白狐転生百合奇譚(前編)

  夏の暑さもようやく収まり、森の中にあるその神社も祭りの季節を迎えていた。

  稲荷信仰の一つである白狐の獣人を祭るその神社も賑わいの中にある。

  大勢の人たちが祭りの雰囲気に賑わう中、樹は駆け足で歩いていた。

  賑わいをよそに、セミロングのストレートの髪をなびかせて人ごみをかき分けるように歩く彼女の目に巫女衣装の二人の女性の姿が映る。

  軽いウェーブのかかったセミロングのおっとりした感じの女性と闊達そうなショートヘアの女性。

  髪型は違うが双子らしきその女性たちは女性の顔を見るや笑顔で樹を出迎える。

  「佐紀、結良、お待たせ!」

  「樹さん、来てくれたんですね」

  「樹ちゃん、楽しみにしてたよ」

  「うん、今日はよろしくね」

  樹が挨拶を返すと二人は笑顔で返す。

  佐紀はセミロングのストレートヘアにおっとりした雰囲気の女性。

  結良はショートヘアで快活な雰囲気の女性だ。

  二人が神社のバイト巫女として働いている事は知っているが、こうして祭りの場で会うのは初めてだった。

  「今日は誘ってくれてありがと。佐紀と結良の巫女姿、似合ってるよ」

  「ありがとうございます樹さん」

  「そお?照れるなあ」

  二人とも樹の言葉にはにかみつつも嬉しげな顔をしている。

  「今日は二人が巫女舞に加わるんでしょ?わたしも楽しみにしてたんだ」

  樹は期待のこもった顔を向ける。

  「うん。今日は樹ちゃんもいるしがんばるね」

  結良はそう返すと佐紀に顔を向け、二人で頷く。

  「それでは、またあとで」

  「楽しみにしててね」

  姉妹はそう言うとそれぞれ仕事に戻って行った。

  [newpage]

  舞台では神社関係者の巫女たちが舞を踊り始める。

  白狐の獣人を祭っている神社の舞だけあってその舞いも白狐を模したものだった。

  祭事用の巫女服に身を包み、狐の面と付け耳、付け尻尾で白狐に扮した

  巫女達が時に神妙に、時に力強く舞う。

  樹がその巫女の中に佐紀と結良の姿を見つけたのはまずはその髪型だった。

  セミロングの佐紀は結良と同様に一本尻尾に髪を一つにまとめ、舞もまさに白狐の如くしなやかで優雅だった。

  反対に結良は少し短いショートカットのせいか動きもより活発に見える。

  しかしその舞は決して粗雑なものではなく、どこか神々しくさえ感じられた。

  樹はその動きにしばし見とれて感慨を漏らすが、反面苦笑も漏らす。

  (佐紀も結良もちょっとハメ外してるな……)

  佐紀も結良も白狐に扮して踊ってはいるが、白狐の面からのぞく狐の耳、そして袴からのぞく尻尾がたまにぴくっと震えているように感じられるのだ。

  無理もない。なぜならそれは二人の「自前」なのだから。

  狐人―それが佐紀と結良の真の姿である。

  二人は神通力―要するに「化ける力」によって人間の姿に化けて人間世界で暮らしており、狐の耳や尻尾を見せる事もない。

  だが今は祭りの雰囲気や舞の熱に浮かされてしまっているのか、二人はそれを隠そうともしないでいた。

  (やれやれ……)

