广告广告
  
【115】爆弾を投げられたでござる!/自覚した魔力の淀み。

  カ○ピスの後で「よかったらどうぞ」と勧めたクッキーを、はむはむ小さな口で食べ進める美人さんにほっこりしながら思案する。

  うーん・・

  高額支払いの埋め合わせになればと趣味を聞き出してみたものの・・

  |美人さん《お姉さま》の手助けになりそうな事と言えばその役者の姿見の模写とか、舞台を動画撮影するとか?

  あっちで著作権みたいなのがあるかはわからないけど、個人で楽む分にはセーフじゃないだろうか?

  新しいビデオカメラくらいなら今回のチョコの売り上げで余裕で賄えちゃうしなぁ~・・

  ただ、そうなると劇場でカメラ回さなきゃだよね・・

  ま。提案だけはしてみますかな?

  〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇

  「舞台の「さつえい」でございますか?」

  「えぇ、そちらのモニター・・四角い枠に私の姿が映し出されているように、目で見るように風景を記録する道具がこちらにはありましてね?よろしければその道具を試してみるというのは如何でしょう?」

  美人さんに必要なのは舞台の内容を知ること、だと解釈したのだけど・・どうかな?

  「記録・・それは、視界と聴いた音を保存する魔法という事でございますか?!」

  「あ、いえいえ。詳しい理屈は省きますが、人が目にする光景を保存するというより、絵師が描いた絵が枠の中で動くような感じが近いかと。その場の音も同時に保存されますが、流石に直接舞台を目にするような臨場感は無いと思います」

  「・・折角ご説明頂いたのに、きちんと理解出来ているか自信がありませんわ・・」

  「そんな恐縮しなくても・・「そのような物」くらいの感覚で大丈夫ですよ」

  「どうです?記録の道具。試されてみては?」と、ちょっと恰好つけてゲ○ドウポーズで尋ねてみると、美人さんは目を伏せて考え込んだ。

  静かにじっと待つこと暫し、すっと瞼を開いた美人さんの瞳は強い決意にきらりと光っている。

  「恐縮ですが、魔女さんのお言葉に甘えさせて頂きます。どうか記録の道具をあたくしにお貸しくださいませ」

  「はい、了解しました。では次回の顔合わせまでに準備しておきますね」

  「誠にありがとう存じます!これで劇場に出向かずとも内容を知ることが出来ますし、お友だちとも楽しくお話できそうですわ!」

  「それは良かった。あ、でも舞台を記録するには直接劇場まで赴く人が必要になりますが・・どなたか信用できる方はいらっしゃいますか?」

  そう。これかなり重要だよね。

  こっちの情報は「身内でのみ共有。他には極力漏らさない」って青年に聞いてたんだけど・・何か手を考える必要があるかな?

  心配する私を余所に、美人さんはにっこりと良い笑顔で答えた。

  「はい。人選については実家に頼ろうかと。その上で精霊契約を結べば、秘密はしかと守られますわ」

  「成程。それなら安心ですね」

  うむ。したらば後は私が良いビデオカメラと録音機材を揃えればおっけーですな!

  んだけど、何を買ったら良いか全然分かんないからまた親友に相談かねぇ~。

  ・・最近頼り過ぎだと思うので、今度会う時にはアキの好きなお菓子か何か用意しとこっと。

  そんな感じで機材購入の算段をつけていると、美人さんがおずおずと申し出て来て、『なんだろう?』と小首を傾げる。

  「あの、魔女さん。無事舞台を記録出来ましたら・・その、一緒に観賞いたしませんか?」

  「え?でも、折角ですからお一人でゆっくり観られた方がよろしいのでは?」

  「いいえ!あたくしの「推し」を是非魔女さんにも知って頂きたくて!」

  美女さんはぐっと両手を拳にして胸の前で構えて見せ、所謂可愛いポーズというヤツで熱く訴えて来た。

  「あの、それに・・あたくしにも魔女さんの「推し」をご教授頂ければと・・駄目、でしょうか?」

  そして一転、冷たい印象になりがちな切れ長の目を潤ませ、ぷるっぷるの可愛い唇から紡がれる懇願に焦りが生じる。

  くっ!これが噂に聞く人妻のおねだり[[rb:ギャップ > 精神]]攻撃!

  [[rb:そっちの気 > 百合属性]]無い筈なのに、このままだと癖が歪んじゃいそうっ!

  誰かっ!この中にA.○.フィールド展開出来る方はいらっしゃいませんかーっ!

