3/4 ついに対面!白虎元兵士と黒豹元兵士~戦場での武勇伝を自慢し合う元敵同士~

  待ち合わせ場所のレトロな喫茶店、中に入ると客が多く賑やかだ。文津相手との目印は、近くの花屋で買った紫の花を一輪、服の胸ポケットに入れておくこと。なんだか古風なだけじゃなくスパイみたいだが、それが会う楽しみを増やしてくれる。

  俺はミリタリージャケットの胸ポケットに紫の花を挿して店内を一通り回ってみたが、それらしき猫獣人はいない。一人でボックス席についてる黒猫獣人がいるかと思ったが、よく見ると黒豹獣人だった。

  俺は戦場で難度も合いまみえた憎い種族を目にして、心の中で舌打ちしてしまう。黒豹獣人全てが敵ではないと分かっているが、それでも奴ら種族を見ると戦場で犯された記憶が甦り憎さが沸いてくる。

  黒豹獣人は俺の視線に気付いたらしく、俺を一瞬見てきた。黒豹獣人も俺のことを苦々しげに見ている。お互いすぐに視線を反らすが、あるものに気付いた。

  黒豹獣人は黒いYシャツの上にカーキのミリタリージャケットの前を開けて羽織っており、ミリタリージャケットの胸ポケットには紫の花が挿されている。

  黒豹獣人は肩幅があり、中肉中背ながら筋肉があり、腕が太く、引き締まった身体と背筋の伸びた姿勢で元軍人の気配がある。

  俺と黒豹獣人はもしやと思い、お互いの胸ポケットに視線を送り合い固まる。たしかに文通相手も俺も猫獣人とは書いたことがない、猫国に住んでる相手は猫獣人だろうと思っていた。

  まさか白虎獣人と黒豹獣人が互いの正体を知らずに文津していたのか…?俺はそれに気付いて喫茶店の通路で立ち止まり固まると、猫獣人の店員が席を案内しようとしてくれた。

  店員「空いてる席、ご案内しましょうか?」

  ビャコ「いえ、待ち合わせしてたので向こう行きます」

  俺は店員の世話になるわけにもいかず、黒豹獣人がいるボックス席へ歩くと、黒豹獣人とテーブル挟んで向かい側に座る。

  俺と黒豹獣人は無言がしばらく続いた。お互いに視線を合わせようとはしないが、互いの顔や身体に視線を向けてどんな相手か探りだそうとしている。

  黒豹獣人はミリタリージャケットを脱いで黒Yシャツを腕捲りすると、そこには黒豹軍兵士だったことや所属部隊を示すタトゥーが彫られている。俺もミリタリージャケットを抜いて白Yシャツの腕をまくると、白虎軍兵士時代に掘ったタトゥーが見える、どれも軍や部隊に所属していたことが分かるのだ。

  俺達二人は、無言で自分の所属を伝え合い緊迫感が漂っていた。いちいち相手の顔は覚えてないが、俺の部隊は何度か奴の部隊と交戦したことがあるはずだ。

  俺と黒豹獣人は何も話さなかった、先に話せば負けてしまう気がする。黒豹獣人の手元にあるコップの水は、氷がどんどん溶けていく。少なくとも俺からは話さない。そう思った矢先、店員のシャム猫獣人がやってきて俺を見て言った。

  シャム猫店員「ご注文いかがなさいますか?」

  黒豹獣人は水の他に、既に手元にホットミルクが置かれている。つまり俺に注文を聞かれてるのだ、店に入った以上は頼まなければなるまい。俺は敗北を感じたように苦々しげに言葉を発した。