  樹はため息をつくと、頭の上に両手をかざして「耳!」のサインを送る。

  舞台で舞っていた佐紀はそのサインに気がつくと目配せで結良にサインを送る。

  それに反応したか、二人の狐耳と狐尾は姿を消し、そこには祭り装束の付け耳と付け尻尾があるだけになる。

  舞台で舞っているのが狐人である事は樹以外に知る由もない。

  だが、佐紀と結良は「白狐に扮した」という言い訳が通じるようにわざと耳と尻尾を現して舞っていたのだ。

  もっとも、それはこの祭りの場ならではであり普段は人間の姿を保っている事の方が多いのだが。

  「まったく……油断も隙もあったもんじゃないわ……」

  樹がそう呟きつつも、あらためて二人の、そして巫女達の舞を見つめていた。

  巫女舞が終わりを迎え、夜の空気の中で祭の賑わいもしばし過ぎたあと。

  「樹ちゃん、お待たせ!」

  「樹さん、お待たせしました」

  社務所近くで待っていた樹に私服姿の結良と佐紀が声をかける。

  「二人ともお疲れ。舞台見てたよ、相変わらず息ぴったりだったね」

  樹も二人に笑顔で返す。

  「あたしたちの舞どうだった?」

  結良が目を輝かせながら聞く。

  「うん、すごくきれいで見惚れちゃった」

  樹も素直に称賛の言葉を返す。実際二人の巫女舞は素晴らしかったと思っている。

  ただ……。

  「ありがとうございます、そして……すみません。つい気持ちが高まってしまって」

  と佐紀が感謝と当時に頭を下げる。

  「うん……お祭りだし巫女舞だし、ちょっと舞い上がっちゃったかな」

  結良も樹に笑顔を返しつつも少しばつが悪そうにする。

  「まあ、それだけ素晴らしかったって事で」

  樹は二人の背中をぽんぽんと叩きつつ答える。

  「ありがとうございます、樹さん」

  佐紀がお礼を言う。しかし結良は顔を赤らめつつ上目づかいで樹を見る。

  「……でもさ、樹ちゃん、あたし達の舞見ててちょっとむらっと来てたでしょ?」

  「え……!?」

  突然の結良の言葉に思わずどきっとする。

  「な、何よ急に……」

  動揺を隠そうとしつつもしどろもどろに答えると、今度は佐紀までがいたずらっぽい目で樹を見つめる。

  「私も気づいてましたよ。私達の舞を樹さんが熱い目で見ていた事」

  「え……!?」

  佐紀に言われて今度はさらにどきっとする。

  「そ、それは……」

  確かにその通りだった。二人の白狐の巫女姿に見とれてしまった事は事実であるし、それを二人に見抜かれていた事も恥ずかしいが、同時に少し嬉しかったのも事実だ。

  「そっかー、樹ちゃんあたしたちの舞でむらむら来ちゃったんだ」

  佐紀と結良がにやにやしながら言う。樹は素直に認めるしかなかった。

  「う……まあ……」

  少し顔を赤くしうつむき加減になりながらもこくりとうなずく。

  「それじゃさ、むらむらついでに「あそこ」に行こうよ」

  結良が言うと佐紀も笑顔でうなずく。

  「そうですね。せっかくですから三人で楽しみましょう」

  二人のその言葉に樹は首を傾げる。

  「え、『あそこ』って……でも今から行くの?」

  戸惑う樹に姉妹は笑って答える。

  「ええ、だって『あそこ』はお祭りの日の特別な場所ですから」

  「だからあたし達と樹ちゃんの仲じゃない。一緒に行こうよ」

  佐紀が言うと結良もうなずく。

  確かに樹も小さい頃から佐紀や結良とは何度も来ているが……。

  樹はまだ戸惑う表情のまま二人の顔を交互に見やる。

  しかし幼馴染でもある双子姉妹の誘いを無下に断ることも出来ないので仕方なくついていくことにするのだった。

  「……わかったわよ。「あそこ」も久しぶりだしね」

  佐紀と結良の勢いに押されるように樹はうなずく。

  樹の答えに佐紀と結良は笑顔で返す。

  「それじゃ、いこっか」

  二人は樹の手を取ると祭りでにぎわう境内の奥へと引っ張っていく。

  そんな二人の様子に苦笑しながらも樹は二人についていった。

  [newpage]

  「あそこ」というのはこの神社の裏山にある小さな社で、その神社が祀っている狐神の祠であるらしいのだが、樹にも詳しい事はよくわからない。

  しかし昔からよく遊びに来た場所であり、小さい頃にはそこで遊んだ記憶もある。

  「あそこ」に行くにはまず社の裏にある山道を登っていく。

  そして少し山を登った所にある小さな石段を登ればそこがその場所だった。

  「着いたよ」

  佐紀が嬉しそうに言う。そこには古い鳥居があり、その先には石でできた小さな社があった。

  「わあ……」

  樹は声を上げる。

  幼い頃の記憶に残る神社の姿そのままだった。

  そこには小さな石の社が立っており、その奥には洞窟のようなものの入り口がある。

  そして祠の前には石でできた台座があり、その上に二匹の狛狐が置かれていることにも気づく。

  「この狛狐も懐かしいな……」

  樹は感慨深くつぶやく。

  「そうだね」と佐紀が言い、それに続いて結良が言う。

  「うん、小さい頃よくここで遊んだよね」

  その言葉に樹もうなずく。確かにここは自分達にとっては遊び場だったし、祠の前の狛狐にもよくお参りをしたものだった。

  そんな思い出に浸っていると、佐紀と結良が社に向かって手を合わせる。

  「え?」

  突然の二人の行動に戸惑う樹に二人は笑顔で言う。

  「この神社は狐神を祭ってあるんだよ」

  「そして今の私達はこの社の巫女でもあるんです」

  「こっちはバイトじゃなくて本職だけどね」

  そんな二人の様子に樹も思わず笑顔になる。

  そして社に向き直ると手を合わせ、改めてその小さな社に祀られている神様に祈りを捧げるのだった。

  三人は手を合わせると、そのまましばらく静かにお参りをしていた。

  しばらくすると、佐紀と結良が樹に向き直る。そして優良は社の方を見ながら言った。

  「実はうちの神様、実はこのお社にはいないんだよ」

  「え?」

  驚く樹に佐紀が補足する。

  「私達の祭神にして主神である狐理宇様は各地の社を巡り歩き、次は私達が巫女として仕えているこの社に参られるはずだったのですが、本来ご降臨される年を何年過ぎても姿をお見せになっておりません」

