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【174】だから説明がかーなーり不足してるんだってばさ!

  喫茶店内にゆるりと流れていた弦楽器のBGMが不意に途切れ・・

  次の曲へと移り変わる僅かな空白に滑り込むようにして、店主の声が響いた。

  「組合の立場が不思議かしら?簡単な話よ。過去の諍いの被害があまりに大きかったから、「ケンカせずに仲良くしましょう」って事になってるの。アタシたち異能力者は国に居場所を把握され、仕事を振られる。代わりに、一般人とそう変わらない生活が送れるようになってるわ。勿論お仕事を受けるからにはそれなりの対価を頂くけど、どちらか一方が搾取される事が無いように調整するのも組合のお仕事なのよ」

  「でも・・その・・居場所が把握されてたら何かしら無理強いされたり、危害を加えられたり、とか・・」

  「そんな事をさせない為の組合よ。警察や他の組織にも組合員は居るし、何かしら動きがあれば直ぐに知らせが来るわ。要は互いを監視しつつ利用し合ってるの。ギブアンドテイクね」

  「成程・・」

  一先ず納得して頷いていると、組合の説明中口を挟むことなく沈黙していた中年男性が徐に会話に参加する。

  「国のお偉いさんや金持ちの権力者たちの中では、俺ちゃんたちを排除するより利用する方が得だって結論が出てんのさ。だって異星人の侵略だの別次元の化け物来襲だのに一般人だけで対応するなんて無理があるからね~」

  「ちょっと!」とオネェさまが焦って声を上げるも、時既に遅し。

  おっさんの発言はバッチリ耳に届いております。

  え。マ??ガチで?・・いるの?宇宙人・・

  別次元の化け物って・・妖怪とかクトゥ○フ的な?

  いやいや、それなんてパシ○ィッ○・リム・・

  『・・・・・マジかぁ・・』

  あまりに驚きすぎて、無意識に「ははっ」と乾いた笑いが零れ出た。

  ファンタジーって意外と身近に転がっているモノなんだね・・・あんま知りたく無かったでござる・・

  トンデモない衝撃の事実に意識が遠く走り去ろうとしていると、オネェさまが中年男性をパコン!と丸めた雑誌で叩いた。

  「もぅ!そんな数十年にあるかないかみたいな話をアンタは!頼子ちゃんが驚き過ぎて固まっちゃったじゃないの!」

  『・・・いや、数十年ごとにそんな大事件が起こるんかい・・』

  声を荒げたオネェさまに思わず心の中で突っ込む。

  一方、中年男性は叩かれた頭を「痛ぁ~」と擦りながら、反省の欠片も無い態度で続けた。

  「いいじゃないの。最初に大きな脅威を知っておけば、この先何を知ろうとショックが減って幾らかマシってもんでしょ?」

  「だとしても頼子ちゃんはまだ一、般、人っ!組合の新人と同じような対応して良いワケないでしょうがっ!」

  言葉尻に合わせてまた雑誌が振り下ろされ、中年男性は避けようとするも失敗。

  しっかりと脳天に一撃を貰い、角が当たったらしくカウンターに伏せて悶絶する。

  「この無神経中年は全く!頼子ちゃん、驚かせてごめんなさいね?大丈夫よ!組合には戦闘力の高い能力者が何人も所属してるから!化け物や異星人が来たって、一切合切何事も無かったように処理してきた実績があるの!だからなんにも心配いらないわ!」