  ビャコ「…ホットコーヒー…」

  よし、これでいいだろう。店員よ、早く立ち去ってくれ。そう思ったが無情にも店員は立ち去らなかった。

  シャム猫店員「砂糖とミルクはいかがなさいますか?」

  しまった、また話さなければならない…。

  ビャコ「…砂糖二つ、ミルクなしで」

  シャム猫店員「かしこまりました~!」

  店員はようやく立ち去っていくと、俺と黒豹獣人の目が合った。

  もういつまでも無言でいることはできないだろう、仕方なく俺は話しかけた。

  ビャコ「俺は待ち合わせに来たんだが、あんたは誰だ?」

  黒豹獣人はめんどくさげに口を開いた。

  黒豹獣人「自分から名乗るのが礼儀だろう、俺も待ち合わせだ。人を探してる」

  ビャコ「それは紫の花を胸ポケットにしまってるやつか?」

  黒豹獣人「ああ、そうとも。今目の前にいる奴みたいな」

  ビャコ「奇遇だ、俺もそんな奴を探してたらあんたがいた」

  黒豹獣人「どうやら他に紫の花をつけてるやつもいなそうだ…つまりお前は…"毛玉吐き吐き"か?」

  黒豹獣人は俺が文通時に使う名前を呼んできた、なんでこんな名前を使ってしまったんだ。俺の文通名を知っているとは…こいつは間違いなく文通相手だ。

  ビャコ「…その呼び方はよせ…ビャコでいい。つまり黒豹獣人のあんたが…えっと…"猫耳ックス"だな?」

  黒豹獣人は黒い毛並みの顔の中では見分けづらい黒い眉を動かした、どうも名前を聞いて苦々しい顔をしているようだ。

  黒豹獣人「…ブランサだ、ブランサと呼べ、白虎獣人」

  俺はこいつの名前をようやく知ったが、名前を呼ぶ気など更々ない

  ビャコ「黒豹獣人、俺に命令するんじゃねえ。黒染めの毛皮した奴がよくも騙しやがって」

  ブランサ「漂白した毛皮の奴は被害者意識強すぎんだろ。俺を騙しやがって、猫被ってんのか」

  ビャコ「猫国でその言葉はないだろ。不満なら失せやがれ、とっとと帰れよ」

  ブランサ「お前が先に帰れよ、俺が先に座ったんだ」

  俺と黒豹獣人は険悪な雰囲気を漂わせている。会うのを楽しみに待ち焦がれていた相手が、戦で戦っていた敵兵士だと分かればもうこの場にいる理由などない。だが相手より先に帰れば負けた気がする…とっとと帰りたい、俺がそう思った矢先に…

  シャム猫店員「お待たせいたしました、コーヒー、砂糖二つでミルクなしのお客様」

  店員が俺のところにコーヒーを持ってきた。俺は砂糖二つを入れて甘くしたブラックコーヒーを飲んだ、白虎獣人の猫舌に合わせて適度に冷ましてある猫国のコーヒーは俺の舌に合う。

  俺は黒豹獣人とその手元にある残り僅かなホットミルクを睨みながら言う。

  ビャコ「俺はこのコーヒーを飲み終わるまで帰る気はねえよ、お前はミルク飲み終わるんだから帰れよ」

  ブランサ「はぁ?俺は今からデザート食うんだ、食べ終わるまで帰らねえ。店員さん、"あんみつクリームパフェ~ミカン こたつの上風に乗せて~"一つ」

  ビャコ「じゃあ店員さん、俺は"肉球スタンプ入りパンケーキ~季節のフルーツ添え~"頼みます」

  注文を聞いた店員が立ち去るのを尻目に、こんなつまらない経緯から俺と黒豹獣人の間に敵兵士としての因縁から火蓋が切って落とされた。こうなったら意地の張り合いだ、胃袋が持つまで食べ続けて黒豹獣人が先に帰るのを待つ。

  ビャコ「だいたい、なんで文通で自分が黒豹野郎だと書かないんだよ」

  ブランサ「黒豹獣人と分かれば、それだけでモテちまうだろ。なんせ黒豹軍人は猫国のために戦った英雄だからな、それじゃ俺個人を知ってもらえない。お前こそ何故、白虎野郎だと書いてないんだ」