  「まったく、狐理宇さまも連絡くらいほしい所だよね。でもその流れで樹ちゃんと会えたのはうれしいけど」

  結良も笑いながら言う。

  「ええ、私も樹さんとお会いできて本当にうれしく思っていますよ」

  そんな二人に樹は苦笑しながらもうなずく。

  「うん、私も佐紀や結良と仲良くなれてよかった」

  その言葉に佐紀と結良はさらに笑顔になる。

  そんな中、結良がいたずらっぽい笑みを浮かべると、

  「ところで樹ちゃん、むらむらの方はどうなったかな?」

  耳元で囁く。

  その言葉に樹はドキッとして顔を赤らめる。

  そんな様子に佐紀もにやりと微笑む。

  「そうですね。先ほどからは落ち着いたみたいですけど……樹さんからまだ「女の子の匂い」がしますね」

  その言葉に樹はさらに顔を赤らめる。

  「そ……そんな事ないと思うけど……」

  なんとか取り繕おうとする樹だが、そんな様子に結良が追い討ちをかける。

  「うんうん、樹ちゃんは間違いなく女の子だよ。恋する女の子ってね」

  そんな二人にさらに動揺する樹だったが、佐紀と結良は互いに顔を見合わせて笑うのだった。

  (なんかもう完全に見透かされているわね……)

  そんな双子姉妹の様子に呆れつつも苦笑するしかできなかった。

  「と言う事で、樹ちゃんのむらむらをさっぱりさせてあげる!」

  結良がそう言うと佐紀もそれに続ける。

  「そうですね、すっきりさせてあげないといけませんね。それに、私達も少々……」

  結良が笑顔で言うが、その笑顔にはどこか妖しいものを感じさせた。

  「うん、あたし達もちょっと樹ちゃんにむらっとしてるかな?」

  佐紀もそれに続くように言う。

  妖しげなオーラをまとって双子姉妹は樹にじりじりと詰め寄っていく。

  「な……なにを言ってるのよ!」

  二人はさらに迫ると樹の手を取ってそのまま洞窟の中へと連れ込んだ。

  [newpage]

  それから少し経ち、洞窟の中から甘い声が聞こえてくる。

  「んっ……ふぁ……」

  「あ……ん……はぁ……」

  「あ……はぁん……ふぁぁ……」

  その声が聞こえてくる先。

  月明かりが差し込んでくる社の中で三つの白い塊が優しくも妖しくうごめいていた。

  「ん……あっ……」

  「ふぁぁん……いいよぉ……んっ」

  甘い声が聞こえてくる。

  社の中では、佐紀と結良が樹の身体に舌を這わせていた。

  三人とも一糸まとわぬ姿で素肌を合わせながら。

  「樹さん……きれいですよ」

  「樹ちゃん、可愛いよ」

  二人の言葉に顔を真っ赤に染める樹。

  「や……やめてよぉ……」

  そんな抵抗の言葉も今の二人には届かない。

  「樹ちゃん……可愛い……」

  結良はそう言うと樹の首筋に舌を這わせると、そのまま耳たぶを優しく噛む。

  「ふぁっ!」

  思わず声を上げる樹に佐紀も微笑みながら唇をうなじに添わせる。

  「ふふ……樹さん、本当に可愛いですね」

  佐紀の言葉に樹はますます顔を赤らめる。

  その反応を楽しむように二人はさらに愛撫を続ける。

  やがて佐紀と結良の手がそれぞれ樹の胸の膨らみへと伸びてきた。

  その先端にある薄桃色の突起を摘まれると、今まで感じた事の無い感覚に樹は思わず声を上げる。

  「んっ!」

  その反応に二人は満足そうな笑みを浮かべるとさらに強く刺激を与えてきた。

  そして今度は逆側の胸に佐紀が吸い付いてくる。

  同時に結良は指先で転がすように愛撫を続けた。

  二人の巧みな攻めに樹の息は次第に荒くなり、やがて限界を迎えようとしていた。

  しかしそこで突然二人が手を止めてしまう。

  突然の中断に戸惑う樹に佐紀が妖しく微笑みながら告げる。

  「まだだめですよ」

  「樹ちゃん、まだ物足りないよ」

  そんな佐紀の言葉に続いて結良も言う。

  「え……でも……」

  樹が戸惑っていると佐紀がさらに続ける。

  「だって、私達はまだ満足してませんから」

  その言葉に樹はさらに顔を赤くする。

  しかし二人はそんな様子に構うことなく再び愛撫を再開するのだった。

  (あ……ああ……)