  「・・・・・はぁ・・」

  『それはそれでどうよ?』と微妙な反応を返したところで、中年男性が「ぷぷ~っ!」と口元を押さえて言った。

  「フォローのつもりで追い打ちかけてんのマジウケるんですけどぉ~!」

  背後にAAの「m9(^Д^)プギャー!」が見えるようなベタな呷りに、オネェさまの顔からスンっと表情が抜け落ちる。

  それに気付いた中年男性の口から「やっべ!」と焦った声が上がり、オネェさまの手がブレた。

  と、思った次の瞬間には、サングラスギリギリにアイスピックがピタリ突き付けられている。

  「・・コウちゃん。今日は随分と口が回るじゃない、ねぇ?」

  「そ、そう~?」

  「えぇ。新調したからってサングラスも掛けっぱなしで、何時もより胡散臭さ二割り増しよ?」

  「え、ヒド「それに」・・イ・・」

  圧が込められた声を発して中年男性の言葉を断ち切ったオネェさまが、ゆっくりと続ける。

  「アンタ何か企んでるでしょう?」

  「いやいや~何の事?俺ちゃん分かんない」

  ケロリとして答える中年男性に、オネェさまはニッコリと作り物めいた笑顔で詰め寄った。

  「何年アンタと一緒に居ると思ってるの?アンタがやたら神経逆撫でしてくる時って、何か目論見がある時ばかりじゃない。誤魔化すときに敢えてゆっくり喋る癖も直したら?バレバレなんだから」

  「・・ぎゃふん・・」

  両手を頭の位置に上げて降参のポーズを取った中年男性からアイスピックを引き、カウンターに覆いかぶさるようにしていた体勢を戻したオネェさまは最後通告とばかりに締めくくる。

  「さっさと白状しないと・・新作のチョコケーキあげないわよ?」

  「ひっ?!そ、そればかりはご勘弁を!」

  自尊心を一瞬でポイしたらしい中年男性は両手を組んで掲げ、オネェさまに懇願した。

  「言います!言いますから!俺ちゃんの生きる糧をお恵みください!」

  半泣きでオネェさまに縋る中年男性・・

  う~ん・・私は一体何を見せられているんだろうか・・

  『コントかな?』と内心遠い目をしていたところで、縋る手をぺしぺしと雑に払っていたオネェさまがこちらを向き声を掛ける。

  「ま、なんとなく予想は出来てるんだけどね・・」

  じっと注がれる視線に、一瞬遅れて「え?えっ?・・私?」とキョドり意味も無く視線を彷徨わせる。

  「コウちゃん、アンタ頼子ちゃんを組合に加入させるつもりでしょ」

  「えっ?!」

  「てへっ。バレちゃった~?」

  「バレるも何も、それ以外ないってくらい解りやすかったわよ」

  片頬に指を添えて溜め息を吐くオネェさまに、にんまりと笑い。一連の所業を肯定した中年男性はこちらに向き直って言った。

  「そんな訳で!綾小路さん組合に加入決定ね!」

  「ぅえっ?!な、何でですか?!」

  驚き、脊髄反射で問う。何をどうしたらそんな話になるのだ?!

  「何でって、さっき裕二郎が説明したでしょ?担当が面談してOK出したら組合員になれるんだって」

  「・・微妙に違うと思いますけど・・」

  「いーのいーの!細かい事は!おいちゃんこの業界では割と発言権持ってるんだから!俺ちゃんが「ヨシ」と言えば「良し」なのだっ!!」

  「はっはっは!」とワザとらしく笑い、小指を立ててコーヒーのカップを傾ける中年男性・・

  『埒があかぬ』と判断してオネェさまに視線を向ければ、下がり眉で謝られてしまう。

  「ごめんなさいね頼子ちゃん。コイツ、アレな感じだけどウチの支部のエースなのよ・・新しい組合員の加入を上にゴリ押し出来るくらいには立場があるのよね・・」

  マジか・・思わず中年男性をガン見してしまったが、それに気付いたおっさんは目元にピースサインを添えて「なのデス!」とキメてきやがったので若干イラッとした。

  『いやいや・・落ち着け私!流されてどうする。ここは冷静に・・』

  感情に任せて文句を言いそうになった口をギリギリで噤み、一度深く呼吸してから切り出す。

  「あの、組合員に誘って頂けるのは光栄、です。でも、さっき五味さんも仰ったじゃないですか。「霊力があるだけじゃ組合員にはなれない」と。それなら私も組合員になる資格はないと思います」

  「あぁ、それアタシも気になるわ。何でそんなに頼子ちゃんを誘うの?理由があるんでしょ?」

  「ん~。それはね~~・・・・勘!デス!」

  「ミャハ☆彡」と今度は顎にピースを添えてキメるおっさん・・

  そんな態度にいい加減ゲンナリする私とは対照的に、オネェさまは「コウちゃんの勘なら仕方ないわね・・」と理解を示して見せた。

  いや、だから加入条件クリアしてないんとちゃうの?

  え~・・どゆ事?

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