  ビャコ「俺だって同じさ、白虎獣人は猫国のために黒豹野郎と戦った英雄だからな」

  ブランサ「よく言うぜ、俺達黒豹が勝ったってのに」

  ビャコ「俺達白虎が勝った、の間違いだ。俺達白虎はまだ戦えた、白虎国の上層部が諦めなければな」

  ブランサ「俺達黒豹だって戦えたさ、後方の奴らは何も分かっちゃいねえんだ」

  ビャコ「そうだそうだ、あと少しで雌雄を決するところだったのに。黒豹共を犯し尽くしてやってたんだ」

  シャム猫店員「"あんみつクリームパフェ~ミカン こたつの上風乗せ~" "肉球スタンプ入りパンケーキ~季節のフルーツ添え~"お持ちしました~」

  俺がちょうどコーヒーを飲み終わると、店員がスイーツ二つを俺達のテーブルに置いていくと、俺と黒豹獣人はゆっくりと食べ始めた。甘いものを食べて至福の時だというのに、俺達二人の顔は憎しみに溢れている。

  ブランサ「てめえみたいな弱々しい白虎野郎が誇り高き黒豹軍人を犯し尽くせたなんて嘘言うなよ、俺達黒豹軍人に力ずくでレイプされただろうな。俺は白虎を押さえつけてペニスをしゃぶらせて、威勢よく吠えてた口に俺の精液を注ぎ込むのが快感だったぜ」

  俺は悔しさを感じてしまう、確かに黒豹獣人はそんな犯し方をしてくるし、俺も仲間もそんなふうに犯された。だが言われたままでは腹が立つ。

  ビャコ「俺を舐めるな、俺は力では負けない。黒豹共に飛びかかって取っ組み合って屈服させる。そしたら後はゆっくりペニスを挿入して犯してやると、黒豹は喘いで喘いで喘ぎまくるのさ。あとな黒い毛並みに白い精液をぶちまけたら黒豹の精液ゾース添えの出来上がりさ」

  俺の話に居心地悪そうな顔をした黒豹獣人は、負けじと言い返してきた。

  ブランサ「俺は捕虜として捕らえた白虎野郎達をアナルセックスで連結させてな。それを一番後ろから俺が突いてやると、奴らは仲間のチンポで犯されちまうし、奴らは次第に自分のアナルを掘ってくる仲間のことが憎くなってくるんだよ」

  黒豹獣人はパフェを食いながら満面の笑みを浮かべて、嬉しそうに話してくる。仲間同士の絆を破壊してくるとは、なんて卑劣な奴だ。なら俺もとっておきのエピソードを話そう。

  ビャコ「俺が発案した作戦でな、黒豹共を地面に掘った塹壕に誘い込むんだ。そして集団でいるところに、上から媚薬ガスを撒いて感度100倍にするんだよ。そしたら奴らは押しくらまんじゅう状態で、互の身体に反応して勝手に射精して仲間同士で同士討ちさはくんだよ。クタクタになったところを俺のペニスで突かれて喜んで射精しまくるんだ」

  俺はパンケーキを食べながら、過去の光景を思い出すと笑いが止まらない。黒豹獣人は肉球を強く握りしめて悔しそうだ。

  ブランサ「じゃあこれは知ってるか?犯して戦意を失わせた白虎野郎共を肉球で型をとって、封蝋を作るんだ。戦場から手紙を送る時はその封蝋を使ったものさ」

  ビャコ「へあ、ならこっちの方が便利だ。黒豹野郎の伸びた毛を剃ってやってな、それで防寒帽を作ると暖かいぞ」

  俺と黒豹獣人の話しは止まらず、お互いの獣人の身体を使って得た戦利品や武勇伝を語る。スイーツを食べ終わると、店員を呼び止めて次の注文をする。

  ビャコ「店員さん、注文したいんだ。キノコのパスタ、麺の細さは"猫髭並み"のやつを」

  ブランサ「店員さん、俺もいいかい?ガッツリいきたいな、"お握り猫耳三角形数種盛り"を」

  俺も黒豹獣人も夕飯をガッツリ食べる気でいる。これはお互いしばらく帰らないだろう。

  ビャコ「ついでにビールあるかい店員さん?白虎国産のタイガーエールをジョッキで。おつまみも欲しいな、木の実チップスも頼んでおこう」

  ブランサ「俺もビール、黒豹国産のパンサーラガーをジョッキ。つけあわせに木の実ドレッシングのサラダ、二人前からしかないのか?取り皿は二皿用意?俺一人で食べるから一皿でお願いします」

