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呼び鈴が鳴って玄関に向かうと「来たよー!」とドア越しに親友の声が聞こえた。
そのまま鍵を開けたら、外れるんじゃないかという勢いでバンッ!とドアが開かれる。
「呼ばれて飛び出たアキさんですよっ!!ジャスパー君は居るかなっ?!!」
「っくりしたー。いや、まだ時間じゃないし。話聞いてた?」
『異世界モニター通信やるよ~来る?』とメッセを送ったあの後、返された内容は『仕事終わったら速攻行くね!』というもので、こうして親友は突撃してきたという訳です。
まぁ、想定通りですな。
今日の夕食はあちらとは別々でとの事だったので、今は親友が買ってきてくれたお弁当屋さんの幕の内弁当をかっ食らっているところ。
うーん。揚げ物が美味い・・しかし、最近食事事情ががが・・
体重計に乗るのが怖いぜっ!
「んで?明日はホームセンターに行くって、何か買い物?」
「うん。ほら、アド君たちが「遠征に行く」って話をしたじゃん?こっちの品物をあげる件は伝えて、承諾もらえたんだけど出発が四日後だって言うから、もう直接買いに行った方がいいかな?って思って」
「うぇっ?!そんな直近の話だったの?大変じゃん!」
「そうなんよね~あ、そんな訳でお願いがあります」
もぐもぐと咀嚼しながら「なにさ?」と小首を傾げる親友に対し、居住まいを正して言った。
「・・これを頼むのは本っ当ーに心苦しいんだけど・・明日一緒に買い物付き合ってくれませんか?」
正座して、精一杯真摯に頭を下げて頼む。
実は明日向かう予定の大型ホームセンターでも、二酸化炭素のボンベ(液化炭酸ガスボンベ)を取り扱っているらしい事が分かった。
だが無事買えたとしても、家まで運ぶ手段がない。
ボンベ以外のキャンプ用品も買う予定だから、きっと大荷物になるだろう。
そうなると、タクシーでもちょっと厳しいかな?と思うのだ。
ついでに言うと、私は車の免許を持っていない。
と、いう訳で頼みの綱の親友だ!
お互い食事を終え、片づけまで済ませてからお茶を片手に話の続きをする。
「そんな訳で車を出してもらえると大変有難いんですが・・難しいかな?」
「う~ん・・車を出すのは別に良いんだけどさ。明日平日。あたし仕事。OK?」
「う゛っ!それは本っ当にゴメン!・・でもそこを何とか・・謝礼は出しますので・・」
「う~ん・・もう一声っ!」
「えっ?・・え~と、え~と・・」
アキの喜びそうな物、好きそうな物・・あ、そだ!
「アキは大きな動物とか好き?ネコ〇ス的な感じのやつとか」
「ん?何突然。ネコ〇スは全人類の憧れって話?」
「だよね!じゃあ、ちょっと試しに呼んでみるね」
「え?ネコ〇スを?」
きょとんと瞬きをする親友をそのままに、今日生み出したばかりの疑似生命体の名を呼んだ。
「[[rb:召喚 > サモン]]!白狐、緋翠!」
格好つけてパンっ!と胸の前で柏手を打ち、等価交換のポーズで叫んでみた。
いきなりだから応じてくれないかもだけど、まぁそん時はそん時で。
シンっと静まり返った部屋の中、自分と親友との間に痛い沈黙が流れる・・
・・・おぉっと。これは早まったカナ?
「アコ?一体何がしたいの?試験召喚システム?錬金術?」
どっち?といった感じで小首を傾げる親友に、頭を掻きながら適当な言い訳をしようと口を開きかけたところで・・
その親友の背後から、窓を通り抜けて白く神々しい生き物がぬっと姿を現した。
「呼んだ?」とでも言いたげに顔を斜めに傾けて、つぶらな瞳でこちらを見るお狐様を、思わず満面の笑みで迎える。
「緋翠たん!来てくれたんだねっ!ありがとっ!」
嬉しくて諸手を上げて歓迎すると『後ろに何が?』と振り向いた親友が硬直。
直後、大音量で叫んだ。
「っきゃあー!!何これ何これ何コレー?!!」
「うぉっとお!?アキさん落ち着いて!ほらほらっ!怖くないですよ~!可愛いですよ~!」
このお狐様は「安全」だとアピールすべく、ローテーブルを回って緋翠の首に抱き付いて見せる。
そして咄嗟に『今の悲鳴が外に漏れ聞こえていたらやべぇ!』と思い立ち、誤魔化す為に状況説明的な台詞を大声で叫んだ。
「も、もーっ!アキさんったら!憧れのぬいぐるみだからってテンション上げ過ぎぃー!ほーらもふもふ良いでしょうー?!気持ちいいですよー!」
視線で『大丈夫!大丈夫!怖くない!怖くない!』と必死になって訴えると、目をかっ開いて両手で口元を押さえていた親友が恐る恐る、震える手をゆっくりと伸ばしてきた。
緋翠も状況を察してか、アキを怖がらせないようにじっと動かないでいる。
うっ。健気っ!なんて良い子っ!!