  そんな二人に翻弄されながらも樹は抵抗らしい抵抗をする事ができない。

  いやむしろもっと続けて欲しいと思っている自分がいる事に気付いていた。

  (ああっ……)

  そんな樹の様子に佐紀と結良はさらに愛撫を続ける。

  そしてついに二人は同時に樹の一番敏感になっている部分へと手を伸ばしてきた。

  「!!……そこっ!だめぇぇ!!」

  思わず声を上げる樹だったが、二人の指の動きは止まらない。それどころかより激しくなる一方だった。

  やがて二人の指先がある部分に届いたとき、一際強い刺激を感じたかと思うと次の瞬間には目の前が真っ白になり全身を痙攣させるほどの快感に襲われたのである。

  突然訪れた激しい絶頂に息も絶え絶えになりながらも、樹は自分が絶頂を迎えたことを悟っていた。

  しかしそれでもなお佐紀と結良の愛撫は止まることなく続いており、樹は休む間もなく再び快楽の波に飲み込まれていった。

  (ああ……また……また来ちゃう……)

  そんな予感めいたものを感じながらも樹の身体はそれを受け入れてしまっていた。

  そして次の瞬間、またしても激しい絶頂が樹を襲ったのである。

  「!!……ああぁぁっ!!」

  もはや言葉にならない叫び声を上げながら体を仰け反らせる樹だったが、二人の攻め手は一向に収まる気配は無くむしろより激しさを増して樹を責め立てるのだった。

  「んっ……ふぁっ……」

  「んん……ちゅっ」

  佐紀と結良は樹の乳房に舌を這わせながら同時に空いている手でもう片方の胸を愛撫していた。

  そんな二人の巧みな責めに対して樹は為す術も無く翻弄されるばかりだった。

  (だめぇっ……このままじゃおかしくなっちゃうよぉ……!)

  しかしそんな樹の心の叫びなどお構いなしに佐紀と結良はさらに激しく攻め立ててくるのだった。

  やがて二人は一旦手を止めると樹の耳元に顔を寄せて囁くように言った。

  「ふふ、まだ足りませんか?」

  その言葉に樹は顔を真っ赤にして首を横に振るが佐紀は妖しく微笑んだまま続けた。

  「遠慮なさらずもっと気持ちよくなってください」

  そして今度は結良も耳元で囁く。

  「そうだよ、樹ちゃん可愛いからいっぱい可愛がってあげるね」

  そんな二人に樹はもう何も言えずただされるがままになっていた。

  (あ……ああ……)

  そんな二人の様子に満足そうな笑みを浮かべると再び愛撫を再開するのだった。

  それからしばらく二人の攻めが続いたあと、どちらからともなく手を止める。

  「そろそろいいかしら?」

  「そうだね」

  そして二人は樹の両脚を開かせるとその間に割って入る。

  「え……?」

  戸惑う樹をよそに佐紀は樹の秘部に顔を近付ける。そしてそのまま舌で優しく舐め上げた。

  突然の事に驚く間もなく今度は結良が樹の唇を奪うように口付けをする。

  二人の舌が激しく絡み合う中、佐紀は舌先で器用に皮をめくると、そこに隠れていた肉芽を探り当てて口に含む。それと同時に結良は樹の胸を揉み始めた。

  「んん……んむ……」

  突然の刺激に声にならない声を上げながらも樹はなんとか耐えようとするが、すぐに限界を迎えてしまう。

  そして次の瞬間には大量の潮を吹き出して絶頂を迎えてしまった。

  (あ……ああ……)

  そんな絶頂に身体を震わせる樹だったが、佐紀と結良はそれを待ってましたとばかりに一気に攻め立てるのだった。

  今までとは比べ物にならないほどの強い快感に一瞬意識が飛んでしまったが、それもほんの僅かな時間に過ぎなかった。

  すぐさま再開された二人の愛撫によって強制的に引き戻される。そしてそのまま何度もイカされ続けたのだった。

  それからしばらくして、ようやく佐紀と結良は樹を解放してあげる気になったようだ。

  「ふふ……どうでしたか?私達のおもてなし」

  「気持ちよかったでしょ?」

  二人は息を荒らげている樹に言うが、当の樹は答える余裕などなかった。

  そんな様子に佐紀と結良は満足そうな表情を浮かべていた。

  「では、今度は私達も気持ちよくしてもらいましょうか」

  「そうだね。第二ラウンドいってみよーっ!」

  その瞬間、二人の身体がぼんっとはじけた様な気がした。

  [newpage]

