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スマホのスピーカーからアニソンを流しつつ、冷蔵庫から野菜を取り出す。
人参、玉ねぎ、キャベツ・・あ。しまった。ピーマン買ってない。
すぐに友人へ「買えたらピーマン頼みます」とメッセを飛ばす。
暫くして、人参の皮むきをしている所に「了解」と返信が来た。
お。ナイスぅ。
「助かります!」と返して、包丁を取り出す。
全部の野菜を炒めやすい感じにカットしたら平皿に入れてラップを掛け、冷蔵庫に仕舞う。
さて、友人の到着まで支部でも覗きますか。
最近気になるCPがあったのだけど、あれやこれやあってまだ見れて無かったんだよねぇ~
『さてさてどんな作品があるかな?』と、検索窓にCP名を入れる。
・・・結果。次に出す本のジャンルが決定した。
「っふぅ~・・拳〇ユ[[rb:尊 > てぇて]]ぇ・・これは沼だわ。ノマカプ沼るの何時ぶりだろ。一個前はバ〇素・・ニク〇ュディ・・そんでベー〇く?かな?」
支部のブクマを振り返ったら自分の[[rb:癖 > へき]]が一目瞭然で草。
最初に萌えたのはネウ〇コだったっけな・・いや。多分ガウ〇ナだわ。
BLカプ?星の数だっつーの。数えられるかよ。
自分が好きになった推しCPを振り返ると、年齢で好みの変遷があって面白い。
だからどうしたって話ですけどね。
「てか9〇のカップル皆尊い・・全員結婚しないかなぁ~」
う~んどうしよう。そんな感じの本を作るのも楽しそうだ。
妄想を捗らせていると来客を知らせるチャイムが鳴った。
見返していたアニメを止め「はいはいな~」と玄関へ向かう。
ドアスコープを覗くと、そこには両膝に手を当てて肩で息をしている友人の姿があった。
かなり急いで来たらしい。
チェーンを外し、開錠してドアを開き友人を招き入れる。
「いらっしゃっせー!」
「ど・・どこのラーメン屋だよ・・」
「ははっ!凄いね正解!お昼ラーメンの予定だけど食べる?」
体をずらして入室を促すと、ふぅと息を吐いた友人は肩から斜めに掛けたカバンを抱え直して玄関に入った。
勝手知ったる様子で部屋に向かいながら「もち食べる。はいピーマン」とビニール袋を渡される。
「ありがと!」と礼を言って受け取り、鍵とチェーンを掛けてからその背中を追った。
「んで?異世界がなんちゃらってどゆこと?」
部屋に入るなり、早速そう切り出す友人を「まぁまぁ落ち着きなよ。ちゃんと話すから」と出しておいたローテーブルに着くよう勧める。
汗だくの様子を見かねてクーラーを入れ、冷蔵庫から麦茶を取り出してグラスに注ぎ渡した。
難しい顔のまま無言で受け取った友人は、グラスを煽って一気に飲み干すと「で?」とまた訊いてきた。
「うん。先ず安心して欲しいんだけど、私は変なお薬に手を出した訳でも、頭がおかしくなった訳でも無いからね?」
「勿論ふざけてもいません」と続けると、友人は暫し言葉に詰まった後で「うん。わかった」と頷いた。
幾分険が取れた様子に内心ほっとして、青年との出会いを語る・・と言っても、そんなややこしい話ではない。
「鏡が異世界に繋がって、向こう側の友人が出来た」で終わりだ。
自分の話しを黙って聞いていた親友はギリギリと音が鳴りそうな程に眉根を寄せ、頭痛に耐える面持ちで訊いてきた。
「それで・・この鏡が?」
「そ。見てて」
そう言って、手元のスマホを鏡に差し入れると、いつも通り何の抵抗もなくスッと通り抜ける。
半分以上向こう側に入れたまま、上下に動かして見せ「ね?」と反応を窺った。
親友はというとテーブルに肩肘を付き、そこに顎を乗せたまま真ん丸に目を見開いて絶句している。
無理もない。
「そんでほら。体は通らないんだよ」
スマホを引き戻し、今度はぺたりと鏡に手を付いて見せた。
無言で固まっていた親友だが、急に再起動すると「ちょ、それ、あたしにもやらせて!」と慌てて立ち上がる。
「ほいどうぞ」と場所を譲ると、ぺたぺたと鏡を触ってからカバンから出したノートをおそるおそる差し入れようとした。
が、どういう事かノートは鏡の表面でコツンと止まる。
アレ?と思いぱちぱちと瞬き。
一方親友は暫し無言で固まった後「って、出来ないじゃんっ!」と勢いよくノートを床に叩きつけた。
