双子

  屋敷には元気な声が聞こえていた。笑う声だけかと思いきや、泣き声も聞こえる。

  「ティナ様、お待ちください!」

  「ルウ様、もう少しで到着致しますからね。」

  侍女たちはあっちへ行ったり、こっちへ行ったりと忙しそうだ。侍女たちが困り顔で追いかけている小さなものが、ある部屋に着いてその戸を思いきり開けると、

  「とと!」

  「どうした、ティナ。ととに会いに走ってきたのか?」

  小さなものが走った先にいた人物が抱き上げる。その顔は白い長髪で見えない。しかし、声から想像するに、笑っているのだろう。抱き上げられた小さなもの、ティナは嬉しそうに笑っている。

  「ティナ、ルウはどうしたのだ?」

  「かか!」

  「やれやれ、またウテナのところか。」

  ウィルはティナを抱いたまま、部屋を出て泣き声のする方へと歩き始めた。

  *

  「失礼致します、ウテナ様。ルウ様がまた泣いてしまわれて…。」

  「ルウ?また泣いたの?そんなに泣いてしまってはとと様のようになれないわよ。」

  そう言いながら侍女から抱き上げたウテナは自分の腕の中でしゃくりあげる息子を見た。

  「かか…。」

  「今度は何で泣いたのかしら?さぁ、水分を取りましょう。」

  侍女が持ってきてくれた容器をルウに渡す。ルウは目に涙を溜めながら素直に飲んだ。

  *

  「ウテナ。」

  「ウィル、ティナ!」

  「かか!」

  戸が開いてティナを抱いたウィルが入ってきた時には、ルウは落ち着いていた。ティナはウィルにおろしてもらうとウテナの方へ向かって走る。

  「ティナ、また走っていたの?こっちは元気ねぇ。」

  「ルウはまた泣いていたのか。」

  ティナとルウ。2人はウテナのお腹から誕生した龍の血を引く双子だった。

  *

  ウテナは無事に2人の子を出産した。誕生時、背中に龍の鱗を宿して生まれた2人は本当にそっくりだった。違いに気づいたのは、2人が目を開けてから。

  ルウはウィルと同じ金色の目を、ティナはウテナと同じ桃色の目をしていたのだ。これには驚きと安堵の声が上がった。ここまでそっくりなのに目の色が違う驚きと、これで見分けがつくという安堵。しかし、見分けがつくのは目だけにはとどまらなかった。性格も違っていたからだ。

  常に静かで落ち着いており、1日のほとんどを寝てばかりいるルウに対して、ティナは何度も声を出し、動いてばかりいた。寝返りも立ち上がりも、妹のティナの方が早かった。しかも、ルウは自分が起きている時に母親の姿がいないと泣き出す。いつも静かで話すことはないかと思いきや、ウテナがいない時は泣いていた。ティナもティナで世話が焼けた。自分のそばに誰かがいないと怒り出して大声を出すのだ。いつも何かを言っているが、自分の見える範囲に誰かがいないとぐずり出してしまうのだ。侍女たちは交代で双子を見守り、ウテナは常にルウのそばにいた。

  *

  「ルウ、たまには父の方へ来ないか?」

  ルウはあれからウテナがいなくても泣かないようにはなったが、何かあった時は必ず母親がいないとダメだった。ウィルにも慣れてきてはいるのだが、

  「…かか。」

  ルウはぎゅっとウテナの服を掴みながら小さな声で言った。ウテナがいる時は基本的にずっとそばにいる。ウィルは苦笑したが、思いついて言った。

  「ならば、これはどうだ?」

  部屋を出て目の前の庭に出たと思った瞬間、そこには大きな龍がいた。

  「「あー!!」」

  ルウとティナがウテナの手を離れて龍の方へと走り出す。龍が2人が乗りやすいように縁側にその背をくっつけるようにすると、2人はそのまま背に乗り上げた。自分にしっかりとしがみついたことを確認した龍は、ゆっくりと浮上して外へと向かっていく。

  「相変わらず好きね。」

  ウテナは見上げて言った。龍はウィルが転身した姿であり、双子はその姿が1番好きだった。龍の血筋だからなのか、空を飛ぶことが好きなのかもしれない。

  龍は本来である龍の姿と、人の姿を取ることができる。自分の意思で好きに姿を変えられるので問題はない。ちなみに双子は、ルウは龍の姿で、ティナは人に姿で過ごすことが多い。

  双子はすでに5歳。周りの環境からさまざまな刺激を受けて成長中だ。

  「あ。」

  ウテナはハッとして踵を返して侍女たちに声をかけに行った。

  「もうすぐ四龍のみんなが来るから準備をしておいて。誰か、ウィルたちを迎えに行ってくれる?」