  その煙の中で佐紀と結良は姿を変えていく。

  お尻から白い狐の尻尾が生え、耳は広くて長い狐の耳に代わりながら頭上にせりあがっていく。

  全身を白い毛並みが覆っていく中で顔からもみるみる狐のマズルが伸びていく。

  その両手と両足にはリングのような隈取が浮かび、その目元や口元にもラインのような隈取が浮かぶ。

  体格こそ人間の女性だがその顔、その姿は正真正銘の狐人。

  人の形に整えられた白狐の姿と言える形となって佐紀と結良の姉妹は立っている。

  狐耳をぴくぴく動かし、狐尾をふさふさとなびかせて二人は樹を見つめる。

  「ふふ、どうですか?私達の本当の姿」

  「樹ちゃん、驚いた?」

  二人の言葉に樹は驚きを隠せない。

  しかし同時にその美しさに見惚れていた。

  佐紀と結良の姉妹が狐人であることは知っていたが、こうして改めて目の当たりにして改めて実感する。

  「うん……驚いたけど、すごく綺麗」

  樹の言葉に佐紀と結良は嬉しそうな表情を浮かべる。

  「ふふ、そう言ってもらえると嬉しいですね」

  「じゃあもっと見せてあげる!」

  二人はそう言うと同時に樹の身体を愛撫し始めたのだった。

  そしてそのまま再び快楽に溺れていったのだった。

  (ああ……また……)

