Scape wolf 5-21「帰還」

  「帰還」

  セラは、消耗し人間の姿に戻っていた。

  薄れゆく意識の中、彼女が見たのは崩れゆく泉の光景だった。

  〈急げ!早く逃げるんだ!〉

  頭にリュカオンの声がこだました。

  〈この泉はガルニエの意志が生み出したモノだ。早くしなければ君たちも、この空間とともに消滅するぞ〉

  だが、セラは身体を動かすことができなかった。

  もう一層このまま消えてしまおうか?

  そんなことを思い始めた時だった。

  〈生きろ、セラ!〉

  リュカオンと違う、もっと親しみのある声が意識に直接語りかけていた。

  「ルー?」

  セラは、か細い声でつぶやいた。

  再びルーの声が頭に響く。

  〈セラ。生きて、マリを家族のもとまで届けてくれ。生きて俺の作りたかった未来を作ってくれ〉

  気づくとセラは、無意識に身体を動かしていた。

  誰の意志でもない自分の意志で。

  「オオオオオオオオオ!」

  狼とも獅子ともつかない雄叫び。

  セラは、渾身の力で叫び立ち上がると、そばに倒れていたマリを抱き起した。

  彼女は、全身を金色に輝かせた。

  光は大きく膨らみ、羽や角を生やすと、やがてある形に収まった。

  セラの身体は、真珠のような輝きを放つ羽毛に身を包んだ竜に姿を変えた。

  羽毛の竜は、六枚の羽を広げリュカオンの作った光る道を辿り飛んだ。

  〈行け、セラフィム!〉

  ルー声が叱咤する。

  「オオオオオオオオオオオ!」

  セラは再び雄叫びを上げ、弾丸のごとく真っ直ぐ飛んで行った。

  やがて、目の前に出口と思われる光が見えた。

  と同時に、後ろに殺気が走る。

  「イカセナイ…」

  だが、セラはかまわず前に進んだ。

  背に温かいモノを感じながら。

  「「ここから先は、アイツらの未来だ!」」

  二つの懐かしい声が背後に聞こえた。

  「ありがとう、ルー、ロキ…」

  セラは、そうつぶやきながら光の中に入った。