でしょうか。私達は「あちらでも」巫女をやっている事もありますし」

  「そうそう、樹ちゃんの知らない所で色々苦労しているんだから。巫女さんの仕事も巫女舞も一日にしてならないのは同じ!」

  佐紀は笑みを浮かべ、結良は樹に向けてびしっと指を向ける。

  「そっか。じゃあわたしも頑張らないとね」

  そんな二人の答えを聞いて樹は決意を新たにしたようだ。

  そんな樹に佐紀と結良も笑顔を向ける。

  「その意気ですよ樹さん。私達がしっかりサポートしますので、一緒に頑張っていきましょう」

  「そうそう!あたし達に任せて!」

  二人はそう言うと手を差し出す。

  「うん、よろしくね二人とも」

  樹はその手を取るとその手を握り返す。

  いい雰囲気の三人なのだだが……。

  「その件についてなのですが、「あそこ」で特訓しませんか?」

  佐紀がそう言うと結良も、

  「そうだね。樹ちゃん、あたし達が「あそこ」でみっちり特訓してあげる!」

  と笑顔を向ける。

  それに対して樹は「あそこ」と言う言葉が出たことで一瞬ドキッとした顔になる。

  「そ、そうだね……それじゃ二人共お願いね」

  しかし、やはり苦笑交じりの笑顔にならざるを得なかった。

  [newpage]

  神社の奥の鎮守の森。

  その中にある祠の洞窟。

  神社の祭神であり白狐人達の守神でもある狐理宇を祀った地であると同時に三人にとっての「秘密の場所」。

  その奥で三つの白い人影が巫女舞を舞っている。

  佐紀と結良―そして樹だ。

  双子の姉妹、そして相応の熟練ゆえか息の合った動きで舞を舞う佐紀と結良。

  それに多少遅れながらもしっかりと舞おうとする樹。

  姉妹は手と手をしっかりと合わせ、時には背中合わせになりながらも互いを労わるように目線を交わしつつ舞う。

  一方の樹もまた同様に佐紀と結良の動きを見ながら踊り続けるのだが、その動きにはやはりぎこちなさがある。

  しかし、それでもなお懸命に姉妹の動きを真似ようとするその姿からは確かな熱意が感じられた。

  それに後押しされるかのように佐紀と結良の動きにもキレが増す。

  そんな二人の姿が樹の心を動かしていたのかどうかは定かではないが、やがて彼女の動きも滑らかになっていく。

  三人の巫女舞は一糸乱れぬ動きで美しく仕上がっていた。

  その美しさをより印象付けているのは……三人が一糸まとわぬ姿で踊っているからだろうか。

  樹はもちろん佐紀と結良も今は人間の姿で踊っている。

  三つの裸身が秘密の神域で息を合わせて舞い踊る光景はまさに「神秘」の一言だった。

  髪を揺らし、肌をひるがえし、息を合わせて三人は踊る。

  その美しさは三人の裸体を美しく彩り、その優雅さは見る者の心をときめかせる。

  佐紀と結良は人の姿でこそあったがその息の合った裸身の舞は文字通り神妙さと妖しさを併せ持つ白狐の舞であった。

  「すごい……二人とも綺麗……」

  思わず呟く樹に、佐紀と結良は互いに目配せをしてから樹に向かって微笑む。

  その微笑みには、二人から樹への愛情が感じられた。

  そんな二人の笑顔を見て樹も自然と笑顔になる。

  「わたしだって!」

  そう言ってさらに力強く舞った。

  その動きに合わせて三人の乳房が揺れるのが見える。

  しかし、それでも三人はしっかりとした足取りで舞台の上を舞う。

  ひとしきり舞った所で三人はようやく一息つく。

  軽く息を整えつつ火照った素肌の汗を軽くぬぐう仕草もまた艶めかしい。

  「ふう~、やっぱり疲れた」

  樹が軽く息をつくと、佐紀もまた同じように息を整えつつ汗を拭う。

  「ふふっ……でも楽しかったです」

  そして結良も笑顔を見せる。

  「そうだね!やっぱり三人で踊るのって楽しいし!」

  そんな二人を見ていて樹は微笑ましい気持ちになるが、少し疑問もわく。

  「でも、どうしてわざわざ裸で踊らないといけないのかな……?」

  それに対して姉妹はクスリと笑う。

  「それはやはり裸になる事で土地の霊気をその身に感じながら踊る……と言う感じですね。あくまでも建前ですけど」

  「あたし達だってあっちの本番ではちゃんと巫女服着て踊るよ?裸なのは気分気分」

  そう言っておどける様に笑う二人を見ていると確かに強ち嘘ではないのかも……と思えて来るから不思議である。

  樹もまたこうして自然の中で裸になって舞うという行為に不思議な共感を感じている。

  あの一夜の出来事は彼女に改めてその気持ちを強くさせていた。

  その時の事を思い出し樹はしばし感慨に浸る。

  そして何かを思おうとした時、結良の言葉が水を差す。

  「樹ちゃん、踊っててむらむらしてない?」

  不意にそう言われて樹はドキリとする。

  「そうですね。樹さんからまたー「女の子の匂い」がしますし」

  佐紀も笑顔で言ってくる。

  「そ、それは……」

  二人の言葉に樹は顔を赤くする。

  確かに巫女舞を踊る中で二人の裸身を意識してしまったのは事実だ。

  そして無意識に自分も重なる姿を意識していたのも事実だ。

  しかしまたしても二人に見透かされていたとは……。

  それでも今さらとばかりに、

  「まあ、でも確かにちょっとむらむらしちゃったかも」

  と返し、姉妹もまた、

  「うん!あたしも樹ちゃんにむらっとしてた!」

  「私もです!」

  と打ち明け、笑いあう三人だが……。

  「そういう事で……三人でむらむらを発散したいです!」

  「さっそくすっきりしよう!」

  と佐紀と結良が言うや、二人は白狐人の姿に戻る。

  その光景に苦笑しつつも樹は裸身にただ一つ身につけていた葉っぱ型のペンダントに触れる。

  狐理宇の置き土産とも言えるそのペンダントは佐紀と結良の気を注ぐことで樹は任意で白狐人の姿に「化ける」事ができる。

  それにより「人に化けられる狐人」と「狐人に化けられる人」という要素が三人の関係をさらに深めることとなる。

  樹は尻尾と耳を震わせてわくわくしながら自分の選択を待つ佐紀と結良を見つめつつ、

  「それじゃあ……どっちのわたしですっきりしたい?」

  とペンダントを手に微笑むのだった。

  了