  そんな樹の思いとは裏腹に二人の攻め手は留まるところを知らない。

  素肌同士の触れ合いを上回るふさふさの獣毛に素肌を密着され、撫でられる感覚。

  長くなった口元は口づけこそ容易ではないが伸びる舌はより緻密に、かつ大胆に肌をなめまわす。

  「んっ……はぁ……」

  「ふふ、可愛い」

  佐紀と結良の攻めに樹は身も心も蕩けさせられてしまっていた。

  そんな様子を楽しんだ後、二人は先ほどとは前後を入れ替えて樹を攻める。

  結良が前から、佐紀が後ろから。

  「樹ちゃん、今度はあたしがしてあげるね」

  佐紀はそう言うと樹の両脚を開かせてその間に入り込む。

  そして結良も同じく樹に覆い被さるように四つん這いになってその顔を胸元に埋める。

  そんな二人の攻めに樹はただ喘ぐ事しかできなかった。

  「んっ……ふぁ……」

  「ふふ、可愛い声ですね」

  「もっと、もっと聞かせて?」

  佐紀と結良の言葉に樹は顔を赤くする。しかしそんな様子に構うことなく二人はさらに激しく責め立てる。

  佐紀は樹の胸元や首元に舌を這わせながら時々軽く甘噛みをする。

  結良も同じく首筋を舐めたりしながら時折耳や頬に口づけをする。

  そんな二人の攻めに樹は為す術も無く翻弄され続けていた。

  「ふふ、そろそろ頃合いかしら?」

  そう言うと二人は樹を仰向けに寝かせると今度はそれぞれ逆側の胸を責め始める。そして同時に秘所へと手を伸ばしていく。

  「あ……だ、だめっ!」

  「あら、どうしてですか?こんなに濡れているのに」

  そんな樹の言葉に佐紀は妖しい笑みを浮かべながらさらに激しく責め立てるのだった。

  「ふふ、樹ちゃんったらもうこんなになってるよ?」

  結良も負けじとばかりに樹の秘所に指を入れていく。

  「やぁっ……そ、それは……」

  恥ずかしさに顔を真っ赤にしながら口ごもる樹だったが、二人はそんな様子を楽しみながら愛撫を続ける。

  「さあ、一緒にイキましょう」

  そう言うと同時に佐紀と結良の指が一気に奥まで入り込み、そのまま激しく動き始める。

  「んっ!だめぇ!!」

  その激しい快楽に樹は思わず大きな声を上げてしまうが、二人は構わず愛撫を続ける。

  「ふふ、素敵ですよ。そのままどんどん気持ちよくなって下さいね」

  佐紀の言葉と同時に二人の攻めが激しくなるにつれ樹も徐々に限界へと近づいていく。そしてついにその時が来た。

  「!!……ああっ!!」

  樹は一際大きい声を上げると全身を痙攣させて達してしまったのだった。

  そんな様子を確認すると佐紀と結良はゆっくりと指を抜いたのだった。

  それからしばらくして樹が息を整えていると、佐紀と結良は優しい眼差しで樹を見つめながら言う。

  「お疲れ様です。樹さん」

  「すっごく可愛かったよ、樹ちゃん!」

  そんな二人の言葉と表情に樹は少し照れくさくなって顔を背ける。

  「べ……別にこれくらい大丈夫よ……」

  しかしそんな照れ隠しをしても二人にとっては可愛く見えるだけだったようだ。

  二人はそのまま樹に顔を近づけると軽くキスをするのだった。

  突然の事に驚いた樹だったが、すぐに顔を真っ赤にする。

  そんな様子に佐紀と結良はクスリと笑みをこぼすのだった。

  「ふふ、樹さんは可愛いですね」

  「ほんとだよね。そんな所がまたいいんだけど」

  そんな二人の言葉に樹はますます顔を赤くするのだった。

  そんな中、樹の口から何か声が漏れる。

  「……たい……なりたい……」

  「ん?どうしたんですか?」

  佐紀が尋ねると樹は恥ずかしそうにしながらも答える。

  「なりたい……佐紀や結良みたいな……狐になりたい……」

  「え?」

  樹の答えに佐紀と結良は驚く。

  「小さい頃一緒に遊んでた頃から……二人が狐人だとわかった頃から……なんとなくそう思ってた……。でも、ずっと言い出せなかった……」

  「そうだったんですね」

  「はっきりしたのは今日……二人の巫女舞を見てて……何かわたしの中で……きたの……」

  「そうだったんだ」

  「何か嬉しいです」

  結良と佐紀は顔を見合わせる。

  しかし……。

  「で、あたし達にむらむらをすっきりされてはっきり目覚めちゃったってわけなんだ?」

  「え……そ、それは……」

  結良の言葉に樹は顔を赤くする。

  そんな様子を見て姉妹はクスリと笑った。

  「ふふ、まあ無理もないですよ」

  「うん。あたしもお姉ちゃんも樹ちゃんの事気に入ってるからね」

  「……あ……ありがとう……」

  二人の言葉を受けて樹は顔を赤くしながらお礼を言うのだった。

  しかし、佐紀の口調が少し切なくなる。

  「でも、人間を狐人に変える術というものは存在しません」

  「え?」

  「うん、あたし達みたいに狐人が人間に化けるっていうのはあるけど、それはまた違うからね」

  「私達にとって人間の姿は仮の姿。人間そのものに変わるわけではありませんし」

  「なので、樹ちゃんが狐人になるのは無理なんだ」

  「そ……そうなんだ……」

  「ごめんね。せっかく期待させちゃって」

  申し訳なさそうな顔をする二人に樹も心から残念そうな顔をする。

  [newpage]

  「ただ……」

  そこで佐紀が話を切り返す。

  「え?何か方法があるの?」

  その言葉に樹は希望を見出した表情を浮かべる。

  「さっきの話は樹さんを狐人そのものに生まれ変わらせることはできない、と言う事です」

  佐紀の言葉に結良が続ける。

  「でもね、別の方法ならあるんだよ」

  「それって?」

  「私達は悪い言い方をすれば人間を化かすことができますけど……その応用で樹さんを化かして狐にする事なら可能です」

  「要するに、「なんちゃって狐化」ってこと!」

  「「なんちゃって狐化」?」

  「そ。だから完全な狐人になれるわけじゃないけど、人間ではない別の存在に化かすことは可能だよ」

  結良の説明で樹はある程度理解するが、それでもまだ疑問が残る。

  「でもそれって、いい事なの?」

  不安そうな表情を浮かべる樹に対して佐紀が優しく語りかける。

  「大丈夫ですよ。私達の一族もそれなりに長い年月を生きていますから人間と深くかかわることはしませんけど……」

  そう言うと佐紀は一度言葉を詰まらせてから続けるのだった。

  「……これはあくまで私の意見ですが樹さんなら構いませんよ。いえむしろその……一緒の狐人になりたいって言ってくれた事、凄く嬉しいです」

  そう言うと佐紀は顔を赤らめて俯いたのだった。

  「あたしも!樹ちゃんならなんちゃってでも大歓迎だよ!」

  結良も顔を輝かせる。

  「ありがとう……佐紀、結良」

  樹は二人の言葉を聞いて胸が熱くなるのを感じたのだった。

  「でも、どうやって狐にしてくれるの?」

  「ふふ、それはですね……」

  そう言うや佐紀と結良は再び樹を挟み込むように抱きしめる。

  「え?な、何?」

  突然の事に驚く樹を佐紀は優しく抱き寄せる。

  そしてそのまま耳元で囁いた。

  「……これから私達が樹さんを狐人にします」

  「うん、あたし達がしっかりサポートするから安心してね」

  そう言うと結良も反対側から同じようにして囁く。

  そんな二人の行動に樹は少し戸惑いながらも黙って頷くのだった。

  (あ……)

  すると突然、樹の中に何か温かいものが流れ込んでくるような感覚があった。

  (なんだろう……?)

