大和は、楽の言いつけ通り一日のほとんどを洞窟の中で過ごした。子どもの頃から村では一人で暮らしてきたのだから、楽が暫く留守にしていても大丈夫だと、はじめの内はそう思っていた。しかし、この森に運ばれて来てからは、四六時中楽が傍にいることが当たり前になっていた。決して広いとも言えない、窓もない洞窟の中に一人でいるというその孤独感は、大和の中で時を追うごとに増していく。
ずっと同じ場所で、同じようなことをしていることがよくないのかもしれない。と思い立ち、洞窟の入り口に座り込んで、どこか心の中では楽の姿を探しながら、一日中ずーっと外を眺めて、ただただ佇んでいたこともあった。
「楽…なんで帰ってこないんだ。…何してんだよ。俺…なんかしたかな。楽怒らせるようなこと、しちまったのかな。」
楽のぬくもりを求めてしまう身体が、ざわざわと騒いだ。ぎゅっと脚を抱えて顔を埋め、腕をさすってなんとか心を落ち着かせる。
「…こんな…服なんか良くしてもらったって…お前がいねぇと寒いんだよ…っ…楽…帰って来いよ…。」
大和は震える声で絞り出すように呟いた。
満月の日の夕刻。
大和はまた楽に咎められたとしても、ほんの少しでいいから楽に会いたいと思う気持ちを抑えられず、御神木へと向かった。前に1人で歩いて行った時よりも、森の中の落ち葉が深く積もっているようで足をとられる。
楽にはきっと、いい顔はされない。帰れ、来るなとまた冷たい言葉を放たれるかもしれない。あんなに優しくいつも笑顔を向けてくれていた楽が、冷たい態度をとることには何か理由があるのだろうと、そう信じなければ到底耐えられなかった。楽の姿、その様子だけをうかがって、陽が沈みきる前に言いつけ通り洞窟に帰ろうと心に決めた。大和は楽から自分の姿が見えないようにと、御神木から距離を取りながら楽の姿を探す。
(…いた!楽だっ!)
大和が見つけた楽は、以前と同じ場所に身体を預けていたが、楽は前に見た時よりも一層辛そうに肩で息をしていた。
「…はぁ…っ大和か?…ここにはっ…来るなと、言ったはずだ。」
大和は声を出すでもなく木の陰から楽を見ていただけだったが、狼の姿の楽はいつも以上に嗅覚が冴える。姿を見せずとも匂いで大和の存在を悟られてしまったのだろう。
「楽…俺なんかした?…楽がそんな辛そうなのに…俺楽に何もしてやれないのか?」
姿を見せた大和が楽に言い縋る。
「これ…は、時期におさまるっ!…お前が…どうにか出来ることじゃない…っ帰るんだ。」
楽は声を発するものしんどいほどに、息も絶え絶えな様子に見えた。
「…帰らねぇ。」
元々は帰るつもりでいたが、楽に冷たい態度ではっきりと拒絶されると、その真意を知りたかった。
「大和…いい子だから。帰ってくれ。」
「……いやだ。楽がいるとこにいる。こんな暗くなってく中、一人で森には入れない。」
「大和っ!」
楽が力を振り絞って大和を怒鳴りつけると、大和はビクッと身体を震わせる。
「だって……っ…寂しいっ…寂しいんだよ…楽!ずっと…独りで、あんな…。なぁ…俺のこと、もういらないのか?俺、一緒にいたって楽の役になんか立てねぇし…甘えてばかりで…嫌になった?」
「大和…ちがう…。」
楽は否定こそするものの、苛立った態度を隠そうとしなかっだ。
「いらないなら…っ!…殺してくれよ。その時がきたら…一思いに食ってくれって、言っただろっ!…こうやって…楽にずっと避けられるくらいなら……いっそ死んだ方がマシだっ!」
夕刻の薄暗い森の中でも、大和の瞳がきらっと潤んでいるのがわかる。
「ふふっ熱烈ですね。」
どこからともなく、人の声が聞こえた。
「……え?…誰?」
大和が周りを見回していると、楽の傍に薄暗い煙がくるくると立ち上り、生成り色の髪の綺麗な男が姿を現した。
