广告广告
  
【173】もうマジやんのかステップな心境である。

  角にコンビニがあって、その斜め向かいには銀行が。

  隣はシャッターが下りてるけど、その反対側はカラオケとか飲食店のテナントが入った普通のビル。

  人通りの多い商店街から1ブロックしか離れていない立地に佇む、至ってフツーの喫茶店に立ち寄った・・

  [[rb:筈 > ・]][[rb:だ > ・]][[rb:っ > ・]][[rb:た > ・]]。

  〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇

  「総合・・異能互助組合?」

  おずおずとした問いに、オネェさまと中年男性が答える。

  「そ。通称「組合」。ある程度人口の多い市や町に支部があってね?その土地に住む大抵の異能力者たちが所属する互助組織なの。一応公的な組織ではあるのだけど、公にはされていないわ。所謂「非公開組織」ってやつね」

  「異能の源となる力の根幹は霊力でね?支部には一定以上の霊力がある人しか見えない特殊な看板や掲示物、出入り口を備えてるワケ」

  「そうなのよ。だから普通にお店に入ってきた頼子ちゃんも能力者だと思い込んじゃったわ」

  「いやぁ、ある意味綾小路さんも能力者みたいなものだけど、霊的加護が強いだけじゃあ所属基準を満たしてないからさ。この前は声を掛けなかったんだけどねぇ・・」

  「まさか霊力上がってうっかり迷い込んで来るとは!」と、グラサンのおっさんは面白気にカラカラと笑って、オネェさまにコーヒーのお替りを要求した。

  ・・・つまり。喫茶「[[rb:lapis > ラピス]]」は、霊能力や超能力者が社会生活を送る上で悩みを相談したりトラブルを解決したりする組織の支部・・という事らしい。

  『それ。なんてな○う小説です?』状態のワテクシ。まさに混乱の極み!

  ある日突然鏡が異世界に繋がったのも十分衝撃で創作物的ファンタジーだと思うケド!

  まさかそれ以外にも普通に生活する中で非現実に遭遇するとは思わないじゃんっ!!

  いつから日本は異能力者が跋扈する小説みたいな世界になった?!

  あ、昔からですかそうですかそりゃそうですよね知らなかったってだけでっ!

  じわじわと滲む背中の汗が、妄想的な現実との邂逅によって生じた不安を加速させる。

  まず、今の自分の立ち位置はどこなのか。

  組合や能力者の存在を知った、ただの一般人?それって大丈夫なの?

  霊力?とやらが上がったらしいけど、なら私も能力者にカウントされる?

  どちらにしろ、自分の現状がルール的にアウトなのかどうかが直ぐに知りたい。

  だって、足元のカゴに入れたリュックには、何かの役にたつらしい[[rb:異 > ・]][[rb:世 > ・]][[rb:界 > ・]][[rb:の > ・]][[rb:金 > ・]][[rb:貨 > ・]]が100枚近くも存在しているのだ。

  純粋な金としての価値だけでも大変なものなのに、そこによくワカラン付加価値までついてしまっては、コレの適切な処分?処理?とにかくどういうふうにしておくのが正解なのかが分からない。

  足元がぐずぐずと崩れていくような不安なイメージが、メンタルをガリガリと削って来る。

  ストレス値が爆上がりでマジ辛い・・なんなら既に胃が痛い・・

  何をどう質問したらいいのかすら分らず、とにかく落ち着こうとお代わりの紅茶に口を付ける。

  そんな私の余裕の無い挙動不審っぷりに、オネェさまはこちらを安心させるようにニコっと笑って言った。

  「ごめんなさいね?急に能力者がどうとか言われても、訳が分からなくて不安になるわよね?大丈夫よ!色々知ったからって、頼子ちゃんが何か不利益を被ることなんてまずないから」

  その言葉にほっとしたのも束の間、すぐに中年男性が忠告を口にする。

  「でも他の何も知らない人にべらべら話しちゃダメだよ?晶ちゃんも知らないからうっかり漏らさないようにね?」

  「えっ・・そうなんですか?アキは幽霊が視えますけど・・」

  「そりゃ「視えるだけ」じゃ、ねぇ。霊関係の相談くらいならおいちゃんで十分だし、こんな半分以上がアウトローみたいな世界、知らないに越したこたぁないんだよ」

  「そう、なんですね・・」

  どうしよう・・・既に異世界関係でがっつり巻き込んでしまった!

