第一幕
大晦日。一年の最後である特別な日。とはいえいつもと変わらず過ごすだけ。
変わったことと言えば俺がワタルの抱き枕になってることくらいだ。暖かいから気にすることはないんだけど抱き返そうにもガッチリ抱かれてるから抱き返せないのが難点。それが今現在の状況だ。ちょっと苦しい
ワタル「ん~...」
春樹「苦しい...」
ワタル「...あ」
春樹「あ、ようやく起きた。おはようさん」
ワタル「ん。」
春樹「撫でるな」
ワタル「いーでしょ別に。たまには俺にももふもふ堪能させてくれ」
春樹「う...言い返せない」
俺はそのまま撫でられ続けた。後悔があるとするなら、ワタルの尻尾もたまに触ってたが故に俺も尻尾を触られたことだ。
春樹「尻尾だめ...」
ワタル「俺の触ってたじゃん」
春樹「う...」
ワタル「ふふん、覚悟しろ~」
春樹「ひゃうっわふぅ...」
30分くらいずっと触られ続けた。力が抜けて動けない...
ワタル「ほんとに尻尾耐性ないんだなお前」
春樹「付け根はほんとにやめて...」
ワタル「...( ゚д゚)ハッ!...今なら春樹を好きなようにできるんじゃ...」
春樹「絵文字によくありそうな閃き方すんな。あと変なことしたら許さんからな」
ワタル「じゃぁどこまでならいいのさ」
どこまでもクソもねぇよ、と思いつつ自分も『どこまでならいいかな』と考えていた。正直あーやって言ったはいいもののなにされてもいいと思う自分もいる。ワタルにもみくちゃにされた...既にもみくちゃにされてたな。
春樹「...逆になにしたいんだよ俺なんかで」
ワタル「えっちなこと」
春樹「ストレートで結構。俺はまだいやだがな」
ワタル「え~、もみくちゃにした意味がないじゃん」
春樹「じゅーぶんすぎるくらいにセクハラされたがな」
ワタル「もっとセクハラしていい?」
『もっとセクハラしていい?』は初めて聞くぞ。多分『ダメ』っつっても聞くつもりはないんだろうなこいつは。
暫く考えるフリをした後『好きにしろ』と答えた。その言葉を待ってましたとでも言わんばかりに頭を撫で始めた。お前の感覚じゃこれセクハラなのか...
ワタル「よっと」
腹に手をまわしたかと思えば俺を仰向けにした。
ワタル「へへ~ こっからが本番よ~」
春樹「...?」
嫌な予感しかしない。
春樹「ゃふっ...」
今すぐにでも体は動かせたけどあえて抵抗はしなかった。相手はワタルだ、変なことはしないだろう...という保証は限りなくゼロに近い。
ワタル「す~」
腹吸いたかっただけかよコイツ...そんくらい言えっての...!
第二幕
ワタル「...すぅ......」
現状を端的に表すと、『ワタルが俺の腕を枕にして寝てるから動けない』だ。痺れてきたからそろそろ勘弁してほしい...
ピリピリして顔を顰めつつすやすや眠るワタルの寝顔を眺める。そんなに寝心地がいいのか俺の腕。
...にしても、これだけ快眠な生活ができるなんて信じれなかったな...そう考えながら自分はワタルを抱き寄せる。あと、高校時代にワタルと付き合ってたという事実にも驚愕だ。
...こんなのでワタルと上手くやっていけるのだろうか。
ーーーーーー
ねぇ、春樹。春樹はさ、昔...まぁ高校時代だからそう昔でもないけど...その時にも一度自殺しようとしてたよね。あの時は『止めてほしかった』じゃなくてほんとに自殺しようとしてた。まぁ...両親亡くしたショックは絶大だったんだろうけど...親の代わりにはなれないけど、彼氏にはなれる。彼氏で居させてほしい。いつでも慰めるから。いつまでも一緒に居てあげるから。ね、だからもっと頼っていいんだよ。
眠りに落ちる直前、春樹に抱き寄せられてマズルが春樹の胸に当たる。濃厚な春樹の匂いを鼻腔に送りつつ眠った。
目を覚ますと横に春樹は居なかった。先に起きてるんだろうか...?
春樹が寝てたであろう場所はまだ暖かいしそこまで時間は経ってなさそうかな。コーヒー飲みたいし淹れるか...
リビングに入ると置手紙があった。ほぼ確実に春樹が書いたものだろう。なになに...