「大和というんですね、この人間。」
「なん…だそいつ。誰だ?」
男は楽に似た[[rb:浄衣 >じょうえ]]のような装いで、両性的にも見える美しい姿だった。しかし、異様におぞましい色を持って値踏みするように見つめてくる瞳に、大和は思わず身体をすくませる。
「巳波…!お前には…関係ない!…失せろ。」
「関係ないなんてことはないですよ。あの人間…死にたいそうですから。」
巳波は少し身体を浮かせ、まるで蛇が地を這うかのように蛇行しながらするすると大和の元へ近寄った。
「大和。真神がああなってるのはお前のせいですよ。」
「……え?」
大和は蛇に睨まれた蛙のように身動きも取れず、巳波の言葉を享受するしか無かった。
「発情期です。我々神にだって、繁殖したり行為を楽しむ権利はありますから。特に今日は満月…真神のその欲は頂点に達しています。」
「発情期…。」
「大和…!そいつの話に耳を傾けるなっ!」
楽が身体を起こすと、巳波が指先を楽に向けその動きを封じた。
「…ぐっ…!み…なみぃ…っ!」
楽が鋭い眼光で巳波を睨みつける。
「ほら、私のこの程度の術さえ避けられないほど、真神の身体はいうことをきかなくなくなっているんですよ。」
「…楽っ!」
大和が楽のものへ駆け出すと、巳波がするりとその前に入り込み行く手を塞ぐ。巳波はその瞳の奥に不気味な青い光を点し、不敵な笑みを浮かべ大和の顎を白い指先でくっと上げた。
「大和。お前が、その身体で…真神を楽にしてやればいいでしょう?…発情期ですから、することをすればある程度は収まります。ただ…神と交わった人間は行為が終わる頃にはその精気を吸われ尽くして…死にますがね。」
「……死ぬ…のか。」
大和は巳波の瞳にのまれるように硬直している。
「巳波っ!…貴様ぁっ!」
楽は巳波のかけた術を力づくで解き、全身の毛をぶわっと奮い立たせた。爛々と睨む赤い瞳は、燃え上がる炎のようにゆらゆらと揺れている。
「あぁ恐ろしいっ!さぁ…どうする?大和。生贄としての努めを果たす時が来たんじゃないか?」
「…努め…?」
「そうですよ。お前は所詮、ただの生贄なんですから。我々にその身を捧げるんです。ふふ…ふはははっ今夜は素晴らしい夜になりそうですっ…てうわぁっ!」
楽は巳波目掛けて飛び上がり、巳波の着物の袖をざっくりと切り裂いた。
「…真神ぃ…っ!そんなにこの生贄が大事ですかっ⁉︎」
巳波の瞳が蛇の様に虹彩が窄まり、物凄まじくぎらりと光る。
「失せろ。巳波。次は…確実にその喉元を引き裂くぞ。」
楽は大和を庇うように巳波との間に入ると、牙を剥き出しにして唸った。
「これだから獣は!せいぜい楽しい夜を過ごすといい!二人の…最後の夜になるかもしれませんから。ふふっははははっ!」
巳波は不気味に笑いながら周囲にぐるぐると大きく煙を巻き起こすと、そのままに姿を消した。
「楽…発情期って。」
大和が楽の背後から歩み寄る。
「来るな。」
「でも……辛いんじゃ。」
大和が楽の尾に触れた瞬間、楽は勢いよく振り返り大和に飛びかかる。その銀の毛が流れる逞しい前肢で大和の両肩を地面へと押し倒した。
「…うぁっ…!」
大和は肩に乗る骨がきしんでしまうほどの重みと、目の前で光る大きく強靭な牙に、獣としての楽の真の姿を思い知らされた。
「大和、俺はこのままお前の喉笛を噛み切ることだって出来るんだぞ。…俺に理性があるうちにっ…逃げろ!」
「……いやだ。」
「大和!」
大声で唸る楽に、大和はビクッと身体を震わせながらも手を伸ばし、楽の銀毛艶めく顔を撫でる。
「楽…苦しい?…俺はこのまま楽に首を噛み切られたっていい。元々死ぬつもりで来たのが、少し寿命が延びたってだけだ。」