  今後の展開次第では[[rb:親友 > アキ]]もこの非現実に直面する可能性が大っ!!

  『ごめんよ親友・・』

  また心労が1つ追加されてしまい、更に胃がキリキリとしてくる・・

  そっと鳩尾をさすっていると、オネェさまが心配そうに言った。

  「頼子ちゃん、顔色が悪いわ。クーラー寒かったかしら?ホットミルクでも淹れる?」

  「いえ、大丈夫です・・まだ紅茶もありますから」

  「あらら。ホントに大丈夫?遠慮なんかしちゃダメだよ?おいちゃん、ちゃっと薬局走ろうか?」

  心配そうにこちらを気遣う2人に「本当に大丈夫ですから」と断りを入れ、またひと口紅茶を飲んだ。

  さてどうしよう・・分らない事、知らない事が多すぎる・・

  ・・・解っているのは、それを解消するには情報を集めるしかない、という事。

  『立ち位置が分からないのなら、実情を把握するしかない。よね・・』

  怖いのは、不必要な情報を与えて自分や親友の身に危険が及んだり、理不尽な要求をされたりすること・・

  でも、怖がるだけじゃ何も解決しない。

  解っている。理解しているけど、それでも怖いものは怖いのだ。

  不安からドっドっとやたら自己主張する心臓と、ひんやりと冷えていく足先。

  既にじっとりと濡れている背中の不快感をどうにか無視して、少し震える手を膝の上でぎゅっと握り込むと、意を決して口を開いた。

  「・・あのっ!・・えと。すみません。分からない事が、多すぎて・・まだ混乱してるんです・・その。色々と質問しても、大丈夫でしょうか?・・」

  恐る恐る問うと、同時にぱちりと瞬きした2人は顔を見合わせ、視線で会話した後に「勿論」と頷いてくれた。

  直ぐにオネェさまが「ちょっと待っててね」と一言断り、スタッフルームらしき扉の向こうへ消え、直ぐに戻って来る。

  手に持っていたのは、パンフレットらしきカラフルな冊子。

  「ハイ。まずは資料ね」と渡されたその表紙は、市役所の窓口なんかに置かれている感じの既視感のあるデザイン。

  でも上部に印刷された「総合異能互助組合のご案内」が大変ミスマッチで思わず目を擦りたくなる代物。

  『・・・どこの印刷会社に依頼したんだろ・・』

  ・・そんな事気にしている場合じゃないのに、どうしてか考えてしまうのはオーバーフロー気味な精神が彼方へ逃避しかけているからだろうか・・

  「まずは組合についてざっと説明するわね。その上で疑問があったらいくらでも質問してちょうだい♪」

  「あ、ありがとうございます。よろしくお願いします」

  ぺこりと頭を下げて、オネェさまの話に耳を傾ける。

  結果から言うと、ある程度の不安はオネェさまの説明で解消された。

  危惧していた不利益・・異世界と関わっている事で監視されるとか登録料払えとか移動の制限とか・・そんなのは一切無さそうだった。

  まず、異能者は組合の担当者が異能力を確認、能力の危険度や有用性などを判断された後に登録の流れとなる。

  登録するメリットとしては、登録するだけでお給料が出る事。

  組合への貢献度で変わるらしいが、最低1万円から青天井、らしい・・

  凄い。夢のある話だ・・

  組合の業務は異能力者の所在の把握。異能者への仕事の依頼の斡旋、仲介。

  トラブル解決の手助け等多岐に亘る。

  『ガチガチに管理されるのでは』と警戒もしていたが、どうやらその心配はしなくて良さそうだ。

  その事をぽろりと零すと、組合の成り立ちを交えて説明される。

  戦争の裏で異能者たちは国に使い潰されそうになり、組合の前身となる組織を結成して団結。反旗を翻したらしい。

  その後、色々・・本当に色々あった結果、異能者たちの組織は国と対等に渡り合う様になったと。

  現在組合は国の管理下となってはいるものの、その実態は半民間といった感じで、何かを強制される事はないそうだ。

  『えぇ・・組合強すぎぃ・・』

  引くと同時に『何故、そんな風に国と渡り合えるのか』と疑問も浮かぶ。

  と、それを察したオネェさまは口元に笑みを浮かべながらその理由を説明するのだった。

广告广告