  ビャコ「取り皿は二皿にしてくれ。それと"牛ミルクのチーズ焼き"もつけてくれ、サラダには欠かせない。よろしく」

  店員に大量の注文を頼むと、厨房がフル稼動しながら次々と注文したメニューが出されていく。

  俺と黒豹獣人はその後も食べながらどんどん注文していき、テーブルには様々なメニューが並んでいく。気分はすっかり贅沢な晩餐会だ。

  ブランサ「俺が頼んだのを食う気かよ」

  ビャコ「お前が残してるからだ」

  ブランサ「後に食べようと残してるんだよ、これもらうぞ」

  ビャコ「おい、俺の領土に侵入するな」

  俺と黒豹獣人は飯を奪い合いながら共有して食事と酒を進めていた。二人とも酒が強いらしく、空けたジョッキと瓶の数を競い合っていたが、どちらも酔いが回りはじめていた。

  ビャコ「俺の仲間が犯されたとあっちゃ黒豹野郎を許しておけねえ、ってなわけで黒豹野郎の階級が高い奴を捕らえてガン掘りしたら、臆病な黒豹野郎共はビビッて投降してきたのさ。もちろん投降認めずに犯し尽くしてやったけどな」

  ブランサ「卑劣な白虎共が俺の戦友を輪姦しやがった、だからキレた俺は一人で10人を相手取ってちぎっては投げてを繰り返して種付けしまくったさ」

  お互いに悪態をつきながら、戦場で相手の兵士をどれだけ犯したか、どんなひどい犯し方を考えて実行したかを笑いながら話していく。不愛想な会話で始まった俺達は、最低な思い出を語り合いながら笑顔で語り合っていた。

  普段、戦を経験してない者から武勇伝を尋ねられた時には敢えて話さないようなことばかりだ。何故話さないかと言えば、現場の兵士は誰でもしていたことではあるが、一般社会ではあまり称賛されるような行為ではないからだ。

  俺達軍人を英雄視している猫国・白虎国・黒豹国の民間人が聞いたら蔑まれてしまうだろう。どんどん話していくと、俺と黒豹獣人は揃ってどんどん最低になっていくような気がした。

  俺と黒豹獣人…いや、ブランサとかいう奴はお互いの共通点を見出だしていった。文通している時には読む本や食べ物に時間の過ごし方、自然を見て美しいと思う心、様々な感性が合っていると思った。

  会って元敵兵同士として話してみると、他にも共通点があった。

  仲間思いで情に脆く、冒険心がある。思慮深いところもあればユーモアのセンスもある。戦場では危険を恐れず敵に向かっていく勇気を持っている。同じ部隊にいれば頼もしい。俺達は仲間同士なら背中を預け合える間柄になっていただろう。

  だが一つ違うのは、俺は黒豹獣人を、ブランサは白虎獣人を憎んでいることだ。

  ビャコ「俺が黒豹兵の頭を掴んだ、そして花畑の紫花の中に押し付けて腰を振ってペニスを少しずつ押し込んでいったんだ。そうすると揺れに合わせて花弁が散っていくんだ、美しい光景だったぞ」

  俺がふと話した武勇伝、ブランサは俺の話を聞くと怒りを込めたように耳を震わせ、俺を睨みつけてドスを効かせた声で話す。

  ブランサ「おい、その犯され方は俺の仲間がされたことあるぞ…ノワールン二等兵だ。新兵だったが黒豹獣人の雄恋人との結婚を控えていてな。終戦後に結婚式で紫の花束を見たらビビって花婿を式場に置いて逃げちまった野郎だ…参列していた仲間達と連れ戻して式を再開させるのに苦労したぞ…てめえか…」

