「帰還」
セラは、消耗し人間の姿に戻っていた。
薄れゆく意識の中、彼女が見たのは崩れゆく泉の光景だった。
〈急げ!早く逃げるんだ!〉
頭にリュカオンの声がこだました。
〈この泉はガルニエの意志が生み出したモノだ。早くしなければ君たちも、この空間とともに消滅するぞ〉
だが、セラは身体を動かすことができなかった。
もう一層このまま消えてしまおうか?
そんなことを思い始めた時だった。
〈生きろ、セラ!〉
リュカオンと違う、もっと親しみのある声が意識に直接語りかけていた。
「ルー?」
セラは、か細い声でつぶやいた。
再びルーの声が頭に響く。
〈セラ。生きて、マリを家族のもとまで届けてくれ。生きて俺の作りたかった未来を作ってくれ〉
気づくとセラは、無意識に身体を動かしていた。
誰の意志でもない自分の意志で。
「オオオオオオオオオ!」
狼とも獅子ともつかない雄叫び。
セラは、渾身の力で叫び立ち上がると、そばに倒れていたマリを抱き起した。
彼女は、全身を金色に輝かせた。
光は大きく膨らみ、羽や角を生やすと、やがてある形に収まった。
セラの身体は、真珠のような輝きを放つ羽毛に身を包んだ竜に姿を変えた。
羽毛の竜は、六枚の羽を広げリュカオンの作った光る道を辿り飛んだ。
〈行け、セラフィム!〉
ルー声が叱咤する。
「オオオオオオオオオオオ!」
セラは再び雄叫びを上げ、弾丸のごとく真っ直ぐ飛んで行った。
やがて、目の前に出口と思われる光が見えた。
と同時に、後ろに殺気が走る。
「イカセナイ…」
だが、セラはかまわず前に進んだ。
背に温かいモノを感じながら。
「「ここから先は、アイツらの未来だ!」」
二つの懐かしい声が背後に聞こえた。
「ありがとう、ルー、ロキ…」
セラは、そうつぶやきながら光の中に入った。