  樹は不安げなものを感じるが、その感覚はすぐに消えてしまう。

  しかしその直後だった。

  「え!?ちょっと!?」

  樹は自分の身に何が起こったのかわからないまま驚きの声を上げる。

  そんな彼女に姉妹は不敵な笑みを浮かべているのだった。

  そして次の瞬間、変化が始まった。

  樹の体が白い光に包まれたかと思うと、その光が収まった時、そこには狐人となった樹自身の姿があったのだ。

  (すごい……本当に狐になってる)

  その光景に樹は言葉を失ってしまう。

  それもそのはず、今まで生きてきた中でこんな経験をした人間は一人としていなかったからだ。

  そんな樹を見て姉妹は嬉しそうな表情を浮かべる。

  「ふふ、どうですか?狐人になった気分は?」

  佐紀の言葉に樹は我に返って答える。

  「え……?あ……う、うん!なんだか変な感じだけど……」

  (でもなんだろうこの感覚……)

  「本当に狐になってるんだなぁって実感したよ」

  樹の言葉を聞いて二人は満足そうに頷く。そして今度は結良が口を開いた。

  「ねえ、樹ちゃん。人間だった頃と何か違いはある?」

  結良の問いかけに樹は少し考える素振りを見せるがすぐに首を振る。

  「ううん、特に感じない。むしろ自然に狐として身体が動くって感じ」

  すると佐紀が言う。

  「実際には樹さんは人間のままで私達、そして樹さん自身の感覚が樹さんを狐人として捉えているだけなんです」

  「え?それってどういうこと?」

  樹は佐紀の言葉の意味がよくわからず首を傾げる。

  そんな彼女に今度は結良が答えた。

  「つまり、今の樹ちゃんは人間じゃなくて狐人だってみんなに認識させちゃってるってこと」

  「あくまでも姿形だけが狐人になっただけで樹さんはあくまでも樹さんなんですけどね」

  結良の言葉に佐紀が補足する。

  そんな二人の説明に樹は納得したように頷くのだった。

  「そっか……。でも、なんだか不思議な気分ね」

  そう言うと樹は自分の姿を見下ろす。そこには姉妹同様人の体格を持つ白狐となった自分の姿があった。

  よく見ると目元や口元、両手足には赤い隈取が浮かんでいる。

  その姿は今の樹にとって紛れもない事実であり、そして同時にそれが彼女のアイデンティティーでもあるのだ。

  「ねえ樹ちゃん、せっかく狐人になったんだからちょっとその辺お散歩しよう?」

  そんな樹に結良は笑顔で提案する。

  それに対して樹も狐耳を軽く動かしながら、

  「そうね。せっかくだし」

  と笑顔で答えたのだった。

  そして三人はそのまま洞窟を出て鎮守の森の奥へと向かった。

  [newpage]

  佐紀と結良の先導の元、樹は木々の間をすり抜けながら森の中を進んでいく。

  鎮守の森の深奥は狐人達の結界が張られているのか、一般の人間や動物達は容易に入ってこられないらしい。

  そんな深奥に樹は足を踏み入れた。

  「すごく綺麗な場所ね」

  樹は思わず感嘆の声を上げる。

  目の前に広がる光景は一見普通の森と変わらない。

  しかし、擬似的にとは言え狐人となっている樹にもその空気が宿す神妙で活力のある存在感は感じられる。

  そんな彼女の隣で佐紀と結良は楽しげに笑っていた。

  「ふふ、気に入ってくれたみたいですね」

  「うん!あたし達にとっては自慢の場所だからね!」

  2人の言葉を聞いて樹も笑顔になるのだった。その時である。

  (あれ?なんだろう……?)

  樹は自分の中に不思議な感覚を覚えると同時に下腹部に熱を感じ始めるのを感じた。

  それはまるでお腹の中が疼くような不思議な感覚で樹は少し困惑する。

  そして同時に自身の身体の奥から何かが溢れてくるような感覚を覚えるのだった。

  そんな樹の異変に気付いた佐紀が心配そうな表情を浮かべる。

  「樹さん、どうかしましたか?」

  その言葉に樹はハッと我に返る。

  それと同時に先程まで感じていた不思議な感覚も消えていた。

  (なんだったんだろう……?)

  そう思いながらも樹はそのまま何事も無かったかのように答えたのだった。

  「ううん、何でもないわ」

  そんな樹の様子を結良は少し心配そうな表情で見つめていたが、結局何も聞かずにいる事にしたのだった。

  そんな感じで歩いていくうちに、樹は自分の足取りが少しずつ軽くなっているのを感じていた。

  (……?)