  なんてアホな妄想をしている間にも、美女さんは視線の噛み合わない瞳でこちらを見つめ、じりじりと顔を近づけつつあった。

  心の内で『あー、うー・・』と往生際悪く足掻いてみたものの、割と直ぐに圧の籠められた眼力に負けて心の内で[[rb:降参 > ハンズアップ]]する。

  「えっ、その・・・ハイ。イイデスヨ?」

  「まぁ!誠ですか?!あたくし、とても嬉しいですわっ!」

  カクカクとぎこちなく頷いた私に、美女さんは両手の平を合わせ小首を傾げてにっこりと勝利者の笑みを浮かべた。

  ははっ。敵わね~・・

  美人の圧ってヤバいわぁ・・

  てか、私って青年といい美人さんといい。この系統の顔に弱いのか?

  う~ん、リアルではそんな面食いなつもり無かったんだけどなぁ。

  自分の意外な一面に自分自身でびっくりです。

  思わぬ気付きによる動揺を、髪を覆う布ごと頭を掻いて紛らわせていると、美人さんが大変良い笑顔で首筋に刃を当てるが如き言葉を発した。

  「それでは早速ではございますが、魔女さんの「推し」をお教えくださいませ!」

  「えっ?!・・えーとぉ・・。それは、ですね・・」

  速攻?!判断が早いっ!

  え。いやいや、ちょっと待って!

  美人さんに見せても大丈夫な[[rb:作品 > ヤツ]]って・・え?どれなら平気?!

  「え~・・すみません。私の「推し」は結構沢山ありまして・・どの「推し」を紹介するか決めるまで少しお待ち頂いてもよろしいですか?」

  「はい!勿論お待ちしますわ!」

  ウキウキとご機嫌な様子の美人さんに、今更「次の機会に」等と到底言える筈もなく。

  頼子はだらだらと背中に汗を伝わせながら、無難な作品をチョイスすべく脳内検索をかけるのだった。

  〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇

  小さく燃える焚火の前で簡易椅子に座る今の自分は、はた目には暇を持て余して呆けているように見えるだろう。

  実際は違う。

  焚火を視界に収めてはいるが、意識は体内の魔力へと向いていた。

  内側で渦巻く魔力の流れを意識し把握した結果、分かったのは所々淀んできているという事。

  このままだと凝ってしまい、体に変調を来すことは明白である。

  王都を出発してからというもの、当然だが殆どの時間を移動に費やしてきた。

  その間、周囲から取り込み続ける魔力を消費する為、騎乗している間も身体強化と魔力放出による空間把握に努めたが・・

  やはり王都で魔法の訓練をしていた時の消費量には遠く及ばない。

  依然、操作魔法は「水」と「風」しか発動しない上、「風」は規模の大きなものしか使えない為、移動しながらでは到底使える筈もなく魔力消費が追い付かなくなってきたのだ。

  こうなっては、ただ魔法を使うだけでは心許無い。

  延々と発動し続けるか、竜巻を起こすような大掛かりな[[rb:魔法 > モノ]]なら話は別だが、今の立場と状況では発動する訳にもいかない。

  『出来れば避けたいところだつたが・・仕方ない、か』

  現状を改善するには諦めが肝要な場合もある。と、自らに言い聞かせ、億劫だと根を張りそうになる足を無理矢理動かし、傍仕えの元へ向かう。

  天幕に居るだろうかと覗き見れば、傍仕えは前室扱いだという屋根だけの場所に簡易テーブルを置き、何やら書き物をしていた。

  恐らく、子飼いの者への指示書か何かだろう。

  声を掛けると、顔を上げてこちらの顔を確認して直ぐ異変に気付いたらしい。

  半精霊が灯す魔法の明かりに照らし出された傍仕えは「如何なされました?」と、心配そうに問うた。

  「仕事中に悪いな。魔力の吸収、拡散の用意を頼みたいが、平気か?」

  「はい、問題ありませんのでお気になさらず。直ぐにご用意いたします。必要なら新しく天幕を張りますが、如何なさいますか?」

  「いや、今の天幕でいい。片付けで手間をかけるが、周りからいらぬ注目を集めるよりはいいだろう」

  「畏まりました。では、アド様は天幕内でお待ちください。用意が出来ましたら外からお声掛けいたします」

  「分かった。では頼む」

  軽い打ち合わせを終え、傍仕えに洗浄の魔法をかけてもらうと自分の天幕へと向かった。

广告广告