「…っ…!」
「俺の身体で…楽はラクになれるか?女じゃないから…お前の子はつくれねぇだろうけど。その慰めぐらいには…なれるか?」
大和は荒い息をはく楽の頬を、愛おしそうに撫で続ける。
「お前は!死ぬなんて…っ怖くないのかっ⁉」
「怖くなんかねぇよ。楽がしてくれることなら…何だっていい。」
大和は楽の黒曜のような鼻先へ口づけると頬と頬をぴたりと合わせた。
楽は顔を上げて起き上がると、大和の身体にのせた前肢を上げ、直様狼から人に姿を変え大和を軽々と肩に担いだ。
「うわぁっ!ちょっ…なんだよ急にっ!」
楽は落ち葉が深く積もる道を、風の如く駆け抜け二人の棲む洞窟へと急いだ。
洞窟に着くと、楽は奥の寝床へ肩に担いでいた大和をどさっと乱暴に下ろす。逃げるように出口に向かおうとする楽の背に、大和は必死に抱きついた。
「楽…っ!待ってっ!…もう…独りでいるのは嫌だ!」
「大和、今の俺は…お前に何をするかわからない。離せ。」
楽の声は感情を押し殺す様に、張り詰めている。
「……離さねぇ。」
「大和…頼む。…俺は……お前を殺したくないんだ。」
「ううん。俺……生贄としてここに来て、何の役にも立ってないだろ。あいつの…さっきの奴の言う通り…いつか死ぬなら、生贄としての努めを果たして…死にたい。」
自らを差し出す大和の言葉に、楽の拳にぐっと力が入る。
大和は楽の背中を抱き締める力を強め、甘えるようにその逞しい背中にすりすりと顔を埋めた。
「楽……俺の身体使って?抱いて…殺して。」
楽は唐突に振り返ると、懸命に抑えていたタガが外れたかのように大和の身体を抱き締め薄く開かれた唇に貪るように口づける。
「ふ…ぅん!んんーっ!」
一瞬、我に返ったのか大和の身体を離したが、目の前の潤んだ唇に「がく…」と囁かれその甘く残酷な誘惑に抗うことは出来なかった。
「……くそっ!」
大和のその細い腰に爪がめり込むほどに強く抱き締めると、大和の呼吸ごと奪うように熱く濡れた舌をその口腔内へとねじ込んだ。発情により人の姿を完全には維持できない楽の舌は少しざらついていて、その舌で無防備な粘膜を蹂躙されると、大和の身体はびくびくと震え言葉にならない声が漏れる。
「ん…んんーっ!ぅぁあぁっ!…ん…っが…くっぅんんーっ!」
楽が唇を離すと、大和のその甘美に蕩けた顔を見せられ、ずっと抑えていた衝動が底知れず湧き上がってくる。
「…がく……もっと…。」
大和から口づけられた瞬間、楽の中に残っていた理性がガラガラと音を立てて崩れ去った。
「…うわぁっ!」
楽は大和を腰からぐっと持ち上げると、寝床へと運びそのままに押し倒した。大和が見上げた楽の瞳はいつもの品のある灰真珠とは違う、熱く熱せられた鉛のように赤い芯をもっていた。楽が上半身の衣服を脱ぎ払って大和が初めて見たその身体は、美しく張りのある筋肉を纏いゆるく隆起した胸板と筋の入った腹筋の凹凸が猛々しくもあり、綺麗な顔に反して野性味さえ感じられた。
「…大和っ!」
楽は大和の顎先を掴むと口を開かせ、たちまちの内にその舌を愛撫するように絡め取る。大和がそろそろとその背に腕を回すと、楽の身体は、いつも共に眠りについていたときの何倍も熱く、にじみ出た汗でべたついていた。
「……ふっぅんん…ぁ…んぅんっ!」
唇を離れた舌は大和の首筋をつたっておりていった。[[rb:直垂 >ひたたれ]]の紐をするりと解き滑り入ってきた楽の手は、まだ狼の銀色の毛が薄く残っていて、指一本一本が太く骨ばっている。
「…あぁっ!ん…ぁ…!」
その指が胸の[[rb:痼 >しこり]]をかすめると大和の濡れた唇から嬌声がこぼれた。
「いっ…ぁあっ!ああぁっ!」