  樹は不思議に思いながらもその感覚に身を任せていた。

  するとその時、突然目の前に大きな崖が姿を現した。

  「うわあ……」

  そんな光景を前にして思わず立ち止まってしまう樹。そんな様子を見た佐紀と結良が声をかける。

  「ふふ、驚いたようですね」

  「でも樹ちゃんならこんな光景も慣れっこでしょ?」

  二人は笑いながら言うと先に進むように促すのだった。

  それに対して樹は苦笑いをしながら答える。

  「そ、それは小さい頃はよく登りっこはしたけどこんな高い崖は……」

  小さい頃姉妹と一緒にわんぱくをしていた頃を思い出すが、目の前にある崖はそれ以上であった。

  「ふふ、では私と一緒に飛びますか?」

  佐紀の意外な提案に樹は一瞬きょとんとするがすぐに笑みを浮かべる。

  「いいの?わたしなんかが登っても……」

  しかしそんな心配をよそに佐紀は優しく微笑むのだった。

  「もちろんですよ。さぁ、行きましょう」

  そんな佐紀の言葉に背中を押されるように樹は覚悟を決める。そして彼女の手を握ったまま恐る恐る崖を登り始めたのだ。すると……

  (あれ……?)

  思った以上に全く苦にならなかったのである。それどころかするすると登っていく事が出来た。「すごい……!」

  樹は驚きながらも必死になって登って行き、あっと言う間に崖の頂上へと辿りついたのだった。

  「ふふ、意外と登れたでしょう?」

  そんな樹を見て佐紀も安堵した様子だった。そんな彼女に結良は笑顔で言った。

  「よかったね!樹ちゃん」

  結良の言葉に樹は少し照れながらも頷くと、改めて周囲を見渡した。

  そこには高くそびえ立つ断崖絶壁とその遥か眼下に広がる見渡す限りの森。

  その風景はとても幻想的で美しく、樹は思わず見惚れてしまうほどだった。

  「綺麗……」

  そんな光景を前に思わず呟くと、樹は自分の心臓の鼓動が激しくなるのを感じた。

  (なんだろう……この気持ち)

  今まで感じた事のない不思議な感情だったのだが不思議と嫌な感じはしなかった。

  それどころか何か自分の中の何かが刺激されたような感覚がする。

  (この位の崖なら……もっと簡単に……)

  そんな事を思いながら樹は歩いてゆく。

  いつの間にか佐紀と結良を追い越して先を歩きながら。

  その背中を見ながら二人は声を掛け合う。

  「佐紀ちゃん、さっきはちょっと乗っちゃったけどあの崖、樹ちゃんが登り切れる崖じゃないよね?」

  「そう言えば……私達ならともかくあくまでも「なんちゃって」で狐人になっている樹さんでは……」

  「樹ちゃんにそんなに体力がついたってわけでもないのに……」

  2人がそんな会話を交わしていると、樹の後ろ姿がどんどん小さくなっていくのが見えた。

  「ちょっと樹ちゃん!危ないよ!」

  そんな声に気付いたのか樹は振り返る事なく答える。

  「大丈夫だって」

  そう言って再び歩き出す。

  しかしその時だった。突然足元が崩れたのだ!

  (え?)

  一瞬の崩落。

  しかし、

  「ほっ!よっ!」

  樹は寸前で身をひるがえすと、空中で一回転して着地する。

  「樹さん!」

  「樹ちゃん!」

  慌てて駆け寄る佐紀と結良に樹は笑顔を見せる。

  「大丈夫。こんなの「簡単だから」」

  「え?」

  樹はそう言いながらも再び崖に向かって跳躍する!

  「ちょっと!」

  そんな2人の声をよそに、今度はさっきよりも高く飛び上がる。そして空中でくるりと一回転し着地したのだった。

  その一連の動作を見て佐紀と結良は唖然としていた。

  しかし当の樹は何事も無かったかのように平然としているのである。

  「樹ちゃんって……」

  そんな2人に対して彼女は言った。

  「わたし、狐人だものこれくらい簡単でしょ?」

  その言葉に2人は納得せざるを得なかったが同時に疑問に思ったことがあった。

  樹は確かに外見こそ狐人になっているがそれはあくまでも外観をそう見せかけているだけのこと。

  その中身は色々な意味で元の人間のままであり、二人がかけている霊力―要するに「化けの皮」が剝がれたら簡単に人間の姿に戻るのだ。

  しかし先ほどまでの樹の動き、その身体能力は狐人の中でもかなりのものになっている。

  しかも、いつしか樹から感じられる気配にも変化が見え始めていた。

  「佐紀、結良、早く行こう」

  そういって笑みを浮かべる樹から感じられるのはまぎれもなく二人にとっては慣れ親しんだ人間ー樹の気配。

  しかし、何か別の気配が混じりつつあるように見えるのだ。

  「え、ええ」

  「う、うん!」

  そんな樹の変化に戸惑いながらも佐紀と結良は彼女の後を追いかける。

  後編に続く