嫉妬

  「あの、ビクター?」

  ベルダは腕の中から声をかけるがビクターは返返事をせずにまっすぐ自室へと入っていく。そのままベッドに2人で倒れ込んだ。抱きしめたまま。

  「ビクター?」

  「…我は心の狭い男だ。」

  元からビクターは番が他の人と話をするだけで嫉妬していたのだ。杞憂だったと側近は言ったが、ビクターの心にとっては杞憂ではなかった。ベルダはビクターの背中に手を回してぎゅっと抱きしめた。

  しばらくした後、2人はお互いを見つめ合う。どちらからともなく顔を近づけ…、るが、ビクターが顔を背けてしまった。これこそがベルダの悩み。

  ビクターはベルダと会ってから1度もそういう接触をしたことがない。熱も下がって元気なベルダはビクターがどうして避けるのかがわからない。

  「ビクター、どうしてですか?どうして触れてはくれないのですか?私は、私はビクターの番ではないのですか…?」

  「ベルダ…。」

  ベルダは泣いてしまいそうだった。ビクターに触れたい。でもそれは彼女の一方通行な想いでは納得がいかなかった。お互いに一緒の気持ちでなければ嫌だった。いつも傍にいてくれて、愛しむように見てくれているのに。ビクターは少し目を瞑ってからベルダを見た。

  「ベルダ、其方のことを想うと我はいつでも其方に触れたいのだ。我は見境なく其方に触れるだろう。嫌と言われても止められる自信がない。龍の番への欲求は底知れぬのだ。だが其方は体が弱いと言った。もし、もしも其方に触れて、我が気がついた時に其方が…!」

  ビクターは怖かった。自分が彼女を欲することで彼女の寿命を縮めてしまわないか。彼女は今、生をまっとうしている。そこに邪魔をしたくはなかった。

  「ビクター」

  ベルダが両手で愛する人の頬に触れる。その顔は笑っていた。

  「私の願いを聞いてください、ビクター。…私はあなたに触れて欲しいです。あなたに触れたいです。寿命なんか関係ありません。命を、人生を、あなたとの時間をまっとうしたいのです。」

  「ベルダ…。」

  ビクターの目から流れる雫をなめとったベルダはそのまま唇を重ねた。ビクターは目を開いたあと、ベルダを自分の腕の中に閉じ込めた。そのまま朝まで2人が部屋から出てくることはなかった。