収められていない鋭い爪に痼を摘まれ、ビリっと痛みを伴った電流が走り抜けたように大和は身体を反る。
まだ敏感なままの尖りを楽の少しざらついた舌がなぶり、大和の声は更に高まった。
「あ…っ!がくっ!やっ……そこばっか…やっ……あぁっ!」
大和が胸に与えられる愛撫に身悶えていると、楽の手はするすると細い腰をなぞり、袴の結び目も解いてしまう。大和はわけもわからない内に全ての衣服を脱ぎ払われた。休むまもなく、楽は形を変え上向いた大和の下腹部の熱を大きな掌で包み込んだ。
「がくっ!待って…ぅんん——っ!」
「…悪い…待てねぇっ…!」
楽は悪いと言うその言葉とは裏腹に、いたずらにその手を上下させながら、長い爪の先でとろとろと密をこぼす小さな窄みを刺激する。
「あぁっ!…や…っ!がく……ま…っ待って!こんな…されたことないぃ!」
大和の言葉に、楽はあの夜酔った大和が話したことが一瞬にして脳裏に浮かぶ。こんないやらしい大和の姿を、自分以外が見たということに堪えようのない怒りがこみ上げてくる。
「大和、お前……俺に抱かれながら他の奴とのこと考えてんのか?」
「ちっ…ちが!今のは、そういう意味じゃ…っ!…楽の…楽のことしか考えてないから!」
大和が涙を溜めた瞳で訴えるも、楽の表情は変わらない。
「どうだか…。」
「楽…っ…嘘じゃない…!信じて……あぁっ!」
乱暴に熱を掴まれた痛みに大和の瞳から涙がこぼれる。
「ぁ…ぁ……がく…っがく…ごめん。俺…楽の生贄なのに……許して。もう言わねぇから…。」
大和が力ない手を楽の顔に当てて懇願する。
「大和。この手…今、爪入れれる余裕はないんだ…傷つけちまうから、入るように自分でほぐせ。」
楽は大和の手をとると、その舌で大和の指先をじっとりと舐める。指先まで性感帯へされてしまったのかと思うほどの甘い愛撫に大和は喉をならした。
楽は自身の下袴に手をかけ紐を解くと、はち切れんとばかりにそそり勃った屹立を見せつける。
「……そのままじゃ…これ、入んねぇだろ……?」
大和は凶悪なほどのその存在感に息をのむ。ムリ…そんなの入るわけねぇ…!大和は心の中の悲鳴を必死に押し殺した。例えこの身体が壊されてしまっても、楽に差し出すと決めたのは自分だ。せめて楽が快くなってくれるよう最期に自分の出来ることをすると大和は覚悟を決めた。
「…わ……わかった。」
大和は寝転んだまま、楽に濡らされた自身の指を前から恐る恐る自身の窄みへと差し入れる。
「……んっ!」
楽に感じさせられて緩んだ身体でも、大和の中指1本を受け入れるのに精一杯だった。このままじゃ…だめだっ!と大和が目を瞑った瞬間。楽が大和の顔を上向かせ口づけた。
「…大和…、脚…開け…。見せろ。」
そう言われ大和はそっと下肢を開いた。反り立ったままのものと、自身の[[rb:孔 >あな]]に指を差し入れるという淫らな姿を楽にじっと見られると、恥ずかしさといたたまれなさで瞳にじわじわと涙が溢れてくる。
「大和…やらしい…。」
楽は大和の瞳にこぼれた涙を舐め取ると、胸の先の痼を爪の先で摘んだ。
「ぁああっ!」
大和が思わず声を上げる。
「……大和。」
楽の熱っぽい声が耳元で聞こえると、差し入れていた指がきゅっと締め付けられたと同時に、中がじわりと熱くなる。
楽がその舌で小さな尖りを押すように舐めあげると、再び大和の嬌声が響いた。大和は徐々に熱を持つ部分を内側からゆっくりと押し広げ、なんとか指を二本に増やし覚えのある快感の塊を探していると、楽が突然に大和の腹をぐっと押した。
「…っひゃあぁあっ!」
楽が外から押した瞬間、大和の最も弱い部分に中の指先が当たった。まるで外側から中を探り当てられたかのようで、大和が楽の顔を見つめるとその口の端がくっと上がる。