緋翠たんの気遣いが嬉しくて、首に回した腕に思わずぎゅうと力が入る。
一方親友はというと、緋翠の鼻筋をそっと撫でてその感触に驚き目を細めていた。
「触れる・・ウソ・・スゴ・・ふわふわで、つやつややんけー・・」
「んでしょ~?最高でしょ~?」
「何この子・・テラ可愛いんですけどぉ~・・」
「んでしょ~?緋翠たんっていうんだよぉ~?」
「やっべ~・・永遠に撫でていられる・・」
「だよねぇ~・・」
もふもふ、ふわふわ、すべすべ、すりすり。
大の大人が2人して我を忘れ、他人様に見せられないような顔でふかふかの毛皮にうずまる。
そうして延々ともふり・・続けていたかったが、緋翠から『もう行かないと』と訴える感覚が伝わり、断腸の思いで本当に渋々離れた。
ふわすべもふもふを堪能するには時間が足りなすぎる!
一日中なでなでしたい・・だが緋翠たんを困らせる・・弱らせる訳には・・
分かってはいても、つい未練がましく「また寝る時に呼んでいい?ちょっと触らせてもらうだけで良いから・・」とお願いしてみると、緋翠たんは大きな舌で私の顔をべろんと舐めて了承してくれた・・・
っくぅーっ!有難き幸せっ!
後、時間がある時にアキももふって良いか訊ねたら、これも『いいよ』と許してくれたので親友も鼻血を出しそうな勢いで喜んでいる。
オタク2人で立ち去るもふもふ尻尾を「ばいばーい!」と全力でお見送りして、もふの魔力の余韻に浸っているなう・・
「緋翠たん最高かよ・・」
「でしょ?うちの子、最っ高でしょ?・・」
「もうケモ枠は緋翠たんしか勝たん・・」
「ほんそれな・・」
お互いぽやぽやしながら語っていたが、不意に正気に返った親友がぐりんっ!とこっちに顔をむけて「で?」と当然の疑問を投げて来た。
「あの最高のもふもふは何?」
「緋翠たんです!」
「「( -`д-´)キリッ!」じゃないわ!「何なの?!」って訊いてんの!!あれ普通のっ・・視れば解るけど、解るケドっ!何もかも普通じゃないでしょ?!知ってること話しなさいよ!」
狼狽した親友に両肩をがっちり掴まれ「キリキリ吐けっ!」と前後にガックン、ガックンと揺らされる。
「お、ぼっ。出る!幕の。内、が出、ちゃうから!って止めんかいっ!!」
肩を掴む腕を下から振り払って1歩下がり、親友に両手を向け「ステーイ、ステーイ」とジリジリ後ずさって距離を取った。
「ちゃんと説明するからっ!落ち着いて!」
「ふーっ!ふーっ。・・ふー・・」
「・・大丈夫そう?」
深呼吸する親友の元に恐る恐る近づくと、がっ!と手首が捕まれた。
「い・い・か・ら・話・す!」
「はい・・」
そんな訳で一から十まで話しました。
つってもアド君が用意した呪具を発動して、疑似生命体を生み出して名付けたってだけなんだけどね。
麦茶を一口飲んで、グラスをコースターに置くとカラリと氷が小気味よい音を奏でた。
う~ん夏だねぇ・・
何となく、視線を窓の外に向けて薄闇の中、淡く伸びた筋雲の掛かった下弦の月を見やる。
一方、親友はというと・・ローテーブルに肘を付いて、解りやすく頭を抱えていた。
「・・どうしたの?」
「・・どうしたもこうしたもあるかい・・アコ。自分が何したか分かってんの?」
「・・・え~と?」
何をそんなに悩まし気にしているのか。
いや、もちろん緋翠たんが原因なのは理解してます。
でも、あの可愛い緋翠たんですよ?
私に害になる事をしなければ、ただの癒し系お狐様ですよ?
ちょっと大きいけど。
「何も解ってない顔してからに・・」
でっかいため息を吐いた親友は「あのねぇ・・」と前置きして言った。
「霊感あっても、視えるだけのポンコツなあたしだけどさ。それでも解る事はあんのよ・・・アコ。[[rb:あ > ・]][[rb:の > ・]][[rb:子 > ・]][[rb:は > ・]][[rb:ヤ > ・]][[rb:バ > ・]][[rb:イ > ・]]・・あんな霊圧と存在感・・下手したら大きな神社で祭られる神様レベルだよ?」
プァーン!・・・
クーラーの効いた部屋に、ガラス窓の向こうから車のクラクションが遠く響く。
暑くも無いのに、じわりと汗を掻きながら頼子は親友が告げた内容に対し、一言だけ反応を返した。
「・・マジ?」
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