『ワタルへ 大変勝手ながら近い内にハルトとレンが泊りに来ることになったから余ってる一部屋をハルト達用の客室的な部屋にしたいと思っております。ワタルが寝てたため許可を得るのは難しかったのでなにも言わずに家具を買い揃えに行くこと、申し訳ない。ひとつ言っておくとすべて俺の自腹だから安心してほしい。家具も最低限なので設置も俺一人でやる。免許も持ってるから今日中に持って帰って組み立てます。茶でもシバいて待っててください。 春樹』
ワタル「...なんでこんな他人行儀な書き方なんだ...?」
まぁいいや、とりあえず手紙に書かれてた通り茶でもシバいて待つか...いやコーヒーだな。
いつも通り湯を沸かしたりしてコーヒーを淹れた。いつもより薄くなっちゃったかなこれ...まぁ美味しけりゃいいや
...春樹が居ないだけでなんか寂しいな...静かだし。今までどうやって過ごしてたんだろうな俺。帰ってくるまでなにしようかなぁ。
掃除は昨日寝る前にしたからまだ綺麗だし...気分転換に家具の配置でも変えようかな...でもめんどいなぁ...
そういえば元春樹の部屋はまだ掃除してないな...掃除すっか。
ああやって意気込んだはいいものの埃なんてほぼほぼ落ちないしシミもないから掃除のしようがないなぁ...
物置に眠ってるちっこい棚とりあえず置いておこうかな。住み込むわけでもないから大層な装飾は必要ないけど置いてて損はないでしょう。
...一応この部屋は4人までは大丈夫らしいし仮に一緒に住むことになろうとも大丈夫ではある。家賃跳ね上がるけどね。
同性婚後の生活のあれこれとか教えてほしいな...あ、別に春樹と結婚したいわけではなくもなくもなくもなくもなくもなくもなくもなくもなくもなくもなくもないからな?
...恋人同士でするあんなことやこんなこともしたいとは思うけど自分からは言えないかなぁ...
そうこうしているうちに1時間くらい経った。そろそろ帰ってくるかな...まだかなぁ...
そんな子供みたいなことを考えつつこたつでみかんを食べながら年末に録画した番組を見ていた。
...やっぱりなんか足りない。何が足りないかは明確だ。もちろん春樹だ足りない。この番組ももともと春樹と見るために録画したものだ。
春樹「...もしも~し?」
みかん食べることに集中してて自分が待ってたはずの春樹が帰ってきていたことに気づかなかった。
ワタル「...おかえり」
春樹「...? どした急に抱きついてきて」
数年会ってなかったかのような反応をされた春樹は少し狼狽えた。しかしすぐに抱きしめ返してきた。
何も言わずに買出しに行った春樹に俺ちゃんご立腹。起こしてでも『いってきます』くらい言ってほしいものだ。
ワタル「次からはいってきますくらい言え。起こしていいから」
春樹「はいはい。ごめんて、ただいま。」
ワタル「ん。おかえり」
自分でも『まるで子供だな』と思いつつ春樹にしがみついた。居なかった分の春樹を堪能しなければ。
春樹を押し倒して、力強く抱き着いた。春樹といろんな場所が密着しようと関係ない。春樹が居なかった1時間半をこれで堪能するだけだ。深い意味は多分きっとおそらくない。
春樹「どーした、らしくないぞ」
ワタル「別に、たまにはいいじゃん」
春樹「へいへい。好きにしていいから。せめてベッドの上かソファの上にしてくれ...腰が痛い。柔らかい地面が欲しい」
返事をする前に春樹に抱きかかえられた。春樹の腕が自分の尻の下に来てるという事実に興奮を隠すのが難しかった。あとは春樹に抱えられて嬉しい自分と恥ずかしい自分が居る。この歳で抱っこて...自分の部屋の中だからまだ良かったけど...
春樹に身を任せていると春樹はソファに腰を下ろした。俺はただそのまま春樹に座ってる状態だ。春樹の顔は俺の目の前にある。春樹は真剣な眼差しで俺の顔を覗き込んでいる。それを見て俺は顔が熱くなった。
春樹「なぁワタル」
ワタル「な...なに...?」
春樹「俺達って一応付き合ってるよな...?」
ワタル「...? うん...」
改まってなんだろう...?
春樹「改めて言うからな。 ...俺と付き合ってくれ」
ワタル「...! ...ひゃい...」
唐突すぎてちゃんと『はい』が言えなかった。けどそう言おうとしたのは春樹にもちゃんと伝わっただろう。
これで晴れて彼氏彼女...?彼氏彼氏...?の関係だ。
春樹「ふふ、顔赤いぞ」
ワタル「そりゃ...唐突でゃったし......びっくりしたし...」
春樹「すまんな。」
春樹の顔を見るのがなんとなく恥ずかしくなったので春樹の首に顔を埋めた。そんな春樹は俺を見て頭を撫でてくれた。
春樹「あ、そうだ。」
ワタル「...?」
春樹「今晩は覚悟しとけよ?」
ワタル「???」
最初は理解できなかったけど少し考えるとそれがナニを意味するのかなんとなく理解できてきて恥ずかしさが込み上げてきた。急にシたいって言われても正直困る...で...でも春樹がどうしてもシたいって言うなら...