「…そこが快いんだろ?」
神様はそんなことまでわかるのかと身体がぞくぞくと身震いする。楽には何を隠しても無駄だ。それなら、恥じらって時間を取るより早く楽を受け入れたい。
「……うん。そこ…いぃ…。…もっと…!気持ちいいこと…して。」
大和は楽の頬に手を伸ばし口づけをせがむ。
「……あぁ。」
大和の言葉に、熱をはらんでいた楽の瞳が一層赤く燃え鋭さを増した。大和にせがまれるままに口づけると巻き取った舌を強く吸い上げた。
「——っんんん!」
大和の腹を押さえた楽の手は、そのまま大和の昂ぶりへと滑り降りると先端の敏感な丸みをくるくると指の腹で刺激する。
「……ぁ…ぁっ…うぅん…あっ…!」
とぷっとその先から密が漏れると、そのぬめりを塗り拡げられる。
「あっぁっ…がくっ…やぁ……。」
それでも漏れ出てくる蜜が重力のままに屹立を垂れていくと、楽が素早く舐め取った。
「あぁっ!や…ぁ…だめ…。」
「だめじゃねぇ……大和…悪いがもう限界だっ……急ぐぞ…っ!」
そう言うと、大和が二本差し入れている指の間に楽は強引に舌をねじ込むと孔の入り口を押し拡げ、ひくついた孔の中に唾液を塗り込んだ。
「…なっ……!が…く…っ、なん…!…これっなか…なっ…ぁっ熱いぃぃっ!」
楽が顔を上げると大和が戸惑いと快感で悶えている。
「がく…これ……っなか…じんじんするっ !こわいっ!」
大和は思わず差し入れてた指を抜き、両腕で楽に抱きついた。
「大和、大丈夫…気持ちよくなるだけだ……っすぐ俺を受け入れられるようになる…!」
「なっ!そんなん出来んなら、初めから…っ!ぁあ——…これ…頭…わかんなくなる…っ。」
大和が抱きついた腕を緩め、天を仰ぐように快感に耐えている。
「…もう我慢できねぇ……っ。」
ぐずぐずに蕩けさせられた大和の孔に、灼熱の先が当てがわれた。
「……大和…っ…入れたい…!」
楽の苦しそうな声に、大和は胸が締め付けられる。
「…うん、楽……きて。」
大和の号令を待っていたかのように、楽は大和の細い腰を爪が食い込むほどの力で掴むと、勃ち上がった灼熱をめりめりと挿入する。
「…ぁ…あぁ……あああ…っ…。」
ぐぅ——っと攻め入っている想像以上の質量と熱に、大和は目を見開いて喉をならす。
「…大和…っ力抜け……っ進めねぇっ…。」
「ム…ムリ……こわ…いぃ…がくっ…っ!」
大和の瞳は赤らみ熱を持ちぽろぽろと涙をこぼしながら、その身体は恐怖と快感で気をやってしましそうな程に震えていた。
「大和!俺を見ろっ!」
楽は大和の顔を自分に向けさせる。
「大和……お前を抱いてるのは、俺だ。俺が…怖いか…?」
大和は楽と視線が合うと、ふっと我に返ったように楽の身体へ縋るように抱きついた。
「……ううん。こわく…ねぇ…楽っ。」
大和が耳元で囁くと、楽はその欲望の塊を思い切り大和の最奥へと突き上げる。
「…っあああ———っ!」
目の前に光が飛び散ったような快感に、大和の身体は反り返りビクビクと小刻みな痙攣を繰り返す。
「……や…まと、全部…入った…ぁあーっ動きてぇ…っいいか⁉」
「…え?ま…待って!まだ…っあぁああっ!」
大和の制止も虚しく、楽はゆっくりと引いた腰を再び最奥へ押し戻し、それをニ度三度と繰り返していく。
「が…く……っ、楽の…なんか…っ…ちが…う…。」
「あ?あぁ…こっちも…人型には…なりきれて……ねぇから…付け根んとこだけ…ちょっとな……キツいか…?」
大和の中に楽の全てが入る瞬間、まるで孔に蓋をされるような圧迫感があった。
「う…んっ!ぁ……んなの…はじめて…だっからっああっ!」
腰を激しく動かされ揺さぶられながら大和が答えると、楽はいじわるに笑いかける。
「そうか……初めて…だからなっ!」