  俺は一瞬で凄まじい後悔と自責の念に追われて胃を締め付けられるようだった。今まで黒豹兵を個人として認識することはなかった。認識してしまえば、ひどい犯し方などできなくなってしまうし、自分達を犯す憎い相手と思い続けることができなくなるからだ。

  ビャコ「そうか…」

  俺はブランサの怒りで血走っている目を見ることができない。

  ブランサ「俺はノワールン二等兵が犯された腹いせにな、白虎兵の陣地に乗り込んでいって新兵を一人捕らえた。そいつのペニスにコックリングをつける、そして俺がそのペニスをしゃぶる。すると、そいつはペニスを勃起させてしまい、コックリングに締め付けられて苦しむんだ」

  ビャコ「お前…よくもそんなことを…」

  俺の反応を気にせずにブランサは話を続ける。その目は狂気に満ちているが、戦場で俺がしていた目つきにそっくりだ。

  ブランサ「俺がそいつの上に被さって、ケツを貸してやった、俺がケツを動かして掘られてやるんだ。白虎の新兵は初めて黒豹兵を犯したんだろうが、コックリングに締め付けられて苦しんで、黒豹獣人童貞を卒業したんだ」

  ブランサの話を聞くと俺はその話に心覚えがある。俺にとって可愛い後輩であり弟分だった。

  ビャコ「こいつ…それはビアンコトラ新兵だ。訓練を終えて配属間もないってのに…。おかげで黒豹獣人を犯す度にペニスの激痛を思い出しちまってな、数か月は兵士として使い物にならなくなっちまったんだぞ。後方に回されてセックスセラピー受けて回復してからは、新兵とは思えないほど黒豹兵を犯しつくすようになってたんだ。俺達熟練兵も引くほどにな」

  ブランサは首筋の黒く整えた毛並みを掻きつくすように搔いている。ブランサは自分自身を責めているようだが、俺にその態度を出すまいとしている。動揺しているのだろう。

  俺とブランサが今まで散々自慢し合ってきたひどい犯し方をした敵兵は、全員それぞれの獣人生があり個性ある存在だ。それを敵として犯し合い、トロフィーとして痛めつけ、俺達兵士は互いを傷つけあってきたのだ。

  俺は持っていたジョッキをブランサに差し出した。無言で顔を振って「飲め」と伝える。俺が飲んでいるビールのタイガーエールは白虎国産だから黒豹軍の元兵士にとっては飲みたくないだろう。だが俺がブランサの仲間にした酷い犯し方を聞かせてしまった以上、酔わなきゃやっていけないだろう。

  ブランサも持っていたジョッキを俺に差し出してくれた。ブランサが飲んでいるパンサーラガーは黒豹国産だから、白虎軍の元兵士としては飲みたくない。しかし差し出してくれたブランサは、嫌味からではなく俺への気遣いからだろう。ブランサの目の奥には申し訳なさと、俺を許せない気持ちが入り混じっている。