ワタル「どうしてもっていうなら...シてもいい...かな...」
春樹「...?」
春樹はなんとなく困惑しているように見える。
...えっ俺の勘違いなの?これ...だとしたら死ぬほど恥ずかしいんだけど!?
ワタル「え? ...てっきり俺のこと抱いてくれるのかと...」
春樹「え、抱いてほしいの?」
ワタル「えっと...その.........うん...」
ーーーーーー
ワタルに『抱いてほしい』と言われた。実際のところ俺が言おうとしてたのは『おやすみのキス』だったんだけど...俺の言い回しが悪かったなこれは。
...でも......抱いてほしいと言われたからには抱くしかない。つまり、俺はワタルの処...初めてをもらうことになる。反応がちょっと気になってしまうあたり『俺、変態だな』と思う。ていうかワタルの裸って見たことあったっけ...?上裸は見たことある気がするけど...
本番が来た。今日はお風呂には一緒に入らなかった。いろいろとやらかしそうだったし...ね。
俺に押し倒された状態のワタルはもちろん全裸、それに顔が赤い。下半身はそりゃもうお元気で。
春樹「...いい?」
ワタル「...うん」
第三幕
ワタルとシた夜が明けた。俺の横には裸には見えないくらいにしっかり布団に包まれたワタルが寝ている。そのせいで俺はパンイチですげぇ寒い。
布団を引き剥がそうにも布の始まりの部分がワタルの下に来ているからか引き剝がせない。困った...
そういえば毛布あったっけ...
クローゼットにしまっていた元々俺が使っていた毛布を引っ張り出して被った。すごく暖かい...けどせっかくならワタルと同じ布団被って寝たかったなぁ...
ワタル「んー...むぁぁ...っくしゅ...」
ワタルがくしゃみをして寝返りを打った。それと同時に布団の端っこが露わになった。『未だ』と布団をひっぺがした。とはいえワタルの体が全て出るくらい引っぺがしたわけではない。
俺はワタルと同じ布団に入ってワタルを抱き寄せた。暖かい。落ち着くしいい匂いだ。ちょっと独特な臭い混じってるけど
柔らかい毛、しっかり整えられててもふもふさらさら。石鹸みたいないい匂いだし...
ワタル「しぴ~...ん~......もふぅ...」
春樹「うゃっくすぐったい...」
眠ってるワタルが俺の腰のあたりをさすり始めた。そこは俺の弱点だ。感じる場所ではないけどくすぐったいとは感じる場所である。ワタルなら別に触られていいんだけど未だに慣れない。俺は俺でワタルの体のあちこちを触っている。毛並みがすごくいいしお肉の付き方もそれぞれ違うから触り心地に違いが少し出てくる。もにもにしてるところとか少し硬いところとか。自分が好きなのはワタルのお尻。ほどよくやわらか...やっぱ変態だな俺。
ワタル「みへぇ...あっそこだめ...あぅ...んん...」
尻尾の付け根を触った時にワタルがちょっとアレな声を出した。
ワタルの体がぴくぴく小刻みに震える。多分寒いんだろう。そう思った俺はワタルを更に抱き寄せて密着した。
ワタルの心臓の鼓動を感じる。一定のリズムでゆっくり脈打っている。昨晩あれだけ乱れてたとは到底思えないな。
寝顔を少し眺めて俺ももう一度眠りについた。
春樹「...くぁ~ぁ...」
次目を覚ますとお昼だった。ワタルは珍しく起きてるらしい。
...と思ったら布団の中で丸まって寝ていた。予想通りではあったものの実際目の当たりにするとすごくかわいい。
ワタル「ん...おぁよ」
春樹「おはよ。」
ワタルの目が覚めるともぞもぞと布団の中で動き始めた。余分な動作多くない?
暫く様子を見ていると布団の中から顔がぴょこっと出てきた。狐というより兎みたいだな。
ワタル「へへ、お腹空いた」
春樹「お前が作らないと炭になるぞ」
ワタル「それもそだね。」
春樹「ちょっとは否定してよひどいなぁ」
ワタル「事実でしょ~」
それ言われたらなんも否定できないのが悲しい。でもなんで料理できないんだろ俺。ワタルに料理ふるまってみたいのに...
ワタル「...」
ワタルが黙ってこっちの顔を眺めてる...なんかついてる?
春樹「...?」
ワタル「おはようのキスは?おやすみのキスはしたのに...」
春樹「あ」
むすっとしてる理由が可愛らしくてワタルの頭をわしゃわしゃと撫でた。ワタル自身は『はぐらかすな~』って怒ってたけどそれも含めて可愛い。
春樹「ごめんて。」
ちゃんとおはようのキスもした。離そうとしてもワタルがずっとくっつけてくるもんだからなんか色々吸い取られた気分。
まぁいいや。今日も一日頑張るゾイ
あとハルト達が泊りに来るから準備しなきゃ。