楽が一際強く中へと押し込むと、大和の声が艶を増していく。
「んんっ!ぁあっ…!あ!やぁっぁあっがくぅっ…んぁっ!」
その質量に圧倒されていた大和も、出し入れの度繋がった場所から漏れ聞こえる水音に耳まで犯されたように感じてしまう。
「ぁぁぁあ——っや…ぁ…いぃ…っ…!」
その固い先端で、外からでもバレていた大和の弱みを何度も何度も突かれると、大和の小さな窄みからとぷとぷと密が蕩けだし滴り落ちていく。楽の引き締まった腹に大和の濡れた先端が擦れ、中と外の両方を攻められると、大和の頭の中までどろどろとした官能に支配されていく。
「ぃ…いい…がくぅ……も…だめ…ぃぃっああっ!」
楽が内壁を抉ると大和はあられもない声を上げ続けた。
「やまと…っ!」
楽が大和の蕩けた瞳を赤く鋭い瞳で見つめ、繰り返し攻めたてる。
「も……出る…っ…!」
「うん……出してっ…楽の……、中…欲しい…っ。」
大和が懇願すると楽の抽挿は一層激しさを増し、噛みつくように唇を奪われる。そのまま中を突き上げられ、大和は目の前が真っ白になる程の快感に襲われると、楽の腹に蜜を垂らしていた屹立から白濁が迸った。そして、最奥の壁に灼熱が放たれたのを感じた。
「んんん————っ!ふっぅん!ぅぅんん——っ!」
楽の膨らんだ根本が閉じ込めるように大和のぐずついた孔にはまり込むと、何度となく大和の中へその熱を注ぎ込んだ。
「ぁぁ……なかっ…熱い……出て…っあぁあぁぁ……つ。」
大和は中に広がっていく楽の熱を感じながら、すでにぴったりとハマった繋がりを更にきゅぅっと締め付けてしまう。
二人は身体を繋げたまま抱き締め合うと、その快感を分け合った。
「大和っ…大和……すまない…こんなっ!無理矢理…っ!」
楽は欲望を吐き出した先端を、ゆっくりと大和から引き出した。楽の謝罪に、大和は楽の顔を抱き寄せ愛おしそうに唇を重ねる。
「ううん…俺も…がく…と…つながり…たかった…。」
「大和…。」
楽が身体を上げて寝転がる大和の顔を見ると、瞳から涙を溢しながら、明らかに虚ろな目をしている。そして、楽の顔に触れていた大和の手がするりと滑り落ちた。
「や…やまと?大丈夫か?…わりぃ…余裕なくて…ムリさせた。」
楽が焦ったように指の腹で大和の涙をぬぐい、頬を撫でる。
「うん……。」
大和の目がまるで意識が遠のいていくように、うつらうつらと閉じようとする。
「大和?おい…大和っ!しっかりしろ!大和っ!」
楽が声をかけても大和の目ははっきりとしないまま遠くを見つめる。
「がく……も…むり…かも…。」
大和は必死に意識を保とうと瞬きを繰り返す。
「大和っ!だめだっ…大和…目を閉じるなっ…大和っ!」
楽は大和の心臓に手を当てて、神力をおくりこむ。
「だめだ……大和っ!いくな…っ!嫌だ!いかないでくれ…っ!」
大和の身体がきらきらと白く光るほどに神力を送り込んでも、大和の意識はどんどんと遠のいていく。
「が…く……も…ぃぃ…から。」
「嫌だっ!大和…愛してるんだ…っ。俺の…傍にいてくれ……頼む…っ!」
楽の瞳からぽろぽろと綺麗な涙がこぼれ落ちる。
「…がく……あり…がと…。」
大和は精一杯の力で楽の頬へと手をのばすと、その手を楽が掴み頬に当てる。
「……大和…っ…いかないでくれ…っ!」
楽の溢す暖かい涙が大和の手を濡らしていく。
「……くち…して。」
大和は虚ろな瞳に涙をため、うっすらと笑みを浮かべた。
「あ、あぁ……。」
楽は頬に当てられた大和の手を握りしめ、大和の唇へそっと口づける。
二人が瞳を閉じた瞬間、大和の瞳から一筋の涙が頬を伝った。
「大和…?」
楽が顔を上げると、大和の瞳は閉じたまま、開かなかった。
「大和……ぃやだ…大和…大和っ!」