  俺とブランサは無言でジョッキを交換して、お互いの国の名産ビールを飲み干す。タイガーエールとは違ううまさがある。

  ふとブランサを見ると、うまそうにタイガーエールを飲んでいる。そして口元にはビールの泡がついている。

  ブランサ「くぅ~~っ!!うまいな、爽やかな酸味が俺の国にはない味してるぜ。おい、白虎野郎、口元にビール泡ついてるぜ」

  ビャコ「パンサーラガーこそクリーミーな喉越しだ。黒豹野郎も髭にビール泡がついてるぞ」

  俺達二人は口元についたビール泡を舌で舐めとる、こうしていると敵だった奴もただの獣人の一人でしかないと感じてしまう。

  ブランサ「やはり酒はうまい、戦いの終わりに飲むと格別だった」

  ビャコ「ああ、勝利を祝した時も、敗北のやけ酒でも欠かせないよな」

  俺とブランサは互いにオススメのアルコールを頼み合い、飲ませ合った。そして俺達は飲み慣れてない酒のせいか、ぐでんぐでんに酔っていく。

  ブランサが犯した白虎獣人の特徴を言い、俺は思い当たる仲間のことを教えてやる。逆にブランサも俺に仲間のことを教えてくれた。いびつな形で仲間のことを語り合っている。

  ブランサ「それで反撃すると、俺を犯してきた白虎兵の上に覆い被さって掘った。伸びた爪を切り取って戦利品のネックレスを作ったんだ。指を押さえつけた相手には、薬指にヒマワリ模様が彫られた婚約指輪をつけてたんだ、あいつは今頃結婚できたのかな」

  ビャコ「ぐふふ!それはブライトラ上等兵だな、インテリぶってて嫌味なところもあったんだが、敵地で俺を担いで走って救ってくれたのさ!黒豹国の捕虜になってたからな…戻ってきたのはつい最近だし、結婚式は今度するだろう」

  俺は懐かしい仲間のことを話すと、酒が進んで気持ちよくなっていく。

  ビャコ「俺を犯してきた黒豹兵士、俺を掘ってる間に何か手に持って大事そうにしてるからよ。何持ってるか見たんだ。そしたら、肉球の形したペンダントの中に、雄恋人の写真があった。恋人を犯してると思い込もうとしたそうだが、ありゃ興奮したぜ」

  ブランサ「がはは!心当たりあるぞ!よくペンダントの写真握りながらシコシコしてるからよ。それは仲間のシュヴァルパン軍曹だ。昔からかってやったんだが、俺が仕返しされちまってなぁあ!!」

  ブランサも黒豹軍人の仲間のことを語ってくれている、俺が話を聞いているかは構わず、酒がどんどん進んで酔っているようだ。

  俺とブランサはお互いの仲間と既に知り合いのようだ、知り合い方は犯したり犯されたり最低なものばかりだが。

  俺はブランサの元兵士としての側面を見せられているが、彼もただ黒豹獣人として母国と仲間のために尽くしていただけなのが分かる。俺とブランサが正体を知らずに文通をして惹かれ合ったのは、どこか通じるところがあるからだろう。

  俺とブランサはどんどんメニューに書いてある食べ物や酒を頼んでいく。二人とも大食いで皿はどんどん空いていく。

  最初は先に食べ終えた側が席を立ち去るという名目で競っていたのに、互いに相手に立ち去ってほしくないという思いから食べ物や酒を頼んでシェアしていた。

  俺とブランサは酒を飲み、食べながら語り合い続けた。話の中身はお互いの敵や仲間に関してから、お互い自身のことに移っていく。

  ビャコ「なあ、文通してた時に色んな本を読んでたって書いてたよな。俺とお前はいくつも同じ本を読んでいた」

  ブランサ「ああ、遠征してる時、焚き火の火を頼りに読んでいたのさ。広い世界を想像できるのが好きでさ」

  ビャコ「同じだな、部隊で行動してると一人の時間が欲しくなるものだ、そんな時に本を読むのが好きだった」

  ブランサ「俺もそんなことがあった、仲間は騒がしい奴らばかりだからな。白虎兵が逃げた後の野営地で色んな本を見つけてな、白虎国の本を読んだこともある。お前達の国の詩は美しい、凶暴な白虎兵の出身国とは思えないぞ」