「あっれ~?何でだろ?」
首を傾げ、もう一度スマホを差し入れてみる。
するとやっぱりスカスカと通り抜けた。
何でやねん。
「何それイミフ!何でアコがやると通り抜けるのにあたしは駄目なん?!」
「おっきな声出すない!落ち着きなはれ~」
「これが落ち着いていられるかっ!?・・はっ?!さては幽霊見えるとか特異な体質だとアウト!みたいなっ!」
「そいやアキは霊感あるんだったね」
「そんな・・見えるだけでなんも出来ないへっぽこ霊感のせいで鏡を通り抜ける不思議体験が出来ないとかっ!腐ってるから?腐女子なオタクは受付拒否ですか?!」
「いや、だから落ち着けよ」と頭を抱えて上半身をぐねぐね動かす親友の後頭部に軽くチョップをかます。
「う゛っ!」とか言って、ノリよくテーブルに突っ伏す親友を見下ろしながら「オタクで腐女子は私もなんですが?」と声をかけた。
「だって~・・じゃあ何であたしがやるとダメなん~・・」
「そんなん知る訳ないでしょ?あ、でもあっちの人に聞いてみたら何か分るかも・・」
「そう、それ!友だちになったってどんな人?女?男?はっ?!さては人外?!」
ガバッ!と上体を起こして目をキラキラ・・いや、ギラギラさせて詰め寄って来る親友。
近すぎるその顔を押し返しながら「ぶー。残念でした~」と人外説を否定する。
「期待に添えなくて悪いけど普通に人ですぅ~。二十代前半?くらいの男の人だよ」
そこでスケッチブックを取って来て、前にデッサンさせてもらった青年の姿を見せる。
「アコさんや・・」
「なんだいアキさんや」
「これガチ?盛ってない?」
「盛ってへんわ。リアルだわ」
ぽんぽんと会話を交わしながら自分の分も麦茶を注いで、テーブルを挟んだ親友の向いに腰を下ろした。
う~ん。美味い。やっぱ夏といえばコレですなぁ・・
「え~。ウソだぁ。超絶美青年じゃん。何?異世界人は皆このレベルなわけ?」
「え?どうだろ・・他に会った事ないからわかんない」
「・・・会った事ないの?この人だけ?」
「うん。そういやないね。でも傍仕え?さんとか、ご家族の話は聞いた事あるよ」
「・・・ねぇ。本当にその人、大丈夫なん?すっごい怪しいんですけど・・アコ騙されたりしてない?」
そう心配そうに言う親友に「まぁ、最初は私も警戒してたんだけどさ」とここ十日程の事を(エロ方面を伏せて)説明した。
魔術的な契約をしたと契約紋を見せたら驚かれ、こちら側がかなり有利なその内容にますます懐疑的になったものの、ご飯食べさせると純粋な反応が嬉しいし楽しいとか言ったら変な顔になった。
偽名として「アヤ」と名乗っている事もついでに話すと「名前のセンスは相変わらずか」と呆れられた。
うるせぇ、ほっとけ。
そんでカレールーを融通する事になった経緯を話し、ようやっと電話で伝えられず終いだった対価の話をする事が出来た。
「金貨で貰っても換金出来ないし、貰いすぎな気もするし・・」
「う~ん。換金はあたしの叔父さんに伝手がありそうだから訊いてみるけど・・お互いが納得できればそれで良いんじゃない?」
「・・なんか騙すみたいでモヤるんだよぉ・・」
「判るけど。そこは割り切りなよ」
「え~?・・」
親友は腕を組み「あのね」と前置きをして言った。
「考えてみ?あっちにカレーは存在しない。ね?」
「うん。多分?」
「異世界の便利な食材。それがお金を払うだけで手に入るんだから、あっちにしたら棚から牡丹餅。金貨を幾ら積んででも欲しいと思うのは当然だと、あたしは思うよ?」
「それは・・そうかもしれないけど・・」
「それにさ、何十年と研鑽を積んだ、あっちにしたらオーバーテクノロジー的な食材だよ?それなりの金額じゃないと向こうは納得しないだろうし、販売元にも失礼だよ」
「うぐっ・・でも、こんな転売ヤーみたいな真似でお金を稼ぐとか・・」
転売ヤーは敵だ。
心持ちは[[rb:見敵 > サーチアンド]][[rb:必殺 > デストロイ]]!
転売ヤー滅ぶべし。慈悲は無い。
殺意に拳を固く握っていると「いや、それと今回のこれとは全然別じゃん」と、親友はパタパタ顔の横で手を振るのだった。
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