楽が身体を揺すっても大和は答えない。
「いくなぁっ!大和!俺を…置いていかないでくれ…っ!大和ーっ!」
楽が大和の全身が光り輝くほどの神力を送り続けても、一度神力を止めれば、大和の身体はみるみる内に冷たくなっていく。
「やま…と……愛してる…大和…。」
楽は大和の身体を抱き上げると、その頬に自身の頬を重ね涙を流した。
「大和…ごめん……っ大和…俺が…俺が……ぁあああ————っ!」
楽は悲鳴にも似た叫びを上げながら、その腕に大和を抱き締め轟々と泣き続けた。どれほどに声をあげようと、涙を流そうと、一切の疲れを感じず、むしろ時を追うごとに力を増す楽の身体。それは、他でもなく大和から奪った力によるものだった。
「こんな…なんで……力なんていらねぇよっ!大和…帰ってきてくれ!大和っ!」
抱き締めた大和の身体へ、ぽとぽととこぼれ落ちるその涙が乾く間もない程。楽は一晩中、その力尽きるまでと大和へ神力を注ぎ込み、泣き叫び続けた。
洞窟の入り口から外が明るくなっているのが見えると、光の筋が洞窟へと伸び始める。
「大和……そうだ。水…好きだったよな。あの沢の水…美味いって…。」
楽はずっと抱き締めていた、もう冷たくなってしまっている大和の身体を、休ませるように寝床へと横たえた。
立ち上がりゆっくりと歩みを進めると足元から風が巻き起こりするすると衣服が整えられた。
少し歩いて、楽は大和とよく魚を獲っていた川へとたどり着く。楽が川の中へとすっと手を入れると、流れる水はキンと冷たかった。
「これだと…大和には冷たすぎるな…。」
川面には瞳こそ虚ろなものの毛艶のいい楽の姿が映っていた。真神としての意識がうまれてからというもの、あれ程までに感情をぶつけ泣き続けたことなど無かった。自分でもこんな声が出たのかと驚くほどの声量で、大和の名を一晩中呼び続けた。自らの力の限界までと神力を注いでも、結局は限界など存在しなかった。
太陽の光を浴びて、更に増したようにも感じる自分の中の力が、大和の命と引換えられた力だと思うと、その罪悪感と嫌悪感に全身をどろどろと侵食され吐き気がする。
「こんな……っ大和がいれば、それで…それだけで良かった…っ!」
流しても流しても枯れることのない涙が、またふつふつと溢れ出て頬を伝い落ちていく。この川で「楽ーっ!」と名を呼びながら笑っていた大和。思えば、あの頃にはもう…惚れていたのかもしれない。愛しい…守ってやりたいと、心から思っていた。
それなのに、発情期の欲求に負け力のままに大和を抱いてしまった。震える大和の腰を掴み、強引に自身をねじ込んで揺さぶった。これでは、大和を都合よく抱いていた村の人間たちと何ら変わらない。卑しく、悍ましく、浅はかで、神などとあがめられる資格もない。愛した者を守ることも出来ず、あまつさえ自らその生命を奪ったこの大罪を、これから何百年も孤独と闘いながら背負い続けるのか。
大和のもとへいきたい。神なんてものがどうすれば死ねるのかなど、考えたことも無かったが、きっと何か方法がある。何でもいい…どれほど苦しもうと…大和のもとへいけるなら。楽は鋭い爪を自身の首へと当て、プツッと刺し込み、力のままに引き裂こうとした、その瞬間。
「…楽?」
背後から呼ぶ声がした。
そんなはずはない…。大和は、俺がこの手で…殺したんだ。
「…あれ?違うのか…?あぁ…俺死んでるから聞こえないとか?」
それでもこれは……間違いない、大和の声だ。
楽は、バッと後ろを振り返った。
「ん?やっぱ楽だ。…俺の声聞こえてる?」
さっきまで冷たい身体で横たわっていた筈の大和が、立ち上がって首を傾げていた。
楽はじっとその姿を見つめ固まっている。
幻か?妖に化かされてるのか?