  ビャコ「捕虜にした黒豹兵が持っていた黒豹国の本なら読んだぞ。素晴らしい文学がある、何故黒豹兵はあんなにおぞましいのか気になって仕方がない」

  ブランサ「何故だろうな…文学や酒は素晴らしいのに、兵士として戦っていると恨みや憎みしか出てこない」

  ビャコ「そんなもんさ、お互い犯し合う戦場では、敵は悪く見える」

  ブランサ「別の出会い方をしてれば、互いに友達になれていただろうにな」

  ブランサは遠くを見つめ、酒のせいか少し瞳が潤んでいる。俺も何故か酒に弱くなってきたようで、視界が潤んで見えてしまう。

  ビャコ「文通に書いた俺が見た景色を覚えてるか?…元兵士だと分かるのが嫌だから詳細は書いてなかったが、あれは"猫耳谷戦線"の風景だ」

  ブランサ「…そうだろうな、俺も"猫髭の激戦"の時に配属されてたぜ。同じ景色を見ていたようだな。敵同士の時に」

  ビャコ「同じ景色を素晴らしいと思えるのに、正反対の場所にいたんだな」

  ブランサ「覚えてないだけで、お前と犯し合ってただろうな」

  俺とブランサの間にしんみりとした雰囲気が漂い、言葉も出ない。何か次の注文でもしようとメニューを見るが、どのメニューも全て頼み終えてしまったようだ。

  しかも店には客が少なくなってきていると店員が申し訳なさそうにやってきた。

  シャム猫店員「お客様~、そろそろ閉店のお時間となりますので~こんなに食べると思わなくて厨房の食材も使いきってしまったんですよ~」

  俺とブランサは会計を済ませ、店を後にした。さすがに全メニューを制覇したとなると、高くついたが、二人とも軍人恩給やらで金は貯めていたのが幸いした。

  俺とブランサは千鳥足で満腹で膨れた腹を抱えて、路地を歩いていく。酒にも酔って良い気分だ。俺とブランサは酔ったせいで足がもつれてバランスを崩してしまうと、互いの身体にもたれかかると、身体が一瞬ビクンと警戒してしまう。

  白虎獣人と黒豹獣人の身体が触れあうことなど、戦場での犯し合い以外になかったのだ。互いの毛並みは温かく、汗の臭いが漂う。俺達二人は互いに気にしないふりをしながらも、肩を支え合い、タイミングを合わせて千鳥足で歩いていく。

  ビャコ「なあ、お前はどっちの方向に帰るんだ?」

  ブランサ「う~ん、今夜はまだ宿決めてねえんだよな」

  ビャコ「旅してるのか?」

  ブランサ「いいや、当てもなくさ迷ってるだけで気が向きゃ野宿してるさ。兵士時代に野営に慣れたしな。たまには戦友の家や街の教会に泊めてもらったりするんだ」

  そう言っているブランサは、言葉は楽しげだが瞳の奥は冷めた目をして彷徨っているようにどこか虚空を眺めていた。俺はそんなブランサの行動に俺には心当たりがある、"野生化"だ。

  俺達獣人は、都市を築いた文明社会の中で暮らしているが、遥か昔の先祖はそうでもなかったらしい。野生の本能のままに四つ足で地を這い、家も作らず屋根のない草原で群れをなして生活し、獣同士で命を奪い合って食べたりしていたそうだ。吐き気がするほどおぞましい。

  俺達白虎獣人の祖先も、他の獣人の祖先を襲って食べたり食べられていたのか?獣人の祖先の獣同士の戦いは命を奪い合う残虐なものだったのか?考えただけで恐ろしい。

  そんな獣人は、今でも戦いこそすれど、それはセックスによる犯し合いで命を奪い合うことはない。だが、過酷な環境で闘争本能を滾らせ続けた獣人は野生の本能を爆発させてしまい、獣人社会に戻っても適応できなくなることがある。

  性欲が抑えきれなくなったり、屋根のある家で過ごし、シャワーを浴びて服を着てという社会的な生活ができなくなったりする。それが"野生化"だ。だから野宿して過ごす者、街中でセックスをおっぱじめたりする者、全裸で街を歩く者もいる。まあ性におおらかな獣人社会ではそんなに問題ではないが。

  戦場から帰って来た兵士がなってしまうことが多く、治療も確立されて軍も支援に積極的だし民間人の理解もあるが、思い詰めたり兵士としてのプライドから周りを頼ることができない者も多い。俺の戦友でも"野生化"してしまい社会復帰するまで時間がかかった者達がいる。