「んー…見えてねぇのかな…?ここ…天国かと思ったんだけど、なんかいつもと風景一緒だし…楽は喋んねぇし、どーなってんだ?俺…死んだはずなんですけど。」
大和は少し困ったような顔で、きょろきょろと周りを見回す。
「…や…大和!」
楽が声を振り絞って名を呼ぶと、二人の視線が合わさった。
「なんだよ…見えてんじゃねーか。」
大和がくしゃっと目を細めて笑うと、楽は無我夢中で駆け出し大和を力一杯抱き締めた。
「ちょっ楽!びっくりすん…」
「大和っ!大和……大和っ!」
楽は大和の身体を確かめるようにぐっと強く抱き締め、その首筋に顔を埋めた。
「楽…苦しいって…。」
「大和…本当に大和なのか…?俺が…っ俺が…お前を……っ。」
楽の流す涙で大和の肩がじんわりと濡れていく。
「俺もよくわかんねぇ…。確かに、死んだと思うんだけど…、目、覚めちゃってさ。」
大和がそう言うと、楽はいきなり身体を離し大和の身体に変化がないか隅々まで確認する。
「ちょっ…なに…⁉︎」
「特に変化はないように思うが…少し匂いが…。」
「匂い…?」
大和がくんくんと自分の身体の匂いを嗅ぐ。
「そんなことよりだ!」
「え?あ…はい。」
楽は大和の肩をぐっと掴んだ。
「愛してる。大和。俺と、番になってくれないかっ⁉︎」
「…はぁっ⁉︎」
大和の顔がぶわっと赤く染まった時、ポンッと少しの煙と共に、大和の頭へ深緑色の楽に似た狼のような耳が現れた。
「大和!お前…っ!」
「え?…なに?どこ見て…頭…?……んだこれぇっ!」
大和は自身に現れた耳を両手で触り目を見開いて驚愕する。
「尻尾もあるぞ。」
「…尻尾っ⁉︎」
大和は尾を見ようと後ろを振り返りくるくると身体を回す。
「ふっ…ははほっ信じらんねぇな……こんな…っ夢みてぇ…っ…。」
楽は力なく笑いながら瞳を潤ませた。
「楽!これなにっ⁉︎夢って何だよ!」
「…こっちの仲間入りってことだろうな。」
「……はぁ?」
戸惑いで目を泳がす大和を、楽がそっと抱き寄せた。
「大和…どうやらお前を、俺たちと同じ時を過ごす何かにしちまったらしい。…俺と、永遠の時間を共に過ごしてくれるか?俺は、お前に傍にいてほしい。」
大和の瞳にゆるゆると涙がわきあがる。
「…もう…俺のこと…独りにしねぇ?」
「しない。ずっと一緒だ。」
「…朝まで…抱き締めててくれる?」
「もちろん。嫌がっても離してやらねぇ。」
「…死ぬまで変わらない?」
「あぁ、死ねるかどうか…わからないがな。」
「……なら、楽の傍にいる。」
大和は楽の胸に顔を埋め、その背に腕を回しきゅっと服を握りしめた。
「大和…尻尾振りすぎだ。」
「…なっ⁉︎」
大和が真っ赤に染まった顔を上げると、楽が唇を重ねた。そのままお互いを確かめ合うように口づけを深くする。静かでゆったりとしていながら、離れがたいほどに舌を絡め合わせた。
楽はそっと唇を離すと、じっくりと見たいと言わんばかりに、大和の頬を両手で愛おしそうに撫でる。
「大和、愛してる。」
灰真珠の優しい瞳が笑った。
「俺も…。」
「俺も?」
瞳を逸らそうとする大和の顔を楽が覗き込む。
「俺…も、愛してるよ。楽。」
大和は頬を染め瞳を揺らした。
「大和は本当にかわいいな。」
楽は嬉しそうに顔を緩ませる。
「か…わいくねぇから!」
「尻尾、ぶんぶん揺れてるぞ。」
「……えっ⁉︎」
朝焼けの森に、幸せそうに笑う二人の声が響いていた。