  ブランサも戦場から帰ってきて獣人社会に馴染めず"野生化"してしまったのだろう、俺達兵士は皆、戦場から帰ってきてのギャップに戸惑ったことがあるし他人事ではない。

  きっと兵士として戦ってた時は強くたくましい姿だったろうが、弱々しいところを見るとは思わなかった。最低なことだが一瞬、元黒豹兵がこんな様子になるのを見てざまあみろ、とも思ってしまう。

  そんな気持ちが入り混じりながらも、自分の仲間が”野生化”していたことを思い出すとブランサのことを放っておけない。俺は自分のミリタリージャケットを脱いでブランサの肩にかけてやる。そして手をゆったり黒豹獣人の耳に当てて、尋ねる。

  ビャコ「…いつからだ?」

  ブランサは、一瞬視線を逸らして後ろめたそうな雰囲気を漂わせている。戦友や家族に言えない者もいるというのに、いくら今夜多くの会話をしたとはいえ、元敵兵である俺に弱いところなど見せたくないだろう。

  だが俺は、戦場で仲間を救うために自分の身も省みずに戦ってきた。ここでも同じよう踏み込まねばならないだろう。俺はブランサの身体を引き寄せ、腕を回して抱き締めてやる。抵抗するかと思ったブランサは俺の身体に抱きついてきた。

  ブランサ「黒豹国に戻ってからだ…故郷に戻っても見るもの全て変わって見えちまうしどうも落ち着かねえ。小さな田舎だから他に兵士仲間もいないしな。」

  俺はブランサの背中をポンポンと叩いてやる。

  ブランサ「俺の田舎にも白虎獣人が観光で来るようになったが、それを見ると、飛びかかって犯したくてたまらなくなっちまったんだ。田舎の奴らは俺が元兵士だから同情してくれたが、従軍経験のない奴らには分からねえよ」

  ブランサは絞るように声を出し、俺を支えにするように抱きついてくる。

  ブランサ「故郷が違って見えるのが嫌でな、あてもなく旅に出て野宿をした。誰もいない草原では服を着てなくても構わないし。自分が"野生化"してるのは気付いたが、どうにか折り合いをつけてきた。猫国に流れ着いたがここが一番落ち着く、兵士として長年いたし、黒猫獣人の元兵士の友人もいる」

  なんだかブランサの境遇は俺に似ている。俺も兵役を終えてからブラブラと各国を旅したが、野宿や服を着ずに自然の中をさ迷っていた時がある。俺は叔父が屋敷での仕事を紹介してくれたから、普通に生活できているが、ブランサのようなことになっていたかもしれない。

  ブランサ「ああ、荷物は預けとけるところがあるし、文通は私書箱に定期的に取りに行ってた。稼ぎは軍人恩給で十分だし、気が向けば日雇いの工事とかでも稼いでるからな」

  ビャコ「それで今も野宿やらの日々か…」

  ブランサ「今でこそ服着てめかしこんで文通相手とのデートに来れたが、たまに自分を抑えられなくてな、服を全て脱ぎさって自然の中で遠吠えしちまう。同じような戦場帰りの"野生化"した奴らが集まって群れを作って乱交したりもするから孤独じゃない。」

  ブランサはニコリと笑って俺と抱擁を解除して立ち去り始めた。後ろ姿には歴戦の兵士としての力強さがあるが、どこか頼りなさげだ。

  だが何故だか分からないが、俺はブランサをこのまま放っておけない気がして声を出した。

  ビャコ「今晩は俺の家に来たらどうだ?叔父の屋敷だが広いし客間もある。元兵士同士の親切を無駄にする気か?」

  ブランサは俺を見て振り返ると、恥ずかしげな笑顔を見せて口を開いた。

  ブランサ「なら無駄にはできねえな、敵兵の白虎野郎さんよ」

  こうして、俺は憎いはずの元敵兵を自分の元へ招き入れることになった。